応接室で……
「……あの……ケイゴさん……」
受付嬢ちゃんは、ケイゴを上目遣いで見て緊張した様子で声をかけた。
「はい……」
ケイゴは背筋を伸ばし、受付嬢ちゃんを顔を上げて見た。
「……聞きたいことがありまして、ギ……あの人にお願いをして、ケイゴさんをここに呼んでもらいました……」
受付嬢ちゃんは、両手を両膝に置き強く握りしめた。
「……そうですか……」
ケイゴは、受付嬢ちゃんの目を見ずに鼻あたりを見ていた。
「……あの日以来、授業に来ないのはどうしてなんですか?」
受付嬢ちゃんは、一番気になっていた事をケイゴに真剣な表情で聞いた。
…………ならいいよ♪ もし、どうしても理由が知りたいなら本人から聞くのが一番だよ? 嘘が適当ならすぐわかるし、顔見て聞けば、それが正直に話してくれたのかなんて分かるから
……ごめんね? 心配かけて……
うぅうん……私はいいの、でも、リリちゃんにまで気づかれるくらい悩んでいるのは見過ごせないかな? それに、ねぇーさんは、もっと私達を頼ってよ♪ 今日みたいにね?
……家族なんだからさ?
(……ケイゴさん……どうしてか、正直に話してください……)
受付嬢ちゃんは、ケイゴの顔をジッと見た。
「…………」
ケイゴは、受付嬢ちゃんの顔を見て、そして目をそらすと口を開く。
「……それは……クエストが忙しかったからです……授業に行けないほどに……」
ケイゴは、手をモジモジと両手で絡めていた。
「……そうでしたか……」
受付嬢ちゃんは肩を落とし、握りしめていた手をさらに強めた。
「…………」
「…………」
2人はまた黙る……
「それと……授業にはもう、行きません……」
ケイゴは、意を決した顔をして、受付嬢ちゃんの目を見た。
「えっ……」
受付嬢ちゃんは、目を見開きケイゴを見た。
「……受付も……別の人に頼みます……
お世話になりました……」
ケイゴは頭を下げると、立ち上がろうとした。
「ま、待ってください! それはどういう意味ですか? 訳がわかりません、何故受付にも来ないという事になるんですか?」
受付嬢ちゃんは、慌てるようにケイゴに聞く。
「……………」
ケイゴは立ち上がるのをやめ、座り直すと黙り、顔を下げる。
「……クエストは、もう終わりそうなんですよね? ギルマスから聞きました、ならまた授業にも出れるんじゃないんですか? 約束したじゃないですか、薬ソウネの選別できるようになりたいと……ケイゴさん……」
受付嬢ちゃんは、今にも、泣いてしまいそうなそんな声で、ケイゴに言う。
「……自……分は……貴方と……
……自分はもう、約束を破ってしまったから……会えません」
ケイゴは、目を合わせず下を向いたまま言う。
「それは、おかしいです……確かに約束は守ってません……ですが、別に毎日来て欲しいとお願いしたわけではありません……また来てくだされば別に、破った事にはなりません! それに、ケイゴさんが来れなかったのは、クエストを受けていた訳ですし。授業は、冒険者の皆様の植物の知識を少しでも得てもらって、無事、このギルドに帰ってきてもらえるようにしているだけで、強制ではないんですから……」
受付嬢ちゃんは、スカートの布地を握りしめて、震える声でケイゴに伝える。
「…………」
ケイゴは、下を向いたまま、黙っていた。
「……だから、別に気にしなくていいんですよ? ケイゴさん……」
受付嬢ちゃんは、ケイゴの顔を見ることで、何かを得ようとしたいが、顔を下げているので見れない。
「……すみません……自分が、良くないんです……だから……ごめんなさい……」
ケイゴは素早く立つと、応接室の扉を目指した。
「ケイゴさん! 何故なんですか! 私が何か、受付に来れなくなるような事をしてしまったんですか? 答えてください!」
受付嬢ちゃんは立ち上がると言う。
「……貴方は、悪くなんかないです……自分が、悪いんです……弱い自分が……
……さようなら……」
ケイゴは振り返らず、扉を開くと出て行く。
「待ってください! 話を…………
……ケイゴ……さん」
受付嬢ちゃんは、閉じられた扉を見て固まり、ソファにゆっくり座る。
「……どうして……」
受付嬢ちゃんは、そう呟き、ポケットから紙を取り出した。
「……私がいけないんですか?
……なんで……答えてくれないんですか……」
受付嬢ちゃんは、紙の右下の角を見る。
「……私と一緒に……頑張りましょう……」
受付嬢ちゃんは、右下の角を撫でる。
「……………」
受付嬢ちゃんの目から、一雫の涙が、頬を伝った。
「…………」
ケイゴは、ギルドを出て歩いていた。
「…………」
ケイゴはフードを深く被り、ポケットに手を入れて、下を見て歩く。
「……俺は……最低だな……」
ケイゴは、呟く。
「……貴方との約束も守れず……
ブレイクさんとの約束も破った……」
ケイゴは、剣に手を乗せると……
「……もう……貴方には迷惑をかけませんから……」
ケイゴは、前を睨みつけた。




