逃げて……逃げる……
「……チッ! 逃げられた……」
ナイフ男は、クソデイニーゲが去っていった方を悔しそうな顔で言う。
「…うう……どいてくれよぉ〜、重い……」
「……すまん……」
デブが、ガタイ男の下で苦しそうに言い、ガタイ男は、デブの上から退いた。
「……お前ら何してんだよ! ただ太ってる奴に何倒されてるんだ?!」
「……いや、悪い……だが、流石にいきなりでさ……力は強くないが、重くてな……」
ガタイ男が、服についた砂を払いながら言う。
「俺は、潰されたんだが……いてぇ……」
デブが、腰を抑えながら立つ。
「……後ろにいるのが悪いんだろ?」
「……そ、そうだけどさ……」
ガタイ男は、ナイフ男とは態度が変わって言い、デブは、自分の非があるのを理解して、それ以上言えなかった。
「……お前らを置いていくわけにいかねーからな……まぁ、クソデイニーゲは、また会った時にやればいいしな♪」
ナイフ男は、ニヤッと笑う。
「…ああ、アイツ……バック置いてったな……」
ガタイ男は、ケイゴのバックを指差した。
「……デブ、中見てみろよ」
「おう!……どれどれ」
デブが、バックの中身を裏返し全部出す。
「……本当、物がすくねーよな……タプの入った袋に、歯ブラシと歯磨き粉、見たことない……これは、水筒かな? おっ? 綺麗な布がある……それに一枚紙があるなぁ……」
デブは、目に付いたものを手に取りそれをナイフ男に伝える。
「…その布は、売れそうだなぁ……水筒もだな、紙はいらねーな」
ナイフ男は、顎に手をやり言う。
「……何書いてあるんだ?」
ガタイ男が、デブの持つ紙を指差した。
「……え〜なになに……
冒険者の皆さん、薬ソウネや毒ソウネの見分け方が分からない方。私達受付嬢は、代わりに選別する事や手伝う事は出来ますが、その分タプを引かなくてはいけません……なので、大変な中、手に入れたその植物たちを、自分の力で選別できる様になって見ませんか?
私が様々な植物の事についてお教えします。
場所 ギルド内の解体室
時間 平日、朝7時〜7時30分・夜17時30分から18時までを予定しております。
植物の知識を得て、冒険者の皆様の危険が1つでも減らせれば幸いです。
無料ですので、安心して来てください。
だとよ……」
「……誰がいくかよそんなもん、テメェーがめんどくさいから、自分で出来るようになれって言ってるようなもんじゃねぇか」
ナイフ男は、鼻で笑う。
「…………
……俺は、ちょっと行きたいかも知れん……手取り足取り、教えてくれるかも知れんからな……」
ガタイ男は、小さく呟いた。
「………ん? なんか下に小さく書いてあるな……」
デブがそう呟いた時……
ガシャン…ガシャン…ガシャン
「……ん? 何か音がしねーか?」
ガタイ男は、耳を澄ました。
「……んぁ? 音?」
ナイフ男も耳を澄ました。
ガシャン…ガシャン………………
「……誰だ……」
音が止み、その音の正体が、路地の前に現れたのを見たナイフ男は、音の人物に声をかけた。
「…………」
ナイフ男達の数メートル先に立つ人物は……
錆びれた鎧を着込み、顔も錆びた兜で見えない人物だった、そして……
その錆び鎧の持っているのは……線が入り組んでいて、真ん中に5つの綺麗な石が埋め込まれた……
……大きな盾だった。
「……聞いてんだろうが! 答えろや!」
「…………」
錆び鎧は、何も答えず、盾の裏から真ん中くらいまで折れた剣を抜き出し、ナイフ男達にその先端を向けた。
「……そうかよ……それが答えか、お前ら! 武器を出せ」
「…あ、あぁ……」
「…わかったよ、アニキ」
ナイフ男は、ガタイ男とデブに言い、ガタイ男は、ポーチからグローブから爪の生えたような武器を両手にはめ、デブは、盾と剣を出した。
「…………」
ガシャン…ガシャン……
錆び鎧は、路地から離れ、道の真ん中に立った。
「……俺らを舐めてやがるな……路地で戦えばハンデはほぼ消えるが、道の真ん中にいくと言う事は、三体一になる事を理解した上での行動だからな、チッ!」
ナイフ男は、錆び鎧を睨み、路地を出て、錆び鎧を3人で囲った。
「…………」
ケイゴが走り去った方を見た後、錆び鎧は構えた。
「……はぁ……はぁ……んんぬぅ……はっ!」
ケイゴは、走りながらローブの袖で顔を拭う。
「…死に……たくない……」
ケイゴは、後ろを向き追われてないか確認した。
「……はぁはぁはぁ……来て……無いよな……」
ケイゴは、火照った顔で後ろ歩きする。
「……はぁはぁ……」
……来てなさそうだな……
ケイゴは、その場に止まる。
「…はぁ……はぁ……」
ケイゴは、肩で息をしながら、横を見る。
ケイゴが見た先は、月の光で照らされた、夜の川だった。
「…………」
ケイゴは、川の方に近づいていく。
「…………」
そして、座禅で座った。
川が流れている。
「……生きてる……」
ケイゴは、川を眺める。
「……俺は……生きてる……生き延びた、助かったんだ……
はは……俺頑張ったよ……スリちゃん……やってやったよ!」
ケイゴは、笑う。
「……あっ! そうだ、飲もう! 今使うべきだよなぁ♪」
ケイゴは、バックからスリちゃんからもらった回復瓶を取り出そうとした。
「……そうだった……置いて来ちゃったんだ……」
ケイゴは、笑んだ顔から、無表情になる。
「……取りに……いや……出来ない……」
ケイゴは、手を見ると……震えていた。
「……はぁはは♪……震えてやがる……ククク♪ 怖いなぁ……すごく怖いよ……痛いよ……
……頑張ったよね……俺……逃げぎっだよ? あいづらから……やってやったんだよ? スリちゃん……ごめん……また傷が増えちゃったよ……前の傷を治すためにくれたのに……アイツらに取られちゃったよ……本当にごめんね?」
ケイゴは、笑い震えながら、涙を流す。
「……こわいこわいこわいこわい……死にたくないよ! まだ死にたくない……俺は、約束したんだ……でも……破っちゃったんだ……でも……しょうがないじゃないか……そうしなきゃいけないんだもん……俺は、弱いんだから……授業行けなくてごめんなさい……」
ケイゴは、涙を拭きながら謝った。
「……貴方に色々と教えてもらえて……嬉しかった……ライトセルから狩場に行けるようになったし、薬ソウネの選別の大変さも、一緒にしてくれて……楽しかった……出来ればこの時間がずっと続いて欲しいと思ったりもしてたんです……貴方が見せる、微笑みが……凄く凄く……凄く可愛くて……見惚れてた……でも、選別のことに関しては、結構厳しくて、自分に分かるように指導してくれて……ありがたかった……」
ケイゴは、川を見ながら涙を流す。
「……うぅ……どうして……俺は弱いんだよ……なんでなんだよ! 俺は、カンストしてるのにぃ! なんでなんですか! 女神様! 俺は、魔王を倒して、みんなが守れると思ったんですよ……だから! 異世界に来たのに……
こんな事なら……あのまま死んどけばよかった……」
ケイゴは、自分の境遇を女神様に当たる。
「……何が脚フェチだよ! そんなもので何をしろって言うんだ! 俺は確かに……好きだけど……他の職業があったはずでしょ?! どうして……こんな、こんなクソな職業にしたんだよ……女神様」
ケイゴは、言っておきながら、女神様に当たることに後悔しているそんな気持ちが入り混じり、顔を伏せる。
「……俺は……生きて……何をすれば良いの?」
ケイゴは、自分に問う。
「……弱くても守れる盾士……弱かったら守れないじゃん……バカじゃん……」
ケイゴは、自分を笑う。
「…………生きても、貴方の約束は、果たせそうにありません……俺……このライトセルを守るなんておこがましい……クズで……デブスで……気持ち悪くて……みんな迷惑しているらしいです……デイニーゲってよくわかんないけど……邪魔者の事を指しているみたいですし……
……冒険者にもなれないのに……守るなんて……」
ケイゴは、全てを遮断するかのように丸くなり横に倒れた。
「……痛いし……苦しい……俺が死んだ方がみんな嬉しいんじゃないだろうか……
……あの場で死んだ方が……」
良いね♪ 良いね♪ 痛いか? 俺は、気持ちいぞ♪ 俺らは、今正義なんだよ! ここで住み着くデイニーゲを成敗してやってんだからよ! ククク♪
「……やっぱり……俺にこの世界は……辛すぎるよ……」
「……そんな事ないわ、私と約束したでしょ?
……生きて帰って来てって……また忘れたの?」
「っ!? な、その声……っ……」
ケイゴは、後ろから聞こえた優しくて、美しい声に飛び起き、ゆっくりと振り向いた。
「……私を信じさせてくれるんでしょ?
……ね? ケイゴ」
「…ぁぁ……」
ケイゴが振り向いて見たその人物は……
優しげに微笑む……門番ちゃんだった。
あぁ……門番ちゃんにまた出会えたケイゴ……
……どうなってくのかが気になる! 願望が溢れ出てしまう!




