路地の戦い再び……
「……お前、何だ? ここに最近住み着いてる奴だったのかよ……」
ナイフ男は、呆れ顔で言う。
「……あ〜噂の奴がこいつだったのか……気持ち悪い男が住み着いて迷惑してるってな」
ガタイ男が、馬鹿にした顔で言う。
「……デイニーゲかよ……泥人形のように、稼げねー弱くて家なしの日々を過ごす奴……ダセ〜」
デブが手で、はらうように言う。
「…………」
……俺……殺されるの? そんなのって……マジかよ……いやだよ……
ケイゴは、この3人組との路地で殺されかけた事を思い出し、怯えた表情をする。
「んぁ? 何そんな怯えた顔してんだよ♪ これから何が起こるか、びびってるのか? ククク♪」
ナイフ男は、ニヤケながらケイゴに近づく。
「……げへへ♪ 本当性格悪いよなぁ♪ 俺は、1発でいいぜ?」
ガタイ男は、右の拳を左の手の平にパチッパチとぶつけてケイゴを睨みながら笑う。
「……俺は、満足するまでやるぜ♪ 殺さなきゃ、戦闘の花嫁に狙われる事もないから。 えへへ♪」
デブは、ジャブみたいに、空中をパンチしながら言う。
「……まぁ待てや……コイツのせいで、俺は前歯が欠けたんだ……俺からさせろ……」
ナイフ男は、ケイゴから見て右の前歯が無くなっていた。
「……み、見逃してください……タプだったら、ちゃんと出しますから!」
ケイゴは、バックを前に起き座った状態から後ずさる。
「……あぁ? タプをもらうのは当然だろ? お前のせいで俺は、こんな風にされたんだからよ? 殺しはしないさ……俺はそこまで、メッダアヤじゃねぇからな……
……瀕死で許してやるよ」
ナイフ男は、ニヤッとした。
「……そんな……誰か……」
ケイゴは、恐怖で声が出ない。
……嫌だぁ! 俺はまだ死にたくない! 俺が何したって言うんだよ! お前らが、犯罪しようとしてたのがいけないんだろぉーが! 何で俺ばっかり!……こわいよぉ……
「……抑えとけ……」
ナイフ男は、ガタイ男に言う。
「おう!」
ガタイ男は、ケイゴを捕まえ立たせると後ろから抑える。
「…嫌だ! やめて下さい! 俺は死にたくない!」
ケイゴは、この前のような、ギャルっぽいちゃんが、人質に捕らえられてるわけではなく、自分に直に標的が変わっている上に、ナイフ男には、ボコボコに殴られた事で、気持ちがとにかく恐怖でいっぱいだった。
「……キモい顔が尚更キモいぞ? ククク♪
だからって、手加減するつもりわないが、な!!」
ナイフ男のパンチが、ケイゴの右頬を捕らえた。
「やめがぁ! ……………うぅ……」
いだぃよ! ヤダよ! こんな事やめてくれよ……
「まだまだぁ♪ オラ! ふん! どうだ! 俺はこんなもんじゃ気がすまねぇーぞ!」
ナイフ男は、殴る殴るケイゴを殴りまくる。
「良いぞ! えへへ♪ 次は俺だぜ?」
「……ちげーよ、俺だよ、デブは最後だ」
「また最後かよ……」
デブとガタイ男が、ケイゴの殴られる姿を見て笑う。
「……うっ! いがっ! い! 」
ケイゴは、涙を流し、鼻血を垂らす。
……いたい…痛い…いたい…死にたくない……よぉ……
「……良いね♪ 良いね♪ 痛いか? 俺は、気持ちいぞ♪ 俺らは、今正義なんだよ! ここで住み着くデイニーゲを成敗してやってんだからよ! ククク♪
おっと……クソデイニーゲ、このヒカルンを消しやがれ」
ナイフ男は、ケイゴを笑いながら殴っていたが、急にやめると、ケイゴの近くを、震えるように漂っていたシロフワさんを指差し言う。
「…………うぅ……ジロ……ぶわざん……」
ケイゴは、涙と血で汚れた顔をゆっくり上げると、シロフワさんを呼ぶ。
シロフワさんはプルプルと震えていたが、ゆっくりと、その姿を消した。
「……あぁ? 何言ってんだ? まぁいい……オメーのヒカルンのせいでもあるからなぁ、ブレイクが来たのは……これでもう、助けは来ねーぜ? ククク♪」
「……そうだぜ? げへへ♪」
「目がめっちゃ痛かった……思い出したらイラついて来やがった」
ガタイ男が笑い、デブは、シロフワさんの閃光で転げ回った事を思い出し、ブレイクに回し蹴りされた事がフラッシュバックしたようでケイゴを睨んだ。
「…………」
……シロフワさんが封じられ、俺にはもう、ここを切り抜けられる事は……出来ない……
……こんな所で……こんな奴らに……俺は……
……まだ……人が多そうなので……薬ソウネの見分け方をお教えしますが……聞いて行きますか?……ケイゴさん
……あ、はい……よろしくお願いします……先生
……分かりました……私の話をしっかり聞くようにしてください……ケイゴさん
「……自分は、まだ……薬ソウネ選別が出来てない……」
「……あっ? 何だ急に」
……これありがとう……大切に使わせてもらうよ……勉強頑張って
……はい! ロデーブさんも頑張ってください!
「……自分は、まだ、回復瓶を使えてない……」
「……またおかしくなったみたいだな、コイツ」
……門番である私は、ライトセルに住む皆んなを守って……冒険者になるケイゴは……
……私を含めてライトセルを守ってほしいわ
……え?
……でも……あの時の約束破ったら許さないから……必ず帰ってくるって……
……あなたを……信じさせて? ね?
「……自分は、まだ、死にたくない……」
「……だからぁ〜! 殺さねーって言ってんだろうが! オメェ〜は、頭にノッチョでも生えてんじゃねーか!」
ナイフ男は、顔を下げてぐちぐちと言っているケイゴのみぞおちを殴る。
「……うぐぇ……うぅ……」
……俺は、まだ……まだまだまだ! 死にたくないんだ! ……約束したんだ……
……薬ソウネを選別できるようにしてもらうって! ……頑張るって! ……生きるって!
「……自分は……俺は……」
……私は、最強の盾士を目指していた……ずっと昔に……ケイゴ、貴方はどんな盾士になりたい?
……大切な人達を守れる盾士に……それだけです
ケイゴは、涙と鼻水と鼻血と口から出た血で、ぐちゃぐちゃな顔を上げた。
「……俺は! 盾士になるんだぁーーーー!!」
ケイゴは、己の中の、様々な思いをぶつけるかのように、ナイフ男を睨みながら叫んだ。
「なッ!?」
ナイフ男が、ケイゴの豹変に驚いた瞬間……
「<| ジュークル |>!!」
ケイゴは、そう叫んだ途端に、後ろにぶっ飛ぶ。
「な、ぐあぁ〜〜!!」
ガタイ男と共にケイゴは後ろに飛ぶ……ケイゴは、体重90キロ後半である上に。いきなりの事なので、ガタイ男は、全く踏ん張る事ができず、ケイゴを抑えていた手を離す。
「……え? ぐはぁ〜〜!! ブベッ!」
後ろらへんにいた、デブもその瞬間に巻き込まれ、ガタイ男の下敷きになってしまった。
「……ウッ!……うぅ……」
ケイゴは、ガタイ男に手を離されたが、着地などできるはずもなく、地面に背中から落ちた。
「……チッ! めんどくせぇな!」
ナイフ男は、舌打ちをした。
「……俺は……まだ、恩返し出来てない……こんな所で……死にたくない……」
ケイゴは、体の痛みを感じながら立つ。
「……パーティを断られたって……何も変わらないじゃないか……俺は……
笑って欲しかっただけなんだから!
[ パラパラ ]!!」
[ パラパラ ]
……そ、その魔法は!
……麻痺させる魔法よ? 魔法はこう使うの……分かった?♪
ケイゴは、パラ魔ちゃんがしていたポーズを杖なしバージョンで取り、言うと、手の平から、黄色い魔法陣が浮かんだ。
「……何!」
黄色い魔法陣から、黄色い雷みたいなのが飛び出し、ナイフ男の方に飛んで行った。
ナイフ男は、それを右に飛び避ける。
「……ジュークルは、体当たりではなく……
……移動のために使うのが……盾士!
<| ジュークル |>ーーー!!」
ケイゴは、ナイフ男とは逆の方向に、ジョークルを使い、路地を抜けた。
「……待ちやがれ! クソデイニーゲが!」
ナイフ男は、叫ぶ。
ケイゴが盾師匠をパーティに誘う前の出来事。
「……ケイゴは、盾士の戦い方ってどんな感じだと思う?」
盾師匠は、空中に浮遊して、ケイゴを上から盾の上で正座して見ていた。
「……盾士の戦い方ですか?」
「そうよ」
「…………」
……うーむ……盾士って言っているくらいだから、盾を持つのは当たり前じゃん? で、敵の攻撃を防いで、片手に持った剣でザキッ!って感じでしょ?
「……攻撃を盾で防いで、片手剣で敵を攻撃するみたいな感じだと思います……」
俺は、女神のベールで汗を拭く……ローブに入ってた手拭いのことね?
……メギュイ……そう思わん? デフィ♪
「……そうね、それが盾士の戦い方よね? でも、盾士には優れたスキルがあってそれを使う事で、戦い方は全然変わってくるのよ?」
盾師匠は、なんかウキウキしてるような感じの声だった。
「……そ、そうなんですか? あっ! あの透明になったり、音を消したりする奴、すごいですよね」
あれが使いこなせれば…………デフィ♪
「……なんか変な事、考えてない? 確かに凄いけど、それなりにダメな所があるからね?」
(……ダメな部分を言うと、あの時の言い訳が嘘と気づかれちゃうから言えないけど……)
「……あ、そうなんですか……」
……やっぱりそう簡単にいかんか……え? 何が? いや? 別に? 深い意味は無いよ?
……本当だよ?
「……何そんな残念そうなのよ……まぁいいわ、その2つよりも使えて、それに、格段に強くなれるスキルよ」
盾師匠は、呆れたように言い、空中からゆっくり降りてきて、盾を持つ。
「……格段に強く……」
……防御アップみたいなものかな?
「……盾士が最初に覚えるスキルで……
ジュークル……体当たりするスキルよ」
盾師匠は、盾をポーチにしまい、人差し指を立て言う。
「……ジュークル……」
……このスキルの名は……知っている……
「……このスキルは、ただの体当たりじゃないの……極めれば、最強になれるスキルよ」
盾師匠は、俺をジッと見た。
「…………そうですか……」
……デブが使ってきた奴だ……俺もデブだが……確かに、死ぬかと思った……
「……これを体当たりとして使っている人は、盾士として三流ね」
「…体当たりなのに三流ですか?」
……体当たりのスキルなんだから、別に良くないのか?
「ええ、このスキルは移動用に使うのよ? 盾士は鎧が重いから、確実に遅くなるから、そんな時は、このスキルを使えばいいの」
「……確かに……速かったです……」
……俺はもろに食らったから見たもん……デブの出せる速さじゃなかった……
「でしょ? これを使いこなせれば、盾士の弱点の1つが減るわ」
「……なるほど……」
弱点がなくなるのは凄いよな……俺も使えるようになるのかな?……でも俺……盾師匠と同じ、上級頑盾士なんだよなぁ……おかしくね?
「……まぁケイゴはまず、職業を盾士に変えてきなさい? それからよ……じゃあ早く終わらせちゃって」
盾師匠は、ケイゴの持つ雑巾を指差して言う。
「……は、はい!」
……盾師匠が話しかけてくれるだけで……力が湧いてくるぜ! でも……毎回手が止まるんだよね……話す為にしょうがないからな……
……だって……俺だぜ?
「……俺がなりたい盾士は……
……貴方のような人を守れる盾士……です」
ケイゴは、走る……逃げる為に、そして……
……弱くても守ると、決めたから
ケイゴが……成長してる……すげぇ…………




