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さっきまでごく普通の少女がいた場所には、白髪に黄色い目の少女が立っていた。
完全に白1色の髪は朝の光に照らされ柔らかく輝いている。
…言っておくが私がホワイト?ではないと言った覚えはない。嘘はついていないのだ。
まぁ、知らないフリはしたけれど。
「でも、気づかないなんてね。昨日の逃げてる時だって、危うく出すとこだったし」
あの落ちそうになった時は正直やばかった。
実際、蜂道ナチに見られていたみたいだし。
いや、でもいくら幼少時にアスレチックしまくったっていっても、壁上ったりビル飛び移ったりは流石に無理だろ。我ながらよくあんな言い訳。いや、確かにアスレチックしまくってたけど。
「…!」
誰かが来る気配がしたので、急いで元に戻す。
「おいっ!!」
「…?」
戻して数秒後、聞こえてきた声にさも自然に振り向く。
そこには曲がり角を曲がってきた掵原リクトがいた。
「ごめん、全然起きれなくって」
「いいのに、そんなの」
「本当に申し訳なかった。あいつら失礼ばっかで」
母親みたいな台詞だなぁ。
「あの、それで、俺らはさ、あんな髪とか目の色変わったりして気持ち悪いと思ったかもしれないけど、そんな怪しいものとかじゃないから、でも、誰にも言わないで欲しいんだ…」
一生懸命言葉を選んでいるのか、少し文がおかしいが、それだけ真剣なんだろう。
「言わないよそんなの。でも、最初見た時はコスプレかと思っちゃった」
君達じゃなくて自分が変わったのを見た時、だけど。
その時、また誰かが角を曲がってきた。
「あっ、ナチ」
蜂道ナチだ。朝っぱらからホワイトになっている。
私達のところまで来ると、元に戻した。
「今ここらへんで、感じたんだけど」
「えっ、ホワイトの気配をか!?」
げ。
そうだ、ホワイトの気配は近くならホワイト同士で感じれたっけ。
まぁ、そうじゃなかったとしても初級の魔法にサーチ魔法があるからそれを使えば大体の方角とかはわかる。
今はバレないよう気遣ってもなかったしこっちからサーチもしなかったから、気づかれたんだろう。
…そもそも、こんな時間からホワイトになるやつが存在すると思ってなかったから何もしなかったんだけどなぁ…。
「…でも、今まで誰とも会わなかったよ?」
急いで取り繕う。
…ほ、本当に誰ともあってないもんね。
「まだ朝だぞ?こんな時になる奴なんていないだろ。誰かに見られるかもしれないし」
掵原リクトも私と一緒のことを思ったようだ。
少なくともあなたの目の前に2人いますけどね。
「…お前、帰るのか?」
蜂道ナチが私の方を向いてきいてくる。
え?こいつ、何も知らないの?
「いや、もうあそこには行かないよ。ほら、私は違うみたいだったし」
そんな訳はないけども。
「…………そうか」
なんだろ、今の間。
「うん。だからもう会わないよ」
ニコッと笑ってみせる。
会えない、ではない。会わない。
気づいたかな?
「じゃあ、頑張って見つけてね」
他のホワイトを。
2人に笑顔で言った後私は心の中でそう付け足し、2人に背を向け、今度こそ家へと歩を進めた。
危なかった…。
今度からは不用意にホワイトになるのはやめよう。
やっぱり気は抜いちゃ駄目だな。
それにしても、なんか最初に拉致られてからここまで、短かったように感じる。
結構眠ってたからかな。半分以上あの薬のせいだけど。
やっといつもの日々が戻ってくる。
…………………1人の日々。
…………………。