後悔と決意を……
「……はぁ……はぁ……」
ケイゴは、大きな盾を背中に背負い、掃除用具を持って歩いていた。
「……何この盾……クソ重いんだけど……」
ケイゴの額から汗が出る。
「これ使いこなすの無理じゃね?……また振られたな……」
ケイゴの顔は、ニヤケていた。
「……まぁ、分かっていたさ……後悔したくなかったから言っただけだ……盾師匠がどう生きていくかそれは、本人が決める事だからな……それに、俺と一緒の方が大変だろう……俺馬鹿で何もできねーからさ……」
ケイゴは、盾を一回置き、腕にバンドをつけて、招き猫をする。
「……お疲れ様でした、ケイゴさん」
「……お、お疲れ様です……」
すぐさま現れたのは、黒執事とローゼさんだ……お姫様抱っこ……すげぇ……
「……今日で終わりとのことでしたが、掃除し切れたのでしょうか?」
ローゼさんは、地面に降り立つと、背筋を伸ばし言う。
「……はい! 出来たと思います! 掃除用具のおかげです」
ケイゴは、掃除用具を右斜め前に置く。
……いや〜異世界の技術も凄いものだよな……これ吸引力がやべーもん、コンセントないから自由に動かせたし……
「……出来たと思いますでは困るのですが……」
ローゼさんは、真剣な表情だ。
「す、すいません! 出来ましたです……」
……こ、こえ〜下手したらこの場で殺されるとかないよな……
「……そうですか、あなたに任せてよかったわ、それと……
……その盾はなぜ持ち出しているのですか?」
ローゼさんは、顔の表情を変えずに俺の持つ盾を指差す。
「……えっ?! そ、それは……」
……そういえば……盾師匠は、勝手に住んでたんだよな……じゃあ……この盾って、ローゼさんの持ち物? いや、自分のものだって言ってたし……でも、このままだと、俺が盗み出した事に……
「その盾は、代々受け継がれて来た物です。冒険者の方が欲しがるのは分かりますが、流石にそれは、報酬として渡すのは無理です。」
ローゼさんは、俺の目をジッと見てくる……なんだこの感じ、全てを知られてしまっているのではないかと感じる目……
「……そ、そうですよね……すみませんでした……」
……盾師匠、ローゼさんの盾って言ってますよ? どうしてこの盾を、自分の物のように言ったんですか……
ケイゴは、盾を黒執事さんに渡す。
「……メイズス、その盾を元の場所に戻して来て頂戴」
ローゼさんは、冷静な声で黒執事さんに言う。
「はい、ローゼ様………ん? ……フン! なっ……」
黒執事さんは、盾を俺から受け取り、屋敷の方に持って行こうとしたが、その場で踏ん張っているだけだった……どうしたんだ? その芸、何処かで見た事ある……軽い物を重く見せて、その場で踏ん張るやつ……
「……メイズス、貴方は何をしているのですか? 早く置いて来なさい」
ローゼさんは、黒執事さんに眉をひそめて言う。
「……す、すいません! ローゼ様……動かせなくて……はっ!」
黒執事さんは、まだ芸を続けていた。
「…………」
……確かに超重いけど……俺は、ここまで持ってこれるほどの物だぞ?
「……ふざけるのもいい加減………………」
ローゼさんは、急に黙り、俺の後ろを驚いた顔で見ていた。
「……どうしましたか? ローゼさ……………」
黒執事さんも、俺の後ろを見ると黙る。
「…………」
……どうしたんだ? 俺の後ろに何か……
……何もない……
ケイゴは、ゆっくりと後ろを見るがそこに何もなかった。
「……ケイゴさん……貴方、掃除は終わったと言ってましたわよね……」
ローゼさんは、俺の後ろをチラチラと見ながら言う。
「……はい、綺麗にしました」
こういうのは、ちゃんと言わんとな! 盾師匠とだけどね?
「……じゃあ……なぜ、まだいるのですか!」
「えっ? そ、それは……」
……えっ? 急にローゼさんが怒って……俺が何かしたのか? でも何も……それにいるのは、タプもらってないからですけど……
「……貴方は! 何を今までしていたのですか?! 見えないのですか?! あれが!」
ローゼさんは、慌てたように、俺の頭の上の後ろを指す。
「………………お屋敷があるだけですが……」
ケイゴは、後ろを見るが何も変わりのない屋敷があるだけだった。
「貴方が見た瞬間だけ、消えているのです! 今見えてますから!」
「……えっ?! ……いや……見えないですけど……」
ケイゴは、素早い振り返りで後ろを見るが、その驚くようなものはない。
「……な……」
「……くっ……」
ケイゴが後ろをずっと見ている時、ローゼさんとメイズスの前に文字が浮かぶ。
そこに書かれたものは……
「ケイゴに言えば、今度は何をするかわからないぞ」
すると、文字が消えた。
「……ローゼさん……自分が何かいけない事でもしてしまったのでしょうか?」
ケイゴが文字が消えた頃に振り返って、ビクビクしたような顔でローゼさんに言う。
「……………い、いえ……私の勘違いでしたわ……」
ローゼさんは、俺の上あたりをチラッと見ると、少し怯えた様子でそう言う。
「……そうですか……」
ケイゴの後ろには……錆びた鎧が、腕を組んでローゼさん達を見下ろしていた。
「……そう言えば私……盾が本体だから、こうなるわよね……忘れてた……」
盾師匠は、屋敷から引っ張り出されながら呟く。
「……やっぱり、盾は、返してもらおうかなぁ……」
……パーティが無理なら……
……一緒に冒険に出ませんか!
…………それは、パーティじゃあ……
……パーティは、仲間で組む事でなると思うんです……自分と盾師匠は、仲間ではなく……
……師弟……仲間ではないです!
……っ?!
……俺を盾士にしてくださーーーい!!
「……うぅ……このままじゃあ、本当に一緒に冒険する事に……」
盾師匠は、宙をクルクルと、前転しながら頭を抱える。
「……私は、ポルスガース……物に宿る魂……人間じゃない……ケイゴは、全く気づかないけど……私と話してれば、いずれ……だからダメなの……私は、このままずっと1人でいれば……私の弟子に迷惑は……ん?」
盾師匠は、前転をやめて、屋敷の門前でケイゴが、ローゼさん達と話してるところを見つけた。
「……何話してるんだろう……<| シークレッルド |> あまり時間は持たないからね……このスキルは、使い方によっては、強いけど……魔力消費が高すぎてあまり持たないのよね……サイレルドも……だから2つ同時は出来ないから、ケイゴに言えなかったのよ……」
盾師匠は、透明になるとケイゴの背後に浮遊した。
「……そうですか、あなたに任せてよかったわ、それと……
……その盾はなぜ持ち出しているのですか?」
「…………」
(……あー……うん……当然よね……)
盾師匠は、納得したような顔をした。
「……えっ?! そ、それは……」
「その盾は、代々受け継がれて来た物です。冒険者の方が欲しがるのは分かりますが、流石にそれは、報酬として渡すのは無理です。」
「…………」
(……そうよね……私は、この貴族の所有物……)
「……そ、そうですよね……すみませんでした……」
「…………」
(……でも……私の盾なの……お爺様の設計した盾……このまま飾られて、鑑賞されて……
……また、その繰り返しなんて……)
「……メイズス、その盾を元の場所に戻して来て頂戴」
(……私は、死人で、幽霊で、モンスター……でもね?
……盾なの……私は盾……)
「はい、ローゼ様………ん? ……フン! なっ……」
(……私に触れるな……私は……リメス、メロカ……また見つけたわ……
……盾士必須 3 守る者を定めよ……
ケイゴの盾よ!)
盾師匠は、ケイゴの背を、大切なものをようやく見つけた時のように微笑んだ。
「…………」
錆び鎧は、何かを書き始めた。
「……くっ……」
ローゼさんは、悔しそうな顔をした。
「……ケイゴさん……その盾を貴方に譲りましょう……いや、貰ってください」
ローゼさんは、俺に頭を下げた……ええーー!!
「……あ、あの! そんな、別に自分は……せがむようなものでは無くて……自分が元の場所に返してきますから」
……なんでローゼさん急にそんな……よくわかんないけど、受け取らない方が良さそうだからな……盾師匠に悪いけど……
「……お願いします! その盾をケイゴさんが持ってってください!」
ローゼさんは、涙目だった。
「……わ、分かりましたから、はい! 持ちました!」
俺は、固まったメイズスさんから、盾を受け取り、持っているところを見せた。
「そのまま帰ってもらっていいですか?」
ローゼさんは、メイズスの後ろに隠れて言う。
「……あ、はい……では、お疲れ様でした……」
何をそんなに……も、もしかしてまた知らぬうちにしてしまったのだろうか……でも泣くほどの事してないよね? だよね?
「ありがとうございました……もう2度と来ないで……」
メイズスは、相変わらず石化したままだ。
「…分かりました……」
……お礼と拒絶を同時って……俺は何をしてしまったんだ〜!!
俺は、盾を片手で持つ……あれ? 軽くね?……
ケイゴは、盾を何度か上下に繰り返しした後、歩き出した。
「……私、生きてる……」
ローゼさんは、涙を手で拭い安堵した。
「…………」
メイズスは、まだ固まっていた。
「……メイズス! メイズス! 執事の貴方が何をしているのですか!」
ローゼさんは、メイズスの肩を揺らす。
「……はっ! 大丈夫ですか、ローゼ様!」
メイズスは、ようやく動き出す。
「……大丈夫じゃないわよ……もう帰ります……」
ローゼさんは、メイズスにいつものお姫様抱っこをするよう背を向けた。
「分かりました、ローゼ様」
ローゼさんを抱き抱えると、駆ける。
「…………」
(……なんて恐ろしい……でもこれで終わり……
……ケイゴに盾を渡さなければ、鼻の穴1つ減らす……だなんて……)
ローゼさんは、愛する夫に早く慰めて欲しいと考えていた。
盾を持ってても効果はない……
ケイゴは盾を、装備した!




