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愛し始めた人を奪われる。

副団長ではないけど、ここで切るのは、かなり胃が痛かったです。


主人公は、ヒロインに攻撃魔法の一発くらい撃っても、バチは当たらないと思う。


ろであすには、G氏みたいな触角が生えてるかもしれないと思う今日この頃です。

 愛されてると自覚してしまった時、どういう顔をするべきなのか――。

 正解……はあるのかもしれないけど、私にはわからない。

 なので、とりあえず逃げてみる。




「メルディに、プレゼントだよ。可愛がってあげてね」

 ニコニコとしたミハエルがそう言って、思い切り良く開けたのは、プレゼントの箱ではなく、玄関の扉だ。

 勢い良く開いた扉の先、相変わらず驚いた気配が欠片もない、良く見知った無表情な美女が立っている。

 その冷たく見える瞳が、私を見て柔らかい光を宿し、引き結ばれていた唇が美しく綻ぶ。

「メルディ様、遅くなりました」

 お手本のように頭を下げるのは、ロディアス様によって引き離された、大好きで家族のように大切な侍女で。

「サヤ!」

 侍女の名前を呼び、私はドレスの裾も気にせず、駆け出す。

 そのままの勢いで抱き着いた私を、年上の侍女――サヤは少しだけ微笑んで受け止めてくれた。

「メルディ様、はしたないです」

 私を諌める声は冷ややかだけど、長い付き合いの私にはわかる。サヤも喜んでいてくれる事に。




 サヤは文字通り私が拾った。

 お兄様と散歩をしていた時、奴隷商人に捨てられていたのが、ガリガリに薄汚れたサヤだった。

 今にも死んでしまいそうなサヤ。でも、サヤの目は生きたいと叫んでいて、私はその強さと美しさに一目惚れしてしまった。

 お兄様に我が儘を言って、奴隷商人からサヤを……と言うか、お兄様が一睨みしたら、サヤを放り出して奴隷商人は逃げてしまった。

 お兄様の目力パネェ、とか思ったけど、今回はちょうど良かった。

 それにしても、こんなに優しくて、格好いいお兄様を、どうして皆さん怖がるのか、この世界の謎の一つだ。

 それはともかく、こうして私はサヤを連れて帰り、毎日世話を焼いた。

 持っていったご飯をひっくり返されたり、物を投げられたりしたけど、私には気にならない。

 サヤは表情がわかりにくいだけで、やった後に後悔してるのが丸わかりだし、心配してくれてるのが見え見えで、私はクスクスと笑いながら後片付けをする。

 産まれた瞬間から、強面で表情筋が死滅したようなお兄様と付き合ってる私を舐めないで欲しい。

 徐々に徐々に、サヤは警戒を解いてくれて、私は名前がなかったサヤに、サヤという名前をあげた。

 漢字にするなら小さい夜、かな。

 初対面の時に見た、生きたいと叫ぶ瞳が、星の浮かんだ小さな夜空みたいだったから。

 それから、サヤは私専属の侍女になり、私達はずっと一緒だった。

 ロディアス様の屋敷でも、もちろん一緒だったし、暗殺者の相手とか、内通者の情報収集とかしてくれていた。

 お兄様への報告とかもしてくれていた。

 これをしないと、お兄様が、ロディアス様の屋敷を壊してしまうのだ。

 一度、定期的に書いていた手紙をうっかり忘れていたら、明け方、目を血走らせたお兄様が駆け込んできて、ロディアス様の屋敷の門が破壊された。素手で。

 お兄様ったら、お茶目なんだから。

 私を抱き締めるお兄様を見て、警備の兵が何故か泡を吹いていた。

 兄妹で抱き合うのは、はしたなかったかもしれない。

 お兄様が壊した門は、騎士団の皆さんが直してくれた。

 副団長さんが、何故か疲れていて、煤けていた。

 それでも、副団長さんは美人さんだ。憂い顔も素敵なんだよね。



「メルディ様」



 思い出に浸っていたら、サヤに呼び戻される。

 付き合いが長いので、私への対応も慣れたものだ。

 私達はずっと一緒だったんだけど、私の事でロディアス様を諌めようとした使用人を庇った時、罰としてサヤと引き離された。

 ロディアス様が、自分の家の使用人に悪影響だと、言いがかりみたいな事を言ったのだ。

「あのゴミ……、いえ、害ちゅ……、ではなく、ロディアス様との婚約破棄、おめでとうございます」

 おかげで、サヤの言い間違いにちょっと悪意があるかもしれない。

 私ですら、暗殺者を倒す時、手を滑らせて一発くらい攻撃魔法ぶちこんでも許されないかな、とか考えたぐらいだし。

 思わずそんな事を考えちゃうくらい、私とサヤは仲良しだったから。

 引き離された夜は、内緒だけど泣いてしまった。

 次の日、ミハエルにはバレてたみたいだけど、ロディアス様は気付かなかった。

「メルディ様」

 また思考が飛んでいたようで、サヤに引き戻された。

 うん、さすが私の扱いに慣れてる。

 慣れ親しんだサヤからの扱いに、私が嬉しくなってクスクスと笑っていると、何だか妙に居心地が悪い視線を感じる。

 柔らかく甘く、私を慈しむような、そんな視線だ。

 今まで、私にそんな視線を向けてきた人はいない。 お兄様やサヤも、確かに慈しむような目で私を見守ってくれてるけど、それより重く。

 砂糖をザラリとまぶしたように甘い。

 視線が甘いって何だ、って感じだけど、本当に甘く感じる。

 視線の主はわかっている。

 だから、振り返るのをためらってしまう。

 そんな私の心の動きがわかるのか、サヤに無理矢理後ろを振り向かされる。

「ミハエル様が、私を匿っていてくださったんです」

「だって、メルディの大好きな人だからね。泣いちゃうくらいに」

 やっぱりバレてたのか。

 頬が赤くなるのを感じながら、最後の抵抗で伏せていた顔をゆっくりと上げる。

 予想通り、予想以上に優しい顔で笑うミハエルが、そこにはいた。

 まるで、その顔は、私を心から愛しいと……。

 そこで、はた、と気付く。

 気付いたら、問わずにはいられなかった。

「ねぇ、ミハは、私の事をどう思ってるの……?」




 一瞬、虚をつかれたような顔をしたミハエルは、ニコリと蕩けるような笑顔を浮かべる。

 甘い笑顔に、背中がゾワゾワする。



「もちろん――愛してるよ?



 食べちゃいたいくらいに、ね?」




 身の危険を感じた、と言うか、シンプルに恥ずかしくなり、私は思わずその場から走って逃げ出す。

 ミハエルは驚いて固まったが、慣れているサヤはピタリと私の後ろをついてくる。

 自分の部屋へひとまず逃げ込んでから、私はお礼を言い忘れた事に気付く。

「ど、どうしよう、サヤ」

「私が説明してきますから、メルディ様は少し落ち着いてください」

 ワタワタとしていたら、慣れきっているサヤからハグされ、ポンポンと背中を叩かれる。

「今まで気づいていなかったのが、驚きです。さすが、メルディ様ですね」

 無表情でそんな事を感心しながら、サヤは部屋を出て行く。

 フォローに行ってくれたんだろう、逃げてきちゃったし……。




「ミハ、私の事、愛してるって……」

 今さらながら、恥ずかしさが込み上げ、私はお気に入りのソファの上で、ジタバタと身悶えする。

 ミハエルの事は嫌いじゃないけど、正直、ロディアス様との事があって、あまり考えようとしてなかったから……。

 そ、そうだよね。

 いくらチャラ男でも、好きじゃない相手に、抱き締めたり、その、キスしたり、しないよね。

 婚約してくれたのは、同情混じりの友情だと思ってたし、どうしよう。

 何か一気にドキドキしてきた。




 私は、ミハエルをどう思っている?




 目を閉じた私は、自分へ問いかける。

 ロディアス様を愛していたのは、嘘じゃない。でも、ずっと画面越しに想い続けたそれは、もう男女の愛では無かったのかもしれない。

 だから、ヒロインであるリンカさんに、ヤキモチを妬いたりしなかった。

 だけど、もし今、リンカさんが、ミハエルを奪おうとしたら?



「それは、嫌……」



 口にしてハッキリする。

 やっと気が付いた、シンプルな私の本心だった。




 私だって、好きじゃない相手に抱き締められたりしたくないし、キスなんか、させない。



「あの人を、愛してる……」



 さすがに口に出すのは恥ずかしいので、濁してしまった。

 ミハエルが来たら、きちんと言おう。

 まずは、サヤを連れてきてくれて、ありがとう、から。




 そう思って待っていたのに、ミハエルはいくら待っても、部屋には来てくれなかった。




――次の日、気分転換にサヤと街へ出かけた私が見たのは、リンカさんと歩くミハエルの姿だった。




 愛されていると思ったのは、私の勘違いだったのかもしれない。



 私はやっぱり、愛している人に嫌われる運命らしい。


モダモダな所で終わってすみません。

キリがいいので、ここで切ります。そして、しばらく更新ストップします。



そして、ろであすをG氏と同類にし過ぎたのか、G氏に失礼だと感想をいただいた後、G氏に襲われました。ガクブルです。

虫は好きですが、ろであす……ではなく、G氏だけは苦手です。



次回更新未定ですが、なるべく早くリターンしますので。

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