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3章 13

「これが、私がこの組織に来た経緯。それから響子ちゃんとの出会いだよ」

「……かなり強烈な出会いだったんだな」

 白羽は苦笑した。

「でも、私は響子ちゃんに買われてよかったよ。あのまま自衛軍に入ってたらどんな扱いされてたか分からない。今の自衛軍がネクスタブルを集めてるのも、ひょっとしたら響子ちゃん達の時と同じ事をしようとしてるのかもしれない」

 緋一はピクリと反応した。

「確かに、自衛軍が戦闘要員としてネクスタブルを用意してるとは聞かねぇな。ひょっとして……中座した御影のプロジェクトをもう一度進める計画でもあるのか?」

「それは分からない。ハカセは研究成果を知ってる人は全員口封じしたって言ってたけど……ハカセの知らない所で漏れてたのかも」

 目を伏せながら白羽は言った。口封じとは、つまり殺害の事だ。現に一年前、御影は響子達に兵士の皆殺しを命じている。それがあのクーデターだ。

 特殊班にいたネクスタブルはその後逃走している。彼らから情報が漏れ、軍へと戻ったのかもしれない。

「私、ここに来るきっかけはお金だったけど、でも買われてよかったと思ってるよ」

 緋一は顔を上げた。

「ハカセが抱えてる使命はすごく大きい。そして自分の過去が背中合わせになった使命を、逃げずに抱き続けられるハカセは偉いと思う。自分の研究成果を抹殺するのって、研究者にとってはすごく辛いんじゃないかな。それでもハカセは、私達ネクスタブルのためにその選択を取ったんだよ」

 白羽は悼むような顔で言った。

「だから私も、今は本心からハカセに協力したい。買ってくれた分以上の力になりたいって思ってる。この組織に対する気持ちはもう、響子ちゃんやDDと同じだよ」

 そして目を上げると、軽く首を傾げた。これで私の話は終わり。そんな雰囲気だった。

 緋一は口をつぐんだ。頭の中に質問を捜したが、もうこれと言ったものは見つからなかった。

 納得するしか無かったという事だ。

 ふ、と息をついた。

「ありがとう、白羽」

「ううん。私こそ長話になっちゃってごめんね」

 緋一は首を振ると、手すりにもたれかかった。

 響子と白羽もここにいたんだな。出会いに織られた春の光景が目の奥に浮かんだ。

 『僕ら、キミがすごく欲しかったんだ』

 ブランダーを一撃必殺した白羽の情報をどこかで掴んだのだろう。そして彼女が売られようとしている事も。戦力不足かつ資金だけは潤沢なこの組織にとってはまたとないチャンスだ。

 俺もそんな風に引き入れられていたら、何の迷いも無くこいつらに助力できたんだろうか。緋一はぼんやり考えた。下手な口実や理由を探さなくても、白羽と同じように、純粋に協力したい気持ちだけで……

 はっ、と緋一は我に返った。待て、何でいつの間にかそんな事になってるんだ。協力? 仲間になる気は無かったんじゃないのか?

 たまらず背を返し、手すりを掴んだ。

「そんな馬鹿な……」

「どうしたの?」

 隣から白羽が覗き込んで来てギョッとする。

「い、いや別に何でもない」

「あれ? 響子ちゃんがいなくなってる」

 ふと下を見た白羽が気付く。緋一も見ると、確かに響子の姿は消えていた。いつの間にいなくなったのだろうか。

「あ、この時間かぁ」

 白羽が何かに気づいたように顔を上げた。そして緋一を向くと、

「響子ちゃん、ちょっと用事があるみたい。しばらく私が宇佐見君を見張ってるね」

 屈託なく言い、緩やかな顔で緋一をじっと見た。

「前とは随分違う雰囲気の〝監視〟だな」

 緋一は試す気分で聞いてみた。白羽は「あ」と目を瞬いた。

「何だか……ずっと知ってる友達を見てる気分だった」

「いや、いいんだ」

 緋一は小さく笑うと、「冷えるから中に入ろう」と彼女を促した。

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