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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第49章 海底王国編

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第883話 調査続行

 『深海蟹(ディープ・クラブ)』を討伐した日から更に一日。作業も三日目に入り、今回の任務内容の半数の日程が終了していた。


『今日も今日とて海底を探すお仕事ですよー』

『ご機嫌そうね、天音・・・』

『いえ、これはどちらかと言うとテンションが可怪しくなってるんだと思います・・・』

『まぁ、真っ暗な中だし・・・しょうが無いのかもね』


 おかしなテンションで今日も今日とて仕事始めを宣言したカイトに対して、一同が仕方がない、と笑う。ちなみに、これは意図的だ。敢えてやって気分転換をさせているだけだ。というわけで、海中に入るといつも通り冷静なカイトに戻った。


『さて・・・今日もいつも通りコンテナを見付け出すお仕事になりそうな話なんですが・・・』


 カイトはため息混じりに周囲を見る。今日も今日とて海の中では魚達が泳ぎ回り、周囲には海藻や珊瑚が乱立していた。昨日とは違い今日は晴れているので水温も結構暖かい。暗い事を除けば、今日は絶好の遊泳日和だった。


『色鮮やかな魚達が泳ぎ回るのと一緒に泳ぐ・・・夢っちゃあ夢なんだけど・・・』

『クマノミとか居ないのかなぁ・・・』

『クマノミは浅瀬だ。ここらにゃ居ない・・・と思う』


 今日も今日とて通信の中は賑やかだ。まぁ、単なる調査任務だと思っているし、魔物も一日数体だ。気を抜いていても仕方がない。そんな雑談を小耳に挟みながら、カイトは通信機を少し弄って船の調査を行っている冒険者達へと問いかける。


『船のコンテナはどうなってる?』

『こっちはあと少しだ』

『こっちも同じく』


 カイトの言葉を受けて、男女2つの声が返って来た。どちらも今回の冒険者の中では一番高いランクSの冒険者だ。それ故、何かがある可能性の一番高い船内に潜入していたのである。そうしてその会話を聞いていたまた別の事情を知る冒険者が結論を告げた。


『ということは何も見付かっていない、ということか』

『そうなる』

『こっちも同じく』


 まぁ、沈没船だ。それも船が真っ二つになって沈没したのだ。船の上に積まれていたコンテナは元より、船の中に積載されていた積荷の大半が外に流れ出ていた。目印とやらが描かれているコンテナが無くても不思議はない。なので二人でも十分に調査出来たし、更に言えば調査も中に何もない事を確認しながらだ。

 それも、相手が相手故に繊細な調査を行っている。残る分を調査するにもこの日の一日は必要だろう、という予定だった。


『外のコンテナは?』

『こっちは50個見つけた。中身は確認してない。今やっている所だ』

『こっちは30って所だ。潮の流れから、そっちに流れているらしいな』


 カイトの言葉に続けて、他の冒険者が質問に答えを返した。どうやらカイト達の側に潮の流れがあるらしく、コンテナの多くはカイト達の側へと流れてきている様子だった。


『ということは、ありそうなのはカイト側か』

『あ、俺?』

『あんたじゃないあんたじゃない・・・えっと・・・あー、めんどい。若い方のカイト。そっちの方』

『『あはは』』


 どうやらカイトという名はまた別の冒険者の名でもあった様だ。二人のカイトがランクSの女性冒険者の言葉に笑う。やはり有名になってしまったが故の仕方がない事なのだろう。


『ま、後はしっかり調査しながら、考えますか』

『そうしよう』


 ランクSの女性冒険者の言葉に、同じくランクSの男性冒険者が同意する。そうして、この日も作業を行う事にするのだった。




 そんな会話から、およそ2時間。一度昼食を摂る為に船に戻った一同はそこで補給を終えると、再度海の中へと調査に戻っていた。


『はぁ・・・なんか健康的な一日を過ごしてるなー、って気がする』

『健康的なので良い事だろ?』


 女子生徒の言葉に、カイトが笑いながら告げる。そうしてこの後も雑談混じりに調査を続けていくが、大体1時間程度調査した所で、軍のオペレーターが通信に声を乗せた。


『こちらオペレーター。カイト・アマネさん。応答をお願いします』

『なんだ?』

『そちらの近辺で奇妙な印の様な印の付いたコンテナが見付かったと報告が入りました。調査へ向かってもらえますか?』

『わかった。案内を頼む』

『了解です』


 どうやら、カイト達が探すコンテナが見付かったらしい。ちなみに、これは別にその当人から報告が入ったわけではない。写真が撮影されてコンテナの場所が地図で纏められている為、そこで提出された写真から何か奇妙な印が見付かった、という事だろう。


『方角は・・・あっちか』


 カイトはペンダントを使って方角を確認すると、そちらに向けて一人移動を開始する。するとそこでは藤堂が調査を行っていた。しかもコンテナの中身を確認――これは仕事の一環――を確認しようとしている所だった。


『じゃあ、中を開けて確認してみるか』

『っと、待った! それ開けるのちょい待ち!』

『うん?』


 大慌てで制止を掛けたカイトの声を聞いて、藤堂がコンテナを開ける手を停止する。残念ながら何があったのか、というのを教えられないのが辛い所で、普通のコンテナと思っている様子だった。


『ふぅ・・・なんとか、間に合った・・・見つけたのこれ一個ですか?』

『ああ。この近辺にはこれ以外には無い・・・それがどうかしたのか?』

『ええ・・・少し離れてもらえますか? 今回の調査対象の中で一番危険なコンテナの可能性がありまして・・・』

『本当か・・・わかった。少し離れるぞ』


 カイトの言葉を受けて、藤堂と綾崎が自分が率いていた面子へ向けて離れる様に指示を下す。そうして、少し離れた所で停止した。そんな彼らの更に後ろの少し離れた所に軍の潜水艇も待機したのを確認して、カイトがコンテナの取っ手に手を掛けた。

 コンテナの大きさは地球のコンテナよりも一回り小さい程だ。貴金属を入れていたという話を考えれば、さほど大きな物では無い様に見せかけたのだろう。が、小さいからといって油断出来るわけではない。


『・・・これより開封作業に入る』

『了解・・・何時でも攻撃可能』

『ああ・・・開いた・・・中には・・・何もない。どうやら、何かがあっても持ち出された後、と考えて良いらしいな』

『『『ふぅ・・・』』』


 事情を知る者たちが全員、安堵の表情を浮かべる。コンテナの中は空っぽで、何も入っていない。これで何かが起きる事はないだろう。が、もしかしたら刻印が刻まれていたりする可能性はある。というわけで、カイトは少し警戒しながらも、中を更に詳しく確認すべく潜水艇の一隻に頼んでコンテナの回収を頼むと同時に、少し明かりで照らしてもらう事にした。


『コンテナの回収を頼む・・・っと、その前に中を確認しておきたい。なんらかのトラップも考えられるからな。光源を頼めるか? 懐中電灯だと些か不安が残る』

『了解・・・こんな所でどうだ?』

『助かる・・・何もない・・・まぁ、そりゃそうだよな。普通に痕跡残す奴らじゃないよな』


 カイトが杞憂か、と笑みを浮かべる。何かを残す様な奴らではないのだ。残っていないのが普通で、警戒するだけ無駄なのだ。


『良し。何も無い。が、一応回収だけは頼む』

『わかった。アンカーを降ろす。引っ掛けてくれ』

『りょーかい。他はもう作業に戻ってくれ』


 カイトはそう言うと、笑って他の面子には引き続き作業に入らせると同時に己は降りてきたアンカーにコンテナを引っ掛ける作業に入る。


『良し。アンカーセット完了。もう大丈夫だ』

『これで、この依頼もほとんど完璧に完了かねー』

『そうだろう。流石に2つも3つも持ち込んでいるとは思えんからな』


 事情を知る冒険者達の中にも、安堵の雰囲気が蔓延していく。流石に『死魔将(しましょう)』達も3つも4つもコンテナを持ち込むわけもないだろう。

 しかも中身は貴金属類だという話で持ち込んだのだ。しかもこれは追加での積み込みであるので、積み込めてもせいぜいコンテナ一つ分だろう。そう思ったらしい。


『じゃあ、後は残り1つのコンテナの在り処を確認するだけ、か』

『お願いします』

『あいよ』


 カイトが笑ってその言葉に頷いて、作業を再開する事になる。ちなみに、ここで調査されたコンテナは後々エンテシア皇国が引き上げて、一部はラグナ連邦へと引き渡す事になっていた。そうして調査の再開しようとして、メーアが大慌てでこちらに連絡を送ってきた。


『良し・・・他には?』

『・・・すいません! 今すぐ調査に戻ってください! もう一つ発見されています!』

『何?』


 カイトが少しだけ目を見開く。どうやらもう一つ、目印の描かれたコンテナが見付かっていたらしい。この開封作業に全員が集中しすぎて、もう一つ発見されていた事への確認が疎かになっていたのだろう。

 少し目の前の事に誰もが警戒しすぎていた様だ。警戒し過ぎた結果こうなるとは、と笑うしかないが、笑っていられないのが現状だ。


『どこだ?』

『そこから200メートル程潮の流れに沿って移動した方角です。案内します』

『頼んだ。これより移動する』


 カイトは指示に従って移動を開始する。大きさから言って、貴金属類として2つもコンテナを運び込めたのは驚きだ。当たり前だが貴金属類は大きさに反して価格が高い。それはエネフィアでも地球と変わらない。

 中に何を仕込んでいたかはわからないが、コンテナ一杯の貴金属類になれば幾ら保管の為の専用の容器があったとしてもかなりの価値になる。その時点で唐突に運び込むのは怪しまれる可能性は高いし、おそらくそこらで怪しまれたのだろう。


『コンテナを2つも運び込む手腕・・・奴とは考えにくいな』


 カイトはこの作戦を主導したのが『死魔将(しましょう)』の中でも殊更厄介な道化師ではない、と結論付ける。彼の場合、そもそもここまで大規模な搬入をする事はない。怪しまれない様に身一つで冒険者になりすまし、更には船も沈没させない。何も痕跡は残さない事は確実だ。


『・・・少し遠いな。中身が軽くなった事で潮の流れの影響をもろに受けたのか・・・あれか。暦、ストップ!』

『はい!』


 コンテナに手をかけていた暦だが、カイトの制止でびくっ、となって手を止める。この点、変な言い方かもしれないが調教が成功していたらしい。即座に停止していた。


『間に合ったか・・・?』

『えーっと・・・何かありました?』

『いや、万が一に備えたいだけだ。ほら、そこに印あるだろ? 危険物が運び込まれていた可能性があってな。まぁ、もう片方には何もなかった。だからそこまで心配はしていないんだが・・・』

『あはは・・・でも大丈夫ですよ。ほら、中身、黒い宝石が一つ入ってただけで・・・』

『何・・・?』


 暦がちょうど手に取った黒い宝玉を見てカイトが目を見開き、通信機の先でも驚きが伝播する。何か残るとは思えなかったのだが、何かが残っていたらしい。

 とは言え、驚いたのは一瞬だけだ。即座にカイトの指示が飛んだ。事故か故意かは不明だ。が、残っていた以上、普通ではない可能性があった。


『っ! 今すぐそれから手を離せ!』

『え?』

『良いから離せ!』


 カイトは水の祝福の力を使い、強引に暦の手から黒い宝玉をはたき落とす。そうして、黒い宝玉は重力に従って、海底へと沈んで行った。


『一体何が・・・』


 暦だけではなく、冒険部の誰もが疑問を浮かべる。カイトが何を焦っているのか理解不能だったのだ。勿論、カイトもわかっていない。が、猛烈に嫌な予感がしたのだ。いわゆる、戦士の勘だ。そしてその次の瞬間、案の定黒い宝玉が鈍い色の光を放った。


『きゃあ!』

『っ!』


 カイトは暦を突き飛ばし、自身もその場から飛び退く。突き飛ばした際に暦の通信機代わりのネックレスが千切れたが、それは仕方がない。そしてそれで済んだのだから、幸運だった。一同が慌てて岩陰に隠れると同時に黒い宝玉が浮かび上がり、いきなり魔物に変化したのだ。


『なるほど・・・こういう理屈か・・・』


 カイトが顔を顰める。何が起きたかはっきりと理解出来た。持ち込んだコンテナ一杯にこれが仕込まれていたとするのなら、中に何も無い理由にも説明が付く。散らばったのではない。コンテナの中に入っていた貴金属全てが魔物に変わったのだ。それはコンテナの中に何も残らないだろう。


『あぁ、全く・・・ここらはあいつららしい。皮肉だな』


 カイトが笑う。これは『道化の死魔将(どうけのしましょう)』らしい、と言えた。数多人々を魅了し続ける宝石は魔が宿っているとも言える。こんな皮肉は道化師らしいといえば、彼らしい手腕だった。

 おそらく主犯ではないが、助言するぐらいはしただろう。そうして、カイトは現れた30メートルもの大きさの巨大なイカの形の魔物との戦いを決めるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第884話『ネオ・クラーケン』

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