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とんでくる拳を避ける。
やっぱり格闘系か。
今は何も着けずに、魔法で強化して殴っているようだ。
何もつけてないだけマシだろうが、それでも女子に拳なんて危ないな。当たったらどうするんだ。
いや、私が本気でと言ったからだけども。
でも、そっちがそう来たなら。
「“ダブルソード”」
対抗しようか。
左右対称の位置にある白い髪が最初と同じく剣のように尖る。
それを見た掵原リクトが拳を引いた。
「素手はやめといた方がいいわよ?」
血だらけになるだろうし。
言うと同時に髪の剣を伸ばす。
「っ、‘ラリエ’!」
瞬時に掵原リクトの手に剣が現れた。
あ、いいなー、保管魔法。
キィンッ!!!
私の髪と掵原リクトの剣が交差する。
「1本でいいの?」
「俺は一刀流だからな」
言い方かっこいー。一刀流て。
「じゃ、頑張って受けてね」
ま、私は2本だけど。
掵原リクトの剣を弾き、もう1度剣を振る。
ガッ!!
私の髪の剣を2本とも受ける。
うーん、なんか押しが弱い。
「心配しなくても私の髪は切れないから本気で大丈夫だよ」
と言いながら力を強めて押し切った。
「ほら、頑張って」
「はぁっ!!!」
キィンキィンッ、キィンッ
「あははっ」
楽しいなぁ。
ちなみに、髪が勝手に動いているようにみえるが、今は私の意識通りに動くものだから、楽でもないのだ。
オートも出来るけど、魔力消費がより激しくなるしね。
「リクトが圧されてる…」
「何あの髪、生きてるみたい。なんでもありじゃん」
羅梳シオン、秦中ホオは掵原リクトが押されていることにすごく驚いている。
確かに5人の中じゃ格闘系っぽいからな。
ここの5人は新人だからキャラを持っていないだろうし、まだわからないけど、今はどちらかというとアキノさんみたいなタイプかな。
そんなことを考えている間も私の猛攻を受け続ける掵原リクト。だが少しずつ後ろに下がり、あと5mくらいで落ちるところまで来た。
「危ないっ、リクト!!」
「何がだ!?」
俎頗ユマが叫んだが、気づいていないみたいだ。
外部の忠告もなしにすればよかったな。
「君、もうすぐ落ちちゃうわよ?」
仕方なく忠告する。
「!?!?」
そこでようやく自分の置かれている状況に気づいたようだ。
でももう遅いよね。
「ばいばーい」
シュッ!!
トドメの一太刀を放つ。
が、手応えがない。
「あれ?」
「‘ラリエ’」
ジャキッ
「………」
背中を取られた。
今のは、明らか銃を構える音だ。
瞬時に移動して、出したんだ。
あーあ、油断したなぁー。
「……降参してくれないか?」
懇願するような言い方で、そう言う掵原リクト。
どうしようか。
いや、降参っていう手段はないけどね?
「降参はしないわ。撃っていいわよ」
だって倒れない自信あるし。最悪急所さえ守れればいい。
背後から動揺したような空気を感じる。
「撃たないの?…私なら撃つわ」
銃を持って迷うなんて言語道断。
私は瞬時に髪の剣を後方に向けた。
そのまま2本の剣が掵原リクトに襲いかかる。
「!!!‘マカロ’!!」
「‘マカロ’」
当てるつもりはなかったから瞬間移動魔法を使ったけど、掵原リクトも使ったらしい。
縮まっていた距離は一気に離れた。
視界に入った掵原リクトの顔に浮かんでいたのはーーー驚きと戸惑い。
攻撃はしてこない。
そんな甘くて今までよくやってこれたね…
ケリオスも低級としか当たったことないのかな?
もう少し待ってみたが、何もしてこない。
驚きすぎて思考が停止でもしているのだろうか。
………退屈になってきた。
「ね、攻撃しないのなら終わるよ?」
私の勝ちで。
「いや、まだ続ける」
私の言葉に我に返ったような反応をした掵原リクトが、こちらに向かってきて、また剣と剣が交差する。
けど、さっきよりさらに力がない。
……………。
これ以上やっても無意味だな…。
終わろっか。
「もう面白くない。終わるね。‘マカロ’」
瞬時に後ろに移動し、掵原リクトの背に両手を当てる。
まだショックを引きずっているのか相手の反応が鈍く、思った通り容易に回り込めた。
今は建物の真ん中らへんだから、っと。
「‘強大衝撃波〈ヒュージ・インパクト〉’」
ドッ!!!
俎頗ユマの時よりも大きな音がし、清々しい程おもいっきり飛んでいって、掵原リクトは場外となった。
この髪、いちいち戻すのも魔力消費するからこのままにしとこっか。
「はい、次は?」
笑顔で振り返った私を驚いた顔で見つめる他3人。
蜂道ナチは相変わらず爆睡しているから、羅梳シオンか秦中ホオか。
「ユマもリクトもしょうがないなぁ。僕がさくっと倒してあげるよ」
どっちが来るだろうか、と思っているとそう言いながら秦中ホオが立った。
「もう戦い方は十分に観させてもらったからね」
ニヤ、という表現がぴったりの人を小馬鹿にしたような表情をしながらこちらに歩いてくる。
そんなに自信があるのか?
「すごく自信があるようね」
「君も余裕そうだよね。でもすぐに終わらせてあげるから」
いちいち言い方が鼻につく。
だが、まぁいい。口じゃなんとでも言える。
その軽口に値する力があるかどうかだ。
まだ3人目。魔力はまだもつだろう。
とはいっても減りは早めなので安心はしてられない。
「じゃあ、始めましょうか」




