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Trick.or.Treat  作者: 風雅雪夜
2〜4話(1話は短編に)
3/23

Song of the Dead

不定期投稿。約二年半ぶりに満を持して。

今回は長いですよ。だいたい3万文字ありますので。


 季節の設定は秋(西洋の死者の日あたり)ですが、愛をテーマにしたのでこの時期に投稿です。愛にも色々な形があります。


 純愛、博愛、家族愛、友愛、狂愛、そして愛憎も。

 魔界には何も死者だけがいるのではない。割合で見れば生者の方が多いのだ。魔界で生まれた生者、人間界で生まれた生者がいる。そして死者に関してはそのほとんどが一度死んで生き返った再誕者(さいたんしゃ)のゴースト族やアンデット族である。

 ルカ達で説明すると、再誕者に当てはまるのはマミとジャック、フラン、そしてトムだ。ゴースト族にはジャックとトム、アンデッド族にはマミが該当する。フランはまだ扱いが難しくゴーレムなのかアンデットなのかそれともモンスターなのかで未だに論争をされている。

 そんなある日、マミのもとに一通の手紙が届いた。


「マミ、手紙だよ」

「手紙?」

「初めてね。マミに手紙が届くなんて」


 ぎこちない手つきで、そっと封を開けるマミ。


「何て、書いてある?」


 難しい言葉はまだわからないマミはルカにまず読んでもらう。

 ソファーにノアールとマミを隣に座らせてルカは手紙を読み上げる。


「拝啓、光の賢者様、マミ様、黒猫ノアール様、時下ご清祥のこととお喜び申し上げます。私共はアンデット協会です。今回、マミ様をアンデッド協会に是非迎えたく、お手紙を差し上げました。先の夢喰いの魔女事件、天魔争乱事件でマミ様のことを耳にしました。ミイラであるマミ様はアンデッド族に分類されます。我々協会に是非とも迎え入れ、アンデッドという種族同士の交友を深めたいと考えております」

「協会に入れってこと?」


 ノアールが口を挟む。


「ノアール、まだ続きがあるよ。えっと……。まずは我々のことを知っていただきたいと思い、会合にご招待致します。会場は死者の国入口のホーネットの館。日時は死者の日の、赤き血の時に開場。会合は、呑まれる闇夜の時より、月が沈むまで。お気軽に遊びにいらしてください。お連れ様を連れての参加も歓迎です。心よりお待ちしております。……だって」


 手紙を読み終えてマミに問う。


「どうする? 行ってみる?」

「どうしよう」


 マミは手紙を眺めながら呟く。


「行ってみたらどうよ? 気軽に遊びに来いって書いてあるんだし、死者の日にもまだ時間はあるし、誰と行くかはそれまでに考えればいいんじゃない?」

「そうだね。他の皆にも聞いてみようか。誰か興味があるかもしれないし」

「うん」


 アンデッド協会の会合に少しだけ胸を踊らせた。




━━━━━━━━━━━━━━


「じゃあ、ジャックとトムはゴースト協会の方で慈善活動があるんだ」

「ええ。魔界の孤児院へお菓子を配るのです」

「それでね、一緒に遊んだり、劇とかのパフォーマンスをするの!」


 嬉しそうに答えるトム。今からとても楽しみなようだ。


「アンデッド協会も興味がありますね。他の異種族の方々からのお話を聞く機会はとても貴重ですから」


 すごく興味があるようでとても残念がっていた。


「大丈夫。慈善活動、行って。皆待ってる。楽しんできて」

「有難うございます、マミ」

「後でいっぱいお話しするね!」


 いつもより三割増しで高く飛ぶトムは本当に嬉しそうだった。それをマミは見ている。


「フランはまだ審議中だから連れていけないものね。早くアンデッドかゴーレムか決まればいいんだけど」

「私がアンデッドだから、そうじゃない方が、ジャック喜びそう」

「ふふっ、そうだね」




━━━━━━━━━━━━━━


「アンデッド協会か」

「アンデッド族も色々なやつがいて面白いぞ」


 死神サリエルと悪魔セーレに聞いてみた。

 一緒に来ないか、と問うと彼らはマミに謝る。


「すまない。私は仕事で行けない。セーレは?」

「俺は久しぶりに先輩と逢う約束しちゃったからな。この前の事件で急に会いたくなってさ」


 ばつが悪そうな顔をする二人。


「大丈夫。約束大事。仕事も大事。セーレ、先輩と楽しんできて。サリエルはお仕事頑張って」

「おう! 人間界の土産買ってきてやるぞ」

「ありがとうマミ。私も何か土産になるものを今度渡さないとな」


 それぞれは頭を撫でた。心優しい死神と悪魔と別れ、今度は人間界へ向かった。確実に行くであろう人物がいるからだ。



━━━━━━━━━━━━━━


「アンデッドぉ?」

「ああ、それなら、僕のところにも誘いが来たよ。僕も半分はアンデッド族だから」


 ヴァンの家に遊びに来ていた人狼のウルは、ルカ達の話を聞いて不思議そうな声を上げる。そして、ルカ達に届いたものと同じ招待状を見せるヴァン。彼は半吸血鬼(ダンピール)だ。


「吸血鬼もアンデッドだったね」

「うん。母さんがアンデッド協会の理事の一人だから、僕は母さんと一緒に行く予定。マミも一緒に行く?」


 知り合いがいるなら少し安心する。


「うん」

「わかった。母さんに後で伝えるね。母さん、今、寝てるから」


 ヴァンの母親は本物の吸血鬼でクイーン・オブ・シルバーメアと呼ばれていた有名な吸血鬼だった。今でも実力は衰えていないが、昔と比べると母親の愛に溢れているので最近、吸血鬼界隈では尊敬の念も込めてマザー・オブ・シルバーメアと呼ばれている。


「ところで、ルカはいいの? ルカも興味ありそうだけど」

「うん。でも、私は一応最後の最後にね。保護者だし」

「僕らと歳があまり変わらない保護者ってどういうことなんだろう」

「人間界と魔界ってシステム違うから」


 同じ尺度で見てはいけない。


「グレンは確か試験だっけ?」


 魔界で容姿もよくモデルをしつつも薬師を目指す仲間の一人グレンは、その翌日に薬師二級の試験がある。翌日の試験のために彼はよく眠り万全の状態で試験に臨もうとしているため、今回は声をかけなかった。

 彼はモデル業の傍ら勉強をしてきた。そしてついに試験を受けるのだ。これに合格すると風邪薬など簡単な薬を製造し販売することができる免許が与えられる。彼が目指すのはその上の一級で、本格的に薬師になろうと勉強している。ルカの役に立ちたいのだ。そのためには絶対に薬師になる、と心に決めている。


「グレンは大変な中でもかなり頑張ってきたから受かってほしいね」

「うん」

「あいつなら大丈夫だろうよ。なんたって姐さんが教えてきてサポートしてやったんだ。これで落ちたら俺が許さない」


 ウルが言う。皆、グレンを応援しているのだ。




━━━━━━━━━━━━━━


 死者の日、血の時。死者の国の入り口にマミ、ヴァン、ヴァンの母親のダイアナ、そしてルカがいた。


「ここが、死者の国……」

「いつ来てもこの国は変な匂いがするわ。賢者さん、大丈夫?」

「はい、守りの呪文やお守りもしてますので」

「気分悪いと感じたらすぐ言いなさい。一度国を出て体調を整えるといいわ」

「はい」


 ダイアナはルカを気遣う。


「ヴァンもよ。マミちゃんは大丈夫よ。貴女は純粋なアンデットだから」

「はい」


 4人は足を踏み入れ、目の前のホーネットの館へ歩き出す。同じ魔界でも死者の国は自分達が住んでるところとは違う。いろんなものが混ざったような匂いがする。アンデッド族以外には、かなり刺激が強く、対策をして行かないとすぐに体調が悪くなる。ルカは入念に何重にも守りの呪文を自分にかけ、守りのお守りも着けた。


「これはこれは、シルバーメア様! 賢者様!」


 外にいた受付の一人が声をかけてきた。それはゾンビだった。


「あら、貴女、確かゾラだったわね」

「はい、シルバーメア様がここにこられるなんて滅多にないことです。まぁ、どうしましょう。こんな格好で」


 受付としてスーツを着ているゾンビの女・ゾラはあたふたしだす。


「かっこいいわよ、ゾラ。似合ってるじゃない。いいわよー、スーツ女子」


「きゃー」


 かなりテンションが高めなゾンビだ。でも、とても友好的だ。かなり好感が持てる。


「ゾラ、騒々しいです。周りがドン引きですよ。まったく。……ダイアナ・シルバーメア様、ルカ・クラウディア様、本日はご来場有難うございます。御子息ヴァン様、マミ様も死者の国へようこそ」


 漂う霧の中から現れるようにして出てきたのは吸血鬼の男だった。神経質そうで眼鏡をかけている男性。貴族のような格好をしている。


「久しぶりね、ドロワ。貴方も元気そうね」


 ドロワ・クルーゾ、現在のアンデッド協会の理事長である。


「……仕事してください、ゾラ」


 簡単に会釈をしたドロワはすぐにゾラに顔を向け注意をする。注意をされ仕事に戻るゾラは名簿に印を書き入れていく。


「後でゲームがありますのでこれをお持ちください。まだ中身を空けないように」


 封筒を渡された。封筒は薄っぺらい。入っているのはカードだろう。ゾラはルカにも封筒を渡そうとしたが、チーム戦で離れてしまえばマミが不安で潰されてしまうので遠慮した。


「ごめんなさい。マミを不安にさせたくないので。私はマミの保護者ですから」

「失礼致しました」

「いえいえ、大丈夫ですよ。マミと楽しみますから、顔をあげて。泣かないで」

「おお、お優しい……」


 受付を抜け中に入ると、既に多くのアンデッドが集まっている。吸血鬼にゾンビ、スケルトンにミイラ、グールに更にアジアの方のキョンシーまで様々な種族がいた。


「すごいね」

「うん、いっぱい」

「だいたいいつもこんな感じよ。魔界もグローバル化が進んでいるから、たまに知らない種族もいるわね。それはそれで面白いわ」


 説明するダイアナ。


「あら、あれは珍しい」


 隅の方へ歩いていくダイアナ。いらっしゃいと目で合図をしたので行ってみる。


「久しぶりね。貴方も来てらしたの? ……そう。元気そうで何よりね。……私もよ」


 しゃがんで話しかけていたのは何やら血のような赤いぶよぶよとしたスライムみたいなものだった。これはいったいなんなのだろう。


「彼も吸血鬼よ。それもこの人、かなり最初の世代のね。長老とも言えるわ。三代前のアンデッド協会の協会理事長よ。色々ツッコミどころがあるでしょう?」

「吸血鬼なの?」


 原初の方の吸血鬼はこのような姿をしたものも生まれていたと伝承では伝えられている。人型でない吸血鬼は初めてだった。目も口もパーツらしいパーツはどこにも見えないのに、今ダイアナはどうやって会話をしたのだろうか。


「長い付き合いがないと難しいのよね」


 それはわからない。アンデッドって奥が深い。




 パーティーは進み、レクリエーションゲームの時間になった。


「皆さん、受付で配った封筒を開けてください。カードが入っていますね? そのカードと同じ絵柄を持つ方とチームを組んでください」


 受け付けにいたゾラが指示を出す。チーム戦でやるゲームとは一体なんだろう。

 チームでかたまり出したので、マミとルカも同じチームメイトを探す。カードは星座の記号が描かれている。蟹座の記号だ。12星座なら、12のチームが出来るはずだ。


「蟹座……蟹座……」

「山羊座のカードの方、他にいますかー?」


 近くのアンデッドが声をあげる。呼んでくれるならすぐに見つかる。声を出さずに探せとは言われていない。


「蟹座のカードのチームはどこですか?」

「こっちだ」


 落ち着いた子供の声がルカ達に教える。それはアジアのキョンシーの子供だった。よくある中華服に、頭の帽子には赤い文字の書かれた黄色の札(布製)が付けられている。


「僕も蟹座。ここが蟹座」

「ありがとう」


 蟹座のチームには他にもスケルトン、リッチがいた。


「やや、これはかわいいミイラっ子だ」


 カチカチと歯を鳴らしてスケルトンが言う。骸骨同然の姿なのにどこから声を出しているのかは、考えてはいけない約束である。


「まず、自己紹介ですよスケア。失礼。私はリッチのマイアです。リッチになる前は魔女でした」


 スケルトンのスケアを嗜めて挨拶をするのはリッチのマイア。彼女のリッチという種族は知らない者も多いかもしれない。リッチというのは、生前強力な魔法使いや王だった者がアンデッドになったものだと言われている。スケルトンやミイラのようでもあるが霊体でもある、というちょっとややこしい種族だ。


「僕は見ての通りキョンシー。リャン」


 それぞれが自己紹介をする。


「私はマミ。一緒に来てくれたのはルカ」

「ルカ・クラウディア、魔女です。マミの保護者として付き添いで参加してます。マミのことよろしくお願いします」


 頭を下げるルカ。それを見てマイアは、あぁ、と声をあげる。


「賢者様ですか。お会いできて光栄です」


 ルカのことを知っているマイアは握手を求める。会えて嬉しいようだ。


「誰なのだ? 有名なのか?」

「リャン坊っちゃんはアジアだから知らないかぁ。彼女は西洋魔界で、最年少で賢者になった人さね。西洋の魔界じゃあ、その名を知らない者はいやしないんですよぉ」

「そうなのか」


 リャンはアジアの出身で魔界はアジアの方で活動しているから西洋のことについては疎い。ルカのことを知らないのも仕方ない。


「賢者、失礼した。僕は貴女を知らなかった」

「リャン君だったね。謝らないで。皆、最初は初対面だし知らなくて当然だよ」


 優しく微笑んでやる。


「チームがまとまりましたのでゲームの説明に移りたいと思います」


 そういえばヴァンやダイアナは何処なのだろう。辺りを見回すとヴァンは格好からして吸血鬼の青年と仲良く話している。吸血鬼の友達が出来たようだ。ダイアナは特別席で会場を見ている。ゲームには参加しないようだ。ルカに気づき手を振ってきたので振り返した。


「4人一組でチーム対抗魔界双六を行ってもらいます」


 魔界双六。スタートからゴールまでを目指してサイコロを振り、出た目の数だけ進む。マス目にはお題があるマスがあり、そのお題をクリアすれば特別ボーナスを貰えて更にマスを進めることが出来る。早くゴールへ着いた者が勝者となる。ただ、魔界、と付いているため、お題の内容はブラックなもの、過酷なものもある。


「今回はアンデッド協会が皆様アンデッドの為に魔界双六を一部改編したので、魔界双六アンデッド版になっております。危険な内容は一切ございませんので、ご安心ください。今宵は楽しくいきましょう!」

「イエーイ!!」


 ルカとマミは安心した。


「火とか太陽とかあったら、我々死んでますからね。もう死んでますけど」

「マイア……」


 マイアの言葉においおい、と声をかけるリャン。


「ドロワ様、お願いします」


 ゾラの後ろにいたドロワは立ち上がると力を解放させる。会場からは、いつのまにかテーブルが消えていた。そして、ホールの中は夜空になっており参加者達は空中に浮いていた。


「ルカ!」


 足場が見えなくなり、無くなったと勘違いしたマミがルカにしがみつく。ルカはそっとマミの背に手を回して優しく解説をしてやる。このカラクリを知っているからだ。


「大丈夫だよ。これは吸血鬼の力で空間を生成してるだけ。このホール内を双六の盤に作り替えるんだよ。でも、すごい力」


 ルカのその言葉通り、足元は双六盤になった。星座の星と星を繋ぐように、マスとそれらを繋ぐ道の線ができる。


「皆様、盤の用意が出来ましたのでスタート地点へ移動してください」


 ぞろぞろと移動するアンデッド達。ルカ達も移動する。


「皆さん、魔界双六のルールはおわかりですね。このゲームでは皆様がコマです。でも、厳しいお題はありませんから安心してくださいね。それでは、最初にサイコロを振るのは……牡羊座のグループです!」


 牡羊座のグループがサイコロを振る。出目は4。チームは4マス進んだ。白マスは何もなし。次の牡牛座になる。割合も白マスの方が半分以上あるのだから安全に終えることが出来るだろう。


「私達の番ですよ。マミさん、貴女振りますか?」

「私が?」


 マイアからサイコロを受け取りマミは振る。出目は6。トップに躍り出た。


「やったやった! マミちゃんやるねぇ」

「いいぞ」


 しかし、そのマスの色は青である。


「青、マス……何があるの?」


 心配そうにマミが尋ねる。


「青マスは水に関するお題です。どれどれ……」


 青い箱の中に手を入れて三角の紙を引いた。開いてゾラはドロワに見せる。お題のセッティングも彼の仕事らしい。ドロワが頷いて力を使う。その間にゾラが説明をする。


「蟹座チームは逃げる魚を制限時間内に捕まえるものです。擬似的な水中に魚が12匹現れます。それを1分で全て捕まえてください。あぁ、賢者様は魔法でお手伝いしてはダメですよ」

「わかってます。マミ、大丈夫だよ。頑張れ」


 大きな水槽の中に魚が現れる。水槽の中にはルカ以外の蟹座チームも入っている。


「よーい、スタート!」

「リャン、貴方は魚を追いたてなさい。貴方は早いですから、これ位どうということもないでしょう」

「うむ。余裕だ」


 リャンはキョンシーの身体能力を生かして魚を追いたてる。水の抵抗は多少受けるが、それでも魚と同程度に泳げているその身体能力は子供だがかなりの早さを感じる。子供だからといってなめてはいけない。


「マミちゃん、俺様のこの骨に包帯を巻き付けちゃくれねぇかい? マイアさんに考えがあるんだと」


 指示のまま包帯をスケアの骨に巻き付けるマミ。


「マミさん、包帯をたくさんお借りしますよ。それで網を作って一網打尽です」

「はい」


 マミは包帯を伸ばして網を作る。


「スケア、タイミングを見て網をすぼめて。リャン、そのまま網に追い込んで!」


 リャンが網の方向に魚を全て追い込む。魚が全て網の範囲に入る。そこを見てスケアの骨が網をすぼめて魚を全て捕獲した。


「お見事! クリアです! 早い! 半分の三十秒でクリアです! 蟹座チームは3マス追加で進んでください!」


 水槽も魚も消え、マミ達は盤の上に立っていた。体が濡れていないことにマミは驚く。先ほどのイベントは吸血鬼の力と幻術作用によるものなので実際には濡れていないのだ。


「やったね、マミ!」

「うん」


 その後も順調にゲームは進んでいった。ヴァンの山羊座のチームも順調だ。ゲームは三順目に入った。差が開いてきた。蟹座チームはまあまあの位置だ。


「ギャアアアアアア!」


 つんざく悲鳴が聞こえる。吸血鬼の青年が燃えている。


「フィニ!」


 ヴァンのチームメイトだ。マス目の中には光が降り注いでいる。あれは太陽の光だ。ヴァンは太陽の光の中へ入りフィニを助ける。ヴァンは半吸血鬼のため、日中の太陽光の下でも行動できる。すぐに太陽光の柱の中から助け出すことが出来た。


「ドロワ様、何を!?」


 ドロワに駆け寄ってやめさせるゾラ。それを弾き気絶させる。


「フィニ、しっかりしてフィニ! ルカ手伝って!」


 フィニと呼ばれた吸血鬼の青年の体は酷い火傷だ。


「僕の血で治ってくれよ」

「大丈夫。私もいるから」

「私のも使いなさい。貴方達、ただでさえこの場に弱いんだから」


 ダイアナが特別席から飛んできて治療に参加する。ダイアナとヴァンの吸血鬼の血と、ルカの治癒魔法でフィニの火傷は治った。


「よかった」


 安心した声をあげるヴァン。

 しかし、そう安心してはいられない。なぜこんなことになったのか、このゲームの管理者にダイアナを始めとしたアンデッド達が顔を向ける。


「これはどういうこと、ドロワ!」


 ダイアナがドロワに向かって怒鳴る。


「これは復讐です。マザー・オブ・シルバーメア」


 業務的に冷たく、淡々と、静かに彼は言った。


「復讐?」

「我々アンデッド族は腐臭漂うこの死者の国に追いやられ、魔界より差別されている! 我々がこの身から死の香りをさせているのは、我々アンデッドがこの魔界の真の民という証! 死してこそ、再誕してこそ、魔界の者だ! しかし、今の魔界は、生者の魔女、魔法使い、死神、天使の成の果ての堕天使、悪魔がのさばっている! それでいいと思っているのか、同胞よ! 真の魔界とは何か。我々は一体何者かを今一度問う。私の意に賛同するものよ、今ここに、声を上げよ! アンデッドが、再誕者が、この魔界の真の民だと!」

「おー!!」


 ドロワの高らかな演説の後、何人かのアンデッド達から賛同の声が上がる。このホーネットの館を魔界双六の盤に作り替えるだけの力があるということ、それだけで力が強く、優れた者だと周りに知らしめることができる。先導する演説、強い力、既に同胞を集めるための条件は整っていたのだ。


「まず、復讐の足掛かりに、賢者ルカ・クラウディアを人質とし、魔女、魔法使いを我らの手駒としてくれる! 同胞よ! かかれ!」


 ドロワに賛同したアンデッド達が襲いかかる。


「静まりなさい!」


 ダイアナがルカをかばうように前に出て強風を起こし、アンデッド達からルカを守る。弾き飛ばされたアンデッドは嫌な音を立てながら地に落ちる。


「逃げるわよ!」

「はい!」


 ルカはゲートを開いて外へ逃げようとする。しかし、ゲートは開かない。


「そんなっ!? ゲートが開かない!」

「母さん! だめだ! ドアも窓も開かない!」


 入り口に移動していたヴァンが扉を押したり引いたりしてもびくともしない。窓も割れない。


「ダメです、誰とも伝心魔法(テレパス)が繋がりません。完全に、孤立しています」


 外界とは遮断されている。恐らくドロワが盤を作ったときに同時に外部と遮断する仕掛けをしたのだろう。既に退路は絶たれていた。


「用意のいいヤツね」


 一度、扉の前に移動したルカとマミ、ダイアナはヴァンと合流する。


「我を守るは光の」

「ルカだめ。それじゃあ母さんが」

「あぁ、ごめん! ええっと、光がだめなら…………我を守るは炎の壁。ファイアウォール」


 ごうっとルカの前から目の前のアンデッド達を阻むように炎の壁が燃え上がる。アンデッドはだいたい火に弱い。


「屋敷が燃える」


 ドロワがそう呟き、力を込めると、炎の壁は低くなり始める。消火活動が始まっている。


「ヴァン、これ使って扉を開けられるかやってみて。私は足止めをするから」

「わかった」


 手渡されたのは銀の弾丸の入った拳銃。万が一の時のために持ってきたお守りである。

「こんな形で使うことになろうとはね」


 ルカももう一丁の拳銃を取り出して構える。爆音と共に銃口から銀の弾丸が飛び出す。床にそれはまっすぐ進む。着弾した場所から空間が剥がれるように元の床面が見えた。やはり、吸血鬼であるドロワの力は銀の弾丸で抑えられるようだ。自分達を取り囲むように床に打ち込む。


「守りの刻印入りの銀の弾丸ですか。考えましたね、賢者」


 憎々しげにドロワが言う。

 扉の周りにヴァンも打ち込むが扉は開かない。


「だめだ! 開かない!」


 ドロワの力は外をも多い尽くしているらしい。


「ファイアウォール」


 撃った弾丸の内側に炎の壁を展開させる。吸血鬼もアンデッドもここから先、ルカ達に近づくことは出来ない。


「安心してください。この館を燃やすようなバカな真似はしませんよ。それは最後の手段にしますから」


 床から約10cm上で、炎は燃えている。

 ルカは長い持久戦の始まりだ、と心の中で呟いた。




 ドロワの演説を聞いて多くのアンデッドがルカに向かう中、一人の女性はそれを遠巻きに見ていた。


「貴女は行かないのか?」


 リャンが声をかける。


「あれだけいますからね。そう言う貴方こそ、行かないのですか?」

「僕はアジア出身。故に西洋魔界の争い事に参加する義務はない。我らキョンシーは傍観」


 ちらほらといたキョンシーは皆、壁際にいるか、集団の後ろに紛れて何もしないでいる。敵意を感じない。目立たないようにひっそりと、じっとしている。


「貴女は僕らを軽蔑するか? そして、あの人に告げるか? 僕は、あの人の言うことは正しくないと思う」


 リャンはその人を見上げて問う。ヴェールで覆われたその表情を伺うことは出来なかったが、その様子から敵意を感じないし、怒っているということはなさそうだ。


「そういうことを言うものではないですよ、リャン。誰が聞いているか、わかりませんから」


 マイアは小さく言った。


『私、あのドロワという方、好きではありません』

「!?」


 リャンの頭の中で声が聞こえる。


『あぁ、貴方のところでは魔法、というものは無いのでしたね。安心してください、リャン。私ですよ。隣のマイアです。テレパス、という伝心魔法で貴方の心に直接話しています。これなら、ドロワに聞かれることなく思ったことを言えますよ。強くこれを伝えたい、と思えば私に言葉が伝わります』


 人差し指をヴェールの前に立てている。ヴェールの向こうでマイアは笑っているようだ。


『貴女は何故、ドロワが嫌いなのだ?』


 マイアに教わった通りに思いを伝えてみる。そして、リャンは先程の言葉の意味を問う。

 そうですね、と前置きをし、少し考えてから彼女は語る。


『私は、今でこそアンデッドのリッチですが、元は魔女でした。確かに今、魔界は再誕者よりも生者の割合が多くなっています。しかし、魔界は今も昔も変わらず魔界として成り立っています。生きようが死のうが魔界の民として今を生きているのです。真の魔界の民だとかそんな小さなことを言い合い、何になるのでしょう。なんて器の小さい男』

『ドロワ、ディスられてる……』

『ディスります。わけがわかりませんから』


 呟きに即答された。そして更に彼女は伝える。


『死者の国は何百年も昔に魔界で疫病が流行った時、疫病の蔓延を防ぐためにアンデッドを集めた場所です。その頃は医療技術も発達していませんでしたし、アンデッドの中には病をもたらすとされているものもいましたから。その疫病の終焉は死者がここに集められて50年が経っていました』

『50年も、か。生者には長いな』

『ええ。……結局、原因はアンデッドではなく、人間界の新たな病だったのです。ただ、アンデッドは病に強かっただけでピンピンしていたのですよ』


 死ぬことも、病気になることもない。だってアンデッドだもの。死んでいるし、死、そのものだから。


『50年も経てば次世代が育っていますし、そう簡単に自由に住居を動ける者もあまりいませんし。今更どこか行く場所もありませんから、そのままアンデッド達は残って、この死者の国が出来上がったのです。この地には死者の匂いが色濃く染み付いている。だから私達にも匂いがつきます。でもそれは臭い消しや香を使えば防げますから、普通に魔界で生活可能です。それを考えずにただ煽るだけとは。やはり嫌いですね、ドロワのような煽り野郎』

『……マイア、落ち着いて』


 確かに、アンデッドだとしても、ルカやマミのように共存できる道だって自分達にはあるのだ。リャンだって人がいなければ再び再誕することはなかったのだから、自分を甦らせてくれた導師には感謝している。魔界のことを教えてもらった。魔界で生活していると、生きていた頃と同じように、いやそれ以上に動けるのも嬉しいし、楽しい。それを教えてくれた導師も人間だ。リャンには生者に敵対する理由がみつからなかった。


『それで、どうするのだ?』


 リャンが問う。


『賢者様に味方するアンデッドが一人くらいはいてもいいでしょう? 行き場がなくなったら賢者様のところにでも身を寄せましょう。共に魔法の研究をするのも悪くないでしょうし』


 元魔女は笑う。


『僕もお供しよう』

『あら、西洋魔界のことには首を突っ込まないのではなくて?』

『気が変わった。死者は生者がいてこそだ。いたずらに増やすことはならない。それに僕はここに思い入れもない。ここを追放されても僕には何の損もない。それに、あの男に我々は生者と共存できると見せつけやりたい』


 リャンの表情はいつもの真面目な仏頂面だったが、心の中では不適に笑っている。そんな気がする。正しいことをしようとする意志がある。


『仲間を集めましょうか?』

『慎重に行こう。気づかれたら終わりだ』


 二人は行動を開始した。




 ルカ達はアンデッドの侵入を阻みながら退路の確保をしようともがいていた。

 生まれながらに吸血鬼の弱点を克服しているヴァンは銀の拳銃から銀の剣に形を作り替え、扉をこじ開けようとしていた。


「ヴァン坊っちゃんはまだ本当のダンピールの力には目覚めていないようですね。安心しましたよ」


 半吸血鬼(ダンピール)。吸血鬼を殺す力を持った吸血鬼と人間の混血のことである。人間と同じ生活が送れ、吸血鬼の弱点を生まれながらに克服している。そして、最大の利点は、吸血鬼を完全に殺すことができる。実は完全にダンピールとしての力が目覚めていれば、ドロワの力など疾うに打ち破り脱出できているのだ。


「力の使い方を教えていたなら、こうはならなかったでしょう。やはり貴女はもう、あのシルバーメアではない。吸血鬼の女王だったあの凄み、冷血さは、牙はとうにもがれた。今の貴女に恐れることはない。弱体化した女王など、敵ではない」


 かつての姿はそこにないことを悲しむようにドロワは言う。

 ダイアナはドロワに視線を向けつつ、迫るアンデッド達を牽制していた。

 ドロワのその目を、声を、言葉を、意味を、裏側を、ダイアナは知っている気がする。だからこそ、彼を止めるのは自分でなければならない、と思う。


「ここを頼んだわ」

「え? あっ、ダイアナさん!?」


 炎の壁を飛び越えてドロワのいる高台へとまっすぐに飛ぶ。それを迎え撃つ構えのドロワとぶつかった。銀色の刃の高い音が館にやかましく響く。


「貴方とは全力でやらないとダメってことね」

「貴女が貴女らしくあれるのは、ここですよ。ダイアナ。生者と死者は、既に別の存在。あの男の隣に居続けて貴女に幸はあるというのですか?」


 その言葉の直後、一振りの銀色の剣がドロワの心臓めがけ伸びる。それをギリギリのところでステッキで反らしかわす。剣のように性質を変化させた彼女の髪。確実にドロワを狙った髪の刃から、彼は彼女の殺意を感じていた。


「黙れドロワ。ただの貴族風情が。それ以上言ってみろ。その心臓、この銀の刃が貫くぞ」


 ダイアナの目はマザーの目ではない。昔のクイーン・オブ・シルバーメアの鋭く、ぞくぞくと背筋が冷たくなる目。しかし、その感覚ですら懐かしく心地のいいもの。そう、かつてその目はこの死者の国で最上の美であったあのダイアナの目。孤高で至高の美しき吸血鬼の女王と称されたダイアナ。自分の愛した彼女の全盛期の姿が目の前にある。


「それでこそ、貴女は私の愛した、ただ一人の女王だ」




 アンデッド達が炎と銀の結界に手をこまねいている。その中に加わらず一人完全に逃げて、傍観の姿勢でこの場から逃げることを考えている者がいた。


「スーケーアー?」

「は、はいっ! な、なんで、しょうか?」


 ない皮膚から冷や汗がだらだらと流れ出ている気がする。皮膚なんてないのに。そんなもの、もう何百年も前に失っているというのに。


「お仕事、ですよ」

「いや、俺の姿見てください? どうせあの中に入って賢者様を助けろって言うんでしょ? 無理です、体がバラバラになりますって」

「骨は拾ってあげますし、砕けても直してあげますから」

「それでも嫌ですってぇ」


 面倒なことには首を突っ込みたくない、逃げたい、の姿勢をとる。


「スケア」


 落ち着いた声が二人の間の空気を一気に引き締めた。


「貴方との関係はもう何百年になりますかね。確かに私の願いは叶えられ、本来ならば私と貴方は既に完全に死んで、魂を死神に回収されていたことでしょう」


 思えばこの人と、(あるじ)とは、長い時間を共にした。それを思い出す。いい思い出も悪い思い出も。


「しかし、貴方がスケルトンに間違えて成ってしまったとはいえ、私と貴女の間にはまだ契約が残っています。それに反し、また逆らうというのなら、すぐにでも魂は死神に……」

「わかったわかったわかった! わかりましたよぉ」


 完敗。完全に自分の敗けだ。


「……それで、策はあるんですよね? 策と勝算がないと、みーんな全滅ですよ」


 ヴェールの向こうの口元が弧を描いた。


「ありますよ。目には目を、歯には歯を、魔法には魔法を、死者には死者を。ですよ」

「……うわぁ、怖い」


 スケアは自分の仲間の恐ろしさにぶるりと震えた。



 アンデッド達はルカを捕らえようとしているが銀の弾丸と炎の壁により、それはできないでいた。しばらくは大丈夫なのかもしれない。しかし、マイアのように元魔女、魔法使いのアンデッドが居ることで安心はできない。なるべく早くこの状況を打破しなければならない。


「……ルカ」


 心配の声を上げるマミ。彼女にとってこの状況が続くのはまずい。体の水分がほとんどないため燃えやすい。炎の壁からなるべく離しているが、すごい熱だ。彼女が燃えてしまわないようにしなければならないし、自分達の体から汗が流れることで水不足になってしまう可能性もある。できることなら早く手を打ちたい。


「大丈夫。ちょっと待っててね。今、最善策を決めるから」


 一応、この事態をなんとか打破する方法はいくつか考えた。



・あまり自分の得意領分ではない死体を操る魔法を使う方法。

・説得してアンデッド達を鎮めること。

・この際、他のアンデッド達の生死を問わず攻撃魔法を使って無力化してからゆっくりと脱出。

・ヴァンのダンピールとしての力を覚醒させてドロワを倒すこと。

・自分と引き換えにマミやヴァンを救うこと。後で皆が助けに来ると信じて。



 言葉にすれば容易い。だが、行うのはどれも骨が折れるだろう。アンデッドだけに。

 マミをこれ以上危険に晒したくないが、彼女は自分がいなければ駄目だというのもわかっているから、最後のはマミのためにもやりたくない。余計不安にさせてしまう。あの、アイラやエレナの事件の時にはひどく泣いて落ち込んでいたと後で聞いた。またあんな思いをさせるわけにはいかない。

 ヴァンはどうだろう。半吸血鬼(ダンピール)の力というのは吸血鬼に対して強い憎悪を持ったときに、その力は覚醒する。吸血鬼を殺す、アンデッドの頂点に立つ位置の力。しかし、それは彼の母親であるダイアナにも殺意を抱くということ。優しい彼が、家族が大好きな彼がそんなことできるはずがない。

 ならばどうする。どうすれば皆にとって一番いいのか。


『お困りですか?』


 その声はどこから?

 聞いた声。これはーーー。


『マイアさん?』

『ええ。マイアですよ。賢者様』


 優しく答える声。彼女はどちら側なのだろうか。


『この屋敷の中であれば伝心魔法(テレパス)は使えるので、何か手助けがあれば申してくださいね。色々やりますよ、スケアとリャンが』

『『おい!』』


 二人分の声が聞こえた。突っ込む声はスケアとリャン。自分とあの三人を繋いだ伝心魔法は内緒で作戦を伝えることができる。が、果たして彼らは本当に味方なのか。


『賢者、僕は東洋魔界だから西洋魔界には未練もない。思う存分、破壊工作を命令してくれ』


 それはそれでどうかと思う。


『あっしも骨を折ってやりますよ。骨だけに!』


 折っていいものなのだろうか。折れたら魔法で治してあげよう。


『とまぁ、我々は賢者様の味方ですから。あ、私はドロワの糞野郎にギャフンと物申して、こてんぱんにしてミンチにしてやりたいだけです』

『『物騒!』』

『それは、やめて差し上げてくださいね』


 しかし、心強い仲間が外にいたのは大きな収穫だ。希望が見えてきた。新たに作戦の練り直しを急いでしなければ。


『ありがとう。貴女達の今の状況を教えて下さい。計画をたてます』


 反撃開始といきますか。




━━━━━━━━━━━━━━


 あれは14年前だっただろうか。

 こうして刃を交えたのは。

 あれから時が経ったというのに、自分達は何も変わっていない。

 ━━━いや、変わった。彼女は変わり、変わっていないのは自分だけだ。

 彼女は母親になった。他人の物になった。そこで幸せに暮らしている。種族を越えて、彼女は今しかない、ほんの一時の幸せを噛みしめている。


 だが、自分はどうだ。


 今も失ったものにすがり、取り戻そうとしている。いや、奪われたものを奪い返そうとしている。自分は何の為に、今、こうしているのだろうか。

 自分達は滅多なことがない限り死ぬことはない。ほぼ永遠の命。14年が短い。あんなに経ったのに、自分達の尺度で14年が短い。だから、諦めきれなかった。


 自分は何がしたいのか?




「戦いの最中に考え事とは、嘗められたものね」


 銀の吸血鬼は憎々しげに言った。

 自分の愛した、いや、今でも愛している吸血鬼。


「もう一度、14年前の決闘をしましょう。私が貴女に勝てば、……私のものになれ、ダイアナ。そうすれば息子と賢者、それと彼女のマミーには手を出さない」


 何故、私は今こんなことを言ったのだ?


「……私が勝てば?」

「勿論、貴女の好きに。その時は、貴女にアンデッド協会の理事長の座も得る」


 だから、だから私を。


「……のった」


 愛しの銀の姫は赤い瞳に闘志の炎を宿した。

 逆に自分の心は苦しかった。息が出来るのに出来ないような、そんな苦しさ。二つの相反するものがぶつかる苦しさ。この痛みは何だ?

 あぁ、この痛みがなくなればいいのに。

 誰か助けてくれないか?


「助けてくれ、ダイアナ」


 その声は彼女に聞こえていただろうか。




 聞こえるか聞こえないか、その声は、確かに届いていた。

 叫びを聞いた。気がした。

 まだ諦めきれないけれど、諦めなければならない。それをわかっているのに、思いが言うことをきかない。

 手合わせをしていてわかった。苦しんでいる。原因は私だということも。

 話し合いで解決できる種族でもないのが魔界の民。アンデッド。吸血鬼。力を示すことでしか、相手を屈服できない、悲しい種族。話し合いで解決できれば、どれだけよかったのか。

 この考え方は、まるで賢者様のよう。あの子がヴァンの友達になったから、私まで変わってきたのかしら。

 賢者様なら、どうするのかしら。

 でも、私は吸血鬼。だから、自分のやり方でこの問題を収める。そして、彼を、ドロワを救う。


「来い、ドロワ」


 それが元凶である私の役目だ。




━━━━━━━━━━━━━━


『成る程、キョンシーの皆さんは指示があれば動いてくれるんですね』

『ああ。皆がこの状況をよくわかっていないのをいいことにフラッシュモブという流行りの寸劇だと教えた』


 違うと思う。フラッシュモブについての詳しいことはよく知らないが、これは違うと何故か断言できるのはなぜだろう。


『それで、今回は裏テーマがそれで、自分達も何かをしなくてはいけないという事で僕らも何かしようと誘ったら、皆、協力することに』


 なんということでしょう。きっと彼は上手い詐欺師になれそうだ。


『賢者様、私に1つ提案が』


 マイアが案を出す。


『そこの半吸血鬼(ダンピール)はまだ力を覚醒させていないと聞きましたが、その力、今利用しませんか? 抑止力としてあの糞野郎を制する力にはなりますよ』


 ルカは言葉につまる。確かにそれをするのがいいのだろう。だが、ヴァンにそんな力を持たせては、彼は苦しむことになるのでは。それが家族の絆を壊してしまわないか、それが怖い。


『今は四の五の言うよりも、この状況を何とかして安全を確保した方がいいです。全てが全て、ハッピーエンドで終わるわけないんです。誰かがバッドエンドになるんです。物語の裏側とは大抵そういうものですよ。全てを救えるとは思わないでください』


 冷たい強い言葉だ。


『ま、まあアレですよ。あっしらアンデッドというのは死というバッドエンドを経て成り立ってますからね~』


 ここにいるアンデッド達はバッドエンドを経たもの。救われなかった者達。正しい選択をしなかったから、こうなったものもいるだろう。ハッピーエンドを望んだはずが、バッドエンドに変わっていたこともあるだろう。何かを救おうとして救えず、逆に自分までも奪われた者だっているだろう。

 だからこそ、その言葉には突き刺さるものがある。夢だけを見ていられないと。冷静に夢を捨ててでも、今の最適解を導き出すことをしないといけない。


「ルカ」


 ヴァンが声をかける。振り向くと、その顔は覚悟を決めていたような顔だ。


「頼むよ。この状況をなんとかして、母さんを助けて、あの人を止める」


 少年は言った。

 剣を持つ腕が震えている。瞳も揺れている。

 自分だって、彼が変わってしまうんじゃないかって怖い。けれど、彼もそれに戦おうとして、身近な人を助けようとしている。それを自分は止められないだろう。だって、自分も亡き母のために、亡き母と同じ病に苦しむ人達を助けるために賢者になったのだから。


『決まりましたね』


 マイアの声が頭の中で響いた。


『……はい』

『ならば、こちらで動くので賢者様はそのままで。あとは死者の私達の仕事ですから。ヴァンさん、貴方にも働いてもらうところがありますわよ』


 マイアの声は聞こえなくなった。




「いいんですかい?」

「何がです?」


 心配そうに問うスケアにそっけなく答えるマイア。その様子が彼にとってはあまり気のいいものではない。


「……あんた、昔っからそんなだ。死んだところで変わりゃしねぇ」


 恨むような言い方。それが何だ、と言うように気にせず彼女は屋敷の奥へと入っていく。


「あんた、それだから味方がいなくなるんですよ。それわかってます? だから、あのときだって、あんたは」

「スケア」


 言葉を遮るように彼女は名を呼ぶ。しかし、その顔は何かの作業をする手元に注がれており、顔を見て話す時間さえも惜しいと態度が言っていた。


「だからよ。私のようになってほしくないから、そうやってるんじゃない」


 時限式の爆弾魔法を設置しながら彼女は言った。


「恐らく、このままだと彼女は私と同じような道を行くでしょう。全てを救おうとして、結果、救えなくなる。彼女はそういう子。賢者がそうなってはダメよ」


 それにスケアは何も返せず言葉につまる。


「ハッピーエンドだけが物語じゃないのよ」


 ハッピーエンドを恨むようなそんな言葉を呟く。スケアも彼女の生者としての最後を知っているから、それ以上言えない。


『リャン、そろそろですよ。手はず通りに』

『わかった』


 リャンに伝心魔法で指示を出す。

 キョンシー達が一斉に跳び、広場の中央へと集合する。各方向から飛び上がった彼らにルカ達を襲おうとしていたアンデッド達の視線が集まる。中国の映画のアクションシーンで使われるような音楽がどこからか流れだし、その音に合わせて彼らは中国拳法を使ったダンスを披露する。それに気をとられたアンデッド達は何だ何だ、とキョンシーの回りに向かい出す。キョンシー達の一糸乱れぬその動きに魅了されていく。

 マイアは視線を下から上へと動かす。シャンデリアや梁を伝って戦う吸血鬼二人。下の騒ぎには気づいているはずだが、それに気を割くほどの余裕はないらしい。だが、それがいつまで続くか。

 彼女は更に次の手を打つ。




「これは貴女の差し金か」

「さぁ。でも、この音楽は嫌いじゃないわ。気持ちの高揚するいいBGMね」


 聞きなれない単語にドロワの目が動く。


「フン。最近の人間の作った音楽なぞ、ただの騒音だ」

「あら? 世界を見て回ったのにそんなことを言うのね」

「生者は好かん」


 その中には因縁の相手も含まれている。だからこそ、好きになれない。彼らはただの餌でしか、食材でしか見ることができない。


「耳障りだ」


 ダイアナの髪の剣を弾き距離をとるドロワ。


「あら、吸血鬼はアンデッドの貴族でしょ? 貴族は優雅でいなきゃいけないのよ。周りに気をとられるないように。そう、こんな戦いの中でもね」


 ドロワを襲う銀の剣の嵐は、優雅という言葉を体現しようと動いた。

 物質変化の力で硬化させた髪は実に厄介だと、ドロワは憎々しげに素早く弾く。14年前の戦いもこれに苦しめられた。そして、最後の技により負けた。今回もあれと同じ流れになると恐ろしい。更に下には彼女の半吸血鬼の息子と、賢者がいる。彼らに手を貸そうとしている裏切り者のアンデッドもいるようだ。あのキョンシー達などがそうであるように。それだけではない。その裏には大物がいるだろう。早く終わらせてそれを叩きに行きたい。


「一気に片をつけましょう」

「そうね。流石にこの戦いをいつまでも、ってのはできないわね。下の素敵なショーもゆっくり見られないし」


 そう言う彼女は、今回も勝つつもりでいるのだ。彼女の守るべきもののために。

 自分にはない。その守るためのものが。

 彼女を得られたならば、自分もそれを得ることが出来るだろうか。そうだと一方的に信じて、彼は彼女の心臓めがけて杖を突きだした。




「母さん!」


 ヴァンが叫ぶ。

 その叫び声にルカも、ホールにいたアンデッドが上を見上げた。


「ぅっ……ごばっ」


 苦しげに血を吐いたのはダイアナの方だった。赤い花が口から咲いた。体を貫通する杖が刺さっている胸と背中からも赤い花が大きく咲いていた。銀の糸で出来た河を流れるように、赤い花は散る。それは、美しかったが、同時に心の冷える、ぞっとする光景だ。


「っ……あああああああああ!!」


 その絶叫は誰のものだったのだろう。

 ルカが気づいたときには、横にいたはずのヴァンが銀の剣を振りかぶり、ドロワに切りかかっていた。

 落ちるダイアナを慌てて受け止めたルカは彼女の手当ての為、回復魔法を施す。体は既に修復が始まっているが、簡単に痛みは取れない。

 貫いた杖は先端に銀が使われていたようだ。たった数センチの穴がなかなか塞がらない。苦しそうにうめく彼女がルカの、自分の母親と重なる。炎に焼かれる母親の姿を思い出して体が震えた。


「それは、彼に返してあげるのでしょう。何をしているのですか貴女は」


 背後から声がかけられた。マイアの声だ。言い方はぶっきらぼうで冷たさを感じたが、その言葉は自分に向けて、ダイアナを助けろ、と鼓舞するものだ。

 乱れた魔力を安定させる。傷口はルカの思いに応えるように徐々に塞がっていく。胸部を銀が貫通していたが、彼女は生きている。彼女のもつ治癒力を回復魔法で手助けし続ければすぐに彼女は復活できるだろう。それに関しては一安心だ。

 だが、一つの問題がある。その方向へ顔を向ける。


「ヴァン……」


 ルカの声に何も答えず、彼はドロワと戦闘している。


「ヴァン、戻って! ヴァン!」

「駄目よ」


 ルカが伸ばす手を掴んだのはマイアだった。


「だって! ヴァンが!」

「あれは、あなたの知るヴァンではありませんよ。現実を見なさい、賢者ルカ・クラウディア」


 賢者として現実を見ろ、と彼女は言いたいのだ。でも、自分は賢者である前に彼の友人だ。この争いを止めなければ。


「これは彼の門出です。それを邪魔しないでいただきたい」


 ヴェールの向こうにぎらりと光る紫の瞳を見た。それは、ルカを心からその場所に縛り付けるようだった。


 彼女は門出と言った。それは、ヴァンが半吸血鬼(ダンピール)の力に目覚めたということだ。力の目覚めや死者の蘇生・復活はアンデッドにとって重要なものだ。誕生日や、記念日と同じで祝うべきことなのである。例えそれの切っ掛けが悲しい出来事であったとしても、だ。


 ヴァンとドロワは攻防を続けている。アンデッド達は吸血鬼同士の戦いを邪魔しないように空間を開けて声援を送っている。中にはどちらが勝つかを賭けているものまでいる。

 吸血鬼を単純に力だけで殺すことが出来る吸血鬼と人間の混血種、それが半吸血鬼(ダンピール)だ。己の半吸血鬼(ダンピール)としての力に目覚めたヴァンはその力を覚醒させて、振るい、自分のものにしていく。まだ若く戦闘経験があまりなくとも、彼が敗北することはないはずだ。彼がドロワと互角に戦っていることから、彼の潜在能力の高さがうかがえる。親が吸血鬼の女王とも言える力を持つのだから、彼にもその強さが引き継がれているのだ。


「ヴァン・シルバーメア。これが貴方の力ですか。女王の子として、相応しい」


 ヴァンは黙々とドロワを追い詰める。動きが鈍くなってきたドロワの体には、ヴァンがつけた切り傷が目立ってきた。銀の剣で負わされた傷は高位の吸血鬼でも治りにくい。長引く戦いは痛みを増し、やがてはドロワを完全な死へと誘うだろう。

 怒りに支配されたヴァンは、おそらくドロワに完全な死を贈らない限り止まらないだろう。彼が止まったとき、そこに彼はいるのだろうか。皆の知る優しい彼が、残っていてくれるだろうか。


「……もう、もうやめて。やめてよ、ヴァン。……その人はもう、戦えないよ」


 弱々しく言葉を発するルカ。その声はヴァンには届いていない。彼の攻撃は止まらない。

 ドロワはもう反撃できないほど弱っていた。体から流れる血は足元に溜まり、そこから沢山の線を引いていた。辛うじて頭と心臓を守るようにステッキを振るう腕も、いつ落ちてもおかしくない。


「……ヴァ、ン?」


 ダイアナが目を覚ました。そして、周りの様子を見て何が起こっているのかを理解した。


「全く。私の獲物、盗られちゃうなんて……」


 体をゆっくり起こした。怒りで我を忘れたヴァンには母親の姿は目に入っていないのか攻撃は止む気配がない。声をかけたとしても止まらないだろう。だって、母親もそういうところがあるから。


「ルカちゃん、マミちゃん。ちょっと協力してくれないかしら? 例え私の自慢の息子でも、私の獲物を横取りされてるのは、ムカつくの」


 それに頷くルカとマミ。

 マイアがそれに待ったをかけた。


「止められるとでもお思いですか?」

「……何とかするわ。だって、母親だもの。それに、……救ってあげなくちゃね」


 ルカには誰を救うのかわからなかった。それでも、この戦いを止めることが二人を救うと信じて魔法を使うことに決めた。救うのは自分の仕事だから、と。


 マイアは不服そうだったが渋々、一歩下がり物理的にも身を引いた。あなた達の邪魔をするつもりはないが、戦いを止めるつもりもない、という姿勢だ。アンデッドにはアンデッドのスタンスがある。それは言い換えればアイデンティティーであり、存在理由であり、意志であり。種族によって異なるものだ。同じアンデッドでも、それをねじ曲げるようなことを強要できない。否定できない。


「でも、どうやって、止める、の?」


 ダンピールには吸血鬼の弱点は効かない。


「物理で止めるしかないわね」

「私が魔法で隙を作ります。マミはヴァンを包帯で拘束してくれる?」

「わかった」

「なら、私はあの子を正気に戻そうじゃないの。母の愛で。不死性高めを嘗めるなよ」


 治ったばかりであまり無理はしてほしくないが、相手が相手だけにそうも言っていられない。いくら彼女の不死性が高くても下手をすれば彼女は息子によって命を落としかねない。

 その為にルカは魔法を選ばなければならない。マミによる拘束の隙を作れるような魔法を発動させなければならない。マミはマミで隙を作った直後に瞬時に拘束しなければならない。


「責任重大だね」


 火は駄目だ。マミなど、乾燥したアンデッドが燃えてしまう。

 光は駄目だ。吸血鬼や霊魂系のアンデッドが浄化或いは弱体化してしまう。

 水は駄目だ。吸血鬼は流れる水の上を渡れない。

 吸血鬼に駄目なものが多すぎる。すべての吸血鬼が一定以上の耐性を持っているなら光だろうが、炎だろうが、水だろうが何でも使うことができるのだが、魔界のアンデッドの中には人間界に体が馴染めなかったものも多い。そんな彼らのことも考えなければならない、

 考えてもいいアイディアが浮かんでこない。こうしている間にもドロワの体力は消えていくのに。


「あ、爆弾解除してませんでしたわ」


 マイアが思い出したように呟く。

 直後に爆音。屋敷全体を震わす爆音がマイアの言葉の直後に響き渡る。

 ぐらりと体が揺れる。それは広間で、ヴァンとドロワの二人をも例外ではなかった。取り囲むアンデッドも膝をつき、中には崩れてしまったものもいる。しかし、これは好都合だった。ルカはすぐにマミに合図を出した。今しかない、と。

 包帯は瞬時にまっすぐヴァンに向かい、彼を拘束した。拘束から逃れようともがいたがもう遅い。幸いにも自身の体を変化させて逃れることはしていない。それを好機ととらえたマミは逃がさぬように、動かないように、彼を縛り上げる。

 そこへダイアナがヴァンの後ろから近づき、彼を抑えた。


「もう終わりにしなさい。これ以上は必要ないわよ、ヴァン」


 母の声に漸く、彼は動きを止めた。


「……かあ……さ、ん……」

「ええ、そうよ」


 体から力が抜けたのを感じたマミは彼を拘束していた包帯を解いた。手から銀の剣が落ちて、彼は母親と向き合った。


「……母さん」

「ヴァン。おめでとう」


 正面から改めて抱き合う親子を見てアンデッド達は拍手を送った。それは彼の力の覚醒を祝う拍手だった。




 マイアはルカ達の後ろにいたが、爆発の直後にある場所へ飛んでいた。ドロワによって昏倒させられたゾンビの女、ゾラの元へ。


「えっ!? な、な、な、な、な、何事で!?」


 爆音で目を覚ました彼女は慌てていた。そこへマイアが現れたものだから余計に慌てた。


「落ち着きなさい。台本を書きました。これの通りに読んで、この混乱を治めなさい。それくらいはできるでしょう? 陽気なゾンビさん」

「えっ、ま、マイア様? こ、混乱?」

「さっさと目を通して読みなさいな。燃やし浄めますよ」

「す、す、す、すびばせんっ!」


 ゾラは急いでその台本に目を通し、内容を頭にいれて読み方のシミュレーションをする。それができると顔をあげた。

 目の前にはマイクがある。マイアが拾ってくれたそれを持ち立ち上がって、台本の台詞を読み上げた。


「今宵のパーティーですが、ダイアナ・シルバーメア様のご子息、ヴァン・シルバーメア様の半吸血鬼(ダンピール)としての覚醒イベントがメインテーマでした。体を張り門出へ導いたフィニアン・アスピリクエタ様、ダイアナ・シルバーメア様、賢者ルカ・クラウディア様、そして主催者ドロワ・クルーゾ様、誠にありがとうございました。皆様、どうか大きな拍手を」


 アンデッド達が歓声をあげて拍手を送る。

 なんだそういうことだったのか、あれ全部芝居かぁー、門出に立ち会えるなんてラッキーだぜ、など、さっきまで殺伐としていたのに、和やかな雰囲気に変わっていた。その場の空気に流されてルカとマミもぎこちなく拍手を送る。


「スペシャルゲストの賢者ルカ・クラウディア様、また盛り上げていただいた東洋魔界からの留学生キョンシーの皆様にも大きな拍手を」


 ルカやキョンシー達にも歓声と拍手が送られる。何が起こっているのか理解はできないが、司会席にいるゾラの後方にひっそりと立つリッチの姿が見えたので、答えは察すことができた。


「宴もたけなわですが、以上で本日のパーティーは終了とさせていただきます。皆様、誠にありがとうございました。お土産に『AMaiA』の香水をご用意しております。どうぞお持ち帰りくださいませ」


 ガヤガヤとアンデッド達が移動する。ドロワの力が弱まったからか外へ通じる扉は開かれている。お土産を持って楽しげにアンデッドの客人は次々と帰っていく。あんなクーデターがあったのに、まるでそんなことがなかったみたいだ。


『アンデッドなんてこんなものです。簡単には死ねないから、なるべく面白いものを見つけようとする。そして、出来事の結果にしか興味がない。彼らは結果の産物だから』


 マイアの声がする。アンデッドという種族を語る声は少しだけ最後に悲しさを感じた。

 膝から崩れ落ちたヴァンにルカは駆け寄る。顔が青い。自分のやったことに恐怖している。普段の彼からは想像できない荒々しい姿、戦闘狂な姿も、またその時の思考の記憶も、彼の中にある。それはもう一人の彼の姿でもある。それが半吸血鬼(ダンピール)としての姿だと言うのなら、吸血鬼としての自分の姿だと言うのなら、本当の自分の姿だと言うのなら、彼はただ一つだけ思った。


 怖い、と。


「ヴァン、大丈夫?」


 心配するマミの声にも彼は答えられなかった。思考は恐怖で奪われていた。


「……貴方は療養が必要よ、ドロワ。私が最高の名医のところへ連れていってあげる。それくらいは敗者にやらせてくれるわね?」

「何を言っているのですか貴女は。敗者は私の方ですよ。そんなの、14年前からずっと」


 彼はそれっきり言葉を発することはなかった。

 ルカはダイアナの頼みでダイアナ達をある場所へ転送した。本当にそこでいいのか彼女には不安があったが。でも、きっと、彼はもう何もしないだろう。


「本当に、大丈夫?」


 マミがルカに問う。本当にあれで良かったのか、と。あそこに送って良かったのか。だってその場所は因縁の場所だったから。再び戦いになるのでは、とマミは心配しているのだ。

 ルカはやれやれ、と言いたげな目でマミを見ながら答える。


「ダイアナさんがそう言ったからね。きっと、変に手を出すと怒られるどころの問題じゃすまないと思うよ。アンデッドにはアンデッドの、それも吸血鬼の流儀があるの」

「なら、尚更……」

「それでも、私にできることなんて、もうないのよ」


 生者であるルカにできることはない。

 それこそ、アンデッドで、なおかつ吸血鬼であるなら出来ることはあるが。

 救いの賢者だの、光の賢者だのと呼ばれているルカは、今回誰も救えなかった。救いたいものを救えなかった。救うために、助けるために賢者になったのに。


「全てが全て、ハッピーエンドで終わるわけないんです。誰かがバッドエンドになるんです。物語の裏側とは大抵そういうものですよ。全てを救えるとは思わないでください。……私はそう言いました。不幸を乗り越えない限り、幸福は来ないことを貴女は誰よりも知っているのでしょう? 貴女自身がそうだったんですから」


 この人は背後に立つのが好きなようで、いつの間にかそこにいた。マイアがルカに言う。彼女はルカに何を求め、伝えたいのか。

 マミはルカを守るため間に入る。それを見てマイアは笑う。


「フフッ。私は何も賢者様を攻撃しよう等というつもりはありませんよ。スケアはどうかわかりませんが」

「飛び火!? おいらにゃあそんなつもりねぇからな!! そんな目ぇ向けねぇでくれ嬢ちゃん!! 死んで骨になってもそういう視線にゃあ傷つくんだ!!」


 ギャンギャン喚くスケア。それでもマミは幼く拙い殺気を放つ。


「まぁ私としては、アンデッドにはアンデッドの矜持があり、全てを救いたいだなんておこがましい理想を掲げる貴女に一泡ふかせたかっただけですよ。今回それができたので、もうこちらから攻撃することはないですから安心さない」

「……それは、本心から、ですか?」


 ルカが問う。本当にそれが彼女の本心なのか。彼女は腹の底が見えない。リッチは元は位の高い身分であったものが多い。彼女は生前は魔女だった。どういう経緯でリッチになったのかは不明だが、魔女として実力があったのは間違いない。それこそ、魔王に遣えていたぐらいの実力はありそうだ。でなければ冷静な判断は瞬時にできないだろうし、厳しいことも言わないだろう。


「さぁ? 私はリッチですからね。でも、私は常にアンデッドの味方で、私が味方をしたいと思う者の味方ですよ。勿論、今のところは貴女達を気に入っているので貴女達の味方ですが。嘘だと思うなら私の真名に誓いますよ?」


 スケアがぎょっとした顔でマイアを見る。アンデッドにとって真名を明かすことは正体を知られることであり、命を握られることでもある。とくに霊体系のアンデッドにとっては真名を用いて浄化、祓うことができる。それは第二の死、完全なる存在の消去と死を意味する。そんなことをする奴は自殺志願者、或いはそれだけ命を懸けた、とも言われるほどだ。普通はしない。

 リッチは肉体はあれど霊体系のアンデッドでもある。マイアが自分の真名を明かそうとするのは、つまり命を懸ける、ということだろう。彼女の性格はよく知らないが、自殺志願者のようには見えないし、一緒にいるスケアがあんなに驚いた顔をしているのだから。


「貴女がそこまで言うのですから、私は信じます」

「そうですか。では、我々も帰りましょう」


 足元にゲートを作り出す。それは沼のように彼女とスケアを飲み込む。それは自分の知っているゲートとは違ってまがまがしさを感じた。ゲートではあるが形が違う。それは旧式の魔法で開くゲートのようだ。


「それでは、また会いましょう賢者様。あと、お店の方にもいらしてくださいね」


 一枚のカードを残して彼女とスケアはゲートに飲み込まれるように消えた。

 落ちていた足元のカードを拾いあげる。そのカードは名刺だった。魔界の老舗香水店『AMaiA』の名刺。いつか必要になるその時に、というメッセージ付きで残されていた名刺を見て不愉快な声をあげるマミ。


「私、あまりあの人に、会いたくない。ルカ、傷つける」

「ありがとう、マミ。さぁ、私達も帰りましょう。流石に……私も疲れちゃった」


 屋敷に残っているのは後片付けに負われるアンデッド協会の役員達だけで、パーティーの参加者達はもう既に帰ってしまっていた。最後に扉からリャンらキョンシーが出て行くところでゾラがお土産の香水を渡していた。ルカに気づいてリャンが手を振ってくれた。それに二人で応えると満足した顔で仲間と共に彼は屋敷を出た。

 ルカ達もお土産をもらって家に戻った。夜が明けようとしていた家は、二人を安心させた。疲れがどっと押し寄せて来て、ベッドへ潜り込む。10秒も経たない内に二人は眠りの世界へ入っていった。




━━━━━━━━━━━━━━


 あの事件の後、ドロワが連れてこられたのは、見慣れない設備のある建物だった。自分に透明な管が刺さっている。その管は金属の銀色に光る洋服かけみたいなものが持つ赤い液体が入った透明な袋に繋がっている。微かに血の臭いがするがなんだか何かが抜けた薄い血の香りだ。

 自分が寝かされている寝台はとても質素で簡素な作りだ。寝心地があまりいいとは言えない。しかし、体は五体満足に治っていて、吸血鬼にとってあまり意味のない包帯を巻かれているのを見ると誰かが治療を施してくれたのだということを理解する。ダイアナ……ではない。彼女は吸血鬼に包帯が無駄だと知っている。ヴァンならやりそうだが。

 体を起こしてみる。血が足りないのかくらくらする。多くの血液をあの戦闘で失い、輸血で漸く目覚めることができた、というのが今の状態だと推察した。ぼふっと再びベッドに倒れこむ。やはり、あまり心地よくない。安物のベッドなのだろう。

 内装も白でまとめられて生活感がない。何より雑貨がない。不気味な部屋だ。


「失礼します」


 そっと耳に入ってきたのは優男の声。聞いたことのある声。声の主は返事をしないので、ドロワが眠っていると思い、これまた声をかけたときと同じくそっと静かに引き戸を開けた。

 扉から見えたのは、やはり因縁のある医者だった。そして、ここが14年前に訪れた場所であることも確信した。


「人間め……」

「気がつきましたか、ドロワさん」

「近づくな、噛むぞ」

「貴方は起き上がることが辛い筈ですよ。そんな方が吸血するほどの力を既に取り戻したなんてあり得ません。三日間寝ていて、輸血パックもたくさん使いましたから。怪我さえ自力で治せないくらい酷かったんですよ」


 自分の状態を聞いて驚く。吸血鬼の力をほぼ発揮できなかったからこうしてここにいる、というのが信じられなかった。そして、この男に治療を施されたのだ、ということを知って疑問が浮かぶ。


「何故助けた? 貴様、私が14年前にしたことを忘れたわけではあるまいな?」

「忘れてなどいませんよ。貴方は僕を殺そうとして、ダイアナに返り討ちにされた。貴方にとって、僕は因縁の相手。貴方にとって、殺したいほど憎い男です」


 なら、尚更ドロワを助けるなどあり得ないはずだ。嫌な相手を助けるほど人間というのは優しくないはずだ。人も吸血鬼も心の中はたくさんの感情を隠し持つ。特に人にとって吸血鬼は恐怖の対象だ。助けるなんて有り得ない。


「でも、私は医者ですから。いくら過去に因縁があろうと、殺されそうだったとしても。医者は命を助けるのが仕事です。それに、僕自身が目の前で命を落とされるのが嫌なんです。だから、因縁の相手だろうが、種族が違おうが治せるのなら治したいです。医者に国境はないんですよ」


 人間は言った。

 吸血鬼は知っていた。こう思う人間は世界でほんの一握りしかいない清らかな心の持ち主であることを。だからこそ人間の言葉を嗤うことができなかった。言い返すことも、言葉を投げ返すことも。

 そして、だからこそ、自分にないものを持っていた彼がダイアナに選ばれたのだと、今、再び心から理解した。彼が心の清らかな人間でなければ、彼女は彼を選ばなかっただろう。彼女はきれいなもの、美しいものが好きだから。




 14年前に彼女と婚約した時、彼女は美しいものを求めた。それがある場所で暮らすのなら、と条件を出した。だから彼は美しいものを探した。

 きっとそれは美しい景色のことかもしれない、と彼は考えた。彼女の暮らす島の城からの景色は実際に美しかったから。3ヶ月、あの景色よりも美しい場所を夢中になって探した。いくつかの景色を候補として写真に収め彼女に会いに行った。そこにいたのが彼、人間だった。

 他人に自分のものが奪われていたら誰だって取り返そうとする。だから、彼も取り返そうとした。自分の意思で彼女が彼を選んだと知ったとき、彼の心は壊れた。

 何故、選ばれなかったのか。怒りで我を忘れ、彼らは戦った。

 死闘の末、彼は敗北した。理解したくなかった。まだ怒りと嫉妬は燻っていた。




 が、今。

 彼は人間の、医者の彼の心のあり方を心から理解し、受け入れた。もう怒りと嫉妬は鎮圧されていた。


「お前自身の怒りはないのか?」


 言葉を選ぶように彼は目を伏せた。


「……ない、といったら嘘になります。けど、そこまであの二人がやってくれたから、もういいんです。復讐とか苦手なんですよね」


 困ったように笑いながら医者は言った。やはり、自分の正反対の存在なのだ。そう思った吸血鬼は目を閉じた。




「父さん」

「大丈夫だ」


 ヴァンは父親の言葉を聞いてほっとした。

 ドロワと父親の因縁も聞いた。


「失礼を承知で申しますが、奥様には困ります。奥様の態度がはっきりしておられれば、このようなことにならなかったと私は思います。そしてその事について旦那様は怒っていいと思います」


 ヴァンの眷属のピピは言った。その言葉に父親は笑いながら返す。


「まあまあ。そう言われたらまぁ、そうだけどね。あの頃の彼女は生きることに絶望していたんだよ。そんな時に正常な判断が彼女にできたと思うかい? 僕だってできないさ。今を生きる限り誰だって間違いはするさ。だからね、ピピ。そんなに彼女を責めないでやっておくれ」

「旦那様がそう仰るなら、私は何も言えないじゃないですか……」


 小さな体を更に小さくさせた。ヴァンの頭の上にいる彼女はゴニョゴニョと言葉を呟いている。

 そっとピピを父親に預けると、ヴァンは次は自分の番だと病室に向かう。父親は手を振りながら息子を病室に送り出す。ここから先は人間の自分では立ち入りできない領域だと父親は知っている。いろんな感情が父親の中にあるが、それをぐっと圧して送り出す。ヴァンも恐怖と向き合うため病室の扉に手をかけた。




「ヴァン・シルバーメア」

「……ドロワ、さん」


 彼は吸血鬼だ。しかし、自分も吸血鬼の仲間だ。だが、自分の方が強く、彼を完全に殺せる半吸血鬼(ダンピール)だ。自分はこの力とどう向き合わなければならないか、彼に聞かねばならないのだ。恐怖と向き合わなければならないのだ。


「……もう私に貴方達シルバーメアの一族をどうこうしようなどという気はありません。ダイアナはあんなだし、あの人間も私には毒だ。なんだあの優しさの塊は。あんな綺麗なもの私に近づけないでくれ。己がいかに醜く穢れたものか思い知らされる」

「それは……ごめんなさい」

「謝るな。……全く君も君だ。もっと吸血鬼らしくなればいいものを」


 びくりと体が震えた。それを横目で捉えたドロワは一つため息をついてから切り出す。


「貴方は、これからどう生きるつもりですか?」

「どうって……」


 そんなの自分が知りたいのだ。人として生きることはできないし、かといって吸血鬼として生きることはできても、彼らを完全に滅する力を持つのだ。言い換えれば、いつか母親を殺す力だ。それとどう付き合えばいいのだろうか。こちらが聞きたいのだ。


「自分がどうなりたいかを考えろ。貴方は、誰のために力を使うのですか?」


 もう二度と力に溺れて暴走したくない。いつか母親を殺してしまうかもしれないなら、その力を制御したい。家族を守りたい。友人達を守りたい。

 ゆっくりと家族と友人達の顔を思い浮かべた。


「吸血鬼とはアンデッドの貴族である。優雅に振る舞え。そして、大きく構えよ。これは我がクルーゾ家など古くから吸血鬼として存在してきた吸血鬼達に伝わる教えだ」


 彼は確かに優雅だった。そして強かった。聞いたことがある。優雅に振る舞い、堂々と構えれば心に余裕ができて、頭が冴える。それは戦闘時に戦況がよく見えるようになり、自分の実力を完全に出すことが可能になるのだ、と。何かのゲームで聞いたような気がする。


「吸血鬼は貴方が思っているほど簡単に死なない。君の力を示すことで無用な争いを避けられることもあるだろう。君はそろそろ進路を決めてどうなりたいかを考えるときだ。君はこれから、どう生きる?」


 この力は誰かを傷つける力にしたくない。吸血鬼を殺すために使いたくない。


 あの賢者は母親を助けたかった。その力は母親と同じ病で苦しむ人を助けるために、誰かを助けるために使われている。

 父は子供の頃、怪我を治してくれた医者に憧れて医者になった。人を助けることが医者の本分で、それが一番大事なことだと信じていたから、今も医者としてこの島で日々島民を助けている。

 自分達家族は島民に助けられている。自分の周りには助けてくれる人が大勢いる。自分だって、彼らと同じように誰かを助けることができるはずなのだ。ピピを助けたように、きっと。


「誰かを助けるために、この力は使えますか?」

「それは君次第だ。君がそう決めたのであらば、その力はそのようになるだろう。使い方は母親にでも聞きなさい。私はもう寝る」


 彼はそう言って寝てしまった。まだ、本調子ではないのだ。無理をしていたらしい。輸血用の人工血液はさっき新しいのに替えたばかりだったが、もう半分になっていた。

 その無理と引き換えに自分は前に進むための助言をもらった。なら、前に進まなければならない。迷わずに進めと言われたような気がした。




 ドロワの容態はもう安定し、そろそろ退院する予定だった。アンデッド協会のことはダイアナやあの時会場にいた先々代が取り仕切っていたようでこれといって混乱もなかった。特に行事があるわけではなかったので魔界の日々は比較的穏やかだったという。クーデター騒ぎもあれはヴァンの為の芝居、嘘だということで皆理解しているので蜂起するなんてこともなかったという。

 そんな退院間近の夜は満月だった。

 月の光が世界を照らしていた。魔力が満ちていく感じに14年前に夢中で世界を飛び回ったことを思い出した。


「前に進まなくては、ですね」


 彼に前に進めと言ったようなものだったのだから、その自分が進まなければ示しがつかないだろう。

 ダイアナに代わる、いや、ダイアナ以上に愛せる女を見つけなければ。自分も相手も互いに愛し合えるそんな存在を見つけなければ。

 マントを広げる。ベランダを蹴って飛び立とうとしたが人の気配がした。出発はもう少し待った方がいいらしい。


「行くのですね」

「ええ」


 よりによって彼に見つかってしまった。以前なら気にすることなかった。だが、せっかくだ。彼に言っておこう。


「ダイアナは我々吸血鬼の女王です。彼女は貴方よりもずっと長く生きます。彼女と共にあれる時間はとても短い。それでも、彼女のことを頼めますね」

「勿論。それも承知しています。だからこそ、彼女の伴侶であり続けられている。勿論これからも」


 やはり、この男の心は綺麗なものだ。彼女は綺麗なものが好きだから、この男が死ぬまで、いや死んだとしても離さないだろう。永遠に彼女を手に入れられないがそれでいいと思う。彼女には彼しかいないのだから。彼の代わりなど自分にはできないのだから。


「私も見つけますよ。愛というものを」

「ええ。いつかその愛を私達にも紹介してください。祝杯をあげましょう」


 送り出してくれる言葉は温かいものだった。慣れない温かさに今度こそ、という希望が見えたような気がした。だから、飛んだ。

 最高の愛を探しに世界へと。


「世界よ、彼を幸せにしてくれる人が現れますように。彼に愛を与えてください」


 医者は彼が飛んだ世界に祈っていた。




「彼、ドロワ・クルーゾが最愛の伴侶を見つけることができたのかは、まだ誰も知らない。それはまた、いつかの話」


 どこかで誰かが呟いた。

後日、登場人物まとめを投稿する予定です。

今回はかなり長めでしたが、読んでいただきありがとうございました。

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