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童話契約物語  作者: ia
第2章
28/30

27

 



 ーートルクとの約束通り安静にし、数日が経った。



 うう、行きたい。退治しにいきたい。ポイント、貯めたいのに。

 まだ魔力が全回復してない。こんな短期間で全回復するわけないのはわかっていたが。



 さっきから行きたい思いと魔力を回復させなきゃという思いが葛藤し、自室の窓に近づいたり遠ざかったりしている藺緒。

 ちら、ともう何度目か分からないくらい見た窓の外を再び見る。


 ますます我慢できなくなるとわかっていても微量だし、回復する方が多いからプラマイプラスだし、いいよね。という言い訳を一人で呟きながら現表世界を見ることができるくらいの魔力を消費し覗いている。


 空気転換と言い訳しながら少しだけ空けた窓の外には、まだ深夜では無いため月明かりと電気に照らされ中々に明るい。


 ここでケリオスでも見えれば即倒しにいくのに、そんな気配は一切ない。



「…ちょっとだけ。いやでもトルクと約束したし…!」



「…ありす?」



 うだうだと続く独り言を破ったのは窓のノック音とそんな問いかけだった。


「へ!?」


 もう一度窓を見ると、月や建物などの景色の他にさっきまではいなかったはずの存在がいる。



「チェシャ!!」


「さっきからどうしたのにゃ」



 相変わらずの派手な色のだぼだぼパーカーを身につけて不思議そうな顔をしたチェシャは窓を開き顔を部屋の中に覗かせる。


 さっきから、と言っている辺り今までの様子をずっと見られていたのだろう。

 いつもチェシャの気配だけは感じられない。

 目の前にいたり、いるとわかっているときは普通に感じるのだが、こう不意に現れるときは全く気配がないのだ。



「どうしたにゃ?今からケリオス、倒しに行くのかにゃ?」



 だぼっとしていて手が見えない袖を口に当て、やはり不思議そうにきいてくる。

 今はどうでもいいが、やはりイケメンは何をしても様になっている。



「行きたい気持ちは山々なんだけど、魔力が全回復してないし行けないんだよね…」


「…なるほどにゃ。最近はホワイト同士の戦いも多いしにゃー。LAFになったりしたら命取りだもんにゃー」


「そう。魔力がないとみんなも呼び出せないしね。それに今トルクに安静にするように言われてて」


「僕としてはあの長靴が出てこなくていいけどにゃ。今もいなくてラッキーにゃ」



 トルクとチェシャは顔を合わせればいつも言い合いになる。


 今呼び出そうか迷っていたんだけどな…



「ミハルは?」


「今日は行く気分じゃないって言ってたにゃ。だから1人で出てきたのにゃ」



 “登場人物(キャラ)”は基本契約者と行動を共にする。契約者を助けること、契約者と共に戦うことが多いからだ。

 だが、一応キャラも契約者とは別行動をしたり、単独でケリオス狩りに行ったりすること、更には自分の魔力でこちらに来ることも出来る。勿論契約者の同意や信頼関係がいるが。

 キャラだけでもケリオスを倒せるには倒せるが、キャラと契約者が別で行動するのはやはりそれ相応の危険が伴う。キャラがいつ暴れるかもわからないし、逆に単独のホワイトがホワイト狩りなんかに遭遇してしまう場合もあるのだ。

 そして、自分の魔力で来た時はほぼ契約の縛りなく自由なので、何をしだすか不明なのだ。

 そんな場合、離れていると何も出来ない。


 まぁ、完結に言えば信頼度の問題だろう。



「それより、ありすが困ってるなら、いいものあげるにゃ!」



 チェシャはそう言って懐からをごそごそと探り出した。



「じゃじゃーん!魔力回復薬~」



 取り出した小瓶には、うっすらとした紫色のさらさらした液体が入っていた。細かな動きに合わせて、中の液体も揺れる。



「え!?何それ!!」



 そんなの、初めてきいた。たぶん、店にも売ってないだろう。



「知り合いの研究薬だにゃ。試薬品ではあるけど、試してみるにゃ?」


「え、いいの?そんなの」


「いいにゃ。ホワイトになってから飲んでにゃ。ただ、百パーセントの成功は保証できないにゃ」


「いい!飲みたい!」



 貰って、早速ホワイトになりコルクの蓋をきゅぽん、と開け、一気に飲む。



「!?ゲホッゲホッ」



 途端に、むせ返った。



「ありす!!?」


「大丈夫。…すっごい、味ね…」



 味はなんとも形容しがたいものだった。

 でも、魔力が回復されていく感じがする、のかな?



「どうにゃ?」


「いい感じ!魔力が回復されてる感じがするわ!」


「ならよかったにゃー」



 にっこり微笑むチェシャ。



「じゃあ、討伐行こうかしら!」



 そう意気込んだ私をじっと見つめ、何かを考えているような顔をしたチェシャは、窓から出てきた私を覗き込むように体を倒す。



「…ありす、一緒に行ってもいい?今日はミハルは討伐しに行かないって言うから」



 それはなんとも頼もしいが…



「いいの?」


「もちろんだにゃ!サポートするのにゃ」



 そうして私とチェシャは2人で討伐へ向かうことにした。



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