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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第50章 草原で生まれし者編

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第926話 誰かの声

 ラカムの子らが待ち受ける部屋へと乗り込んだカイト達だったが、それに対してその首謀者たるラッセルは平然としていた。それは観念したというのではなく、ここに来るのがわかっていた、という様な感じだ。


「・・・やはり、そうやって乗り込んで来られますか」


 ラッセルは苦笑気味に笑う。どうやら、ここにこうして乗り込んでくる事も想定内だったのだろう。


「お前の事だ。幾つもの罠を張り巡らせる事はわかってたからよぅ・・・こうするのが一番だ」


 苦笑気味だったラッセルに対して、ラカムは快活に笑う。別に怒鳴りつけようとかは考えていない。カナンも己の子だが、ラッセルやここに残る他の四人とて彼自身の子だ。頭ごなしに怒鳴りつけるつもりはどこにもなかった。


「で? ここに来て集まってんだから、わかっちゃいるんだろ?」

「ええ、わかっていますよ」


 悪びれる事もなく、ラッセルが同意する。そうして、彼が問いかけた。


「直に見るのは初めてですが・・・やはり混じり者の匂いがしますね」

「はっ・・・まぁ、メリーの血を引いてるからな」

「メリージェーン・・・汚れし月の者」


 ラッセルがため息と共にその名を告げる。それは、『夜の一族』に連なる者を彼らなりに侮蔑した言葉だった。差別語と言っても良い。それに、わずかにラカムが顔を顰めた。だがそれにさえ、ラッセルが顔を顰めた。


「わかっていたはずでしょう。そう言われる事は」

「・・・」


 ラカムは何も言わない。わからない、なぞと言うつもりはない。そして、言えるわけもない。彼自身が告げたのだ。風当たりが強い、ということを。その彼がわからないと言えるはずがない。


「父上・・・敢えて、言わせて頂きましょう」


 ラッセルは父の目をしっかりと見据えながら、問いかける。


「何故、彼女を受け入れられる。本来は、彼女はあのまま亡き者として扱うべきでした。この一件とて、ひいてはそれが原因とも言える」

「それか・・・」


 ラカムがため息を吐いた。何度も言われた。それを我が子からもされたに過ぎない。そしてだからこそ、ラッセルも敢えて、とわざわざ言ったのである。そうしてラカムはどかり、と瓦礫の上に腰を下ろした。


「・・・はぁ」


 なんと言ったものか。ラカムは少し悩みを見せる。そうして悩むラカムに対して、カナンが口を開いた。それはラカムへではなく、ラッセルに対してだった。


「あの・・・」

「なんだ?」

「私がいちゃ駄目・・・なんですか?」


 当たり前の疑問だ。彼が、暗殺の首謀者なのだ。そして、兄でもある。聞きたくもなる。


「居ては駄目なのか、か・・・」


 ラッセルはそう呟くと、近くの兄妹達と顔を見合わせる。その顔は半ば呆れ、半ば同意と否定が入り混じって、という所だ。どうやら、この場の全てはラッセルに預ける事にしたらしい。そもそも全員が同じ考えで残っていたのだ。当然であったのだろう。


「私自身は、駄目とも良いともどちらでも構わん。調査はさせてもらった。我々の族長という座を後継する意思が無いだろう事は理解している。去っていったのはそれを理解出来なかった者達だけだが・・・とりあえず、この場の面子に君の存在は・・・まぁ、言い方が悪いがどうでも良いのだ」


 どうでも良い。ラッセルはこの場の五人の総意を告げる。これが正直な所だ。彼らにとって、カナンは本当はどうでも良い。これで族長を継ぐだの言い始めればどうでも良いわけではないが、少なくともカナンにその意思はない。

 未来にはわからないが、少なくとも今は無いだけは事実だ。ならばこの場に残る面子にとって見れば、カナンの存在とはどうでも良い事になったのである。

 ラッセル以外の残った面子の中で、彼の姉を除けば全員がそうだった。そしてその他の三人は総じて、ラッセルと同じく父の意向を問いただす為に残っていた。ただそれだけだ。


「なら、どうして?」

「他は知らんが・・・私には声が聞こえるのだ」

「声?」

「血が混じっている君には、わからんのだろうがな・・・」


 ラッセルはため息と共に、深く椅子に腰掛けた。そうして、彼は遠くを見据えた。それはまるで、何かを本当に聞いているかの様だった。


「我々『山獅子(やまじし)』の一族が何故危険があるこの山に居を構えているか、わかるかね?」


 ラッセルはカナンへと問いかける。が、カナンはわかるはずもなかった。彼女は自分の血統を知らされたのはここ数日だ。そして彼女の根本には冒険者という揺るぎない物がある。獣人という種に対して特段の思い入れがあるわけではないのだ。知るはずもないのだ。


「・・・ここは、ここら周辺・・・と言っても数万キロ四方で息絶えた我ら一族が集う地だ。我らの一族は、その慰撫を務めている・・・見たまえ、あの山の頂上を」


 ラッセルはそう言うと、ラカムとカイトが破壊した窓から外を見る様に促す。それに、カナンはそちらを仰ぎ見る。そこにはなんらかの儀式的な装飾が施された道があった。

 それは所謂、参道の様に見えた。勿論、日本の物とは大きく異る。なので同じく仰ぎ見た魅衣達にだってなんとなくそう思う、としか映っていない。だが詳しい事はわからないまでも、一同にもそれが儀式的な意味を持つのだ、という事はわかった。そうして、ワケを理解したカイトが口を開いた。


「『山獅子(やまじし)』の一族は、霊の声が聞こえる・・・いや、霊の声が聞こえる者を、『山獅子(やまじし)』と呼んだ。それ故に他の『金獅子(きんじし)』の一族においても死者達の慰撫を務める一族は総じて『山獅子(やまじし)』の一族と呼ばれる」

「よくご存知だ。この里の者でさえ殆ど知らない内容だというのに・・・」


 カイトの言葉にラッセルが同意する。彼は除霊が可能だ。そしてそれは即ち、死者が見えるという事だ。なのでカイトの目には、その参道を通る死者達の姿が見えていたのである。

 そして、同じく。ラッセル――とその姉――の目にもまた、死者達の姿がうっすらとだが見えていた。うっすらとなのはラッセルはカイトよりも力が弱い為だ。ラカム程強くなれば、カイトと同じ様に見える様になるだろう。


「『金獅子(きんじし)』の祖たる金獅子・・・神虎は何処かに在ると言う霊峰・・・彼らの言う御山を守る神獣だ。世界樹の守りにはそれ故、居ない・・・いや、正確には今は任務では無い、と言う所か」


 ラッセルの言葉を受けて、カイトは更に己の知識を開陳する。以前世界樹の前でカイト達は神獣達に出会ったわけであるが、勿論あれで全てというわけではない。

 神獣達にもある種の縄張りは存在していて、各々の領域に近い所に世界樹があるとその守護を務めるのだ。やはり獣人にも獣に近い性質があるように、その祖たる神獣にも獣に似た所は当然の様に存在している。となると、必然として縄張り意識が働いてしまうのだ。とはいえ、それは流石に神獣達も望まない。なのでぶつかりあってしまう事がないように、各々の領分を決めていたのである。

 まぁ、唯一神鳥は世界樹を中心として縄張りを構築しているので常に守護しているが、その程度だ。なので金獅子という神獣は今は彼だか彼女だかが好む山に滞在しているのだろう。後に聞けば、ノームが育てた世界樹になると、金獅子も任務に就くらしい。


「・・・ああ、その通りだ」

「じゃあ、声っていうのは・・・」


 カナンは少しだけ、背筋を凍らせる。聞いた事がないわけではないらしい。が、それ故変なイメージが先立っているようだ。そうして、カイトが告げる。


「獅子の獣人達は得てして、霊山を通ってあの世へ行くと考えている事が多い。そして皇国で死んだ者が通るとされているのは・・・あの山だ」

「その通りだ。私の耳に響いているのは、死者達の声。想念、と言っても良い」


 ラッセルは沈痛な顔でカナンの問いかけに答える。この様子だと、彼自身にカナンに対する恨みつらみは無いのだろう。ただ、死者の想念を聞いてそれに影響を受けているだけだ。


「・・・この地には、古い声も響いてくる・・・その声の多くは・・・父よ。貴方にも聞こえているのでしょう?」


 ラッセルがどこかの諦観を滲ませるラカムへと問いかける。


「・・ああ、聞こえてるぜ。この山には、数多の死者達の想念が宿っている・・・族長として、その想念から耳を背けた事はねぇよぅ・・・」

「ならばなぜ、彼女を受け入れられたのです」


 ラッセルが問いかける。それはどこか、非難が混じっているようでもあった。


「この山に集う死者達の想念は、彼女を拒絶している。今でも、十数年前の崩落は貴方の所為だと言う声は少なくない・・・これをご存じないはずはないでしょう」

「ああ、知ってるぜ・・・」


 ラカムはため息混じりにラッセルの言葉を認める。彼は、族長だ。そして身体性能の高さであれば、おそらく一族でも最優に位置している。故に彼にもまた、この山を通っていく死者達の声ならぬ声は聞こえていた。そうして、ラカムはカナンの頭を撫ぜる。それは、彼女が傷ついた顔をしていたからだ。


「すまねぇな・・・」

「あ・・・」

「わかっちゃ居るんだ。でもよぅ・・・やっぱ、そういう奴も居るんだよ」

「・・・ううん。覚悟はしてたから・・・」


 カナンの返答に、ラカムは笑顔で頷いて覚悟を決める。それは、過去との決別を決めた覚悟の顕れだった。


「ああ、聞こえたぜ。だがな、俺はそれら全部を無視するって決めた」

「その穢れし血を受け継ぐ子の為ですか?」

「それもある。それもあるが・・・それだけじゃねぇよ」


 立ち上がったラカムはそれもあると認め、しかし更に続ける。


「あの大戦の時。俺達はこいつの下で戦った・・・そりゃ、お前らも知ってるな?」

「こいつ・・・?」


 ラッセルだけではなく、他の子供達もまた指さされたカイトを見て首を傾げる。だが、そうしてすぐにはっとなった。蒼い髪の偉丈夫。父がここまで共に来た男。そして感じる圧倒的な存在感。思い当たる節は、一つしかなかった。


「まさか・・・」

「おう。こいつのガキに会えるとは思ってなかったけどな。はじめまして、ラカムのガキども。ウチの団員にどうも・・・まぁ、そのけじめは考えるが、まずは名乗りからやるべきだろうな。カイト・マクダウェル。こいつのダチだ」

「勇者カイト・・・では、まさか・・・」


 カイトの横に立つ一人の美女を見て、ラカムの子らも悟る。今回の一件ではどういう理由かは知らないが、カイトとティナも関わっていたのだ、と。


「あぁ、そりゃ良い。とりあえずは置いとけ。こいつは今の話にゃ関わんねぇよ」


 ラカムは子供達の驚きを軽く切って捨てて、己の返答を続ける事にした。


「はぁ・・・まぁ、真面目な奴だとは思ってたが・・・いや、真面目ゆえに、クソ真面目に声を聞いてるわけか」


 ラカムは自分の耳にも響く怨嗟の声に、少しだけ耳を傾ける。


「・・・吸血種を許すな。穢れし血を許すな・・・はっ。随分とまぁ、溜め込んだもんだ。300年だぞ。まだ消えねぇ」

「だーらぶった斬ってやろっか、って昔言ったんだよ。残す意味も価値もねぇんだからさっさと一思いに楽にしてやりゃあ良い」

「ははは。やめろよ。んなことやられちゃ族長の立場がねぇ・・・ま、実際さっきは思ったけどよぅ」


 カイトの提案をラカムが笑って断った。当たり前だが、除霊出来るカイトの耳にも死者達の遺した声は聞こえているのである。そうして、笑ったラカムは改めて常識的な話を始める。


「今まで俺達獣人と『夜の一族』が相争う事およそ数千年。全面戦争こそ俺の知る限りはなかったものの、流れた血はおびただしい量だ・・・それが、あの山には遺されてやがる」


 ラカムは自分達が奉ずる山を仰ぎ見る。死者達の想念は世界樹で濾過される。そうなっている。が、それ以外にも死者の想いの篭った場所には、残る事がある。いわば残留思念の様なものだ。

 勿論、これは弱い意思、想念だ。何時かは消える。消えるはずだった。だがそれが数百年、数千年単位で幾つも折り重なれば、まるで淀みの様にそこに留まってしまう事があるのだ。

 そうして延々数千年残り続けた結果が、このどす黒い声だ。魔物に成るほどには強くもなく、されども無視出来るほどには弱くない。そんな、死者達の怨嗟の声だった。


「・・・だがよぅ。俺は同時に外にも出た。こいつにぶちのめされて、強引に握手させられてよぅ・・・」


 ラカムが笑う。あの時は本当にカイトに従うつもりもなく、レイナードとの協力なぞまっぴらごめんだった。カイトが茶化す様に、命の取り合いさえしていた。


「それは、レイの奴も一緒だ。変な話だが、歴代最強と言われた二人が同時に外に出て、俺達は同時に井の中の蛙だった事を知っちまった。ションベンちびる思いも何度もした。それどころか、死ぬと思った事も何度もある・・・けど俺の足がはじけ飛んで動けなくなった時、俺を抱えて飛んだのはレイの奴の翼だ。奴の爪がもがれた時、その爪となったのはこの俺自身の牙だ・・・お互い、むちゃくちゃ嫌な顔をしてたけどな」


 ラカムは大戦期の地獄での事を語る。これは息子達にも一度も語った事が無い事だった。そうして、彼は続けた。


「命の取り合いしてた奴と、命の貸し借りをし合う仲になった。それが全部だ。それが終わって帰ってきて聞いたのは・・・まぁ、今のこの声だ」

「もっと酷かったけどな」

「ははは。ぶっちゃけんなよぅ」


 カイトの暴露にラカムが笑う。ここらで一度ラカムがカイトを招いた事があり、その時にここに滞在したというのが、数日前にユリィとカイトが話していた事であった。カイトにあまりに凝り固まった残留思念の浄化をラカムが依頼したのである。


「ま、そういうわけでよぅ・・・ぶっちゃけ、ブチ切れた。いや、帰ってすぐじゃねぇ。やっぱ戦友になると、レイの奴を呼ぶ事があったわけよ・・・したら、声共がなんて言ったか分かるか? レイを殺せ、だぜ。しかも魔物化してよぅ・・・」


 ラカムが呆れとも嘆きとも侮蔑とも取れる複雑な表情を浮かべる。


「はぁ・・・正直、俺はあの時だけは、一族が嫌いになった。俺もその頃までは、声に従っとくべきじゃないか、って心のどこかで悩んでたんだがよぅ・・・」


 ラカムはため息を零す。この声は自分の祖先達の声だ。それ故、祖先の声に従うべきなのでは、と思ったらしい。交流を断つべきか、それとも今の自分の信じる道を行くべきか。それに悩んだらしい。だからこそ、同じ悩みを抱えていたレイナードを呼んだらしい。そこでの、出来事だった。


「殺せるわきゃねぇじゃねぇか。レイは俺のダチだ。ダチを殺せるわけがねぇ・・・幾ら祖先だろうと、聞いてやらねぇ。って思ったら、見えちまった。俺が進みたい道が。いや、俺が進みたい道を見せてた男が居た事が、か」


 ラカムはカイトを見る。この一件の後、彼はカイトを呼び寄せる。この声に縛られる一族をこの声から解き放つ為に、だ。


「なぁ、ラッセル。この声は貴様の声か? お前のダチの声が混じってるか? お前の知ってる声はそこにあるか?」

「ありません・・・ですが、それでも。一族の声です」

「ああ、そうだ。俺の一族の声だ」


 ラッセルの断言にラカムも応ずる。確かに、こういった怨嗟の声もまた、彼の率いる一族の声だ。それは彼も認めている。だが、それとこれとは話が別なのだ。


「が、わざわざ聞く必要はねぇじゃねぇか」

「それを族長が言ってはならないでしょう。平等にせねばなりません」

「ははは! いや? 族長だから、言うぜ。お前らの声は聞かねぇってな」


 ラカムが獅子に相応しい獰猛な笑みを見せる。そうして、一気に彼のオーラが膨れ上がった。それはまさしく、獣の長。<<獣皇(じゅうおう)>>の名に相応しい風格だった。


「なぁ、おい・・・俺は何だと思ってやがる? 単なる獣か? 単なる人か? 俺ぁ獣皇だ。強い奴こそがルールのこの地において最強を誇る獣の(おう)だ。誇り高き一族の長だ。そんな俺が、敗北して死んだ挙句に泣き言を言う奴の言葉に耳貸すと思ってんのか?」

「っ・・・」


 ラッセルが気圧される。ラカムの言葉は道理ではあった。怨嗟の声は即ち、恨みを晴らせぬが故に残っている言葉だ。雄々しく戦いその果てに散ったのなら、怨嗟の声は遺さぬのが彼らの在り方だ。

 そしてそれをこそ、彼らは英雄と讃え崇め奉る。であれば、その一族の長たる彼がその怨嗟の声に耳を貸す道理はどこにもなかった。


「情けねぇな、おい・・・俺達獅子の一族は死してなお誇りを失わぬ。ゆえに己の死をして獣を討てるほどの武勇を讃えども、死して誇りを失い恨み辛みを遺すほど堕ちた者は我が一族の言葉にあらず・・・違うか?」

「・・・然りです」


 ラッセルが認める。こればかりは、ラカムが正しい。彼の言うとおり、そもそも恨み辛みを遺しているのが獣人として見れば可怪しいのだ。それを慰撫するのは大切ではあるが、それに従うのは族長としては変な話になるのである。


「なら、そういうわけだ・・・てめぇも何時までこのうざってぇ声に耳貸してんじゃねぇよ。一族の誇りを語るなら、この声に対して堂々と言い張れ。誇りを失った者に我が一族の言葉を代弁する資格無し、ってな」


 ラカムは堂々と宣言する。そうして、全てを終わらせる事にする。


「なら、この話は終いだ。これ以上やるってんなら、俺も俺として出よう。ガキ同士の争いを見過ごす道理はねぇ」

「どうあっても、カナンを我が子と認めると?」

「ああ・・・怖いダチまで関わっちまったからな」

「おいおい・・・」


 ラカムの物言いにカイトが苦笑する。別にそんなつもりは一切ない。まぁ、これ以上やるというのなら、ぶん殴りはするだろうが。


「ま、とはいえ・・・流石に暗殺はここいらでやめて貰おう。ウチの団員に手を出されちゃ、さしものオレもこいつも黙っちゃいられない」

「・・・」


 ラッセルは黙して、しばらく考える。受け入れるべきか、受け入れざるべきか。答えは見えているのに、決断はできなかった。


「そこら、お前の悪い癖だ。熟考は良いが、行動が遅い。それだけが致命的な欠点だな、お前の」


 ラカムが熟考するラッセルに対して苦言を呈する。が、これに対しては彼の方も言い分があった。


「父上が拙速すぎるのです」

「それはよく言われるわな」


 ラカムは笑う。が、それが己の持ち味だと思っていた。なので、これで良いと思っている。そうでなければ、ここまで多種多様な考え方を持つ一族の中で変革者になぞなれはしない。


「まぁ、とりあえず。これ以降カナンはこいつの保護下に置かれる事になっている。血統も血統だ。皇国より、それは命ぜられてこいつも受諾している。お前らは俺とこいつを揉めさせる気か?」

「うっ・・・」


 ラッセルの顔が苦渋に歪む。死者たちの怨嗟の声は今でも、カナンを殺せと言っている。が、流石に勇者カイトと事を構える事は無理だし、ラカムと事を構えるのはもっと駄目だ。ここらで、手打ちにすべきだろう。

 というわけで、ラカムがため息混じりに勝手に沙汰を考え始める。すでに事件は発覚したし、原因は無視する事で決定した。なので後彼が考えるべきは、彼ら暗殺に関わった者達への沙汰だけだ。


「沙汰を告げてぇ所なんだが・・・なんかねぇかねぇ・・・」

「あの・・・」

「「うん?」」


 おずおずと申し出た魅衣に、ラカムとカイトが視線を向ける。どうやら何か考えがあるらしい。それは今までずっと近くで見てきたからこそ、わかったのかもしれない。


「同じことをやってみて貰えば・・・どうなんですか?」

「同じこと・・・あぁ、そりゃベストな考えだ。カイト、一個、わがまま聞いてもらえねぇか?」


 魅衣の言いたいことを理解して、ラカムが口角を上げる。それは良い考えだと思ったらしい。そしてそれに、カイトも笑みを浮かべた。暗に同意していたのだ。


「そうだな。じゃあ、沙汰を告げるとしようか」


 ラカムが笑みを零す。そうして、彼らへの沙汰が告げられて、この一件は幾つかの懸念を残しつつそれはラカムが己が対処する、と族長としてカイトへと請け負った事で、終わりを迎える事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。これで、おおよそ今回の一件は終了です。後は明日のエピローグで終了です。

 次回予告:第927話『和解への一歩』

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