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10年越しのブルース

作者: 噺 角蔵

すごい。単純にそう思った。

このバンド、10年前はただの売れないヴィジュアル系だったんだけどな。

目の前のテレビに映る彼等は今ではスーパースター。彼等はもう若くはない。顔だけではやっていけないと悟ったのだろう。音楽の方向性を、いつの間にか変えていた。いつから売れ始めたのかはわからない。けど、苦労したのだろう、今では顔ではなく、曲で売れている。


10年前、なにやっていたっけ?

自分の10年をふと振り返る。なにもやっていない。その日暮らしのアルバイト、恋愛。友達。パーティー、ん? あとは? そんなものしか浮かんでこない。

ああそうか。自分は10年も何もしていなかったのだ。マイペースでゆっくり、なんて思ってたから、いつの間にか周りだけが大人になっていた。私一人だけ子供。

正社員なんてやったことないから、正社員をやってきた人達の普通がわからない。

圧倒的に少ない経験。私ももう若くはない。今のままではいけないと感じたのはいつからだろうか?そう感じつつ、私は何かしてきただろうか。

チキンラーメンを啜るこの口で、一体なにを生み出してきたのだろう。


ずぼらだから結婚も出来ていない。ずぼらだから家事なんて殆ど出来ないに等しい。料理なんて、まともにできるの何かあったっけ?


かと言え、今更勉強してもな。経験は買えない。きっと昼の世界に行ってももう通用しないだろう。


嫌に黒光りする時計を見つめる。10年間、何もしてこなかった。あ、やばい、そろそろ同伴の時間。


この10年で変わったこと。ほうれい線が浮いてきたとか、肌にハリがなくなったとか、そんなどうでもいい外見のことしかない。あ、でも、化粧するのは早くて上手くなったかな。

だからと言って、その腕で買って行けるほどではない。


老いる。確実に老いていく。いや、むしろ老いてきている。その中で私は何を財産に出来るだろう。

そのうち使い物にならなくなる外見。焦る。焦りながら化粧を始める。


未来に繋がる何かを始めたいのに、何も思いつかない。そして今日も、どぎつい主張をしたバッグをお供に、汚い部屋をそのままにして、私はそっと扉を閉めた。

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