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定位置につく。
「はじめ」
「‘マカロ’」
秦中ホオは号令がかかると同時に私の背後に移動してきた。
素早く終わらせると言っていたので、これは予想通りだ。
「‘ラリエ’」
すぐに後ろを見ると、秦中ホオはその身体の大きさにはおおよそ不釣り合いなぐらいの大剣を振り上げ、下ろそうとしているところだった。
え、大剣!?
思わずぎょっとする。
「あはっ」
さぞ嬉しそうにそう笑いながら振り下ろす秦中ホオ。
「‘マカロ’!」
慌てて瞬間移動魔法でその場を離れる。
空をきった大剣はそのまま地面に下ろされー
ドッゴォォォオオオン!!!
凄まじい音とともに衝撃を与えた。
うわ。コンクリートえぐれてるじゃん。
一瞬遅れてたらアウトだっただろう。大剣でよかった。
先程の掵原リクトよりも躊躇いなくあんなものを振り下ろしてくるなんて、あいつに情というものは存在しないのか。
というか、下の階大丈夫なの?
「あ、下の階は大丈夫だから気にすんな」
私の心配を読み取ったかのようにそう言う掵原リクト。
「おいホオっ!お前、自分で修理しろよ!?」
「あー、はいはい」
いや、無理だろ。
だが羅梳シオンの言い方からして、滅多にないことではないらしい。
普段から低級ケリオス相手にどんな物騒な戦い方してるというのだ。
それにしてもよくあんな小さい身体で自分の身体以上の大きさのものを振り回すなぁ。
と、思っていたら。
「仕掛けてこないの?」
非常にわかりやすい挑発をしてきた。
恐らくこちらを怒らせたところを倒そうとしているのだろう。
それを見越して、考える。
純粋に剣同士をぶつけたとしたらこちらが危ないだろう。
だが、大剣はさっきのようにいちいちその動作が大きく隙が出来やすい。
その分を考えると身軽に動けるこっちの双剣でも渡り合えるとは思うけど…
捕まったら終わりだしな…
どうしようか。
………。
よし、決めた。
「え?」
「髪くくってる…」
下ろしていた髪を上に束ねる。
時間が長くかかると腕がきつくなってくるから手早くね。
「ねぇ、隙だらけだよ?!!」
秦中ホオの声が私の後ろから聞こえる。
上の方に大剣の気配を感じているから、もう振り下ろされるのだろう。
でも、あともうちょっと…
「バイバイっ!」
ヒュッ…
「“セアルエスパーダ”」
ガキィンッッッッ!!!!
直前、束ねた髪を1本の剣のようにし、振り下ろされた大剣を受けた。
間に合ってよかった…
先程までの双剣なら大剣が下ろされるのを止めることはできなかっただろう。
相手と同じように渡り合うために髪を一つに束ね、強度と大きさを増したのだ。
「へえ。やるじゃん」
ギリギリ…と互いが引かない状況で剣同士が押し引きする。
「じゃあ…これならどう?…‘フレイディア’」
目の前の秦中ホオが驚くというよりむしろ読んでいたというような態度でそう言った瞬間、大剣が燃えた。
「っ!」
やば。
慌てて大剣を弾き、距離をとる。
あっつ…
中級魔法まで使えたのか。大剣に炎を纏わせるなんて、危ないことこの上ない。
ほんと、物騒だなぁ。
今、2人の間の距離は結構ある。大剣を使う秦中ホオには遠距離は不向きだ。
さっきからの行動からして、また挑発が始まるのだろう。
「なぁんだ、さっきので疲れちゃった?まぁ女子だもん、しょうがないよねっ」
………なんだと?
…それは…男女差別と受け取っていいのかな?
「ちゃっちゃと終わらせてあげるから、無駄に逃げないで?」
効いているとわかったのか、そう続けてくる。
かっちーん。
挑発とわかっていてもその言葉にはさすがにキレた。
世の中の女子の皆様、あのふざけた野郎は私が責任をもって倒します。もう、瞬殺します。
しょうがない、アレを使うか…
魔力消費が激しいからできる限り使いたくないんだけど…あんなこと言われて癪だし…
「‘マカロ’」
瞬間移動魔法で相手の前へ行く。
そこには待ってましたとばかりに大剣を振り上げている秦中ホオ。
「引っ掛かったね」
「引っ掛かって“あげた”のよ」
あっちが笑っていたので負けないくらい嫌味に笑ってから、あっちが大剣を振り下ろす前に懐に入り、右目の前に右手をおき、秦中ホオの目を見ながら広げる。
「“動作停止〈ストップモーション〉”」
カッ
途端、秦中ホオが大剣を振り下ろそうとした状態で止まった。
あー…やっぱつかわなきゃよかったかも。
ちょっと、くらっとする。
「ホオ、何止まってんだよ!?」
掵原リクトの動揺した声が聞こえてくる。
ふん。まともにくらって動けるわけないだろ。
動作が完璧中二病とか思ってるでしょ。私も思う。けどこれやらなきゃ発動できないって言われたもん。
「男女差別は反対だよ?」
ゆっくりと秦中ホオに近づき、片手をそいつの身体に当てる。
「‘インパクト’」
ドンッ!!!
場外に出たのを確認してから、いきなり動けるようになり何もできずに落ちていく秦中ホオを助けてやった。
なんて慈悲深いんだ、私。
「今のは…!?」
「一瞬、だったな…」
「おいホオ、どうなったんだ!?」
「わかんない…」
驚く3人。だが、1番驚いているのは本人だろう。
あー、あと2人もいるのに。もう使えないな、今のは。それにたぶんつかえたとしても2度はくらわないだろうし。
まあ、屈辱は果たせたし、いいや。
「あら、もう半分も残っていないんじゃない?早くないかしら?」
ニヤニヤと笑みが零れる。
一斉に来ればまだ勝機はあったんじゃない?まぁそれでも勝てるけど。
武器はすごいし使いこなしてるとは思うけど、やはり情報がないとどうしても劣ってしまうんだね。
今は情報社会だからなー。
「ほら、次は誰?」
「ナチ、どうする?」
「………………」
「ナチ寝てるよー」
「じゃあ、俺が行くぞ」
邏梳シオンか。
ここからは侮れない。だってこいつは私の存在に始めに気づいたやつだから。なにより聞く限り、動体視力が他よりずば抜けていいそうだ。
まぁ、勝てるけど。
「お前、さっきの何だったんだ?」
そう言って邏梳シオンが大きい槍を出しながら問うてくる。
また武器がでかい。これは戻した方がいいな。
「…勝てたら教えてあげるわよ?」
髪をほどく。
「一石二鳥ってわけか。わかった!!」
そう言うとすぐに槍で突いてきた。
勝っちゃうから教えないけど。
そこからはとりあえず様子を見るため受け身になり、双剣で槍を避け続けた。
「てか、お前のその髪…ラプンツェルみたいだな。長さ」
「!!!」
だが、相手が何回か槍でこちらを突いた後、ふとそう言った。
え…
知ってる…?
それを髪の剣でいなしながらかろうじて答える。
「そうかしら…?」
いけない、動揺しちゃ。
「ま、ラプンツェルはもっと長いだろうけどな!!」
だが本人は本当に何となく言っただけらしく、ニカッとしながらそのまま槍を突き続けてくる。
「そうなんじゃない?知らないけどっ」
やばい、弱点を知られちゃーーーーーー倒される。
それはやばい…!!!
槍は1発が重い。大剣程ではないが、それでも横からの突きだと私としては大剣より受けにくい。
あちらの流れになると厄介だろう。
ここは俊敏さをいかしたいんだけどっ…
なんか槍の動き速くない?
ガキィンッ!!
槍を両方の剣で受け止める。
駄目だ、様子を見るとかいって、これじゃ完全に守ってるだけ…
「あなた…相当怪力なのね。さっきの大剣の人もそうだけど」
ぐぐ、槍と剣で押し合う。
「あぁ、今は簡単そうな魔法と異空間に物をストックして出し入れすることくらいしかできねーから、鍛えとこうと思って」
努力家ね…
槍をぐぐ…と邏梳シオンの方へ押す。
これ以上の力を出されたら完全に押し負けるな…
…いや、おかしくないか?
掵原リクトの次に格闘系っぽい羅梳シオンに私の方が押し勝つなんて。
私が違和感を感じたその時。
「でも、さっきの魔法は初めて見たよ。使ってみたい」
そう言うやいなや、羅梳シオンは槍から手をぱっと離した。
「!!」
あちらへ押し気味だった剣は突然行き場をなくしそのまま前へと倒れる。
足でも踏ん張っていたため、私の身体もともに。
迫ってきた剣を邏梳シオンはしゃがんで避け、私の懐に入り込み両手を私の身体につける。
「!しまっ…」
そういうことか…!!
「‘強大衝撃波〈ヒュージインパクト〉’」
ドッ!!!!!!
いつか出てきた魔法集みたいなの作ります。
今回少し多いです。




