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童話契約物語  作者: ia
第2章
29/30

28

 



「チェシャ、カウンターもってるの?」



 チェシャの腰には、その派手な色合いの服装には若干あっていない、シルバーのカウンターがぶら下がっていた。

 まるでそこだけ浮き出ているようである。



「持ってるにゃ。僕が1人でいる時に倒した分は僕用で持ってていいって、ミハルが買ってくれたにゃ」



 そっか。確かに1人で討伐にいった時のポイントが勿体ないしね。いいアイデアだ。



「なるほど…トルクにもあげよっかな」


「『長靴を履いた猫』のストーリー上制限があるんじゃなかったかにゃ?」


「あ…」



 そうなのだ。どの登場人物達も、特性があって、弱点らしいものも存在する。大体は物語と同じかそれに準じたもので、例えば『長靴を履いた猫』の猫のトルクは、契約者が見える範囲または契約者から決まった距離までしか自由に動けないのだ。



「いや、でもまぁ、ある程度は動けるから、ね?」


「そうなのかにゃー」



 家の周りとかでなら…いや、無理があるか…


 ちなみに、そういう物語上の弱点以外にも、登場人物には大体の使える武器というか、傑出してる部類(剣とか魔法とか)がホワイトと同じように存在し、もちろんその上でも相性があったりもする。

 私はそこまで細かく考えたりはしないが、結構ややこしい。



「あ、いたにゃ」



 低級ケリオスレベル1が2体。

 発生したばかりだろうか。



「今日はありすと一緒だからカウンターは切っとくにゃ」


「いいの?」


「好きでついてきてるんだから当たり前だにゃ。でも戦うは戦うからにゃ!」


「ありがと」



 様になるウインクを飛ばすチェシャに甘えることにし、自分も出来るだけ魔力に負担をかけないよう戦う。

 いくら回復薬を飲んだといっても、消費は抑えなきゃね。

 とりあえず初期の頃能力屋にもらった短剣を呪文で取り出した。


 ここでは現実世界の武器でケリオスを倒すことが出来ないらしいから、しょうがない。

 まず、現実世界で武器なんてものを調達する方が難しいし。


 そうやってケリオスを倒してもう何体目か分からなくなってきた頃。



「チェシャ猫…!?あなた、もしかしてチェシャ猫!!!?」



 突然そんな声が後ろから聞こえてきた。


 振り向くと、建物2個分向こうのところに少女が立っていた。

 髪は白。ホワイトである。



「呼ばれてるわよ、知り合い?」


「知らないにゃ。ほっといて行くにゃ」



 チェシャの知り合いかと思い、チェシャの方を窺うが当の本人は気にせず次のケリオスを狩りに行こうとする。



「待って!!!チェシャ猫!」



 チェシャに言われた通りに、そのまま去ろうとし、何気なくもう一度相手の方を見ると…



「うわっ!?」



 も、ものっすごい形相で追いかけてきている!


 そうなると自分が追いかけられているわけではないが、こちらも全力で走り出すしかない。



 だが、相手の方が足が早くすぐに追いつかれた。



「はぁ、はぁ…チェシャ猫!!やっぱりそうでしょう?!」


「誰だにゃ、お前」



 前に回り込んできた少女は、私と同い年くらいだろうか。気の強そうな顔をしていて、髪をツインテールにしている。


 チェシャ猫を見て嬉しそうにしていたが、その隣にいた私を見てその顔が一気に怖くなる。


 え、もしかして今まで私視界になかった…?



「もしかして…あなた、チェシャ猫と契約しているの?」


「え、違うわ」



 なんか、すごい誤解が生まれてる気がする。



「じゃあなんでチェシャ猫とあなたが一緒にいる訳?」


「それは…」



 話すと長いんだけど。



「やっぱり契約してるのね…!道理でどこにもなかった、チェシャ猫!私はね、『不思議の国のアリス』のキャラ全員と契約するのを目指しているのに、重要なアリスもチェシャ猫も白兎も!どこにもいないのよ!!!」



 だが私の話を聞こうともせず、1人で喋り始める少女。

 そしてその視線が私からチェシャ猫へとうつる。



「でも、やっと見つけた…!チェシャ猫、私と契約しましょう?」


「嫌だにゃ」



 手を差し出す少女にむかってきっぱりと即答するチェシャ猫。


 いや、当たり前じゃ…


 だが少女は予想外とでもいうように驚いた。



「え、なんで!?」


「逆になんでお前と契約しなきゃいけないのにゃ。もう僕には契約者いるにゃー」



 めんどくさそうに言うチェシャ。


 えーっと、これ、私関係ないよね?



「そう…じゃ、あなた。今すぐチェシャ猫との契約解除して頂戴」



 指差しで淡々と命令される。え、私?



「だから、私は違」


「嘘おっしゃい!嫌なら、力づくで貰うだけ!出て来て、“twins”!!!」



 少女がそう叫ぶと、ぼわん!と煙が視界を覆った。



「!」



 咄嗟に後ろに下がる。



「はぁい、僕達双子に」


「何か用?…って」


「「チェシャ猫君じゃん!!!」」



 そして煙が晴れると、そこにはお揃いの帽子にお揃いのブラウス、全く同じ顔に仕草をした少年が2人がいた。

 よく見ると帽子の縁や襟元にはそれぞれ“Tweedle dee”“Tweedle dum”という刺繍が入っている。



「久しぶりだねー!」


「元気してたー?」



 チェシャ猫を見て、嬉しそうに話す双子。動きも会話もシンクロしてる。

 これ、どっちがどっちかわからなくなりそうだな…



「元気だにゃ」


「おーっとそちらの可愛いお嬢さん」


「もしかしてチェシャ猫君の契約者?」


「え、違うわ」


「嘘よ!その子からチェシャ猫をとって頂戴!」



 私が否定する前に声高らかにそう叫ぶ少女。



「えー、戦うの?」


「チェシャ猫君と?」


「「強いからやだよー」」


「あなた達も強いでしょ」


「…悪いけど僕は契約者と離れる気はないにゃ。ね、ありす」


「ちょっ、」



 その言い方じゃあ…!!!



「アリス!?貴女、アリスも持ってるの!?…許せない。どっちとも、私のよ!!!双子!」



 あああ、やっぱり!!



「あ、チェシャ猫君、もしかしてその子がチェシャ猫君のアリスなのー!?」


「確かに可愛いけど…」


「「まぁ、とりあえず命令だし、倒れて??」」



 双子が飛んでくる。

 こうなったらもう戦うしかない。

 完全なとばっちりだが私は仕方なしに迎えうつ準備をした。




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