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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第48章 次への布石編

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第843話 男子会2

 少しだけ、遠く昔に遡る。まだカイトが地球に居た頃。カイトは最強と言われる程の力を手にしてなお、なぜ強くなり続けるのか問われた事があった。


「何処までも、だ。人生に油断出来ないのなら、守るモノがあるのなら、立ち止まってはいられないさ」


 これが、カイトの答えだ。どこまででも、強くなろう。そう決意した。そして、問いかけた者が去った後、更に一人こう呟いた。


「オレは・・・怖い。怖いんだ・・・お前は夜に悪夢に苛まされた事があるか? 夜に見知った女達が陵辱される夢を見て、心交わした友達が絶望に伏した顔をしているのを見て、悲しみに沈む奴らの顔で、目を覚ました事があるか? 自らは見ているだけしか出来ず、憎悪で濁った刃を向けても、同じく憎悪に狂った奴から歯牙にも掛けられない悔しさで涙した事はあるか?」


 カイトは幾度となく失ってきた。彼の少年時代は常に奪われる立場だった。いや、それ以前に彼は原初の頃から奪われ続けたのだ。その奪われる恐怖というのは、彼の中から永遠に消えてなくならない。

 奪われたくないから、今も力を追い求める。奪われたくないのなら、奪われても無事に取り戻したいのなら、法さえも覆えす頂点の力が必要だったのだ。

 だから、彼は法律を気にしない。国が自分の宝物を奪うのなら、国を敵に回す。世界を滅ぼす覚悟が、そしてその力がある。奪うのなら、奪われる覚悟を持っていろ。理不尽に奪う事なぞ出来はしない。それがカイトの持論であり、過去のあの惨劇を越えたが故の結論だった。




 酒が乗れば話は弾む。というわけで、大体10時頃になっても男子会は続いていた。が、この頃になると酒が回って本題から遠く離れた話をする事も多く、お互いの色恋沙汰にも話が飛ぶ事があった。


「で、そういやそこらどうなんっす?」

「ぐっ・・・」


 やはりこの面子だ。先程までとは打って変わって、瞬がやり玉に上がる事が多かった。既にリィルとの中は周知の事実なのだ。それでもまだ何の音沙汰も無し、というのは色々とやり玉に挙げられるのも仕方がない。


「あー・・・そこらいっそガッツガッツ行っちまえばいいのに」

「ぐっ・・・そう言うけどな・・・」


 そんな瞬に更に続けたのは、<<(あかつき)>>から離れてマクスウェルに残っていたリジェだ。久しぶりだしここらの馴染みに顔だすか、と偶然にやって来たのだ。そこで偶然にも彼らを見付け、楽しそうに飲んでいたしその頃にはソラの相談も殆ど終わっていたので参加した、というわけである。

 ちなみに、残っているのは元々決められていた事だ。如何に留学と言っても向こうで勉強出来るわけがない。向こうは生粋の冒険者集団。勉強を見てくれるわけがない。見れる環境も無いらしい。

 かと言って、学校から公的に留学している以上いくらそれが軍学科と言えども勉強はしてもらわねば困る。年に何度か――一年48ヶ月なのが幸いした――こちらに戻って、勉強をする様に取り決められていたのであった。


「そもそも、だぞ。姉貴が云々は兎も角、惚れた女を失いたくないってんなら、抱けよ」


 リジェは少し責める様に、瞬へと断ずる。


「そもそも、清い交際とか考えてるの馬鹿見るぜ。ウルカで盗賊共とやりあってると、どうしても見たくも無いクソみたいな光景は見ちまう。嫌になるぜ」


 思い出したのか、リジェは酒を飲んでいるにも関わらず嫌そうな顔で一気に酒を呷る。が、その顔はしかめっ面のままだった。


「マスター! 酒! 美味い奴頼むー! ちょいと仕事の事思い出したら酒が不味くなったから良いのな!」

「おーう!」


 リジェは気分転換、とばかりに今までの安酒ではなく、少し高めの酒を頼む。そうして、酒のツマミを摘みながら再び話し始めた。


「そもそも、だ。そこら日本人ガツガツしてねぇよな」

「いや、ガツガツしてないってわけじゃ・・・」

「東町、あんま寄ってないって聞いてるぜ」

「そりゃ、行かないだろ」


 リジェの物言いに、瞬が笑う。生憎と東町の色街で飲み明かす趣味はない。それはこの場の全員に言える話だ。ちなみに、リジェも行かないらしい。実家と学校にバレるのがわかってるから、だそうだ。


「そう、それなんだよ。そもそも俺達・・・あ、いや、俺一応軍人になるんだっけ・・・ま、どっちでも良いか。で、えーっと・・・あぁ、そう。女と一人に一度しか付き合わないってどうなんだよ」

「・・・何か可怪しいのか?」

「可怪しいってか・・・うーん・・・」


 ソラの問いかけを受けて、リジェが少し悩む。別に可怪しいわけではない。彼の父は一人しか娶っていないし、幼馴染のアルの父・エルロードも一人しか娶っていない。

 勿論、両家共に貴族であるにしては珍しい事ではあった。しかも曲がりなりにも英雄の血筋だ。それを含めれば、珍しいことこの上ない。

 と言っても実際にはエルロードと言うかアルのヴァイスリッター家は宗教上の兼ね合いもある。彼の祖先であるルクスは出奔したとは言え、ルクセリオン教国に所属していた。

 そして出奔したからといって教えそのものを失ったわけではない。思想そのものは聖剣に宿る精霊達から聞いた古い思想に鞍替えしただけ、とも言える。これは現在の皇国で主流の考え方とも近い。実は教国よりもルクセリオ教の原点に近い思想を持ち合わせているのは皇国側だ、というのは笑い話だろう。

 とは言え設立当時からあそこは一夫一妻が主なので、そもそも一夫多妻制は無理である。現にルクスも女誑しを演じて浮き名を流したものの、決してルシア以外の誰かを身籠らせた事は一度も無かった。噂が出ても、真摯にそれに応対して決してそんな事が無いという事を証明し続けた。

 そして今でも、そんな彼の興したヴァイスリッター家はルクセリオ教に入っている。彼らの一族のミドルネームは一種の洗礼名に近い。というわけで、一夫多妻制は不可なのであった。


「別に可怪しい、ってわけじゃねぇんだけどさ・・・そもそも、何躊躇ってんだよ」

「・・・うん?」

「好きなんだろ、抱きゃあいいじゃん」


 リジェが笑う。好きなんだから、抱けば良い。何か不思議である事は何もない。


「別におたくらルクセリオ教ってわけじゃないんだろ? 日本で特定の宗教が、って聞いたことねぇし」

「ああ・・・だから?」

「んじゃ、別に一度に一人とだけ付き合わないといけないわけでもなし。まぁ、そこらは人それぞれだから強いて強弁するつもり無いけどな」


 リジェとて別に一度に複数の女性に手を出した事があるわけではない。とは言え、恋人が居るから、と風俗店に足を運んだ事が無いわけではない。


「オタクの所のマスター。相当イワせてるんだろ?」

「ん、ま、まぁな」

「だってのに下が普通だ、ってんだからちょっと疑問でさ」


 どうやらそもそもリジェはカイトがぶっ飛んでいるのにその下が揃いも揃ってお上品だった事が疑問だったらしい。翔の返答で話がカイトへと飛ぶ。


「地球も重婚とかアリだったんじゃねーの?」

「いや、そうじゃないぞ?」

「あり?」


 どうやら、リジェは根本的な所で思い違いがあったらしい。ソラの指摘を受けて、首を傾げていた。


「そういや、あいつそこの所どうしてなんだろうな」

「色々言ってるんっすけどね」


 瞬とソラは、お互いに首を傾げ合う。彼らはかつてのカイトを知らない。それ故、今の勇者カイトとしてのカイトしか知らない。なので多数の女の影がちらつくのが当然なのだ。とは言え、ここには翔が居た。だからこそ、彼が今まで実は密かに思っていた事を初めて口にした。


「いや・・・実はちょっと思うんだけどな?」

「おう」

「うん?」

「何?」


 翔が口を開いた事に、三者三様に返事をして彼を注目する。


「あいつ、昔は普通だったぜ? 普通に小学校の頃の修学旅行。弥生さんが好き、つってたしな」


 翔は古ぼけた記憶を取り出して告げた。それは大昔。まだ中学校にも入っていない頃の話だ。その頃から、カイトは弥生を意識はしていた。

 それが単なる好意なのか男女の仲としての好きなのかは、翔にはわからない。当時親友と言える程仲が良かったわけでもなく、偶然同じ部屋だっただけだ。

 そこで、普通に修学旅行の夜の一環として話しただけだ。もしかしたらあまりに遠くの昔過ぎて、カイトにもわからないかもしれない。が、これだけは事実だった。


「あいつ、ウィルさんとかルクスさんに調教された、とか言ってるけどよ。何か思う所あってやっぱ今の思想になってるんだろ? で、さ・・・何かあったんだろうな、とは俺も思ってる。こういうのもなんなんだけど、あいつ、普通に普通の奴だったからさ」


 翔は僅かながらも勇者カイトではないカイトに触れた者として、思う所を語る。リジェの前でルクスやウィルの名を出したのは酒に酔っていたから、という所だろう。

 なお、幸いな事に酒に酔っている為かリジェの方もこれが英雄達の名であると気付く事はなかった。今ではどちらも『カイト』と同じく二人にあやかって名付けられる事の多い名だ。どちらにせよ気付かなかった可能性は高い。


「何か?」

「あ、いや、勝手な推測っすよ?」


 瞬の問いかけに、翔は大慌てでこれがあくまでも推測だ、と明言する。カイトは過去の旅路に語ってくれた事は殆ど無い。今だって彼らはシャルの事を殆ど知らない。女達にはこれからも深く関わるが故に語ってくれたが、それ故こちら側には、あまり語ってくれないのだ。


「でも、やっぱなんか色々あったんだろーなー、とは思ってます。この間の女の子の幻影とか、それでしょ?」

「あれ、か・・・」

「幻影?」


 そもそも冒険部でもないリジェは兎も角、瞬はこの中で一人事件とは関わりが無かった。だから、首を傾げるしかなかった。


「あ、そっか。そういや、先輩知らないですね・・・ほら、前にどっかのテロリストとバトったでしょ?」

「ああ、そう言えばあった、と聞いたな。こちらはミナドへは行かずにホームで即応態勢を整えていただけだったが・・・」

「そこで増援の前の最後にでかい女の子の幻が浮かび上がったんっすよ。で、それ見たカイト、むちゃくちゃ辛そうな顔してたんっす」


 翔に続いて、ソラがその時見た者の一人として語る。と、そうして当時を思い出して、ソラがふと気付いた。


「あ・・・そっか・・・そういや、そこであいつ言ってたよな・・・好きだ、と気付いた時には終わってた、って・・・」

「そうなのか?」

「らしいっす。詳しい素性とかは聞ける雰囲気じゃ無かったんで聞かなかったんっすけどね」


 流石にあの時はあの場を離れる事も出来ず、かと言って詳しく聞ける状況にも無く、だ。全部見ていたし、カイトの語りはほぼ聞いていた。


「あー・・・こりゃ、あれだ。どっかで恋人かなんか襲われて殺された奴にありがちなパターンだな」


 話の流れで聞いていたリジェが、推論を告げる。その顔にはどこか哀れみというか同情が滲んでいた。そして同時に、なぜ複数の女性を抱えてるか、というのにも理解が及んだようだ。


「なる・・・そりゃ、ハーレム作るわな」

「うん?」

「そういう奴、大抵無茶苦茶過去に辛い事抱えてるんだ。で、もう奪われるの嫌だから、って徹底的に自分で大切なもん全部守ろうとする奴・・・まあ、ぶっちゃけ馬鹿だな。普通に仕方がない、って諦めるしか無いってのに、次こそは守り抜く、つって泣き寝入りもせずにあくせくと足掻き続けてぶっ壊れるような・・・」


 どこか眠そうに、リジェが告げる。おそらく何を言っているか当人は殆ど理解していないだろう。先程酒を一気飲みしていたし、既に3時間近く飲み続けているのだ。ちょっと真剣な話になった事で一気に眠気の波が襲ってきたのだろう。


「まぁ、馬鹿って言ったけど、そういう奴の方が俺は好感持てるけどな・・・後悔しないで済むし・・・大親父が好む奴でもあらぁな」


 うとうととリジェが告げる。諦めて泣き寝入り、というのは彼の主義ではない。喩え馬鹿と言われ仕方がない、諦めろ、と言われようとも、それを嫌だと足掻き続ける。


「結局、奪われたくないならてめぇの手で守るしか無いんだよ・・・性的な意味も勿論含んでさ・・・だから、言ってんの。あんたら一度に一人って一人しか守りたくないのか、ってな・・・寝取られとか好きならまだしも、そうじゃねぇなら抱きゃいいじゃねーの。後悔してからってのは遅いんだよ・・・ったく。おたくのマスターもんな過去あるなら言ってやれよ・・・後悔してからは遅いってな・・・勿論、両方きちんとしてやんねーと駄目だけどな・・・」


 リジェが愚痴愚痴と管を巻く。彼は流石にカイトが勇者カイトで、その道のりを考えれば仕方がないだろうと気付いていない。気づけばまた別の感想もあったのだろうが、普通の一個人として考えた結果はこれだった。

 彼は冒険者として、理想論では片付かない様々な現実を目の当たりにしてきた。だからこそ、この言葉だ。どれだけロマンチックな夢があろうと、奪われてしまっては意味がない。

 清く正しい交際を、と言って奪われてはその夢も何の意味もない空想に堕ちるのだ。そしてカイト達程、その痛みを理解している者も居ないだろう。様々な立場で、彼らは失う事を経験してきた。だから、彼らは躊躇わない。奪われるのが嫌なら、しっかりと守るしかないのだ。


「ぐぉー・・・」


 言うだけ言っていびきを立て始めたリジェを前に、三人は何も言えなくなる。奪われるのが嫌なら、しっかりと守れ。率直であるが故に、そしてウルカで現実を目の当たりにしてきたが故に実感の入った重い言葉だった。


「・・・はぁ・・・奪われたくないならしっかり守れ、か・・・」


 ソラが呟いた。彼が奪われたくないというのなら、それはまずは由利だ。彼女を奪われるのは嫌だ。だから、人を殺す事を選んだ。

 では、それだけなのか。そう問われると、次にナナミの顔が浮かんだ。彼女も奪われたくはない。自分を好いてくれて、こんな優柔不断な自分の為に尽くしてくれる一つ年上の女性。悪く思っているはずがない。

 好きか嫌いかで言えば、好きだ。男女として好きなのかは、今の彼にはわからなかったが。それでも、奪われたくないという想いはあった。

 いくらなんでもソラなのでカイトの様に物語の騎士様の様に立場等で困窮した相手を強引に奪う様な事は出来ない。出来ないが、相手が望んでくれるのであれば受け入れるぐらいは出来る。どうするか、決断すべき時が来たのだろう。


「・・・うっし! 決めた」


 思いもよらない事で偶然ではあったが、リジェの後押しによってソラは全てに踏ん切りを付ける。道化師の声も振り払った。一人で戦えないなら、仲間も居る。カイトにだって仲間は居た。一人で立ち向かう必要はない。そして守りたいなら、躊躇う必要はない。そんなソラに、翔が首を傾げた。


「うん?」

「いや・・・ナナミを受け入れようって思ってさ。逃げちゃ、駄目なんだ。ちょっとでも失いたくないって思ったのならさ。こいつならきちんとしてくれる、って他の男に譲る必要は無いんだ。てめぇでやれ、って話」

「そか・・・なら、まぁ飲め! この合法の二股クソ野郎! マスター! 酒、追加!」

「あいよー!」


 翔はソラが何かを決断した事は理解出来たらしい。と言ってもやることは完全に二股だ。合法かつ公的に認められて二股をするだけであるが、二股には違いない。ということで、酔い潰させる事にしたらしい。普段は言わない事を言う辺りソラもそうだが、翔も結構酔っている様子だ。


「・・・そうか。そうだな・・・」


 元気に再び飲み始めた後輩たちを前に、瞬もかつて風呂場でリジェが言いたかった事を理解した。せめて女を守れる様になってから、と思っていた。が、そもそも思い直した。


「お前は、守られるだけの女じゃないよな」


 瞬が笑う。リィルを守れる様な男になってから。そう考えていた彼だが、それが一方的な視点である事に気付いたのだ。そもそも、リィルは戦士。それも上級の戦士だ。守られるだけではない事ぐらい、彼はよくわかっていたはずなのだ。そしてそれに気付いたからか、ふと、何かが去来した。


「っ・・・うん?」


 角の生えた女性。か弱そうな見た目に反して、強い意志の滲んだ女性だ。言葉で例えるのであれば、鬼姫。そんな女性だった。それが一瞬だけ、見えた。勿論、瞬に見覚えはない。


「なんだったんだ、今のは・・・」


 先程の鉄砲の様な音と良い、見たこともない女性と良い。これは酔っているな、と瞬は自省する。そうしてそのお陰で、酔い潰れたソラと翔に対して、彼は一人生き残った。


「・・・うん。悪いがカイトを呼び出そう」


 時刻は深夜12時。大体5時間ぐらい飲み明かした計算だ。普通に学園の教師に見られれば大目玉だが、教師達はこういった酒場には来る事は珍しい。

 とは言え、この状態で帰れば誰しもに見咎められる。それはごめんだった。というわけで、瞬は少し申し訳なく思いながら、通信用の魔道具でカイトを呼び出す事にした。


「はぁ・・・」

「すまん・・・俺も足取りは覚束なくてな・・・翔が精一杯だ」

「良いって・・・ほら、おい起きろ」


 カイトはソラに肩を貸して、なんとか立ち上がらせる。ちなみに、リジェについては流石に怒られるか、とカイトがこのまま引き取る事にしたらしい。他に偶然夜勤だった冒険部の瞬の後輩が先に引き取っていった。


「んぁー・・・カイト、俺、ナナミ受け入れっから。奪われたくないんだよー・・・で、あの道化のラオウにも頑張って立ち向かってくから・・・」

「はいはい・・・ラオウってなんだよ。野郎だ野郎。我が生涯に、とでも言うのかよ。奴らは絶対に立ったまま死なねぇって・・・」


 管を巻くソラに絡まれながら、カイトが少し不機嫌そうに顔を顰める。そうして、瞬の方を向いた。


「先輩、貸しだからな・・・最悪はこの上の宿屋借りれば良いってのに・・・後、桜と魅衣に後でなんかでフォローしといた方が良い。特に桜。魅衣はまぁ、まだ良いんだけど・・・」

「うん?」

「・・・真夜中でこれ以上言う必要が? いくらお嬢様な桜だからって女だぞ。かなり、怒ってる。ったく・・・ああ見えて桜、怒ると結構激しいんだよなぁ・・・はぁ・・・ティルドーン(朝まで)かなー、これ・・・」

「す、すまん・・・明日の朝は遅れても俺が執り成す・・・」


 愚痴るカイトを見て、そう言えばこいつはハーレムだった、と瞬が思い出す。そんな中で夜に男を呼び出すのだ。当然、お相手だった女性達は今頃さぞ、それも頭に超が付く程にお冠だろう。一番怒っているのがこの二人なだけで、それ以外も結構お冠なのであった。

 カイトが少し不機嫌そうなのもそこらにあった。いくら彼でも情事の真っ最中に呼び出されて気分が良いはずがない。そうして、結局最後にはなんだかんだとカイトを巻き込んで、男子会は終了するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第844話『次への手配』

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