雨の降る夜……
「……ここは……まだ終わってなかったのか!」
ケイゴが見たのはさっきの場面だった。
「……シロフワさん……俺はまだ動けるはずだ……
……うおおおおおおおーー!! 」
ケイゴは、意識の遠のくのを無理やり大声を出し覚醒させ、立ち上がった。
「……クソ! 目が見えねー!!」
「……ギャーー!! イデーー!」
「……ぬおおおーー!!」
「……目が焼けるっす!!」
ケイゴは、眩しいシロフワさんを手で遮りながらギャルっぽいちゃんに近づき。
「……立ってください……逃げます!」
「……前が見えなくて……動けないっす!」
「……すみません!」
ケイゴは、無理やり腕を掴み立たせるとゆっくりとだが強引に引っ張る。
「……痛いっすよ! もっと優しくして……」
「……す、すいません……」
ケイゴとギャルっぽいちゃんがそうこうしてると……
「……逃すか! <| サーチィン |>
……デブ!! おめーの右向きにあれ使え!!」
ナイフ男が、そう叫ぶ。
「ギャーー!! く、クソォー!!
<| ジュークル |>!!」
デブがそう叫ぶと、ケイゴの方に吹っ飛んできた。
ケイゴは咄嗟に、ギャルっぽいちゃんの手を離して飛んでくるデブを止める。
「……な、何?!」
「……俺より痩せてる奴が……舐めんじゃねー!!」
ケイゴは、デブをガタイ男に投げつける。
「「ぐわーー!!」」
ガタイ男とデブは抱き合うように転がった。
「……お、おめ〜……どこにそんな力が……」
ナイフ男は、こちらを凄くびっくりした顔で見る。
「……後ろに下がっていてください」
ケイゴは、ギャルっぽいちゃんの手を引き背中に隠すようにする。
「……あっ……」
ギャルっぽいちゃんは、その通りにする。
「……てめぇ……殺す!」
ナイフ男は、ケイゴに向かって来た。
「……俺はどうなってもいい……だから……死んでも……守るんだぁ!」
ケイゴもナイフ男に立ち向かう。
「……うごぉーーー!!」
ケイゴは、ナイフを避けて顔面を殴り飛ばした。
「……あ、兄貴! ……く、くそー……覚えとけよ!」
デブは、そのまま走って逃げていき。ガタイ男は、ナイフ男を担いで去って行った。
「……か、かっこいいっす……」
ギャルっぽいちゃんは、ケイゴをキラキラした目で見ていた。
「……大丈夫ですか?」
ケイゴは、ギャルっぽいちゃんに振り返る。
「……は、はい……その助けていただきありがとうございます……」
ギャルっぽいちゃんが、頬を少し赤らめて、ケイゴを上目遣いでお礼を言う。
「……なら良かったです……」
ケイゴは、ケイゴスマイルをした。
「…………」
ギャルっぽいちゃんは、こちらをジッと見ていた。
「……ど、どうかしたんですか?」
……ん? ここは惚れてもいいんじゃないか? も、もしかしてこれは……イケメンじゃないからか……そこは忠実にしなくてよくね? 夢なんでしょ? ねぇ!
「………見直したっす……太ってる人だからって……良い人は居るんすね……」
ギャルっぽいちゃんは、ニィー♪と歯を見せながら笑った……すっごく可愛い……
「……じゃあ……帰るっす……」
ギャルっぽいちゃんはそう言うと、俺に背を向けて、雨の中を走って帰って行った。
「…………」
……う、う〜ん……まぁ……これはこれで……良いかもなぁ……
「……助けられて……よかっ……ヴゥッ!?」
ケイゴは、腹にいきなり激痛が走り覚醒する。
「……やってくれたよ……本当に……なぁ!!」
「……ウッ!」
ケイゴが目を覚ますと……ガタイ男に立たされてホールドされる形で、ナイフ男が鬼の形相でこちらを睨み腹を殴る。
「……げへへ……あんたのせいで、犯せなかった上にブレイクにやられちまったからな……絶対に許さないぞ?」
ガタイ男は、笑いながらも笑ってない声でケイゴに言う。
「……お前のせいで俺は……特攻させられたんだぞ! なんで俺ばっか……」
デブは悔しそうにこちらを見た。
「…………」
……助かった訳じゃなかったんだな……そりゃ〜そうか……倒した後の敵だってその場に放置されてたらこうなるよな……
「……ククク……ただ殺すだけじゃあ〜気がすまねー……ボコボコにしてから……殺す!」
「…………」
……もう……助けは来ない……確信してる……でもさ……彼女を救えたからもう良いかな……助けたのはブレイクだったけど……痛いの怖いし、嫌だけど……守るものがなくなった今……へへへ♪
「……へへへ……」
「……おい、コイツ……笑ってやがる……」
ナイフ男が気持ち悪そうに言う。
「……兄貴にやられすぎて頭おかしくなっちゃったんじゃないっすか?」
「……へへへ……俺は……守れなかった……何も……ブレイクさんが来なかったら……」
ケイゴは、ニヤけてたのにいきなり泣き始めた。
「……なんだよコイツ……今度は泣き始めたんだが……」
「……離したいんだけど……気色わりー」
「……狂ってるなこれ……」
「……だからって……許さねー……がな!!
おら! んぁ?! てめ〜さえ来なければ今頃やれてたのによ! 雑魚のくせに!」
ナイフ男は、ケイゴの顔面を殴りまくる。
「……う! あ! いだい、いだいよ!」
ケイゴは、鼻血を垂らしながら涙を流す。
「……げへへ♪ もっとやってやれ!」
「……えへへ♪ 兄貴のパンチはいてーぞぉ〜」
「……はぁ……はぁ……どうだよ……雑魚が……」
ナイフ男は、肩で息をしながらケイゴに言う。
「…………うぅ……」
ケイゴは、顔を下げて泣いていた。
「……デブ……コイツのバックの中に金目のものあるか?」
ナイフ男は、休憩〜と言いながらデブに言う。
「……う〜ん……32純銅タプと……
……袋の中に117銅タプが入って居るよ……」
「……少ねぇな〜本当クソだなお前は……」
ナイフ男は、ケイゴに振り返る。
「……そのタプはやめてください! お願いします!」
ケイゴは、叫ぶ。
「……はぁ? 無理に決まってんだわ」
ナイフ男は、タプをデブから受け取る。
「……そのタプは……恩を返すためのものだからお願いします!」
「……恩? ククク……こんな少ねぇ〜タプで何が返せるって言うんだ? ククク」
「……お願いします! それだけはやめてくれ!」
ケイゴは、ガタイ男に抑えられながら暴れる。
「……デブのくせにあんまし力ねーな……弱すぎだろ……」
「……ククク……これは大切に遊びで使ってやるよ♪ ……ククク♪」
「……返せー!! 恩を返すって約束したんだぁ〜! 離せ〜!!」
……ライトセルに必ず戻ってきますよ……だって……俺は……
……恩を返したい人がいるんですから♪
……恩を返したい人?
はい! とても優しい人なんです!
そ、そうなの……恩を返せたらいいわね? その人に
「……やめてくれーー!!」
ケイゴは、泣き叫ぶ。
すると……
「……あ、兄貴……こ、これが……」
デブは、バックからあるものを取り出す。
「………んぁ? なんだそれ……バンド?」
「……兄貴……そいつに手を出すのはやめといた方がいい……ギルマスに目をつけられる……」
「……どう言うことだ……戦闘の花嫁がか?」
ナイフ男は、そのバンドを見る。
「…………これ……貴族どもがつけてるやつじゃねーか! コイツ貴族か!」
ナイフ男は、驚愕の顔でケイゴを見る。
「……流石に違うだろ……貴族ならもっといい服着て居るはずだ」
ガタイ男は、冷静に言う。
「……貴族じゃないのに持っている場合……ギルマスが目を付けた相手にあるクエストを出す……これはその時に依頼者が渡すバンドという事だよ……兄貴……」
「……依頼者が貴族って事か?」
「……俺の知人は……ギルマスに目を付けられて、そのクエストを受けたって言っていた……」
デブが、悔しそうに言う。
「……だからって……なぜギルマスが目を付けるんだ?」
「……戦闘の花嫁は……獲物のと決めた相手はとことん調べ上げるんだ……知人は、そして……
……お、俺は……嫌だ! あんなことになりたくねー」
デブは、そう言うとバックを壁に投げる。
「……俺も聞いたぜ……戦闘の花嫁に目を付けられるとヤバイって……ギルドで暴力行為した奴や、受付嬢に手を上げようとした奴はギルマスに捕まって解体室に連れてかれるんだ……そうだ……この前、受付嬢に手を上げようとした奴が出てたけど……あれはもう……別人っていうか……ずっと同じことを呟いていたぞ……」
ガタイ男が、そう言う。
「……チッ! MTL級は流石に別次元だ……
……タプだけ取って帰るぞ……」
ナイフ男は、バンドを適当に捨て路地を出る。
「……コイツはどうするよ……」
「……捨てとけ……行くぞ! デブ!」
「……待ってくれよ! 兄貴! 」
ガタイ男はケイゴを離し、デブは、ナイフ男に駆け寄る。
「……待てぇ! タプを置いてけよ!」
ケイゴは、涙を流しながら言う。
「……行くぞ……めんどくせぇ……」
ナイフ男達は、冷めたように言うと雨の中を歩いて行った。
「…………」
ケイゴは、その場で立ち尽くす。
「…………………………ああああ〜〜!!」
ケイゴは、涙を流し壁を殴る。
……くそぉ! くそぉ! 俺は……なんでいつも……
あんたそこで何してるのよ……
……ケイゴ……またぐちゃぐちゃね……
……ケイゴ……何でまたそこで寝てるのよ……
……あなたを……信じさせて? ね?
「…………ああああーーーー!!」
ケイゴの叫び声は、雨の音でかき消される。
ケイゴは、涙を鼻水を出して、口から声を出し泣き叫んだ。
「……ごめんなざい……おで……やぐそぐしたのに……たすげられてばっがだったのに……何も…….がえせないなんで〜〜」
ケイゴは、フードを深く両腕で被りそのまま膝をつけながら土下座の形で丸くなる。
「……俺は……最低な野郎ーだぁーー!!」
……門番ちゃん……俺は……あなたに何度と助けられて救われて来たのに……
……あなたに……合わせる顔がない……
ケイゴは、そのポーズのまま、もう自分の匂いと泥の匂いなローブの匂いを嗅ぐ。
「……俺は……ただ……恩返ししたかっただけなのに……それすらもさせてくれないのか……」
ケイゴは、目を瞑る。
「……怖っかった……死ぬのは……怖い……だって……
……あなたに会えなくなる……」
……あなたの笑顔が見たい……
……あなたの手料理をまた食べたい……
……レンさんと話すあなたの幸せな姿を見たい……
……あなたの声が……聞きたい……
雨が激しく降る
「……大丈夫ですか?
……串焼きさん」
そこには、傘を持った……スリちゃんだった。
願いは……必ずしも叶うとは……限らない……




