第玖歩 傷付き気づく
ケイゴが荒れている……
「…………」
ケイゴは、目を覚ました。
「…………いつも見る路地……」
ケイゴは、自分が仰向けで眠っている事に気づく。
「……腫れがなくなってる……」
ケイゴは自分の顔を触り、痛みがもうなくなっている事を再確認した。
「…………」
……回復魔法のおかげ……だな……
ケイゴは、辛そうな顔をした。
「でも気分は良い感じがする……昨日はあんなにむしゃくしゃしてたのに……不思議だぜ……」
ケイゴは、バックを引き寄せ起き上がると、背負った。
「……俺はこの気持ちを捨てなくてはならない……門番ちゃんは、レンさんの彼女で俺の事など何も思っていない……誰にでも優しい人なんだ……」
ケイゴは、目を瞑り深呼吸した。
「……勘違いをしてはならない、こんな俺に優しい人は、俺みたいな人に慣れているだけだと……」
ケイゴは、ゆっくり目を開ける。
「…………よし!」
ケイゴは立ち上がり、体についた砂をはらう。
「……勝手に傷ついて、苦しんで……門番ちゃんは悪くないんだから……」
顔の晴れぬままケイゴは、路地を出た。
「…………」
……最近俺、早寝早起きしてるよな……異世界来る前は、スマホをずっと弄ってなかなか寝なかったから、朝起きるのも遅刻しないギリギリだったのに……
遅刻はしてないよ? 上司に迷惑かかるから……怖いし……
「…………」
身体が気持ち悪い、ローブは、鼻水とかで汚れてるし、シャワーしてないからな……
「……臭いよな……最悪だな……シャワー浴びてくか……」
ケイゴは、ギルドを目指し歩いた。
「よう……」
「……おはようございます」
なんだろう……おっさんの元気がない……
ケイゴは、串焼きの屋台に寄った。
「…………5本だろ?」
「あ、はい……」
おっさんは、やる気無さそうに焼く……何かあったんだろうか……
「なぁ……」
串焼きのおっさんは、死んだ目で俺を見た。
「はい! 何でしょうか?」
「……料理教えろと言われたんだが……」
「……えっ?? 誰にですか?」
「娘に決まってんだろうが!」
おっさんは、怒鳴る。
「は、はい! すいません!」
……分かるか! 何となく察したけども……
「普段何もしないあの娘が……家事全部やるって言いやがった……こいつはどういう事だと思う?!」
おっさんは、こちらを目で殺す勢いで言う。
「…………親孝行ですかね?」
……好きな人が出来た可能性も大きいかな……好きな人か……
「だよな? そうだよな?」
おっさんの食い気味に聞く。
「え、ええ……でも、花嫁修行の可能性もあるのでは?」
「んぁ?」
おっさんが俺を睨んだ……やべ! 言わなきゃよかった……
「60年はえ〜んだ……昔は清楚系と言われててな……パパ〜てよくこの屋台に来ていたんだがよ……大きくなってから化粧も濃くなって……それでも可愛いんだが……それでな?……」
この後、30分くらい、俺はそのノエちゃんの事を聞かされた……
相当可愛いらしい……会いたくなったかも……
「……そんなノエは、誰にもやらん」
「……そ、そうですか」
……結局、結婚させたくないのね……あらまぁ……
「……ほら、5本な」
最初出会った時より、元気になったおっさんが串焼きを渡して来た。
「えっ? 2本食べたんで、3本じゃ……」
「……まぁ貰っとけ……娘に料理教えた方がいいんだろ?」
「……ええ、親孝行したい気持ちを無下にしちゃいけないと思いますし……」
「……だな……言っとくが、ノエは……デブが嫌いだからな? お前は絶対にノエは選ばんわけだ♪ 安心するなぁ? お前の太り加減にヨォ♪」
おっさんは、すごく上機嫌だ……そっすか、良かったですね……期待してねーし!
「……じゃあな! 頑張れや、何があったか知らんが」
串焼きのおっさんは、笑顔のまま言う。
「……えっ?」
「そんな顔してたら誰だってわかる。もっとシャキッとしろや、もしかして失恋か? そうなんだろ? ん?」
おっさんは、嬉しそうに聞く。
「…………」
ケイゴは、下を向く。
「……そうかい……
……俺の妻と出会ったのはここだ……」
おっさんは、語り始める。
「…………」
ケイゴは、おっさんの顔を見た。
「……三度告白して振られたよ……お前はどうだ?」
「……まだしてないです……」
……出来るはずもない……許されないんだから……
「……諦めたらダメだぜ? 告白して振られた次の日に、また来てよ?
あなたの串焼きは好き……なんて言いやがって……傷つくわチキショウ」
おっさんは、嬉しそうに言う。
「…………」
「……その後も何度か来たから、その度に告白して今は、ノエがいる……
……振られて諦めるより、告白をためらう方がいけねー……後悔するからな」
「……後悔……」
「……わかったら、消えな! 邪魔だ」
「はい、また来ます」
「……おう!」
おっさんは、ニシシと笑いながら答えた。
ケイゴは、屋台から離れ歩く。
「……告白か……振られてたな俺……」
ケイゴは、ギルドを目指す。
「…………」
……ギルドに着いた……けど、扉が開けねー
「……いやね? 久しぶりだから……」
……受付嬢ちゃんに合わせる顔ないしなぁ……えい!
ケイゴは、ギルドの扉を開け入った。
「…………」
ケイゴの入ってくる音で、受付嬢達がこちらを見てまた仕事に戻る。
「…………」
この瞬間がいつもドキッとする……
そして、横目で俺は、受付嬢ちゃんを見ると……
「…………」
受付嬢ちゃんは、こっちをガン見していた。
「……うぉ……」
……こっち見てるよな……あれは確実に……一応後ろ確認するか……
……ですよね〜扉入って直ぐですもんね〜
誰もいなかった。
「…………」
ケイゴは、ビクビクしながら受付嬢ちゃんの方に……は行かずに休憩所に座った。
「…………」
……ふ〜一旦落ち着こう……何だろう、俺から女性の脚をジッと見る事はあったけど、女性の方からガン見されるのは、なんかドキッ! とする……バグバクしてきたわ……
ケイゴが、受付嬢ちゃんの目を避けるように隣を見ると……漆黒鎧さんがこちらを見ていた。
「うおうぁぁ!!」
ケイゴは、びっくりしすぎて椅子から落ちる。
「おはよう、ケイゴ君、びっくりさせてしまってすまない」
漆黒鎧さんは、姿勢を変えずにケイゴに言う。
「……い、いや……大丈夫です……」
……ねぇ〜この人さ? ワザとやってね? 俺が気配気づけないの知っててやってるよね? これさ〜酷くね?
「……ふ〜む、ギルドに来たのはシャワー浴びにかな?」
何事も無かったかのように続ける漆黒鎧さん……少し声が嬉しそう……ぜってぇワザとだなこれは……
「……はい、そうです」
「話したい事があるから、先に綺麗にしてから来てくれるかい?」
「……はい、わかりました……」
……何故この人は、俺に話しかけてくるのか……よくわからん……変な人なんだろう……人の事言えんが……だって俺だぜ?
「タプはあるかい? 私がまた貸そうか?」
「い、いえ! あります、それと……この前は、ありがとうございました!」
ケイゴは、5銅タプを取り出して渡す。
「ふっ、いいよ別に、ちゃんと稼げてるようじゃないか」
「……はい、屋敷の掃除が今日で終わりそうですから」
「ほう……ふむ……そうか……」
漆黒鎧さんは、顎に手を持っていくと頷いていた。
「……? じゃあ行きます」
「あぁ……」
俺は、シャワー室を目指す……横目で受付嬢ちゃんを見るが、目が会う事はなかった。
「……ふ〜」
ケイゴはシャワーを浴び綺麗になった事で、気分も幾分楽になった。
「……先払っとかないとな、忘れるから……」
俺は、ギャルっぽいちゃんの受付に行く……近くに寄るのはダメだからな……
「……おはようっす!」
「え、あ、おはようございます」
俺が、受付によるといきなり挨拶された。
「どうしたんすか? こっちの受付に来るなんて」
ギャルっぽいちゃんは、受付嬢ちゃんの方をチラッと見てから、俺の目をジッと見て言う。
「え、ええと……近かったんで……」
……この人……男の人に襲われて辛い思いしたはずなのに……俺とこんな風に話せれるなんて……強がっているんだなぁ……
「そうっすか、じゃあ、何の用すか?」
「シャワー借りたので、5銅タプを……」
俺は、5銅タプを取り出して渡す。
「あーそう言う事っすね……確かに5銅タプっすね」
俺が机の上に置こうとしたら、手のひらを俺の手の下に入れられたので、タプを落として渡した。
「……じゃあ……ありがとうございました」
俺は、その場を去ろうとしたら……
「ちょっと待つっす……
あの時は、ありがとうございました」
ギャルっぽいちゃんは、俺を呼んで、振り返った後、続けて言うと、頭を下げた。
「……え? いや……そんな……自分じゃなくてブレイクさんがいたから……」
……あれは別に……俺じゃなくてブレイクさんが助けたんだし……
「そうっすけど……助けてくれようとしてくれましたから……一応っすよ♪」
ギャルっぽいちゃんは、頭をあげるとニィー♪ と笑った。
「……無事で良かったです……」
……一応……ね……ふっ……
「それと、先輩にも話しかけてやってください……ケイゴさん」
ギャルっぽいちゃんは笑みから、素の顔になると言う。
「……えっ……」
「心配してたっすから……それだけですけど……じゃあこれで終わりっすからお疲れっす」
「……あ、はい……」
ギャルっぽいちゃんは、そう言うと、席に座りなおし、仕事をし始めた。
「…………」
ケイゴは、数秒固まってから、その場を離れた。
「…………」
ケイゴは、無表情のまま漆黒鎧さんの所に行った。
「いきなりで悪いが、場所を移動しよう」
「……あ、はい」
俺が漆黒鎧さんの所に着くや否や、そう切り出してきた。
「……大事な話だからな、個室を借りたからそこで話す」
漆黒鎧さんは、席を立つと歩きながらそう言った。
「……そうですか……」
……何で? 俺に大事な話って……訳わかんないんだけど……なんか悪い事でもしたとか?
……もしかして……路上生活してるから?
「…………」
「…………」
その後は無言で、その個室に着いた。
「……じゃあ先に座って待っといてくれ」
「……あ、はい、わかりました」
漆黒鎧さんは、扉を開いてくれた状態で俺にそう言うので、俺は部屋に入り答えると扉から手を離し、漆黒鎧さんは、どこかに行ってしまった。
「……俺……捕まっちゃうとか?」
ケイゴは、応接室と思われる部屋のソファに座り呟いた。
コンコン
漆黒鎧さんが去って少し経った後、扉をノックする音が聞こえた。
「……どうぞ」
ケイゴは、背筋を伸ばし、自分の身が潔白である事を今更ながらに主張する様に座った。
「……失礼します」
すると、女性の……それも知っている声が聞こえ、その人が入って来た。
「っ!! ……」
ケイゴは、その人の顔を見た。
「……ケイゴさん、お久しぶりです……」
入って来た人物は……受付嬢ちゃんだった。




