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カーんスト99なら強いよね?  作者: チョロォーク
第一章 俺は強いよね?
87/335

口だけの……

「…………」


……俺は……受付嬢ちゃんに合わせる顔が無いから……黙って出て来ちゃった。


「……あっ! シャワー代払ってねー!!」


ケイゴは、急いでギルドに戻ると、受付嬢ちゃんの隣の人……鬼隣さんの受付に行く。


「……あ、あの……シャワー代……払い忘れました……」


「……あ、そう……次からは、気をつけなさいよ?」


鬼隣さんは、素っ気なく言い、タプを受け取る。


「……す、すいません……」


「……要はそれだけ? 仕事があるから帰ってちょうだい」


「……あ、はい……」


鬼隣さんは、そう言うと、仕事に戻ってしまった。


「…………」


ケイゴは、ギルドを出る。


「…………」


……鬼隣さん……めっちゃ怖……きっと、身内にもめっちゃくちゃ厳しい人だろうな……


「……でも……綺麗なんだよなぁ……大人の魅力?」


ケイゴは、鬼隣さんの顔を思い浮かべる。


「……まぁ……受付嬢ちゃんの方が……」


ケイゴは、顔を無表情にして歩く。


「……掃除しに行くか……ついでに、スリちゃんのところに……」


ケイゴは、まだ曖昧だが、それでも覚えて来た道を歩きボロい家に着く。


「…………」


……スリちゃんいるかな……もう家出てる可能性も無くはないからな……


すると……


「……あいつはどこ行きやがった! 酒がなくなったから買ってこいって言っただろうが! ほんと使えねーガキだ!」


「…………」


……この声は……あの男の……


「……チッ! こんなクソまじーご飯なんか作ってよ! そんな時間あるなら酒買って来やがれ!」


ガシャッ!


「…………ご飯作ってもらえるのがどれほど良い思いしてるのか、分からねーのかよ……」


ケイゴは、眉間にしわを寄せ、腹をさする。


「……流石にもう頭に来たぜ! アイツらが勝手に病気で死んでから、ガキを押し付けやがって、アイツがいたから俺は! クソがぁ!」


ダンッ! ガシャッンッ!


「…………」


……子供を育てる大変さ……俺にはきっと……一生分からないかもしれない……でも……それでも……自分の不幸を……


……相手のせいにするのは間違ってる!


「……俺はデブスで……バカで……何一つ取り柄のない価値のない人間だ……でもね……


……それが誰かのせいでなったわけでも……不幸だとも思わない……いや……ちょっと思うけど……イケメンずるい……違う! そう言う事じゃなくて……


……全ては……自分で選んだ選択の結果だ! なにもかもお前がそうなる様に努力しなかった結果だ! スリちゃんは悪くない! ……あんな優しいくて……強い女の子……を……」




……私……怖くて……隠れるしかなくて……本当にごめんなさい……





「……許せない!」


俺は、この時、初めてだろうか……負けるのがわかってて、それでもなお……立ち向かおうと思ったのは。


ケイゴは、ボロい家に向かった。



「…………」


コンコン


ケイゴは、ドアをノックした。


「……んぁ? 誰だ? ガキか!」


ドタドタと走ってくる足音がした、そしてドアが勢いよく開く。


ガン!


「……うぁ!!」


ケイゴが扉に頭がぶつかり尻餅をつく。


「……テメェ! どこ行ってや……お前は誰だ……」


扉を開けた男は、やさぐれてて、髪がボサボサで、酒臭い……まぁまぁ普通の顔立ちのおっさんだった。


「…………」


ケイゴは立ち上がる、相手を睨みながら。


「……悪かったよ……だが、お前も扉の前に突っ立っているのもいけねーだろ?」


スリ男は、ケイゴをバカにした様に言う。


「……それは……自分も、悪かったのでいいです……」


「……ふ、なら何しに来たんだ?」


「……それは……」


……怒りに任せて来ただけだから……どうしよう……怒ってはいる……けど……この後のことを考えてなかった……


「……こっちは今、むしゃくしゃしててよ……用がねぇーなら帰ってくれるか?」


「……あなたの家から……子供を虐待するような声が聞こえたので……見に来ました……」


……うまく喋れない……こいつを見てると……スリちゃんが殴られて泣いていると思うと……


「…………だからなんだよ……テメェに関係ねぇーだろ? うちの教育だ! 文句言われる筋合いはねぇーよ!」


スリ男は、怒鳴るように言う。


「……だからって……」


ケイゴが喋ろうとするが……


「……ならよ? アンタがあのガキを育てるか? んぁ? 出来んのか? あぁ? 言うだけ言ってどうせ何もできねぇーだろ? ん? ほら! なんか言ってみろよ!」


「……うっ……」


……俺は……タプないし……家ないし……スリちゃんを育てるのは…………くそッ!


「……どうせみんなそうなるんだよ……今までも何度か来たぜ? お前みたいな……偽善者どもがよ! だいたいこう言うとみんな帰ってくんだぜ? 言い出しておきながら何にも言い返せねー偽善者がよ!」


スリ男は、笑う、ケイゴを嘲笑う。


「……アンタらも変わんねーじゃねーか? 言う事で、自分は優しい! とか思ってんじゃねぇのか? はっ! バッカじゃねーの? 言うなら言うで、最後まで責任持てよ! あーイラつく! 消えろ! 俺の前から! もう二度と顔を見せるな!」


ドンッ! バタンッ!


スリ男は、ケイゴを突き飛ばし扉を勢いよく閉めた。


「…………」


……正論だった……何も言い返せない……アイツの言う通り……俺は……


「…………」


……偽善者なんだ……


ケイゴは、さっきまでの怒りを忘れ、ゆっくりと立つ。


「……俺は…………口だけだ……また……同じことを繰り返す……


……口だけの偽善者……だ……」


ケイゴは、下を向き歩き出した。


「……ごめん……スリちゃん……君は……俺の為に泣いてくれたのに……


……何もしてやれない……アイツに何も言い返せない……君の様に強くなりたい……」


……俺は……ダメな人間だ……一言でも……言い返さなきゃいけなかったのに……


「………おれは……くっ……クソ野郎だ……」


……悔しい……君の事を……守ってやれない……


「……ズリぢゃん……ごめん……ねぇ……無力なおれでぇ……ごめんね」


ケイゴは、ゆっくりと歩き出した、屋敷に向かって。


「……がぜぐがら……君が少しでも……虐待されないように……


……今すぐ助け出したいのに……どうして俺は……こんなにクソなんだよ……」


ケイゴは、顔を歪ませ泣く……己の弱さに殺意を思いながら。








「……チッ! 偽善者がまた来やがって……めんどうだ……」


スリ男は、電話みたいな物の受話器を取る。


「…………………約束の件……いいぜ……あんなガキくれてやる……ちゃんとタプは……あぁ……それでいい……アイツにそんな価値があるとは思わねぇがな……そうかい……じゃ……


……頼んだぜ」


ガチャ


スリ男は、受話器を置いた。








「…………」


ケイゴは、下を向きただ歩く。


「…………」


……このバンドをつけて……


ケイゴは、ローゼさんから借りたバンドを腕にはめた。


「…………ついた……」


ケイゴは、屋敷の門前に立つ。


「…………」


ケイゴは、招き猫をした。


シュタッ!


「……おはようございます……ケイゴさん……」


黒執事が現れた。


「……おはようございます……今からします……それだけです……」


ケイゴは、そう言う。


「……分かりました……ではよろしくお願いします」


シュッ!


黒執事は、去った。


「…………」


ケイゴは門を開き、屋敷の敷地に入っていく。


「…………」


ケイゴは、屋敷の扉を開いた。


「…………暗いな…………」


屋敷の中はやはり暗かった、ケイゴは、周りを見回す。


「……シロフワさん……あ、いや……[ ヒカルン ]」


ケイゴが、言うとほぼ同時に、二つの白いフワフワが出る。


「……あれ? どうして二つ?」


ケイゴがその二つを交互に見てると。


左にある白いフワフワが頭に移動する。


「……おぉ……こっちがシロフワさんか……見分けつかんないや……」


ケイゴは、少し笑いながら言う。


「……あんた来るの早くない?」


「……ッ!……おはようございます」


俺は、シロフワさんが頭に移動するのを見て上を見上げてたら、すぐ目の前に盾士ちゃんが立っていた。


……まじ怖いんだけど……漆黒鎧さんも盾士ちゃんも……気配だしてくれないかなぁ……


……俺結構……学校では気配ない方だっただけど……


「……何びっくりしてるのよ……幽霊なんていないじゃない……ふふ♪」


盾士ちゃんは、少しニヤッとした笑い方をした。


「……そ、そうですよね……」


……よくこんな暗いところ明かりなしで居られるよな……というか……盾士ちゃんの姿……


……めっちゃ可愛い……白くて脚に近づくほど、フワフワのワンピース着てる……綺麗な脚が素晴らしい!


「……なに? そんなに見て……どう?……この服……似合ってると思うんだけど……」



盾士ちゃんは、その場で一回転する……フワって! フワってなった……太ももが良かった! 眼福です♪


「……似合っています……」


「……ありがとう……じゃあ……倉庫の続きよね……掃除……」


盾士ちゃんは、少し微笑むとそう言った。


「……そ、そうですね……グチャグチャにしたまま帰っちゃいましたから……」


「……わ、私も手伝うわ……」


盾士ちゃんは、俺に目を合わせずに言う。


「……いいんですか? 手伝ってもらっても……」


「………良いって言ってるでしょ……ほら行くわよ!」


盾士ちゃんは、怒ったように言う。


「あ、はい……よろしくお願いします……」


「……てか……なんで二つも出してるの? ……

シロフワさん……」



盾士ちゃんは、シロフワさんじゃない方を指差す。


「……二つ出ちゃって……どうやって消すのがわかんないんですが……どうすれば良いですか?」


……この魔法の事知ってそうだし……聞ける時に聞く……じゃないと後が大変だ。


「……消し方知らないの? じゃあ、なんでもう一つの方は? 今まで消してたんじゃないの?」


「………勝手に……消えてたんです……」


……実際……勝手に魔法発動したし……もう訳わかんないんだけど……


「……勝手にって……生きてる訳じゃあるまいし……まぁいいわ……しょうがないから教えてあげる……昨日は、二回も私が消しといたのよ?」


「……あっ……そう言えば……二回出した時……すみませんでした……ありがとうございました」


……盾士ちゃんが消しといてくれてたのか……本当にごめんなさい……


「……はぁ……じゃあまずは、そのヒカルンに手を乗せてみて?」


「……手を乗せる……」


ケイゴは、シロフワさんじゃない方に手を乗せる。


「……そして……撫でる」


「……撫でる……」


俺は、ヒカルンを優しく撫でた……


……が……消えなかった。


「…………」


「…………」


盾士ちゃんとケイゴはその場で固まった。


「……も、もう一度やってみて……」


盾士ちゃんは、ヒカルンをじっとみて言う。


「……わかりました……」


ケイゴがも一度撫でた……変わらない。


「…………もう一度」


「……は、はい……」


ケイゴは、同じ様にしようとしたら……


ヒカルンが、ケイゴの手から逃げる様に盾士ちゃんの方に行った。


「…………」


「…………」


……泣いていい?


「……私がやってみるわね…………ぇ……」


盾士ちゃんがヒカルンを撫で用とした瞬間……盾士ちゃんの手に吸い込まれる様に移動して……一瞬で消えた。


「…………」


「…………」


……泣いていい?


「……そんな目で見ないでよ……私も訳がわかんないわ……自分から消えに来るなんて……」


盾士ちゃんは、困惑しながら俺の目を避ける様に手を見た。


「……き、気にしてませんよ……全然……」


「……そんな震えた声で言われても……説得力ないわよ……」


盾士ちゃんは、ケイゴを、かわいそうな目で見ながら言う。


「……消えた事ですし……掃除始めましょうか……教えていただきありがとうございます……」


俺は、盾士ちゃんに軽くお辞儀して言う。


「……え、ええ……次からは……私が消してあげるから……本当に大丈夫?」


盾士ちゃんは、ちょっと震えるケイゴを心配する……近づいて触れはしない。


「……自分には……シロフワさんがいますから……」


俺は、最後の望みをシロフワさんに託す。


頭からシロフワさんがゆっくりと降りてきた。


「…………」


(……なんて……かわいそうなの……この人……)


「……じゃあ……始めましょう……時間がもったいないですから……」


ケイゴは、シロフワさんをギュッと胸に抱きながら倉庫に向かう。


「……そ、そうね……」


(……魔法が術者の言うこと聞かないなんて……


……初めて見た……)


盾士ちゃんは、悲しさの出る太い背中を追った。

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