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童話契約物語  作者: ia
第1章
22/30

21

 


 果てしなく広がっているような、目の前全てがふわふわした空間に、ぽつんと立たずむ私。その空間がどのくらいの大きさなのかはわからないが、そこにおいて私という存在はとてつもなくちっぽけとしたもののように感じる。


 足は地につき立っているはずなのに、まるで漂っているような感覚である。



「ここは…?」


「無理、したんだね」



 ぼうっと上を向きここがどこかと考えていると、後ろから人の気配とともにそんな声が聞こえてきた。



「え…」


「もっと自分を大切にしないと」



 振り向いたけど、まるでもやがかかったようにその人の顔は見えない。


 だけどどこか、懐かしい。


 何かを喋ろうと口を開くが、自分が何を言おうと思ったのかもわからず、そのまま言葉もなしに口を開いたままになる。




 そうしている間に、そのままフェードアウトするように景色とその人が遠のいていくーーー


「待って…!」





 ハッ、と目を開いた。


 今度は立っているのではなく横たわっていて、その状態で右手だけ前、つまり上方向に伸ばしていた。

 匂いに違和感がないのといつもの感覚から、自分の部屋のベッドに寝転んでいるのだと判断する。


 夢、か…



 最初はぼやっとした視界が段々とピントがあってクリアになっていき、見えてきたのはやはり自分の部屋の天井…



「ご主人っ!おっはよう♪」


「わぁっ?!」



 …と、いきなり私の視界の大部分を占めてきた、童話、『長靴を履いた猫』の猫、トルクの顔。


 いきなり過ぎて瞬間的に頭が覚醒した。


 トルクは、昨日ギリギリで呼んだあの猫である。今は人獣型の為、人に耳と尻尾が生えているような見た目だが。


 いや、それより。



「おはよう…?私、なんでここに?」



 辺りを見回す。紛うことなき自分の部屋だ。でも、私が倒れたのはPHANTOMSのアジト(?)の建物の屋上のはず。



「僕が運んできたんだよ♪」


「え…あそこから?」


「うん!」



 元気にうなずいているが、あの対決場所からここまで、まあまあ時間がかかるはず…

 その距離を、運んできた?



「ええええええ!重かったでしょう!?ごめん、ごめんなさい…!」


「いや、ご主人軽かったよ?身長あるのにその軽さは逆にやばいって」



 平然としているトルクに精一杯の謝罪をしているときに、自分の髪が視界に入る。

 その色は、黒。



「あれ…ホワイトが解けてる」


「うん、魔力切れだよー。しばらく安静にしとかないと」


「え、でもトルク今…」


「自分の魔力♪」


「…え。もしかして、切れてから今まで、ずっと?」


「ずっと」



キャラは契約者とキャラ、双方の同意で召喚され、そして帰って行く。だが、契約者の魔力が切れた場合は、強制的に帰るはず。それでもこちらにいるには、キャラが自分自身の魔力を使ってこちらの世界に存在を維持させるしかないのだ。


 トルクは軽く言っているが、それに使うキャラの魔力量は膨大である。

そして当然キャラにも魔力の限界があり、適宜戻らないとキャラの魔力はこちらの世界では回復しない。

 もし限界まで使うと、最悪の場合消滅ー



「な、何してるのよ!トルクの魔力なくなっちゃうじゃない!」


「そんなの心配しなくていいよー。僕の魔力の多さ、知ってるでしょ?余裕だよー」



 だが、本人は全く気にしていない様子である。



「それでも…!!」


「ねぇ、それよりご主人、あいつらに能力屋の住所教えといたよ」


「そうなの…ってことは、負けたの?」


「そんな訳ないじゃんっ!いろいろあったんだよ!」



 トルクが私が眠ったあと何が起こったのか話してくれる。



「あぁ、そりゃあね…あいつら、ずっとホワイトだったし」


「あいつらほんっっっっとに何も知らないんだね!逆になんで魔法とか使えるのか不思議だよ」


「…初期魔法と初期装備じゃない?」



 憤慨しているトルクに自分の考えを伝える。


 初期魔法とは、初めてホワイトになったときに頭の中に一つの呪文が浮かび使えるというものである。大体は下級魔法であり、人によって何の魔法が当たるかはわからない。武器も然りだ。


 ちなみにだが私の武器は使いこなすことが出来ず、今も保管庫に眠っている。

 その武器と比較的出し入れする短剣で、保管庫はいっぱいいっぱいなのだ。



「あぁ…そんなのもあったっけ」



 私が武器をあまり使わないせいか、トルクもそのことを忘れていたらしい。



「まぁ、能力屋を紹介したなら狩られる心配もないわね」



 思っていたより強かったとはいえ、蜂道ナチ以外は中級レベル3に苦戦していたらしいから、相手が人となると厳しいだろう。

 まぁ、やっぱりキャラがいないのが大きいのだと思うけど。



「うん、そうだね。…ところでご主人、今日は安静にしとかなきゃ駄目だよ!」


「え…」


「僕人型でいとくから、ね?」



 言うと同時にトルクの耳と尻尾が消える。

 そうするともうつり目の長身イケメンにしか見えない。



「そうしたいんだけど、私、夜までに能力屋のとこに行って私のこと言わないように釘差しに行かなきゃいけないの。たぶんあいつらは今夜行動するでしょうから。あと、聞きたいこともあるし…」


「じゃあ僕もついてく」



 間髪入れずそう言うトルク。



「でもトルク、魔力が…」


「僕なら大丈夫だって!!」


「ならせめて私の魔力で」


「昨日の今日でよく言うよね?」


「………」


「………」



 しばらく無言の押し問答が続いた。



「………わかった。無理しないでね」


「うん!!」



 先に耐えきれなくなったのは、私だった。

 折れた私にむかってトルクは嬉しそうに頷く。

 そういうことで、準備(主に私が)をしてから2人で能力屋の店へと向かうことにした。


 時間ももう昼近いし、今なら違う客に出会うこともないだろう。というか、おそらく…



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