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童話契約物語  作者: ia
第1章
10/30

9

 


 ーートゥルルルル、トゥルルル。

 ーガチャ。


「もしもし?」


 ーーーーーーーーーー。


「イオから電話なんて久しぶりだな。どうした?」


 ーーーーーーーーーー。



「ーーーーー了解。あいつも連れてすぐ行く」


 ガチャ。


 ーーツー、ツー。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 サァァ…


 時折吹く風が私の髪を弄ぶ。


 ここはどこかの建物の屋上。待ち合わせに指定した場所。


 時刻はまもなく午前1時となる。



「………………」



 呼んでしまった。思わず。

 こんな突然迷惑だろうに。

 ーーーーーーやっぱ断



「なにしけた顔してんだ、イオ」



 後ろから頭をポン、と触られる。


 見ると、いつも通り落ち着いた雰囲気のヒビキがいた。


 もちろんホワイトの状態。



「…来んのはや…」



 電話して十分たったかたってないかくらいなのに。



「すぐ行くって言っただろ。あ、さっき連絡したら、あいつももうすぐ来るって」



「そっか」



 久々だなぁ…



「あーりーすッ!!」



 ぎゅっ!!!!


 突如そう声がした瞬間、私は後ろから思いっきり首を抱きしめられた。


 否、抱き締められた、といったほうが近いだろうか。


 やば、息が…



「……………」



「おい、締めすぎだ。イオが息出来てねぇ」



「あ、ごめんにゃ」



 ヒビキの一声で、腕は離れ、酸素を無事器官に取り込むことができるようになる。

 あーよかった。空気のありがたみ感じたよね。



「スー、ハー、スー、ハー…いいよ。久しぶりだね。チェシャ」



 後ろを振り向くと、予想通り頭から猫耳、そして後ろには尻尾が生えているつり目の青年が立っていた。

 彼の瞳はそれぞれ違う色に輝いている。



「久しぶりにゃ、ありす」



 至近距離にも関わらずにっこり笑って手をひらひらと振るチェシャ。

 名前の通り、『不思議の国のアリス』の、あのチェシャ猫である。

 ダボダボの長袖は最早萌え袖を通り越していて、どちらかというと能力屋のような服のサイズが極端に大きいような感じに近くなっている。



「前から言ってるけど私はアリスじゃないからね…」



「にゃ、ありすはありすにゃ」



 チェシャは何故か私のことをありすと呼ぶ。『不思議な国のアリス』なんてアリスどころか何のキャラとも契約してないのだが。


 どうしてそう呼ぶのかは聞いてもはぐらかされる。




「はい、ストップ」



「あ!」



 私とチェシャの間に手刀がはいる。



「遅かったな」



「チェシャが勝手に先に行くから」



「ごめんにゃ」



「いい。久しぶりだね、イオ」



 こちらに向かってそう言ったのは、こちらもいつも通りショートヘアのクールな雰囲気のミハル。


 チェシャはミハルと契約している。



「ごめんなさい、2人とも。急に呼び出して…」



「いいよ別に。今日も勝負、するんだろ?」



「うん!いいでしょう?〈ケリオス討伐数勝負〉」



「もちろんよ」



 私達3人はたまに集まって、ケリオスを制限時間内にどれだけ多く倒せるかという勝負をしているのだ。



「まぁ、僕とミハルが勝つに決まってるけどにゃ」



「いえ、負けられないわ、久々だし」



「いや、久々関係なくねーか?まぁ、俺らが勝つけど」



 そう言いながらヒビキは『金の斧銀の斧』の泉を召喚(だし)た。



「はーい、呼ばれて飛び出てじゃ」



「それ以上は言うな」



「…ゴホン。今日も対戦だねっ?勝つのは私達だよっ!」



 彼の頭の少し上あたりに、ゆるいカーブの髪を首まで伸ばし、下半身が水になっている泉が出てきた。



「ルールはいつも通り。制限時間は1時間、ケリオス討伐数が多い人が勝ち。ちなみにレベルが高いのを倒したらそれに乗じて和も増えるって事で。まぁいつも通りね」



 強いケリオスほど、厄介になる為、数も加算される仕組みになっている。


 確認が終わり、3人とも、手に四角い機械のようなものをのせる。


 これはホワイトには欠かせない、様々な機能が内蔵されたものである。

 今回はカウントタイマーの機能を使う。



「じゃあ、カウントタイマーを一斉に起動するわよ。せーの」



 ピッ



 一斉に持っていたカウントタイマーを起動させる。



「チェシャ」



「はいにゃ!」



「泉…行くぞ」



「はいはーい」



 そして、自分の相棒とともにすぐさまそれぞれ別方向に散らばっていった。



「まぁ、今日は久しぶりに張り切って頑張ろ」



 2人とはまた別の方向に進む。



 スタート地点から少し離れたところで、早速目の前に現れたケリオスを持っていた短剣で倒した。

 このくらいなら短剣で十分いけるな…

 いや、普通の人は切れないよ?銃刀法違反じゃないからね?




 ーーーその時。私は感じた。



 徐々に後ろから近づいてくる気配を。

 ケリオスではない、人ーーホワイトの気配。


 そして、その気配には覚えがあった。


 邏梳シオン…


 気は、コツをつかむと見えてなくても誰かわかるし、正確な位置もわかるようになる。といっても、ある程度距離が近くないと感じられないし、サーチ魔法には当然劣るが。


 逃げる、というのも考えたけれど。


 …今ここをどくとあの2人が見つかる可能性があるな…



 そうなると事がややこしくなるため、そっと2人に伝達する魔法を唱え、状況と今すぐホワイトを解くよう説明すると、私は後ろを向いて邏梳シオンと対峙した。





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