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童話契約物語  作者: ia
第1章
13/30

12

 



「来たわね…満月が」



 空を見上げる。

 そこにはこの間までどこか物足りなかった月ではなく、しっかりと満月が浮かんでいる。



「一ヶ月に1回、この満月の日には大量にケリオスが発生する…」



 雲もあまりなく、くっきりとした形を拝める、そんな今日は…



「で、前延期した分を今日するのか?」



 あ、先言われた。



「まぁもっちろん、私達が一番だけどねっ?」



「ありす、こないだぶりにゃー!」



「こら、チェシャ腕振り回さないで」



 そう、今日は中止された討伐勝負をやり直すべく、ヒビキ、ミハルともう1度集まったのだ。


 今回はチェシャ猫も泉も最初から出て来ている。



「ええ、そう!前はちょっといろいろあったものね」



「にゃ、僕を呼んでくれたらそんな奴ら跡形もなく…」



「いや、それは駄目よ!?」



 物騒だ。どうするというのだ。

 目が若干本気っぽいのが余計に怖い。



「今回はいつもの倍くらいは出てくるはずだから、全員やられないようにな」



「なに、それ馬鹿にしてるの?」



「一応だよ、一応。万が一の時は直ぐに連絡すること。ルールはいつもと一緒でいいだろ?」



「ええ」



「じゃあ、カウンターを用意…してるか、もう。じゃあ、よーい…スタート」



 ピッ



 一斉にタイマーのスタートボタンを押し、この前のように別の方向に散らばる。



 今回は単身でどれだけ倒せるかやってみようと思ってたし、その方向は変えずに頑張ってみるか。




 ーーーーーーーーーーーーーーーー




 ミハルside



 いつもより多く現れるケリオスを難なく倒しながら、ミハルはポツリと呟く。



「イオ、最近無理してたよね」



「…そうみたいだにゃ」



 小さく呟いたつもりだったが、チェシャ猫にはしっかりと聞こえていたようだ。


 先日のPHANTOMS、とやらの接触。イオに話を聞いたところ、何も知らない新人達らしいが、イオを巻き込むのはやめて欲しい。




「あの子、すぐ無茶するからね…」



「でも、最近は控えてるみたいだったにゃー」



 確かに、今は魔力を温存しているようだ。

 この前開かれるはずだった討伐勝負の時にも、あまり魔力を使わないようにすると宣言していたから。



「でも、今日は満月よ?」



 そう、普段よりも発生する数が明らかに多いのだ。


 現に話している間にもケリオスが次々現れる。


 見たのは低級レベル1ばかりなのでまだいいが、もしレベルが高いのが現れたら…

 それならまだマシだが、級が上がるとホワイトになるだけでは討伐は難しくなる。


 こちらがやられる可能性だって出てくるのだ。



「ま、ありすだから大丈夫にゃ!」



 ミハルの考えを読み取ったかのように、前を向きながらチェシャ猫が明るくそう言った。


 自分でも気づかない内に少し不安な気持ちになっていたミハルには、その言葉でそれに気づく。



「…そうよね」



 もしもの時は、魔力を使って対抗するだろう。



「それに、いざと言う時には僕が助けに行くにゃ!」



「えぇ、お願い。じゃあとりあえずはこの討伐勝負に力を注ぎましょう」



「にゃ!」




 ーーーーーーーーーーーーーーーー



 ヒビキside



「ねー、イオちゃん今日1人でやるのかなー、この勝負」



 対峙していたケリオスを倒し、一息ついたヒビキの頭上の少し上に浮いている泉が、人差し指を口に当てながらそう言った。



「そうなんじゃねーの」



「もー、受け答えそっけなぁーい!」



「そう思うなら少しはケリオスの相手しろよ」



 彼女は先程からヒビキがケリオスと戦っている時にふよふよ浮きながら適当に応援や冷やかしを入れるばかりなのである。



「えー、だってほら、私下半身水だしぃ?」



「戦えるだろ」



「女の子に戦わすって紳士としてどうなの?」



「ここは英国じゃねーよ」



「イオちゃんも1人で頑張ってるんだよー!」



「じゃあ帰れ」



「いぃ~やぁ~だぁ~~ねぇ~~」



 いつもと変わりないやり取りが続く。



「ほらっ、応援してあげるよっ!フレー、フレー」



「…上級レベルが出たら知らせろよ」



「オッケー!イオちゃんの近くに出たら言うね☆」



「誰がそんなこと」



「心配なんでしょ~~?見え見え☆だよ!」



「な、」



「あ、ほらケリオス来たよー!」



 なんともいい(?)タイミングで現れたケリオスを見、しぶしぶ反論しようと開きかけた口を閉じ、迎え撃つ準備をする。



「でも、とりあえずさくっと倒して2人には勝っちゃおうね?」



 ザンッ!



「当たり前」



 早々に目の前のケリオスを倒し、次なるケリオスを探しに屋根へ跳び移った。




 ーーーーーーーーーーーーー



 イオside



「あー!もうキリがない!これだからゲリラは!」



 短剣を片手に思わずそう叫んだ。



 倒しても倒しても次々と現れるケリオス、ケリオス、ケリオス。



 いや、満月だからこんなものだとはわかっていたけど。それを踏まえて延期分を今日にしたけど。



「やっぱりさすがに短剣だけじゃ厳しいよね…!」



 最初は低級レベル1ばかりだったはずが、気がつけば目の前にいるのは中級レベル2。



「満月の時は成長も早いんだっけ…!」



 成長しレベルが上がっていくと、真っ向から斬ろうとしても避けられる為、工夫が必要になってくる。



 魔力を必要最低限しか使えない分、やはり倒すのには時間も体力も消耗してしまう。


 現に今、少し疲れている。

 いつもならこのくらいなんともないんだけど。



「でも最近ホント魔力使いすぎてヤバいからなー」



 回復が追いついていない為、迂闊には使えないのだ。

 今使ってもすぐに底を尽きるだろうし、回復するのが更に遅くなる。悪循環だ。



「ちょっと、危ないっ!」



 ダァン!ダァン!


 その時、後ろから声とともに銃を撃った音が響いた。


 振り返ると、形を保てなくなったケリオスがほんの数十センチ先で消滅していくのが映る。



「え…」



 もしかして、危なかった?

 遅ればせながら冷や汗が出てくる。



「大丈夫?」



 駆け寄ってきたのは、少し年上くらいの女子ーもちろんホワイトである。



「満月の時に立ち止まって考え事なんて、本当に危ないよ?」



「あ、すいません。助けてくれてありがとうございました」



 確かに、さっきのは危なかった。

 油断してる場合じゃない。



 改めて助けてくれた女子をよくみる。

 下の方に、ポニーテールをする過程でやめたような形の簡単なお団子がしてあり、そこから余った髪はウェーブしている。

 普通の黒いゴムでくくっているので、ホワイトとなった今、白い髪にはそれはよく目立つ。


 手には2丁の銃ーよく映画とかでみる、もっとも一般的な形状のものーがおさまっており、先程私はこれらによって助けられたのだろう。



「あの、銃弾、どの形状のものか教えてもらえますか?」



「え?なんで?」



「今ので2発、無駄にしてしまいましたよね。弁償しますので」



 ナイフなどならともかく、銃は銃弾を消耗する。自分の魔力をこめて弾として撃てるものもあるらしいが、先程の音は明らかに前者だった。


 しばらくキョトンとした顔をしていた彼女は、



「いや、そんなんいいよ!普通にケリオス狩っただけなのと変わらないし!」



 笑いながらそう言った。

 やはり少し大人びた感じで、姉のような感じを想像させる。

 いや私、姉いないけど。



「いや、でも」



「気にしなくていいんだよ、そういうのは。そんなつもりで助けたんじゃないしね。それより、あんた新人?まぁ、銃弾のこと知ってるならそうじゃないだろうけど」



「あ、新人ではないと思います」



「じゃ、キャラは?」



 ホワイトは大体キャラと契約している。自分だけで戦うという(すべ)もあるが、キャラの効果の恩恵を受けた方が有利なのに違わないから、あまりそうするホワイトはいない。



「お恥ずかしいことに、最近魔力を消費しすぎて今、あまり使わないようにしているんです」



 もうすぐPHANTOMSとも戦わなきゃいけないしね。

 新人だろうと、舐めてたらいけない。武器は使えるだろうし。



「そうなんだ。でも、危ないよ?止めないってことは…あぁ、討伐勝負してるんだ」



 何かを悟ったように彼女は顎に手を当て頷いた。



 え、なんでわかったんだろ。



「じゃあ私と一緒に行こ。どうせ相手の子らはキャラ使ってるでしょ?」



「そんな、申し訳ないです!」



 彼女だってポトを貯めるためにここにいるのだ。そこまでしてもらっては申し訳なさすぎる。



「あはは、大丈夫だって。私、もう結構貯めたし。もともとそんな困ってるわけでもないしね」



 それに、と彼女は続ける。



「近々使う予定なんでしょ?魔力」



「!」



 なんでわかるのか。



「まぁ、いらないならいいけど…」



「いえ、それではありがたくご一緒させて頂きます」



「ん、そう来なくちゃ」





キャラとの契約の仕組みやポトについてはもう少し先までお待ちください

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