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ボウンッッッ!!!!!
叫ぶと同時に大量の煙が発生し、全員の視界が遮られた。
「!?」
顔の前まで出されていた手が何か異変を感じたのかひっこんで見えなくなる。
とりあえずそれに安堵するが、まだだ。
もしかすると反応してくれないかもしれない。
煙はその濃さの割にははやくはれていき、段々と視界が元に戻っていく。
完全に視界が開けたとき、私と蜂道ナチの間にはさっきまではいなかったものが、2人の間を遮るように存在していた。
「…え」
「は…?」
「ん!?」
「…ね、」
「猫…」
その正体は猫。
全体的にオレンジであるが、所々に黒や白が入り交じった模様の、簡単に言ってしまえば三毛猫がそこにはいた。
でも、ただの猫じゃない。
よかった…呼び出せて。
「ごっ主じーん!最近全然呼んでくれないと思ってたとこだよ。僕が恋しくなった?…って、これ、どんな状況?」
驚きまともに声が出ない5人に見向きもせず、こちらを向き流暢に喋り出した猫だったが、私の状態を察知し次第に周りを見回し始める。
「…今勝負をしてたのよ。私の勝ち抜けで。でも見ての通り私は魔力がなくなりかけで動けない。だから代わりにそいつと戦ってほしいの。相手をこの建物の屋上から出すか、戦闘不能にさせると勝ちよ」
もうあまり長くホワイトを維持することができないので、今の状況として欲しいことを簡潔に説明する。
「しゃべった…」
「なんなの…?」
「ねぇ、あの猫、靴履いてる」
「OK、こいつを倒すか落とせばいいんだね?」
俎頗ユマの言った通り、その猫は茶色の靴を履いていた。
だが猫はそんなことは当たり前であるかのように気にせず、自信の前足で蜂道ナチの方をさす。
さすが、物分りがよくて助かる。
「えぇ」
「喋る猫…」
「なんで猫!?」
驚くPHANTOMSの面々を他所に、猫は不意にくるん、と宙返りをした。
一回転して着地した時には、猫の代わりに先ほどまでの猫と同じ柄の猫耳と尻尾がそのままついたような格好をしたつり目の青年が立っていた。
「あんまりご主人を虐めないであげて…?ご主人、こうみえてもかなりか弱いから」
蜂道ナチの方を向き首を傾げながらそう言う猫だった青年ーーもとい私と契約している登場人物。
「いらないこと言わないで…」
この“登場人物”という存在こそが特に彼らに欠落した情報である。
ホワイトはそのほとんどがなんらかのキャラー物語などの登場人物ーと契約し、召喚することでキャラに戦いを手伝ってもらったりキャラの力を自分に装備することができる。
魔力の消費が多いがそれ相応かそれ以上の力を借りることができるので、契約で損することはまずないと言えるだろう。
逆に言えば、キャラと契約していないということは、その力を借りることが出来ないということなので、戦いに不利になりやすいのだ。
これが勝ち抜けでもいいと承諾した理由。
まぁ実際召喚するまで追い込まれると思わなかったが…
「え!?何が起きたの今!?」
「どっちかっていうと俺らが虐められてた方じゃないか…?」
「言われた通り、僕がご主人の代わりに出るよ。まぁ、見たところ五対一だったみたいだし、こっちの選手交代くらいいいでしょ?そもそもキャラ召喚は君らの武器と同じように戦闘手段だし、選手交代はいらないけど、今ご主人やばいし……てことでご主人、眠ってくれる?」
1人で5人に向かって一気にそう喋ると、いきなりこっちを向き、近づいてきた。
え、なんて…
話の内容を私が理解するよりも早く大きな手が顔の前に迫る。
「なっ…」
今更頭が追いついたが時既に遅し。
ファッ…
超近距離からの睡眠魔法で、一瞬のうちに私の意識はとんでいった。




