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愛し愛されてる人と甘い日を。

バレンタインデーなんで、一応。

いつも通り、もだもだして、結局イチャイチャしてます。

少々肌色表現と表現的に妖しくはありますが、R15なんで、その程度です。

久しぶり過ぎてすみません。

「メルディ様、今年もそろそろですが、今年はどうなさいますか?」

 サヤの問いかけに、私は暦を確認して、少しだけ悩む。

「去年通り……って訳にはいかないよね?」

「バレてベッドから出られたくなってもいいなら、それでも構いませんが?」

 義理……はあったけど、まぁ向こうも欲しくないだろうし、今年は無しでいいか。いつも捨ててただろうし。

 それにサヤの言葉にも一理ある。ミハエルはちょっとだけヤキモチ妬きだから。

 そんな事を考えつつ、私は小さい頃から恒例になっている行事の準備に心踊らせる。

 去年とは違い、想い想われる相手へ贈るんだから、気合入れないと。

「よし、頑張るぞー」

 口に出して宣言した私は、サヤの突っ込みが聞こえてはいなかった。



「メルディ様、ちゃんとミハエル様に説明してはあるんですよね?」



 後で聞いたら、そう言ってくれていたらしいけど、その時の私は聞いてはいなかった。

 で、ついに当日を迎えて、私はミハエルを待ってるけど、なかなか帰って来ない。

 ちなみにお兄様とお姉様はさっきまでいらしたのだけど、お姉様に引きずられて帰っていってしまった。



「今年もメルディの俺への気持ち(愛)は最高に美味いな。…………どうしても、騎士団の奴らにも食わせなければ駄目か?」

 私のあげたチョコをそう絶賛しながらバリバリと噛み砕いていたお兄様は、私の渡した紙袋をチラリと見てシュンとして問うてくる。

 普段の魔王なお兄様しか知らない人が見たら、ギャップで驚くかも知れない。

「あら、心臓発作を起こした方もいらしたのよ?」

 私の考えは駄々漏れたらしく、お姉様がうふふふと笑いながら教えてくれた。

「あと、このチョコには、メルディのわたくしへと愛も含まれてますことよ?」

「いや、俺への愛の方が重い筈だ」

 そして、いつもの仲睦まじい痴話喧嘩を始める。

 本気ではないのはわかっているので、私もクスクス笑いながら、

「もちろん、二人への愛を均等に入れてます。いつもありがとうございます、お兄様、お姉様、大好きです」

と、笑顔で告げる。ついでに、

「皆様にもいつもお世話になってますから、差し上げて欲しいです、お兄様」

 自分でやってて気持ち悪いけど、上目遣いでお願いしておく。身長差で勝手に上目遣いになるんだけどね。

「やっぱり、誰にも渡したくない」

「わたくし達のメルディですものね」

 仲良く同じような冗談を言って、私をぎゅうぎゅう両側から抱き締めてくれる二人が、私は大好きだ。



「お二方共、完全に本気ですから」



 サヤが遠くで、ため息混じりに呟いていたようだけど、私の耳には聞こえなかった。

 結局、ミハエルが帰って来たのは、日付が変わる間際だった。

 サヤから連絡を受けた私は、用意してあった物を手に、玄関へと急ぐ。

 去年までは、決して結ばれない相手へ贈り続けた物を、今年は愛する相手へ贈るために。

「ミハエル、お帰りなさい」

 夜着姿で現れた私に、ミハエルは優しく困ったような笑顔を浮かべている。

「メルディ、寝てて良かったのに……」

「でも、どうしても、渡したい物が…………」

 あって、までは言わせてもらえなかった。

 私が差し出した紙包みを見た瞬間、ミハエルの顔からスッと表情が消え、痛いほどの力で手首を掴まれる。

「な、なに、ミハエル?」

 訳もわからず私が問いかけても答えてもらえず、そのまま抱き上げられ、運ばれていく。

「ねぇ、ミハエル、あげたい物が…………」

「聞きたくない」

 切り捨てるような口調は冷ややかで、私はミハエルが怒っている事に気付く。

 途中、仕事中のサヤとすれ違ったら、説明してなかったんですね? と小声で言われて、生暖かい眼差しで見送られてしまった。

 ミハエルが怒っている理由を必死に考えていたら、気付いた時にはベッドの上でミハエルに押し倒されていた。

「み、ミハ、あの、話を聞いて……」

「黙って。メルディは、俺の事だけ考えてればいい」

 アイツの事なんか忘れさせてやる。

 はい? と思ったが、すぐに言葉の意味を問い質す余裕はなくなり、私はチョコを食べてもらう前に、ミハエルに美味しく頂かれる事になった。

[視点変更]

 ベッドの中で自己嫌悪から、はぁ、とため息を吐いた俺は、隣で眠っているメルディを見つめる。

 普通ならメイドを呼んで色々してもらうんだけど、俺はなるべくメルディを俺以外に触らせたくないから、基本的には自分で色々後始末をしている。

 湯上がりのメルディはいい匂いがして、抱き締めるといつもよりあたたかい。

 そのまま、メルディを抱き締めて、トクントクンと聞こえてくるメルディの心音を聞いていると、メルディが寝言で何かを喋っている事に気付く。

「わたした、かった………」

「っ…………!」

 聞かなければ良かったと後悔するが、記憶は消えてはくれず、俺はベッドサイドに置かれた紙包みを忌々しい思いで睨み付ける。

 この紙包みには見覚えがあった。嫌という程に。

 俺がまだメルディに触れられなかった頃、毎年これぐらいの時期にメルディがアイツへ贈っていたから。

 私が渡すと捨てられちゃうから、とメルディははにかんだ可愛らしい笑顔で、俺に紙包みを託してきた。

 毎年、毎年。

 俺は知らないが、メルディとアイツの間の記念日なんだろう。

 メルディへの好意を自覚してからは、目の前で食ってやろうかと思った事もあったけど、アイツが受け取った聞いて嬉しそうに笑うメルディを思い、出来なかった。

 今年は──メルディを手に入れた今年は見ないで済むと思った忌々しい紙包みを、去年までより愛らしい幸せそうな笑顔でメルディが差し出してきた瞬間、何処かでブチッと理性の糸が切れる音がした。

 そして、現在へ至る訳だが……。

「捨ててもいいよな?」

 ベッドから起き上がり、寝ているメルディへ問いかけても答えはなく、代わりに滑らかな頬を涙が伝うのを見てしまい、俺の心は暗い嫉妬で染まって……。

「……失礼します」

 どす黒い感情に支配されかかった俺は、普通に部屋の中にいたサヤから声をかけられ、一瞬反応出来なかった。

「ノッ「ノックしましたが、聞こえていなかったようですね」……あぁ」

 相変わらずメルディ命のメイドは、メルディ以外には無表情で無愛想だ。

 サヤは泣き過ぎて腫れたメルディの寝顔を濡れタオルで冷やしながら、俺には一瞥もくれない。

「捨てられるのですか?」

 不意に話しかけられ、俺は弾かれたようにサヤへ視線を移す。

 だが、サヤは俺を見てはおらず、ただ愛しげにメルディを見つめている。

 けれど、今の台詞は俺へのものだろう。そう思い、口を開く。

「別にいいだろ? アイツへの贈り物なんて……」

 そこまで言った瞬間、サヤから深々とため息を吐かれた。

「メルディ様に説明されませんでしたか?」

「いや……あ、何か言おうとはしてたけど、言い訳なんて、聞きたくなくて……」

 思い出してみれば、行為の最中、泣きながらメルディは何かを言おうとしていたが、俺が最後まで言わせなかった。

 はぁ、とまたため息を吐き、サヤは優しくメルディの頭を撫でながら、独り言のように言葉を紡ぐ。

「メルディ様が言い出したのです。一年に一回、大切な人達へお菓子を贈らないか、と。それで、我が屋敷では日を決めて、毎年お菓子を贈りあっております。──その紙包みの行き先は、あなたがよくご存知だと思いますが?」

 それでも捨てるなら覚悟してください、と殺気の籠った声で付け足したサヤは、レモン水の入った水差しを置いて静かに部屋を出ていった。

「期待しちゃ駄目だ……」

 後ろ向きな俺は、思わずそう口に出しながら、震える手で綺麗に包装されている紙包みを開いていく。

 中身は甘い匂いのする白い箱、それとヒラヒラと舞い落ちる物がある。

 それは一枚のメッセージカードだ。

 ベッドから立ち上がり、カードを拾い上げて、綴られた文字を追った俺は、深い後悔から、ぐ、と喉を鳴らす。



『ミハエルへ

 文字にするのは気恥ずかしいけれど、私、ミハエルに会えて良かった。

 女の子らしくなくて、可愛いげもない私だけど、ミハエルを好きな気持ちは誰にも負けない、かな。

 まだ自信満々には言えないけど、


 愛してる、ミハ。


 メルディ』



 もちろん文字は見慣れたメルディのもので。

 また、ぐ、と喉が鳴り、涙で視界が歪んで、文字が見えなくなる。

 手で口を覆い、嗚咽を必死に堪えるが、涙は壊れたように流れ続ける。

 歓喜と、後悔と、嫌われていたらという不安が混ざり合い、もう頭の中はグチャグチャだ。


「あやまら、ないと……」


 それだけがぐるぐると頭の中を回る。

 どれだけ泣いていただろう。

 ベッドから衣擦れの音がして、

「ど、したの? だれかに、いじめられた?」

と、メルディの掠れた声が聞こえた。

 駆け寄ってメルディを抱き締めると、あやすようにポンポンと背中を叩かれる。

「ごめん、メルディ……。俺、勘違いして……」

「ふふ、あやまるのはわたし。せつめい、わすれてたから」

「痛いとか、辛いとかない? 優しく出来なかったから……」

「だいじょうぶ。わたし、じょうぶだし、その、きもちよかった、から……」

 ポンポンと叩く手が、恥ずかしさからバシバシに変わってちょっと背中が痛いが、メルディの言葉の嬉しさが痛みを上回った。

「これ、ありがとう。嬉しかった。……来年は俺からも贈るから」

「うん。たのしみにしてるね」

 うふふ、と幸せそうな笑顔を浮かべ頷いたメルディは、濡れた俺の頬を優しく撫でてくれ……。

 メルディは、しばらくするとまた眠ってしまったけど、先ほどまでとは違い、寝顔を見つめる俺の心は満たされている。



「愛してる、メルディ」



 来年も、再来年も、その先もずっと甘いお菓子を贈り合おう──。


[オマケ]



「大切な人へって事は、サヤはメルディにあげてるんだよね?」

 明くる朝、無事に誤解が解けたらしく、キラキラ度が増したミハエル様から話しかけられ、私は掃除の手を止めず「もちろんです」と即答する。

 メルディ様への気持ちなら、ミハエル様にも負けない自信がある。

 ついでに、ミハエル様のどや顔が少々ウザ……あと、メルディ様を泣かせた事も許せなかったので、私はメルディ様から頂いた箱を、それとなく見せつける。

「何か、俺のより立派で大きくないか?」

「愛の大きさです」

 ガーンという表情になったミハエル様を放置し、私はまた掃除へ戻る。

 ちなみに私の箱が大きめなのは、私が見た目より大食いな事をメルディ様が知っていて、他の人より中身を増やしてくれてるから。

 ほら、『愛の大きさ』で間違いない。



『サヤ、大好きだよ。

ずっと私のそばにいてね?

サヤがいないと寂しくて──』



 さらについでに、何と無くメッセージカードを朗読していたら、ミハエル様が真っ白く燃え尽きていた。

 まだ途中なのに残念です。



 そう言えば、昨日街中でGと遭遇してしまったが、やけに頬を赤くして、いつもより気持ち悪く迫ってきた。

「お、おい! そろそろ、いつもの時期だろう? 今年はメルディから直接貰うのでも俺は構わないからな? メルディが恥ずかしいなら、お前経由でも構わない!」

 そんな気持ち悪い事を言いながら追ってきたので、牽制に攻撃魔法を撃ってしまった。

 直撃はしていないから大丈夫だと思うが、後始末をする騎士の中に、胃の辺りを押さえている副団長様を見かけてしまった。

 申し訳なく思ったので、メルディ様に進言しておいた。

「騎士団の方々にも贈られたらいかがでしょうか?」

「そうね! 今年は特にお世話になったもんね」

 私の言葉に、メルディ様は幸せそうな表情で、うんうんと頷いてオーブンへと向かう。

 Gの所では見られなかった、明るく無邪気なメルディ様の姿に、私は自然と笑っていたらしい。

 私を見たメルディ様が、幸せそうな笑顔を浮かべているから。



 この笑顔のためなら、私は世界だって敵に出来る。




「ねぇ、サヤ。メッセージカードの、あれって……」



「私の決意です」




『Gの撲滅。または魔王様と共に世界征服』




 いつか、あの触覚部分を引き千切る日を夢見て。

オチはサヤでした。


ろであす氏、ついに名前が一回もまともに出てこない(笑)

そして、ついにお姉様がチラリと登場。


ハッピーバレンタイン。

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