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愛している人に嫌われてる。

シリーズ化したので、まとめました。

内容は短編と同じです。

 愛する人に本気で嫌われてると気付いた時に、どうするのが正解なんだろう?

 誰か教えて欲しい。




 私はメルディ。

 ピチピチの15歳。精神年齢的には、それ以上だったりするけど。

 実は、私には地球で暮らしていた記憶があり、この世界は乙女ゲームの世界に良く似ていた。

 舞台は中世っぽいファンタジー。

 バトルもあるゲームだったから、魔法とかもあったし、モンスターもいたんだよね、乙女ゲームなのに。

 なので、私が住むこの世界にも、魔法とかモンスターが存在する。




 で、肝心の私の立ち位置は──。

 

 


 ゲームの背景なモブでした。

 一応、貴族のご令嬢で、ドレスとか着せられてるけど、ゲームの主要人物とは会う事もなく、普通に過ごしていた10歳のある日、それは突然やって来た。

「さあ、メルディ、ご挨拶を。お前の婚約者となられる方だ」

 父に促され、私がぎこちなく挨拶した相手は、キラキラした年上の美少年さんだった。

「メルディ、です」

 目の前で不機嫌そうな顔をしてるのは、あの乙女ゲームの攻略相手の一人──俺様王子様だった。

 名前は、ロディアス様。

 恥ずかしながら、私の初恋だった。

 思わず、ヒロインに感情移入しないで、ただただヤキモチ妬くくらいには。

 ロディアス様は、黒髪に深い藍色の瞳の持ち主で、今はまだ美少年だけど、ゲーム開始時の五年後は、ワイルドなイケメンに変貌する。

 ロディアス様の幼い頃は、攻略ルートでチラッと出ただけなんだけど、私は何度も見たから。

 あの、ロディアス様に間違いない。

 でも、ゲームでは、ロディアス様に婚約者なんていなかった。

 これも間違いないと思う。

 TRUEもNormalもBadなENDですらも、全部見たからね。

 一応、他の攻略相手のエンディングも見たが、ロディアス様にそんな話が出た事はなかった。

 私はイレギュラーなのかもしれない。それか、話題にならないぐらい、どうでもいい婚約者だった、とか?

 後者の方が可能性は高そうだけど。

 どちらにしろ、あと五年もすれば、ロディアス様には運命の女性が現れる。

 それまで、少しぐらい、婚約者生活楽しんでも、バチは当たらないよね?

 せっかく愛する人の側にいられるのだから。

「そんな甘い事を考えた事もありました」

 とりあえず、日記に書きなぐってみた。

 ロディアス様と婚約してから、私は日記を書き始めた。

 いつか、別れるとしても、思い出を抱いていこうかなぁ、なんて女々しい感じで。

 今現在、日記はストーカー寸前なロディアス様観察日記と化している。

 もっとお話したいけど、私は明らかに嫌われてる。まぁ、私以外のお嬢様も嫌われてるけど。

 ロディアス様は、元々そういうキャラクターだから。

 王位継承権二位なんて微妙な位置だから、幼い頃から事故死に見せかけた暗殺とかで、狙われていたらしい。

 これは、ゲームでロディアス様がヒロインに語っていた。

 間違っても、嫌っている婚約者な私には話してくれないだろう。

 ま、その方が動きやすいから、構わないけど。

 メロドラマとかで、愛するあの方が笑っていてくださるなら、的な台詞があるが、まさか身をもって体験するとは思わなかった。



 私は、倒した暗殺者を、庭の適当な所に転がし、ロディアス様が寝ている部屋をチラッと窺う。

 うん、起きる気配はなさそうだ。

 暗殺者は朝まで目覚めないだろうから、見回りが見つけてくれるだろう。

 ゲームをしていた私には、ちょうど今頃からロディアス様に対する暗殺や嫌がらせがハッキリそれとわかるものに変わるのを知っていた。

 それまでは事故とか偶然っぽいんだよね。

 きっかけは、王位継承権第一位なロディアス様の兄が、優秀な腹違いの弟を疎ましく思っちゃう、っていう鉄板だけど。

 暗殺者に乳母を殺されたり、下劣な嫌がらせを繰り返されて、さらに人間嫌いを拗らせたロディアス様を、明るいヒロインが救ってくれるのだ。

 そんな未来を思い描く私は、今日もロディアス様観察日記と化した日記を書いていく。

 婚約者という立場を利用して、ロディアス様の屋敷の離れに住まわせてもらいながら、私は夜な夜な暗躍したり、王位継承権第一位と内通している使用人を見つけたり、朝の散歩を日課にしたりして過ごしていた。

 乳母の女性は、私が我が儘なフリをして、屋敷から追い出したから、無事だ。

 何故か、私の意図に気付いたらしく、ロディアス様と私を案じる手紙を時々くれる。

 そうそう。

 私が暗殺者を瞬殺出来たのは、乙女に相応しくない戦闘系な能力に秀でてたから。

 普通に生活してたら、気付かなかったと思う。

 あと、協力者がいるから、意外と何とかなっている。

 まずは幼い頃から、私の専属な侍女。とても有能だ。

 次に、年の離れた実兄だ。妹の私が言うのも何だが、格好いい。

 最後に、ゲームにも出て来ていた、ロディアス様の親友──ミハエルだ。チャラいけど、信用は出来る。

 この三人は、私の自己満足な行為を知りながら、見守ってくれてる。

 私自身、ロディアス様と婚約したせいで、色々な嫌がらせをされているが、気にならない。

 ロディアス様の笑顔で、全て報われる。




──私にその笑顔が向けられた事は、一度もないけど。

 それでも、私は幸せだった。

 そんな幸せも、終わりを告げる時が来てしまった。

 ヒロインが現れ、ロディアス様は良く笑うようになった。

 私は綺麗に身を引くつもりだったから、別に気にしていなかったのだけど。

 私は、いわゆる悪役令嬢の存在を忘れていた。

 悪役令嬢は、ロディアス様の婚約者な立場の私を、まず邪魔だと思ったらしい。

 それで、私はヒロインに嫌がらせをしていた首謀者にされてしまった。

 変わり者として浮いていた私を、庇ってくれる人はいない。

 婚約者であるロディアス様ですら、信じてくれない。

 当然か。

 だって、最初から嫌われていた。

 なんだかんだで結構仲良くなっていたミハエルが、何か言おうとするのを視線で制し、私はロディアス様からの婚約破棄を逆らわず受け入れた。

 愛する人に嫌われている私が、愛する人のために出来るのは、これぐらいだろう。

 大丈夫。

 悪役令嬢の方は、私が一緒に奈落へ引きずり込むつもりだ。

 今頃、優秀な侍女と、シスコン気味な兄が色々画策してくれてるだろう。

 これで、ロディアス様は、何の気兼ねもなく、ヒロインと結ばれて幸せに暮らせる筈だ。

 暗殺者や嫌がらせは、もう本人が何とか出来るだろう。ロディアス様って、チートな設定だったし。

 だから、まだ頑張れ、私の涙腺。

 ここで泣いたら台無しなんだからね。

 必死に自分を励まし、ロディアス様を見つめるが、ロディアス様はもう私を見ていなかった。

 けど、笑顔だったから、良しとしよう。




 これで、私の転生してまで貫いちゃった初恋は終わった。

 しばらくは、燃え尽きてるかもしれないけど、いつかまた、誰かを愛せたらいいなと思う。




 今も、これが正解だったかはわからないけど。


[視点変更]


 変な奴。

 それが婚約者になったメルディの印象だった。

 他の女みたいにクネクネして寄って来ないし、甲高い声で喚かない。

 ただ俺を見てニコニコ笑っている。

 一体何がおかしいのか……。

 正直、不愉快だ。

 それが嫌いに変わったのは、いつの事だったか、もう俺には思い出せない。

 婚約者だったメルディを追い出し、タイミング良く、他の邪魔だった令嬢が消え、俺はリンカと過ごせる幸せを自室で噛み締めていた。

 明るく楽しいリンカは、一緒にいて楽だ。

 ほとぼりが冷めたら、新たな婚約者として発表しようと思う。

 そんな未来を思い描いていた俺は、忍び込んできた暗殺者に気付き、素早く始末する。

「何年ぶりかに見たな。諦めたかと思っていたぞ?」

 拘束した暗殺者にそう話しかけると、何故か驚いた顔をする。

 その意味を、俺は知らなかった。




 次の日の朝。

 部屋から出ようとした俺は、部屋の前に撒かれた生ゴミに気付く。

 地味な嫌がらせだ。

 きっと婚約破棄を恨んだメルディの侍女が犯人だろう。

 俺はそう考えながら、使用人を呼びつけて生ゴミを片付けさせる。また、不思議そうな顔をされた。

 何も言わないのは、大したことではないのだろう。


 また次の日。

 夜には暗殺者がやって来て、ドアの前には大量のゴミ。


 暗殺者はともかく、ゴミにはイラッとした。


 さらに次の日。

 夜には暗殺者がやって来る。

 ここ五年ぐらいは来ていなかったのに、急にどうしたんだ?

 そして、朝にはドアの前にゴミ。


 さらにまた次の日――。

 繰り返される嫌な日常に、俺は徐々に疲弊し、苛立ち、あれだけ愛しかった彼女へ怒鳴り付けてしまう。

 明るくて癒しだった彼女の姿は、ただ状況を理解していない能天気さだと気付いてしまった。

 これも、あのメルディのせいだ。

 嫌がらせだけではなく、暗殺にもメルディが関係しているのかもしれない。

 彼女と婚約破棄をした日の夜から、急に夜の襲撃があった。関係がない訳がない。

 睡眠不足な頭を抱え、俺は部屋のドアを開ける。

 部屋の前には、愛らしい小鳥の死体が並ぶ。

 それを見た瞬間、プチッと何かが切れ、俺は外へと駆け出そうとする。

 行き先は、メルディの自宅だ。

 途中、親友であるミハエルと遭遇し、その事を話した時だった。

 助太刀してくれるかと思ったミハエルは、目を見張ると、今まで見た事がない形相で、殴りかかって来た。

 殴られた頬が熱い。

 何より、ミハエルの俺を見る目が、チャラチャラしてるミハエルとは思えない。

「ロディアス、お前、それ本気で言ってるのか?」

「あ、あぁ……」

 ミハエルの迫力に、思わず殴った事を責める前に頷いていた。

 途端に、冷えきった眼差しを向けられる。

「そうだろ!? メルディがいなくなった途端、嫌がらせが始まって、夜暗殺者が来るようになったんだぞ!?」

「あ゛? そこまで見てて、どうしてわからない? 馬鹿だろ!?」

 こんな風に吠えるミハエルは、初めて見た。

 ミハエルは愛しい何かを想うかのように、目を細めて口を開く。

「夜、暗殺者が来なかったのは、お前の部屋に入る前に、メルディが倒していたから。嫌がらせがなかったのは、メルディがお前に気付かれる前に片付けていたからだ」

「う、嘘だ! 俺は、あれだけ冷たい態度を……」

「それでも、メルディはお前をずっと守っていたんだよ。気付かれないところで。メルディ、一回だけ我が儘言っただろ」

「あぁ、俺の乳母を追い出せと……。最低だ!」

「違う。あれは乳母を守るためだ。あのままいたら、乳母はお前への嫌がらせで、殺されていただろうな。お前の愛犬のように」

「あれは、メルディがやったんだ!」

 思わず叫び返すと、ミハエルからは絶対零度の視線が返ってくる。

「自分でやった奴が、血塗れで泣いてるか? メルディは、お前に知られる前に埋めてしまおうとしていただけだ。それで、嫌がらせの被害がお前の大切な相手へ向かう前に、乳母を守るために追い出したんだよ」

 もうお前の大切な者ではない、と知らしめるために、な。

 吐き捨てるようにそう言って、ミハエルは数冊のノートを俺に叩きつけた。

「メルディの忘れ物だ」

 それだけ言うと、ミハエルは俺に背を向けて歩き出す。

「……お前がいらないなら、俺がメルディを貰うから」

 そう言い残して――。




「メルディの忘れ物? どうせ、俺への恨み言でも書いてあるんだろう?」

 先程告げられたミハエルの言葉を笑い飛ばすよう、鼻で笑った俺は、部屋に戻ってメルディのノートを開く。表紙には日付順なのか、番号が振られている。

 少し癖のある彼女の文字は、何度か見た事がある。 名目とはいえ、婚約者だったから。

 最初のノートの日付は……。


「五年前か」

 婚約が決まった直後だろうか。

 どうせ、俺への恨み言だろと、もう一度繰り返し、俺は文字を追っていく。

 徐々に、徐々に。

 読み進めると、外の音が聞こえなくなり、体の震えが止まらない。

 胸が裂けそうなぐらい、ただただ痛い。

「恨み言の方が、マシだ」

 ノートには、恨み言なんて一つもなかった。

 俺がどんなに冷たい態度をとろうが、メルディは気にせず、暗殺者や嫌がらせを始末してくれていた。

 それがノートに書かれている。

 何より、ノートを埋めているのは、純粋な俺への想いだけだ。

 自分がどれだけ冷たくしても、メルディは俺を愛してくれていた。

 俺が笑ってくれれば幸せだ、そう何度も書かれている。

 俺が何してた、とか、楽しそうだった、とか、俺の事しか書いていない。

 気付くと、俺は泣いていた。

 メルディは何の言い訳もしないで、婚約破棄を受け入れた。

 あの時、彼女は涙を堪えて笑っているように見えた。

 きっと、婚約破棄の理由にした嫌がらせの首謀者も、メルディじゃない。




 涙を拭った俺は、ノートを抱いて部屋を飛び出す。

 そこでは二人の使用人が、小鳥の死体を片付けていた。

「メルディ様、よく毎日こんな事してましたね」

「私なら、気が狂いそう。ゴミならともかく、腐った動物の死体とかもあったのよね」

 俺に気付かず、使用人達はそんな話をしている。

「おい、メルディが嫌がらせの片付けをしていた事を知ってて、何故俺に教えなかったんだ」

 俺が話しかけると、ビクッと肩を揺らした使用人達は、やがておずおずと口を開いた。

 そして、また一つ隠されていた真実を知る。




「メルディ様に頼まれたんです」

「ロディアス様が気に病まないよう、隠して欲しいと」




「俺は、メルディに守られていたんだな」

 振り返って探しても、あの変わり者の婚約者の姿はない。

 いつも、笑ってくれていた。

 俺がどんな渋面でも、目が合うと幸せそうに。

 それが当たり前だと、何故思ったんだろう。

 今からでも遅くない。

 俺はメルディに謝るため、メルディの実家へ馬車を飛ばさせる。

 卑怯だが、謝ればメルディは許してくれる。

 そんな計算もあった。




 しかし、メルディの実家で俺を待っていたのは、メルディが別の相手と婚約したという事実だった。

 そこでやっと、メルディを愛しいと思っていた事に気付けた俺は、とんでもない大馬鹿だろう。




 だが、もう手遅れだ。




 愛する人の心を失ったと気付いた時、どうするのが正解なのか。


 俺にはわからない。

ミハエル側を、次の話として追加しました。

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