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3章 3

「もし、ここで俺がお前に勝ったら、俺はお前らから解放されるのか」

「勝つ?」

「ここでお前に再戦を挑んで、戦って、お前を殺したら俺は自由になれるのか」

 緋一は立ち上がった。軽いふらつきが両足を襲ったが、構わず前へと歩いた。

「殺す? どうやってさ。ここには銃もナイフも無いよぉ」

「どうやったって殺せる。首を絞めてもいい」

 言うと、緋一は鉄格子の間から両手を出した。目線の先には、ウェーブの髪に隠れるうなじがあった。

「決着をつけたいんだろ? だったら狂う云々言うよりも純粋に挑んだらどうだ」

「……」

「悪いが俺は、狂うつもりはさらさら無い。待ってるうちにお前自身が誰かに殺されちまうかもしれないぜ。死なない俺と違ってな」

 響子はしばらく前を向いていた。

 窓の外を鳥が横切り、二人を照らす光が一瞬遮られる。僅かな暗転は、まるで世界の瞬きのようだった。

「……緋一君は、自分の意思で誰かを殺した事ってあるの?」

「ブランダーならいくらでもある」

「あれは別だよぉ。今みたいにさ……自分の方からヒトを殺そうとした事は……」

「……」

「だから狂わない限り勝負なんて無理なんだよぉ」

 さらっ、と彼女の髪が緋一の指を掠めた。

「それにさぁ、僕らはそんなにヒマじゃないって言ったでしょぉ?」

 振り返った響子は、なじるような顔で言った。

「……はぁ?」

 緋一は思わず素っ頓狂な声を上げた。

 ペンペン、と鉄格子から出した手をはたかれる。

「解決しなきゃいけない事件があるの、忘れたぁ? 狩人は逃がしちゃったんだよ。彼がまた狩りを始める前に捕まえないと」

「いや、それとは別じゃ」

「分かってないなぁ、緋一君は」

 たじろく緋一を前に、響子は「まったく」と腕を組んだ。

「せっかく僕の心の内を話してあげたのに、ちっとも分かってないよ。今まで女の子に愛を告白された事とかないわけ? 無いからそうなんだよねぇ。まったく」

「あっ、愛ってお前」

「自分の都合で『さっさと挑め』なんて言われちゃ、僕の気持ちは踏みにじられたも同然だよぉ。ホントに酷い男だなぁ、緋一君。ムードって言うのは大切でしょぉ?」

 ムードも何も、結局は殺し合いじゃないのか。そう突っ込みかけたが、

「それに今は絶対ダメだよぉ。緋一君がいないと純粋にハカセや他のみんなが困っちゃうから」

 緋一は言葉を呑み込んだ。大人しくなった緋一に、響子はあらためて肩をすくめた。

 そして、視線を横に流した。

「僕は僕の欲のために生きてる。でも、それの半歩後ろにはハカセとの約束もついて来てる。僕がハカセに協力するのも僕の意思の一部だって事、忘れないでほしいな」

 くるりと背を返した。

「緋一君が目を覚ましたら作戦会議って事になってるんだ。また白羽がコーヒー入れてくれるからおいでよ。ハカセもDDもいるよぉ」

 プリーツのスカートをひらめかせながら、響子はドアへと歩んだ。

「……響子……」

「ん?」

「そう言うなら、まずここの鍵を開けてくれないか」

 ぴた、と響子の足が止まった。

「あ、鍵どこだっけ」

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