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愛し愛され(勘違い)ている相手を奪い返す。

うん、勘違い乙。


書いてて殴りたいです。


どうしてこうなったんでしょう、ろであす。

 愛し愛され(勘違い)ている相手を奪い返す。

 そのためなら、俺は悪魔にだってなってやろう。




「……メルディ、綺麗になっていたな」

 先ほどまで腕の中にあった温もりを思い出し、俺は思わずうっとりと呟いていた。

 久しぶりに会えた愛しい人は、最後に見た姿より儚く美しかった。

 きっと愛してる(思い込み)俺と引き離された悲しみが、彼女を美しく着飾っていたんだろう。

 本当は今すぐ追いかけて、メルディを取り返し……いや、奪い返したい。

 だが、今の俺では、あの魔王と呼ばれている騎士団長には敵わない。

 メルディを失う前の俺なら、きっと無駄に自信過剰で戦いを挑み、無様に負けていただろう。

 しかし、愛しいメルディを奪われるという敗北を知った俺に死角はない。

 俺に出来る万全の体勢を――。

 まずは信頼出来る人間を味方に引き込むべきだな。

 すぐ思いつくのはもちろん、親友であるミハエルの顔だ。

 最近婚約したばかりで幸せそうなミハエルを引っ張り出すのは申し訳ないが、力になると言ってくれた言葉に甘えさせてもらおう。

 ミハエルは頼りになる男だ。

 早速ミハエルの屋敷へ向かおう。

 善は急げ、だ。

 きっとメルディは、今頃連れ戻された屋敷で泣いているだろう。

 神は残酷だ。

 もう少し早く逃げ出したメルディと再会出来ていたなら、メルディを連れ去る事が出来たと言うのに。

 高い金で雇った裏の情報屋から、メルディの目撃情報が入ったまでは良かったが、確かめに行こうとして呼び止められてしまったのだ。

 悔やんでも仕方がない、が。

 そう言えば気のせいだろうが、あの騎士はタイミングを計ったように現れたな。

 きっと、神が俺に罰を与えているのかもしれない。

 メルディの献身的な愛に気付かなかった愚かな俺へ――。




 愚痴ついでに、魔王との戦いの相談をしつつ、親友であるミハエルにそんな話をした。

 ミハエルなら、笑い飛ばしてくれるだろうと。




「死ねばいいんじゃないかな?」




 ほら、笑い飛ばしてくれた。

 さすが俺の親友だ。

 しかも、素晴らしい助言付きだ。

 死ねばいい、つまりは、死ぬ気でメルディを奪い返せと言いたいんだな、ミハエルは。




 俺は信頼を込めて、満面の笑顔の親友へ頷き返し、メルディ奪還を新たに誓うのだった。




 愛し愛されて(妄想)いる相手に、もうあんな表情はさせたくないと強く思いながら。


[視点変更]



「死ねばいいんじゃないかな?」



 突然やって来た親友(害虫)が吐く妄言に、俺は思わず笑顔で返してしまった。

 まだメルディとの愛の巣である別宅じゃないだけマシだが、臭いがつきそうで嫌だから、正直あまり来ないで欲しかった。

 とりあえず、今日は優しく抱いてあげるつもりだったが、脱走するような悪い子は帰ったらおしおきかな、とかジリジリと嫉妬で焦げる胸を隠し、適当に返してたんだが……。

 本気で気持ち悪く、苛立たしくて、本音が洩れた。

 ヤバい、と親友(害虫)を見たが、何故か感動した様子で何度も頷いている。

 別の意味でヤバいな、こいつ。

 鈍感なヤツではあったが、ここまで馬鹿じゃなかったんだが……。

 あの煩い女のポジティブさがうつったのか?

 あの煩い女も、何度断ろうが、遠慮なんかしなくていいんだよ!? と謎のポジティブさで付きまとってくる。

 もうこの二人でくっつけばいいと思うんだが、あの煩い女は、見た目がいい男に目がないからな。

 最近はあのオニーサマへも接近しようとしているらしい。

 とんでもない強者だと、逆に感心してしまう。

 まぁ、オニーサマは歯牙にもかけてないらしいが。

 当然か。

 あのオニーサマが愛しいと思う相手は、この世に二人しか存在しない。

 妹であるメルディと、妻である――あの女性だけ。

 無駄に自信過剰なポジティブへ進化した親友(害虫)は、また来るぞ、と元気になって帰っていった。




 俺は久しぶりのドロドロした嫉妬心を持て余しながら、メルディの待つ別宅へ馬車を向かわせる。

 ガタガタと揺れる馬車の中、俺は以前買っておいた首輪の出番かとほの暗く笑う。

 到着した馬車を降り、一直線に目的地へ向かおうとした俺の目の前に、珍しい出迎えが現れる。

「……メルディは?」

 ニコニコと笑いかけた俺に、出迎えてくれたサヤは無表情で深々とため息を吐いた。

「……なに? だって、メルディが悪いんじゃないか、外出して、あいつに会いたかったんじゃ?」

 思わず嫉妬から愚痴めいた不安を口にすると、さらに深々とため息を吐かれた。

「どうしてそこで無駄にネガティブなんですか、ミハエル様は。拗らせないでいただけますか?」

 本当にサヤはメルディ以外には優しくない。

 そんな事を考えていたら、サヤが珍しく口の端を上げ、メルディの外出の理由を話してくれた。




「……っ!」




 全てを知った俺は、結局メルディを抱き潰してしまい、次の日サヤから冷たい視線と、オニーサマから物理的に冷たい視線をいただくことになった。




 冷たい視線の中、サヤとオニーサマに昨日の親友(害虫)の話を伝えたところ、害虫駆除計画書なる物を広げ、二人で覗き込んでいる。

 うん、怒りの矛先は上手く害虫へ移行したようだ。

 毒餌、凍らせる、見つけたら叩き潰す。

 あれ? 本当に害虫駆除の話なんだろうか、と思って二人の覗き込んでいる計画書をそっと盗み見する。



 標的名『ロデアス』



 いつの間にか親友気取りな害虫は、改名したらしい。

 どうでもいいので、俺は忙しそうなサヤに代わって、メルディの様子を見に行くことにした。

 あの二人なら、証拠を残すようなヘマはしないだろう。

 ただ叩き潰す場合は、屋外でお願いしたいなぁ、とだけは思う。




 掃除が大変だから。


ミハエルならいいかなぁ、とミハエル視点を付け足しました。


久しぶりに書いたので、ちょっと偽者臭が……。

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