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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第52章 それぞれの修行編

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第965話 もう一人の姉役

 少しだけ、話は変わる。桜田校長は日本で起きていた裏の出来事はほぼほぼ何も知らなかった。彼自身は桜の祖父と付き合いはあったし、彼自身も警視総監にまで登り詰めた傑物だ。が、それでも知らないものは知らなかった。

 とは言え、これには一つの理由がある。桜の祖父にして彼の終生の好敵手であり幼馴染はかつて、日本に存在していた異族達の組織の一つの取りまとめ役だったらしい。

 それも日本政府とつながっている程の大組織だ。幸い彼の時代はカイトが帰還する前で、地球の裏についても比較的平穏無事だった。なので警視総監が知らずともどうにでもなったらしい。


「ふぅむ・・・帰ったら一発ぶん殴るかのう・・・」


 桜の祖父にして己の幼馴染の写真を見ながら、桜田校長がため息を吐いた。とは言え、だ。隠されていた事は隠されていた。やはり憤慨するのは仕方がない。そうして、ことん、と桜の祖父と撮った写真の入った写真立てを机に置いた。そして彼は目の前に視線を向けた。


「うむ、わかった。とりあえず当面はそれで良いじゃろう」

「はい、ありがとうございます」


 女性教諭が桜田校長へと頭を下げる。女性教諭は人懐っこさの中にも豪快さと言うか図太さの滲んだスタイルの良い美女だ。そんな彼女がタイトな服装をしているので、そこはかとなくエロティックさがあった。

 なお、学園の最終的な統括責任者はカイトになるわけだが、表向きの統括責任者は桜田校長だ。そしてさらに言えば、『天桜学園』の統括責任者は彼で間違いない。カイトは冒険部を含めた全体の統括責任者だ。故に、学園に関する事なので許可を受ける為に書類を持ってきたらしい。


「飛空艇、のう・・・これで往来はやりやすくなるかのう」


 許可証に判を押し――と言っても直筆サインだが――ながら、桜田校長はそう呟いた。さて、今彼が何に対してサインしたかというと、学園の敷地内に飛空艇の簡易発着場を設営したい、という書類だった。

 基本的には飛空艇の発着場は地面を平らにして少し整備するだけなので学園だけで動けるが、整地するのならやはり公爵家の許可が居る。なのでサインが必要だった、というわけである。


「さて・・・随分と遠くまで来たもんじゃが・・・」


 桜田校長が椅子に深く腰掛ける。御年70も近い老体だが、それ故に疲れは見えた。と、そこに女性教諭の護衛としてやってきていた楓が心配そうに声をかけた。


「大丈夫?」

「む? おぉ、まぁ、少しのう・・・とは言え、最近は儂の手が必要もないぐらいに上手く進んでおるからのう。燃え尽き症候群にでもなったのやもしれんな」


 楓の声に滲んでいた心配を見て、桜田校長は苦笑を浮かべる。正直に言えば疲れたが、流石に命懸けの孫娘の前でそんな事は祖父の沽券として言えるわけがなかった。


「うーん・・・そう? 気を付けてね」

「うむ・・・三柴先生の護衛、しっかりのう」

「大丈夫よ。ここらなら、今の私達なら安全だから」

「そうか・・・とは言え、嫁入り前の身体じゃ。気をつけろという老婆心は理解しておくれ」

「ええ、わかってるわ」


 楓は素っ気ない様子だが、これが孫の素だという事はわかっている。そして素を晒してくれるということはそれだけ慕われているという事であり、同時に何か特段難しい問題が起きているわけではないということだ。なので桜田校長としては顔を見せに来てくれただけで十分だった。

 勿論、楓もそのために護衛を志願したわけだ。と、学園長室を後にした女性教諭と楓は少しだけ、桜田校長の様子を気にしていた。


「少しお疲れの様子ね・・・」

「はい・・・」


 女性教諭の言葉に楓も同意する。やはり統治というのは老体には厳しい業務だ。一応今でこそ一通りの業務が上手く回り始めていたが、それ故桜田校長が言うようにその反動が出てきていたのだろう。


「うーん・・・そろそろ慰安旅行の一つも考えさせるかぁ!」

「は・・・はい?」


 女性教諭の唐突な言葉に、思わず同意しかけた楓が思わずそちらを振り向いた。イマイチ関わりのない女性教諭なのだが、それ故に対応の仕方がわからないのであった。


「やっぱりそろそろ皆休息が必要・・・だと思うのよ。と言うか、私も疲れたー」

「え、ええ・・・それはそう思います」


 馴れ馴れしい様子の女性教諭に対して、楓は当たり障りのない感じで頷く。一応、この女性教諭が馴れ馴れしいと言うか友達付き合いをする先生だというのは知っている。が、それ故にいまいち対処の仕方がわからなかったらしい。


「じゃ、とりあえず帰ろっか」

「あ、はい」


 女性教諭に促されて、楓は共にギルドホームへと書類を持って帰る事にする。この女性教諭は教員側の冒険者としての最初の登録者の一人で、ここらなら単独で踏破する事も出来るだけの実力はあった。あったが、万が一に備えて楓や数人の冒険者が同行していたわけであった。


「たっだいまー」


 というわけでギルドホームに帰還したわけだが、女性教諭が向かった先はカイト達が居る執務室ではなく、もう一つ存在する教諭達用の執務室だった。


「書類にサイン貰ってきましたー」

「あ、おーう、そこ置いといてくれー・・・それか誰か受け取ってくれー」


 教諭の一人が女性教諭に対して適当に指示を出す。ここには学園側が補佐として寄越してくれた生徒達も居て、彼らがそれを回収していった。

 後はこれを一度精査してもらってカイトへと提出して、カイトが公爵家へと交渉に赴く――そもそもカイトの提案なのでそんな必要はないが――事になるのであった。


「あ、私、後はそれ持って上行ったら上がりまーす」

「「「お疲れ様でーす」」」


 女性教諭の言葉を受けて、もう一つの執務室に待機していた者達が挨拶を返す。少々書類にミスがあったりで実は今は夕方をそこそこ過ぎた頃で、少々早いが上がりにしても良い時間ではあった。

 休める時に休むのは冒険者の基本だ。定時なぞ無い仕事である以上、休める時に休むのも仕事だった。そうして、女性教諭は書類の精査を待つ間に一度自室に戻って荷物を取ってきた。


「あ、三柴先生。これ、お願いします」

「はーい」


 三柴と呼ばれた女性教諭はそう言うと荷物片手に書類を持って上の階にあるカイト達の執務室へと歩いていく。


「おーっす。カイト居るー」


 三柴はそう言うと、平然とカイトを呼び出す。それは馴れ馴れしいどころではなかった。が、それに対してカイトは何か不思議がるではなく、逆に親しげに片手を上げた。


「うん? って、灯里さん。珍しいな、こっち来るなんて」

「・・・あれ? 知り合いなの?」


 今回の一件の報告をカイトへと行っていた楓が目を丸くする。一応両者は教師と生徒の関係の筈で、楓としてもカイトが教師を口説いたとは聞いたことがない。

 と言うかそうなると流石にこれは噂にならない方が可怪しい。そして疑問符を浮かべていたのは、それなり――偶然居た瑞樹ら――に居た。


「あれ・・・?」

「あり?」


 どういうこと、と言う視線を受けて、カイトと三柴こと灯里が首をかしげる。てっきり結構有名だと思っていたのである。そして知っている面子――魅衣や由利ら古い友人――も知っているので、逆に知らない事を不思議がっている様子だった。

 と、そんな様子なので幸い浮気などは疑われなかったが、逆にそうなってくると関係性が気になった。というわけで、瑞樹が問いかけた。


「あの・・・どういうご関係・・・なんですの?」

「あれ・・・言った事なかったっけ?」

「そう言えば・・・私普通下居るし、面倒だから顔ださないっけ」


 カイトと灯里は二人してそう言えば接点があまり無かったよな、と思い出す。偶然といえば偶然ではあるが、偶然故にここまで揃っている時に彼女が来た事は無かったのであった。カイトが居ないとこんな態度にならないのだから、知らないでも当然だろう。


「ほら、桜。お前の親父さんの部下で専務の三柴さん、って居るの知らないか?」

「はぁ・・・三柴さんでしたら、何度かお会いした事が・・・」

「お父さんがお世話になってまーす。娘の三柴 灯里(みしば あかり)でーす」


 よーす、というような軽い感じで灯里が挨拶する。桜としても父の関係で彼女の父には会った事があるらしいのだが、流石にそれだけの関係で娘の事までは把握していなかったらしい。


「あ、はぁ・・・それでどういうご関係が?」


 別にそれはどうでも良い事なのでとりあえず挨拶を受け入れた桜だが、気になるのはそこだ。まぁ、これはカイトの家族と付き合いがあったか無かったかの差だ。故に桜と瑞樹、楓は知らず、逆に魅衣と由利は知っていた、というわけである。


「三柴のおじさんがウチの両親の結婚式で仲人やった。で、ウチの母さんがおばさんの家事の弟子っぽい立場でな。実は親父の転勤やら浬と海瑠が生まれる頃やら色々忙しい時、一時期三柴家に預けられてたんだよ。遠くの親戚より近くの他人って奴だな」

「というわけで、月数回で義理の姉っぽい立ち位置やってました」

「いてーよ」


 灯里がカイトの頭を小脇に抱えて、Vサインで言葉を引き継いで告げる。勿論、カイトに弟妹が居た事も、そしてカイトが元々大阪で生まれ育った事も桜達は全員が知っている。

 が、そこで灯里達と出会っていた事は知らなかった。まぁ、ここらは父の仕事の関係だ。知らないのも無理はないし、カイトが語らなくても不思議はない。

 流石に年齢差から幼馴染とは言い難いらしいのだが、現在も家が近い――と言うか隣――事もあり結構な付き合いがあるそうだ。


「義理の姉・・・貴方義理の姉、何人居るの?」

「いや、何人もいねーよ」


 楓のツッコミにカイトが笑って否定する。カイトの姉に近いのは自称姉のアウラと、そして家族ぐるみで付き合いのある灯里ぐらいなものだ。

 アルテシアも似たような立ち位置だが、あれは姉というよりもド天然なアウラと暴走しがちなカイトの保護者という立ち位置が一番正しい言い方だ。と、そんなカイトの後ろに一人の美女が唐突に顕現した。


「・・・ほう。ちょっと詳しく」

「へ?」


 現れたのはアウラだ。何処か説明を求める様な感があった。アウラには灯里の事は説明していたはずなのだが、そこまで姉っぽい立ち位置とは知らなかったらしい。彼女の立場を考えればカイトを介して会えるわけが無かったので、仕方がないといえば仕方がなかっただろう。


「あ、はじめまして。三柴と申します」


 と、そんな唐突な顕現を果たしたアウラだったが、それに気付いた灯里が頭を下げた。生徒達だからここまで馴れ馴れしいのであって、外の者にはきちんと挨拶をするのである。


「ん・・・アウローラ・フロイライン。カイトの姉、やってます」

「冷やし中華とか料理じゃないんだから・・・」

「あ、はぁ・・・はぁ?」


 アウラの明言に灯里が首をかしげる。一応灯里なので別にバラしても何ら問題無いというのはカイトの考えなので文句は言わないが、後でお説教はするつもりである。

 とは言え、彼女にしてみてもこれは彼女の姉としての沽券に関わる事だ。動いたのは当然とも言える。が、その後に始まった会話は、思わずカイトが頭を抱えたくなる状態だった。


「あっはははは! そうよねそうよね!」

「おー」

「どうしてこうなった・・・」


 カイトの目の前では、アウラと和やかに談笑する灯里の姿があった。カイトと飲むか、と酒を持ってきていた――手荷物の中身――灯里だが、それをアウラと一緒に飲んでいた。ちなみに、一応明言しておく。この時点では灯里はカイトの過去を聞いていない。ものすごい順応性だった。


「す、すごい方ですわね・・・」

「だろ? ぶっちゃけ、オレをして謎と言わしめるものすごい人だぞ、この人・・・」


 引きつった様子の瑞樹に対して、カイトもまた引きつった笑顔で頷いた。基本的に私人としての灯里はものすごいダメダメなのである。

 教師失格とまでは言いたくないのであるが、豪快と言うかガサツな性格らしい。かと言ってこれで学業の面ではアメリカで飛び級までして一流の大学で首席卒業だったというのだから、カイトからしても世の中わからない事だらけだった。


「ぷっはー・・・で、そっちはどうなんですか?」

「こっちでも結局変わらない。何時も通り無茶やって・・・」

「あー・・・昔から私もそこら言い聞かせてたんですけど・・・すいません、カイトが他所様の家に入ってまでご迷惑おかけして・・・」

「大丈夫・・・私もお姉ちゃんだから。こんな風に育った責任は私にもある」


 義理の姉を自称する者同士として、何か分かり合える所があったらしい。アウラは灯里の言葉にしきりに頷いていた。不思議な者同士、波長が合っている様子だった。多分一周回ってとかそう言う感じだ。

 どうやら、アウラは姉の立ち位置を取られるというよりも良い理解者を得られた、と喜んでいる様子だった。姉という立場を何より重要視するアウラをして、これである。と、そんな灯里に、カイトが問いかけた。


「あ、あのー・・・灯里さん? そんな至極平然と話してますけど・・・お相手、どなたかおわかり・・・なのでしょうか?」

「へ? ああ、アウラさんでしょ? 公爵代行の。新聞は読んでるわよ?」

「わ、わかってそれか・・・」


 カイトは返って来た答えに頬を引き攣らせる。わかった上での、この馴れ馴れしさ。彼女の最大の持ち味だろう。と、そんなカイトに対してアウラが制止を掛けた。


「カイトの姉同士でわかる事もある。ということで、カイトはここらのお話には口出し無用」

「あんれぇ? なんで仲良くなってんだ、この人ら・・・つーか、なんで疑問無いの、この人・・・」

「ふぇ? ああ、それ? 大体理解してたし。大変だったわねー。あ、辛いなら昔みたいにおっぱい揉む?」

「軽い!? 軽いよ!? 後風評被害やめて!? 揉んだこと」

「あるよね」

「ごめんなさい! ありますけどね!? でも軽いよ!?」


 軽く灯里にスルーされた大きな事に対して、カイトが怒鳴る。一応こういう人だとわかってるので良いし、こんな彼女の性格に大いに助けられたので文句はない。

 さらに言えば周囲との齟齬を抱えていた皐月も随分と世話になった。感謝もしている。カイトと皐月は二人揃って何があっても足を向けて寝られない相手だ。強くは出れない。


「今生きてるから良いじゃん。ケ・セラ・セラ。あんたは今そこで五体満足で生きてて、それなりの地位も築けて元気にやってんの。それで昔辛かったから、って文句言ったらお天道様に怒られるわよ」

「うっ・・・」


 灯里の正論にカイトが口ごもる。その通りだ。カイトは現状に文句は無い。五体満足とは微妙に言い難いが、それでも四肢共に健在だ。地位も金も女も全て手に入れられる立場で、手に入れた。

 慰めてもらいたいわけではない。そして勿論、過去で同情が欲しいわけではない。なら、それで良いと受け入れるべきだろう。


「い、いや・・・それでも疑問とかねぇっすかね?」

「疑問・・・? 何に?」

「うぉう・・・」


 すぱっと切って捨てた灯里に、カイトはもはや賞賛しか述べられない。が、そんなカイトに灯里はにまり、と笑みを浮かべた。それにカイトは離脱を決定して、失敗した。


「あ、でも一個。結構女の子イワしてるんだから、やっぱりでかいの? 何度か見た事あるけど、数年前だし服の上からなのよねー。ね、ね、今はどんなもん? 外人並とか? おぉ・・・何時もと変わんない」

「ちょっとぉ!? 唐突にエロオヤジ出てくんの止めて!? ここあんたの自宅じゃねぇよ!?」


 灯里は桜達に問いかけながら、カイトの股間へと何らためらうこと無く手を伸ばす。と言うかなにげにズボンの中に手を突っ込んでカイトの股間を握っていた。

 ちなみに、これは親の前だろうと酒の席ではよくやられる。なので珍しくはない。と言うか、親達も酔ってるので半ば公認されている。浬は胸を揉まれたし、海瑠も何故か胸を揉まれた。

 エロオヤジにして酒飲みにしてダメ女。残念美人ここに極まれりであった。やはりこんな彼女が教師をやれているのがカイトには謎で仕方がない。そして、教師としては同年代で一番優秀である。


「つーか、言わせてもらえりゃ自宅でも思春期の男の子の前に年頃の女が風呂上がりに素っ裸で出てくるの止めねぇかね!? ブラは言わないからせめてパンツは履いて!? 一応嫁入り前で教師だろ!? おじさん泣いて・・・ないよね! 知らないから!」


 灯里の手を強引に引き抜いたカイトが引き続き怒鳴る。まぁ、そんな家族ぐるみの関係なので、時折お風呂が壊れたとかでは灯里が天音家に借りに来たりするし、カイト達が借りに行く事もある。

 他にも彼女の父が出張で家に男が居ないから、と三柴に頼まれてカイトが向こうに泊まった事は何度もある。灯里の言う通り月に何度かは泊まっていた。

 そこでの出来事であった。ちなみに、灯里も他所様の家では流石にこれはやらない。自宅で父が居ない時限定だ。即ちカイトが居る前限定だ。ちなみに、自室では大半ノーブラでTシャツとパンツオンリーらしい。


「えー・・・良いじゃん、別に。自分ちなんだからさー。たまにお父さん居ない時ぐらい素っ裸で歩いてもさー」

「それは良いとしても未成年に酒を勧めたのは駄目だろ。いや、やっぱ裸も良くねぇよ。後、人の前で母親と猥談すんのヤメレ。彼氏のが小さいとか言われてもオレにゃ彼氏さんに同情する以外何も言えねぇよ」

「アウラさーん! 私の胸チラチラ見てマス掻いてた癖に弟が可愛くないー! つーか、その時の彼氏、当時のあんたより小さいの! アイツに浮気された後、あんたのイチモツの写真と一緒にヘタレポークピッツ野郎って言ってやったら真っ赤になって電話して来やがったのよ! あれ、さいっこうの復讐だったわ! 暫くして自信喪失してインポになったって! てか、今思えば、あの大きさで満足出来てた女って居るんだ! マジ私、ヤる前でよかったー!」


 ぎゃはははとばんばんカイトの肩を叩きながら灯里が大爆笑する。相当酔っている様に見えるが、これでまだ半分という所である。ハイテンションになってるだけだ。

 ちなみに、カイト曰く酒豪で言えば自分とタメを張れる、とのことである。転移前のカイト――つまりこの時――が一度付き合った時、翌朝には瓶が2つ転がっていたそうである。浮気された勢いで買ってきた度数の高い物なので、一晩でそれぐらいは軽く空けられてしかも前後不覚にはならないレベルらしい。

 一応美人なのでモテる事はモテるのだが、こういう性格なので知った瞬間男は離れていくらしい。結婚は無理だろうな、と彼女の父親と妹さんは笑っていた。


「勝手に撮った挙句人に見せんのヤメレ!? つーか、それで朝っぱらに別れたってわけか! 優しくして損したわ! 大泣きしてっから、頑張って酒付き合ったってのに! お陰で次の日無茶苦茶頭痛かったんだぞ!」

「あっはははは! お陰であの時の彼氏とすんなり別れられたから感謝してるわ! 未だにあれお守りよ!? 浮気した奴にガキに負ける短小野郎って言ったら泣いて別れるもの! いや、マジ効果絶大だわ!」

「!?!?!? ちょっと待て! そういやデカかった、って明らかに可怪しいよな! マジで何やったの!?」

「ごくごくごく・・・ぷっはぁー。え、私何か言った? 酔って覚えてないなー」


 大混乱するカイトの追求に、灯里はボトルから直接酒を飲んでしばらっくれる。ちなみに、中身は一応あまり度数の高くない酒であるので、この程度で彼女は酔わない。

 なお、恐ろしいのはこれが冗談という可能性が否定出来ない事だ。勿論、本当の可能性もある。その当時は中学生のカイトが気を使う程には、荒れていたらしい。どうにも聞けば初彼だったそうで、浮気を知ったショックはとんでもなかったそうだ。かなり自暴自棄だったらしい。


「さて・・・私は自分の部屋い・・・って、そうそう。あんたに用事あったんだっけ。これ、借りてくねー。あ、単に色々どうなってんの、ってお小言言うだけだから。彼氏をぱくっとは行かないから安心してねー。不安だったら一緒に来ていいよ。あ、アウラさんも来る?」

「ん」

「あり? どしてこうなるの?」


 灯里とアウラは桜達に手を振って、首を傾げるカイトを強制的に連行する。なお、怒涛のごとく去っていったので流石に桜達はついていかなかった。

 ちなみに。一つ驚くべき事がこの後発覚するのだが、実は彼女はこちらに転移してしばらくしてカイトが勇者カイトである事を見抜いていたらしい。やはり謎だ、というのはカイトの言葉である。

 と、そんなカイトだがこの時は唐突に連行される事になった事態に困惑して、ただただ連れ去られるだけだったのだった。

 お読み頂きありがとうございました。ようやく、灯里登場。

 次回予告:第966話『お小言』

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