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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第52章 それぞれの修行編

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第970話 各国の動き

 追加分です。抜けが出て申し訳ありませんでした。

 カイト達が修行を始めて少しした頃。カイトはちょっとした理由により、修行とは別の理由で公爵邸へと顔を出していた。その理由とは、日本風に言えば地鎮祭の様な物に出席する為だ。


「・・・」


 カイトは目の前でミトラ主導で行われる地鎮祭を見る。地鎮祭というのだから、当然建築する物がある。その建築する物は、シャーナ達の離宮の建築だった。なので勿論、シャーナも出席している。カイトは施工主として、出席していたのであった。


「興味深いですか?」


 カイトは小声でシャーナへと問いかける。地鎮祭は言うまでもなく、日本独特の儀式だ。似たものは確かに世界中に存在しているがそれがなぜエネフィアにあるかというと旭日が伝えたから、というわけだ。

 彼女は厳島神社の関係者で、戦国時代にはあまり一般的ではなかった地鎮祭の存在を把握していたらしい。お姫様モードではこういった決まりごとを重要視する彼女だ。レインガルドに伝えていたそうである。武蔵も聞いたことがあったそうだが詳細は知らなかったが、神様が実際に居るのなら重要だろうと採用していたのであった。


「ええ、少し・・・」

「この後にまだ上棟式もありますから、まだ驚く事になりますよ」


 カイトは小さく笑ってシャーナへと告げる。流石にこれは傀儡であった彼女でなくとも滅多に見ない光景だ。普通に興味深いのだろう。側仕えのメイド達もかなり興味深げだった。


「さて・・・」


 カイトは地鎮祭の進行を見守りながら、とりあえず何事もなく地鎮祭が進んでいる事に安堵を浮かべる。これは勿論何ら魔術的な意味の無い儀式であるが、いわゆる縁起物だ。何か不都合があれば、やはり気分が悪い事には違いがない。と、そんな地鎮祭はつつがなく進んでいき、鍬入れにまでたどり着いていた。


「は、はぁ・・・えっと・・・こう・・・?」


 最早言う必要はないだろうが、鍬入れなぞ全く知らないシャーナは困惑しながらカイトの手を借りつつ鍬入れを行う。と言うかそもそも彼女からしてみればクワを持つ事自体が初めてだ。その重さにびっくりしつつ、若干クワに振り回されながら、困惑しながらの作業だった。


「はい、それで大丈夫です」


 カイトはそれら一連の作業を見守りながら、最後まで地鎮祭に参加する。幸いここ当分は修行と軽い依頼しか受けていない。地鎮祭に最初から最後まで参加しても問題はなかった。

 そうして、最後までほとんど問題なく、地鎮祭は終了する。ミトラも慣れたもので、慣れないシャーナに対しても普通に応対してくれていた。

 まぁ、敢えて一つ問題があったとすれば、適時シャーナがやるべき神事でメイド達が思わず手を貸そうとしていた事だろう。神事は主たるシャーナがやるべきことだ。主従の仲が良いと言うか過保護なのだろうが、それはカイトが苦笑しつつ制止し、シャーナも結構必死で神事だからと自分でやり通していた。


「ふぅ・・・」


 地鎮祭を終えて、カイトは公爵邸の己の部屋で一息吐いた。公爵邸の敷地内での作業なのにわざわざギルドホームの自室に戻る必要はなかったので、こちらで休憩していたのである。

 神事だというのにそこそこ楽しかったのは、シャーナ達を見ていたからだろう。どこか初々しい少女らの共同体の感があったのだ。


「まったく・・・いや、あれで良いのだろうな」


 カイトは僅かに呆れるも、首を振って現状を良しとする事にする。ああいった普通の日常に一切無縁だったのが、彼女らの今までの生活だ。シャーナがどこか見た目相応というか種族としては年相応の部分を見せるのは、そう言った抑圧から解放されての事だったのだろう。


「これなら、しばらくは大丈夫そうか」


 カイトはシャーナ達の精神状態が安定している事に安堵の吐息を漏らす。預かった以上、そこらの面倒を見るのは彼の義務だ。気にするのは、何ら不思議のある事ではない。と、そんな考えを口にしたわけなのだが、そこで部屋の扉がノックされた。


「ん?」

『お兄様。失礼します』


 どうやら、クズハらしい。カイトは別に何かをしているわけでもなかったので、即座に彼女を迎え入れる。この時間なら彼女は書類仕事の真っ最中のはずなので、何かがあったと見るべきなのだろう。


「どうした? 何か困りごとか?」

「いえ、そういうわけでは・・・お兄様。お客様が参られています。陛下よりの使者です」

「陛下からの?」


 カイトはクズハの言葉に首を傾げる。ここ当分で皇帝レオンハルトがカイトへと何か使者を立てねばならない事は殆ど無い。大抵必要ならばシアがその使者となるわけだし、敢えて別口で立てる程の要件は見当たらない様に思えた。とは言え、使者は使者だ。出迎えねばならないだろう。


「わかった。オレが応対にあたる。すまなかったな」

「いえ、では、失礼します」


 クズハはそう言うと、いそいそと自分の執務室へと戻っていく。どうやら仕事中というのは正解だったらしい。なぜ来たのか、と言いたくなるがおそらく誰も手が回らなかったのだろう。というわけで、カイトは椿を伴い皇帝レオンハルトよりの使者が居るという応接室へと移動する。


「おまたせした。唐突だったものだからな」

「いえ・・・こちらこそ、急な来訪申し訳ありません。閣下がこちらにいらっしゃるというお話でしたので、こちらにいらっしゃる内にお話を、と思いアポも無しに、と」

「そうか。いや、気にするな」


 カイトは事情があったのだから、と使者の謝罪に首を振る。そうして、そこら社交辞令を終わらせた所で、カイトは本題に入る事にした。

 なお、相手は使者は使者なのだが、マクスウェルにある公共機関の長だ。貴族達が何か変な事をしていないか見張る為の皇帝レオンハルト直属の監視員、と思えば良い。


「それで・・・一体如何な用事か」

「はい・・・実は教国との事で少々内密にお話がございまして」

「教国? アユル卿の来訪で何かあったか?」

「ええ・・・」


 カイトの問いかけに使者が頷いた。どうやら、教国との事で使者を立てねばならない程の事が起きたのだろう。カイトとて曲がりなりにも公爵で、更にはアユルを受け入れるのは実際には彼となる。使者が立てられて不思議はない。


「実は秋の1月1日に来訪する予定だった日程を少々変更して貰いたい、と」

「? 前にしてくれ、という事か?」

「いえ、後ろにしてくれ、と」


 カイトの言葉に使者は要件を述べる。前倒しではなく、延期。となると、あまり良くない理由だと言うのがカイトの頭をよぎった。故に彼の顔に浮かんだ僅かな歪みを、使者は見逃さなかった。


「ええ・・・実はそれに関わって、もう一つのお話となります」

「伺おう」

「はい・・・実はこれはまだ確定情報ではないのですが、ヴァルタード帝国が動きを見せる、という観測があちらへ潜り込んでいる葦より寄せられたのです」

「・・・なるほどな。道理か」


 使者の言葉より、カイトは帝王フィリオ達がどう動こうとしているか、そして何時動くのか、という推測を立てる。そして思ったのはやはり大国の長は油断ならないな、という事だった。


「ラエリアへ食い込みに行くか」

「・・・はい、その様に記されておりました」

「なるほどな・・・それで秋口からどうなるかわからないが故に、枢機卿は一応全員揃った状態にしておきたい、という事か。向こうもその情報を掴んだ、というわけだろうな」

「おそらくは」


 カイトの推測を使者が認めて頷いた。わからないではない。ラエリアの内紛に他大陸の大国が関わろうというのだ。何が起きても不思議はない。であれば、教国とて警戒はするだろう。勿論、皇国とてすでに警戒はしている。だからこそ、カイトの所に来たのである。


「ふむ・・・動きは大方、ラエリアの保護国を取りに行く物になるか。可能なら、それ以上を欲するだろう。となると・・・ふむ。身柄の安全の確保の為にシャーナ様がこちらにいらっしゃる事は公表していなかったのはまずかったか・・・」

「おそらく、そのようになるかと。それで、閣下には・・・」

「わかっている。流石にそこまで油断はせんさ」


 少しだけ苦味を顔に出していたカイトであるが、一転使者の言外の申し出を笑って受け入れる。何が言いたかったのかというと、シャーナの保護を万全にして欲しい、という事だった。ヴァルタード帝国がシャーナを狙いに来ると読んだのである。

 シャーナは王位を退いたが、その影響力は失われていない。演説のお陰で在位の頃よりも遥かに増してさえいる。保護出来れば、ラエリアに対する影響力は計り知れない。

 カイトと帝王フィリオは顔見知りだが、だからなんなのだ、という話だ。国と国である以上、そこらの友情なぞあり得なかった。狙いに来る理由は十分あった。


「まぁ、流石にオレが居るのがわかって、そして皇国より近い帝国だ。フィリオ陛下とてシャーナ様をオレが保護している事と万全を期しているだろう事はわかっているだろう。そこまで馬鹿はしないさ」

「なら、良いのですが・・・万が一という事も。警戒だけは決して怠らないよう、陛下は仰っておいでです」

「わかった。受け入れよう。それと、アユル枢機卿の件も了解した。早めるのならまだしも、延期ならば問題はない。また詳しい日程が定まり次第、連絡をくださる様にご報告をお願いする」

「かしこまりました。それで、現在の見込みですが・・・」


 カイトの返答に使者が頭を下げる。まだ詳しい日程は皇国と教国との間で相談中という事だが、最低でも一ヶ月は延期する、との事だった。そうして、使者とその見送りの為に椿が部屋を去った後。カイトは一人残って今後の展開を少しだけ、推測してみる事にする。


「ふむ・・・流石に即座に動く事は出来んだろうな。ヴァルタード帝国の狭量が疑われる」


 まず、今すぐに動く事はあり得ない。カイトはそう断言する。これは彼の言う通り、大国である以上は自分から動く場合は猶予を与えねばならないのだ。幾度にも渡って忠告や通達を重ねて、大国はようやく動ける。今回の事は表向き、ラエリアの国内で行われている事だ。他国が何の理由も無しに安々と介入出来る事ではない。大国ならではの仕方がない所だった。


「もう少しで夏も終わりという頃だから・・・秋の初日に通達、冬頃に動くか・・・? いや、もっと早いな。秋の初日に通達で、秋の中頃には動くか」


 カイトはどう動くのが最適かを推測して、己の見立てを呟いた。が、そこでふとそんな見立ての為に役に立つコネを持っていた事を、彼は思い出した。


「っと、別にそんなの逐一推測する必要はないか・・・となれば・・・」


 カイトはそれに気づくと、立ち上がって再び己の部屋へと移動する。応接室には必要な機材が無いのだ。というわけで、移動した彼は即座に己の執務机の前の椅子に座る。


「はい、トントントン、と」


 カイトは机に仕込まれていたコントロール・パネルを操って、どこかへの直通の通信を起動させる。と、そうしてものの数秒で、サリアの顔がモニターに映し出された。


『ああ、来ましたわね』

「全部、お見通しか」

『そうでなければダーリンの妻なぞやってられませんわ』


 カイトの言葉にサリアが笑って明言する。どうやら、使者が来た事も、そしてその話の内容も全てお見通しという事なのだろう。であれば、話は早かった。


「なら、教えてくれ」

『あら・・・商談は抜きですの?』

「おいおい・・・オレの最大の利点は何だ? オレと繋がってオレを自由に動かせる事こそが、お前の最大の利点だろ? そのオレが動く為の手札を与えないなら、その意味は半減しちまうだろうに」

『あらあら。育て方、間違えましたかしら』


 カイトの言葉にサリアが楽しげに笑う。そして、その通りだ。カイトは勝ち馬。最初から勝ち馬に乗れるのなら、それが一番お得だ。どれだけ利益が高かろうとと、勝てなければ大損だ。勝てる時点で儲けを確定させられるのである。これほどの利益があろうはずがなかった。


『さて・・・ヴァルタード帝国の動きですわね。入ってますわよ』

「さっすが」

『秋口に動きを見せる事は確定ですわね。最低でも保護国を幾つか手に入れようとしている様子ですわ。が、まだそこらは計画を立てている真っ最中という所ですわね。もし取り入れないと判断すれば、そこで引くでしょう』

「やはり、か」


 カイトは己の推測が正しかった事を理解する。まぁ、これは多少政治と軍事の世界の話が理解出来れば、簡単に想像出来た事だ。サリアも別に驚かなかった。そうして、そんな彼女が更に続けた。


『最上としましては、シャーナ様を確保してラエリアの政治に食い込む事。ある意味皇国に対してさえ独立した動きの出来るダーリンの保護下だからこそシャーナ様は中立に居られるのであって、他の場所ではそういうわけにもいきませんものね』

「ということは一度は来るだろう、と」

『そうですわね。こちらでも食い止めてはみますし、我が社に潜り込む事は防ぎますが・・・他にもルートなぞゴマンとありますもの』

「開かれた場所である以上、そこは仕方がないか。わかった。気を付けよう」

『そうしてくださいまし。泥を塗られて良いとことはどこにもありませんわ』


 カイトの明言にサリアが頷く。シャーナが奪われて良い事なぞどこにもない。その警護には彼女も協力してくれるだろう。そうして、要件を終えたカイトに対して、サリアが再び口を開いた。


『ああ、それと・・・レヴィア様より、伝言ですわ』

「・・・よく知ってるな。あいつ、名前滅多に出さないのに・・・」


 サリアの言葉にカイトが目を見開いて驚きを露わにする。レヴィの名は彼女が隠している事から、ほとんど誰も知らない。それこそバルフレアが知らない程なのだ。それを知っていれば驚きもするだろう。それに、サリアが楽しげに笑顔を見せた。


『あら、商人ですもの。協力の対価に名前を伺う事は可能ですわ。それが誰に対しても隠されているとなれば、なおさらレアリティが高い。手に入れようとするのは、商人として普通ですわね。まぁ、知っているのは私だけ。隠している理由は存じ上げておりませんわ。可愛らしい名だというのに勿体無い』

「ははは・・・いや、なるほど。何らかの協力の為になら、奴も教えても不思議はないな。別に絶対に隠しているわけでもないからな。まぁ、それは置いておくか。なんて?」

『ラエリアで奴らの動きがあった。近々、そちらへ向かう、と』


 サリアは一転真剣な目でカイトへの伝言を告げる。それに、カイトの目も一気に真剣な物となった。


「なるほど・・・大大老が生き残ったのはそれ故か」

『そう、仰っておいででしたわね。詳しい事はまだ調べている段階だが油断はしていない、と』

「ラエリアで奴らが暗躍か・・・また、あの国へは行く事になりそうか・・・」


 カイトは唐突に見えた敵の動きに、再びラエリアへ行かねばならないだろう、と推測する。敵が暗躍したというのだ。その痕跡を見つけ出す為には、カイト自身が行かねばならない事もあるだろう。と、そんな彼女はその眼差しのまま、どこか願う様に申し出た。


『ダーリン。これは、私の私個人としての依頼ですが・・・』

「言うな。その時は、わかってるよ」

『ありがとうございます』


 カイトの言外の了承にサリアが頭を下げる。彼女は元々、ラエリアに居たのだ。そこで、私怨があった。戦えぬ彼女故に、カイトに頼むしか無かったのだ。そうして、そこらの話し合いを終えた後、一転彼女は再び笑顔を見せた。


『ああ、そうですわ。ダーリン? あまり、無茶はなさらないでくださいまし。ダーリンの身体は言っておきますが、私がスポンサーとして買い取った物でもあるのですわよ?』

「うぐっ・・・そっちもお見通しっすか・・・はいはい。少し気を付けますよ」


 サリアの忠告にカイトがため息混じりに頷いた。さて、何に彼女が気付いていたかというと、それはカイトが修行していたことだ。とは言え、それは別に不思議がない。

 なら、なぜ掣肘したかというと、それが少々目に余る程だったからだ。そうして、カイトはその後しばらくの間、そんな他愛ない会話をサリアと行う事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。


 2017年10月21日 追記

・構成修正

『利益が薄かろうと~』という一文を『利益が高かろうと~』に変更しました。

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