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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第47章 過去より蘇りし者編

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第832話 輪廻転生の輪の中で

 魅衣達の記憶を改竄したティナは、誰にもバレない様に屋上へとやって来ていた。そうして睨むのは、遠く東の空だ。


「・・・この大陸では無いのう」


 ティナは視線の方角を把握する。現在の彼女はいうなれば半覚醒状態。全ての力を使える状態ではない。が、それでもやろうとすれば天桜学園の帰還を成し遂げるぐらいの力はあった。とはいえ、それは出来ない。『今の』彼女がしてはならないことだからだ。

 何故、というと影響力が高すぎるから、という一言で片付く。そして当人が覚えても居ない事をやってはならないだろう。あくまでも、今の彼女は過去世の彼女だ。謂わば死者と考えて良い。死者が成し得る事としては、少々度が過ぎていたと考えていたのである。


「ふむ・・・」


 真紅の眼が紅く光る。それは、少し遠くに居るカイトと共鳴を始めた。そうして、カイトに異変が起きた。


「・・・ん」


 もうそろそろマクスウェルに到着するのでそろそろ何時もの少年の姿に戻るか、と考えていたカイトだが、そんな彼が右目を唐突に押さえる。


「どうしたの?」

「これは・・・」


 違和感は一瞬だけ。だがその一瞬で十分に現状を理解するには十分だった。


「・・・え?」


 横を向いたユリィが驚く。カイトの右目が真紅に染まっていたのだ。それに、ユリィは僅かだが理解が出来た。


「・・・覚醒、進んだの?」

「あー・・・まぁ、間違っちゃいないな」


 ユリィが問うたのは肉体側の話だ。が、これは肉体ではなく魂の覚醒だ。過去世が影響して、目が染まったのだ。とはいえ、意味合いとしては間違いではない。というわけで、カイトはそのままの誤解にしておくことにして、事情を告げる事にした。


「シャルから受け取った伝言の一つが表に出ただけ」

「シャルの伝言?」

「ああ・・・ちょいとな。はぁ・・・厄介な話になってきたぞ・・・」


 カイトがため息を吐く。彼の目が真紅に染まるのは、実は別に不思議はない。ティナが己に封印を施していた様に、カイトも<<原初の魂(オリジン)>>の一部に封印を施した。

 理由は簡単で、あまりに強力すぎるので万が一に備えてティナ達が封印を解くまで封印を施しておく事にしたのだ。まぁ、ティナ達とは違いこちらはわがままだ。影響して解けたというわけだろう。


「シャルの伝言、ということは結構ヤバそう?」

「あの道化野郎の動きだろうな」

「あー・・・」


 ユリィが大凡を理解して、顔を顰める。何かをやってくるだろう、とは彼女も思っていた。であれば、シャルが何かを教えてくれていても不思議ではなかったのだ。この間は喜びのあまり彼女の目覚め以外はスルーしてきたが、それ以外に伝言があっても不思議はなかった。


「どこで、というのはわかんねぇな・・・とはいえ、何を、というのはわかるな。対処の一つも可能か」


 カイトが笑う。自分に一番影響を与えた『勇者様』だ。堕ちたとてその性能は失われていない。道化師達はそこさえも御しきれると考えていたのだろうが、そんな筈が無い。いや、御しきれぬ事も想定内かもしれない。そこらは、カイトもわからない。


「良し・・・ユリィ。降りた後は少し任せる。こちらは情報を手に入れに行ってくる」

「うん、いってらっしゃい」


 カイトは見え始めたマクスウェルの街を見ながら、ユリィに後事を任せる事にする。そうして、彼はマクスウェルへと一度飛空艇を降下させて、ユリィに後を頼んでティナが待つ冒険部の屋上へと向かうのだった。




 冒険部ギルドホームの屋上にて。蒼と紅のオッドアイ状態になったカイトとティナが久方ぶりに再会を果たしていた。


「・・・久しぶり、というべきなんだろうな、この場合は」

「感覚的には間違いではない。そして現実としても間違いではあるまい」


 カイトの言葉にティナはくくく、と笑う。確かに、そもそも三週間近くぶりの再会だ。その指摘は正しくはある。


「現状は?」

「何かをした、という程度かのう」


 カイトの問いかけにティナが笑う。なぜ笑ったのか。それはあまりに彼らからすると常識的な話だったからだ。


「わかっとるじゃろ、お主には」

「比翼連理というのも馬鹿げた話だ」

「羨ましい」

「うっせ。良い事ばっかりじゃねぇよ。こっちの行動は完全に見透かされてんだぞ」


 どこかうざったい様子のカイトであるが、そこには辟易した様子はなかった。呆れてもいる。アホくさいとも思っている。が、仕方がない。そう諦められていた。


「あいっかわらずガチストーカーじゃのう・・・」

「魔王と勇者の真実、って奴がありますからねー」


 ストーカーとのたまったティナに、カイトも呆れ返る。これは、彼ら二人の因果律だ。必ず、カイトが生まれた翌日にジャンヌは生まれる。その筈なのだ。

 それがかつて国を救おうとしたフランスの魔術師達によって歪められた結果が、ヒメアという少女の前世である『ジャンヌ・ダルク』とカイトの前世である『織田 信長』に纏わる出来事の真実だった。

 ちなみに、念のために言っておく。彼らが呼ぼうとしたのは本来はカイトの方だったらしい。が、そもそも無理な事をやった結果失敗してジャンヌが生まれる事になった、というのが真相であった。その結果、因果律が歪められてカイトは普通の人である『織田 信長』として生まれる事となった、というのが真相らしい。更にここらが影響して、彼の遺体が見つからない理由でもあるそうだ。


「まぁ、そんな後少しの自由時間はもうどうでも良い。とりあえず・・・教えてくれ」

「うむ。所詮過去世は過去世。割り切って『今』を生きるのが余らよ。で、まぁ、考えるまでもなかろう」

「オレとお前の探知から逃れたいのであれば、あいつの力を借りるしかない、か・・・」


 『死魔将(しましょう)』達ではカイトに及ばない事はこの間の一件を見ればわかることだ。となると、何かをしようとしているのなら彼からは隠れてやらなければならないのだ。とは言え、それが出来る存在はまず居ない。ただし、それは一つの言葉が前に付く。


「現状、オレのランキングは上から数えた方が早い、という程度か」

「そりゃ、過去全てを見た場合の話、じゃろうに」

「そりゃね。それこそオレの全盛期とか最強すぎんだろ」

「全盛期と言うより・・・あれは、まぁ・・・」


 ティナが頬を引き攣らせる。カイトが最強というのは、『今』に限ればの話だ。『今』という区切りに拘らないのであれば、それこそ遥か過去をも見渡せば『今』のカイトに対抗出来る奴はそれなりに存在している。それどころか、それ以上の存在はザラに居た。

 当然だろう。この世という概念が始まってから、どれだけの月日が流れているというのだろうか。誰もわからないが、少なくとも人知が及ぶ年数ではないことだけは確かだ。未だ修行中であるカイトを上回る者の一人や二人が居た所で可怪しい話ではなかった。そしてその一人が、ジャンヌ、否、彼女が統合されている『ヒメア』という存在――正確にはその過去世――だったというわけだ。


「今更ながらにありゃ、存在そのものがチートじゃ、チート。基礎ステ余らに匹敵する癖に、特殊能力『生命』による攻撃不可。余でさえ契約によって解除不能。およそ人類に勝てる相手ではあるまいに」

「おまけに凌辱されそうになると運命改変する力までありますぜ、旦那」

「はぁ・・・他にもチートを山ほどじゃからのう・・・ぶっちゃけ、お主よく勝てとったなぁ・・・」

「最後タイマンになりゃ、負けるけどな。世の中の流れとして、正義は勝つ、のさ」

「そりゃ、のう・・・はぁ・・・」


 どこか茶化す様なカイトの言葉にティナが肩を落とす。真実だ。ちなみに、彼女の特殊能力は運命を改変するのではなく、過去に遡って絶対にその状況から己を救える相手へと救援信号を発信出来るらしい。最悪は、その時の敵対者が救助してくれるというまさしくチートだった。どっちにしろ無茶苦茶だった。


「まぁ、良いわ。それ故、何がやりたいかなぞ手に取るようにわかるわ。伊達に<<叡智を司る者(ソフィア)>>と呼ばれておるわけではない」

「さっすが」


 ティナが胸を張ったのを受けて、カイトが賞賛する。彼女の名付け親であるレヴァイアサンは勿論、彼女の魂がこういう特殊な魂である事に気付いていた。それ故、彼女の魂が持つ本来の名に加えて、彼の妻の名を混ぜた名を告げたのだ。故に、彼女の幼名はソフィーティアなのである。


「ま、ぶっちゃけるとあれほどの結界を展開出来る者の力を借りてまでやろうとする事であれば、一つしかあるまい」

「うん?」

「簡単じゃ。ホムンクルス技術を応用して、この世界に死者を呼び戻そうとしておるのじゃろうな。先にあれらが使った白い宝玉。あれは『今世』の余では解析出来なんだが、統合されておる『今』の余には理解出来る。あれをあそこで使う事で、魂を目覚めさせたんじゃろうな」

「あぁ? 300年も前に死んだ奴だろ?」


 カイトが顔を顰める。無理。それが同じ力を使う彼の結論だ。人の輪廻転生がどれほどかは色々な状況に応じて変わるが、少なくともあの全員が300年もの間転生しなかった、ということは有り得ない。人の輪廻転生は長くても500年から1000年が限度だ。それも最長で、のお話で全員がこれに当てはまる可能性はゼロなのである。

 そして転生してしまえば死者を呼び戻す事なぞ不可能だ。既に別の肉の器に入った魂を輪廻転生の輪を類って取り出す事は出来ない。今回のジャンヌの様に分け御霊の様な形になり、死者蘇生とはまた別の方法になるからだ。

 というわけで、カイトは全ての死者を死者蘇生をしている様に見えて、既に転生した魂は武器に宿った欠片を通してその魂にアクセスして、本体のコピーを創り上げているだけだ。

 彼でさえ、そうなのだ。ならば既に転生しているだろう魂を呼び戻す事なぞ不可能だ。そしてそれは、己が教えた事であるが故にティナにもカイトの考えが理解出来ていた。


「分かっとるぞ、その顔は。まぁ、どだい無理な話、と言いたいのもわかろう・・・だから、言うたんじゃ。目覚めさせた、と」

「うん?」

「そうじゃな。もしここまでの流れが300年前から規定されていた物であるとするのなら、話は変わろう」

「っ!」


 カイトが目を見開いた。既にカイト達にティステニアを打ち倒して欲しかったのだろう、というカイト召喚に関する『死魔将(しましょう)』達の主の裏事情を推測している。

 そこを含めて考えれば、筋が通ったのだ。負けが決まっているのなら、次に考えるべき事はどれだけ損害を減らせるか、ということだ。ならば23人の最高幹部というのは、彼らの真の主からすれば失わないで済むのなら失いたくはない手札だろう。


「死者が輪廻転生の輪に戻されるのは道理よ。じゃが、それに抗う事は可能。もし300年前の時点で戦死してすぐに魂の回収を成し得ていたとするのなら、あの白い宝玉を使ってあれらが出て来た事にも筋が通ろう。あの中に、あれら幹部達の魂が格納されておったわけよ。で、あそこで目覚めさせたわけじゃな」

「なるほどね・・・」


 ティナの推測にカイトも同意する。その通りなのだろう、と思った。そしてそれを聞かされれば、一つの事が浮かび上がった。


「ということは、本当に天桜学園の転移は事故、と考えるのが筋か?」

「じゃろうな。今度事を起こす時こそが、本番になろう」


 今度こそ、本格的に動きたいはずだろう。その為にわざわざカイト達を呼び寄せる馬鹿ではないはずだ。なにせカイトはこちらに<<神剣>>を残している。それで十分事足りるのだ。


「ということはこの間の襲撃は<<神剣>>を起動させる事にこそ、目的があったわけか・・・上手い手だな」

「じゃなぁ・・・余らがおろうとおるまいと、『死魔将(しましょう)』達が現れたとなればあれを解き放つ。そうせねば被害が馬鹿にならんのじゃから、当然じゃろう」


 ティナが道化師の作戦を賞賛する。全てが、彼らの手のひらの上だったわけだ。なにせこちらが最善の一手を打ってくると見越した上での作戦だ。


「おそらく、じゃが・・・解き放させた理由はあの空間を創り上げ、半休眠状態にある魂を目覚めさせる為、もしくは最終確認の様な物なのかもしれん。知識の譲渡の可能性も考えられるのう」

「はぁ・・・」


 カイトはため息を吐く。と言うより最早ため息しか出ない。完全に全ての国が罠に嵌められたわけだ。顔見せも必要が無い、というクオンの推測は正しかった。

 ちょっと多くの魔物に襲撃してもらえば良いだけだったからだ。そうすれば、被害の甚大さを慮って<<神剣>>は解き放たれる。もしかしたら彼らはカイトとティナという懐かしい顔に挨拶に来ただけ、という可能性も十分に考えられた。


「ということはつまり・・・」

「うむ。最終的な目的、というよりも動くじゃろうと推測されるのはこれより数ヶ月先。少なくとも三人娘を考えてみても秋にはなろう」

「で、幹部全員復活、と・・・」


 カイトががっくりと肩を落とす。もう考えるまでもないだろう。これで、おおよその線が繋がったのだ。


「おそらく蘇生には喩え一人一人であっても莫大な魔力を要しよう。それを余らに気付かれぬ様にするのは不可能・・・ヒメアの結界でも無い限りは、のう」


 ティナが呆れた様に告げる。そして、ジャンヌは正しかった。ティナは目覚めただけで、全てを見通した。とは言え、それでも限度はあった。いや、正確に言えばジャンヌが圧倒的に上故に、どうする事も出来ない事があった、というべきだろう。


「ちっ・・・蘇生場所を叩ければ、な」

「無理じゃな。それらを隔絶する結界を使っておろう・・・手の一つでも抜けというに」


 ジャンヌがやっただろうことを推測して、二人が舌打ちする。こと防御に関する事であれば、ジャンヌは彼らより遥かに上だ。これはもし本格的に覚醒し封印が解かれたとて変わらない。

 そうである以上、カイト達には何が起きているか理解出来て尚、みすみす見過ごす事しか出来ないのだ。しかも、相手がどういう状態なのかも理解出来ている。それだけの理由があり『人』を憎んでいる相手に『人』の為に行動しろ、というのは流石に理不尽だろう。怒りをぶつける事さえ出来なかった。


「こちらに出来る事はただ一つ、か」

「うむ・・・どうせ各国は信じまいよ。ならば、余らだけでも万全の態勢を整えるだけじゃ」


 ティナが方針を指し示す。死者が蘇ります。それも肉体を持って。そう言われた所で何処の国も信じない。それが物証でもあれば別だが、これはカイト達が自分達しか知れない方法で把握した事だ。証拠も一切存在していない。

 カイトの帰還を知る皇国はまだしも、他国は誰も信じないだろう。そして今でも十分に厳重な警戒態勢を敷いている。どちらにせよ告げた所で無意味であった。


「はぁ・・・あー・・・めんどくせぇ敵が出て来たもんだ。ここまでめんどくさい奴はどれ位ぶりだろ・・・なーんで掃除屋の仕事から解放された途端今度は勇者なんぞやってんだろ・・・はぁ・・・」

「諦めよ・・・では、余は引っ込むぞ」

「あいあい」


 ティナは目覚めたままでは次に封印が働いた時が面倒なので、意図的に封印を起動させる事にしたようだ。あまり長時間目覚めていては今のティナが目覚めた時に面倒だ。仕方がない。が、その直前。杖を取り出した彼女が、カイトの手を怪力で握る。


「で・・・一つ言っておいてやろう。す・こ・し・だけじゃからな! あれはほうっておくとお主の魔力を使って延々現界し続けかねん! そこ、忘れるでないぞ!」

「・・・ごめん。ちょっと抱きしめて良い?」

「うにゅ?」


 カイトの問いかけと同時に行動を起こしたのを見て、ティナが首を傾げる。こういう風に子供っぽく拗ねる所を、カイトはいや、過去世の『カイト達』は非常に気に入っていた。が、無自覚だからこそ、ティナは理解出来なかったらしい。


「あー・・・」

「むぅ・・・嬉しいが・・・うー・・・」


 ティナは少しの間、身悶えるカイトに抱きしめられる。いい加減に引っ込みたい所なのであるが、彼女もああ言いながら、自分が抱きしめられると離れがたかったらしい。


「も、もうやめよ。流石にこれ以上は時間的にもごまかしが効きにくい」

「んー・・・と言うか、お前抱きしめられながらでも魔術使えるだろ」

「む・・・そう言えばそうじゃな。離れる必要もないか・・・では、次は地球で、かのう」

「あいよ、オレの最愛の<<花嫁(ザ・ブライド)>>・・・今度は、花嫁衣装で会いたいもんだな」


 少し名残惜しそうだったが、ティナはカイトの言葉をBGMに目を閉じる。今のティナが封印の内側に引っ込んだのだ。そうして一つ光り輝いて彼女が目を開けた時には、何時もの金髪青眼のティナがそこに居た。


「・・・む?」

「ん?」

「おぉ、カイト。おかえり・・・で、なぜこんな事に?」


 彼女からしてみれば唐突に気を失って、目覚めてみれば恋人の腕の中だ。悪い気はしなかったが、混乱するのも無理はない。


「んー・・・まぁ、ちょっとイチャついてるだけ」

「そりゃ見りゃわかる。で、なぜ余は今ここに?」

「さぁ? 疲れてるんじゃね?」

「なわけがあるまい」


 当たり前だがティナにこんな簡単な言い訳が通用するはずもなかった。が、はぐらかすしか無いのが現状だ。とは言え、そんな事は無理なので、カイトは別の行動でごまかす事にした。具体的には強く抱きしめる傍らスカートの裾に手を入れて太ももをスリスリとし始める、と言うところである。


「あ・・・ちょ、まだ周囲が明るい・・・い、いや、拒むではないのじゃが・・・」

「魔術使って異空間化すれば? ま、こっちは邪魔するので出来るかどうかはわかりませんけどねー。声、頑張って抑えてね?」

「ひゃん! お、覚えとれよ!」

「たまにはこういうのもいいよね」


 カイトが自分を強く抱きしめたのをなんとか逃れようとしながら、ティナは大慌てで杖を取り出して魔術を展開して異空間へと移動する。

 追求されるのなら、イチャイチャしてごまかすだけだ。幸いティナとしても使い魔は兎も角、数週間もの間カイトと離れ離れになっていたのだ。イチャイチャしたい、という鬱憤は溜まっている。

 そんな状況で求められればとりあえずの疑問は放り投げて喜んで応ずるのが彼女である。恋人という関係は便利なものである。

 そうして、なんとかカイトは今までの事をごまかす事に成功して、この事は彼以外に詳細を知る者は誰も居なくなるのであった。ちなみに。この行動はカイトが実はしたかっただけだったのでは、というも彼以外誰も真実は知らないのであった。

 お読み頂きありがとうございました。そろそろもう一歩物語を進めます。

 次回予告:第833話『最初の花嫁』

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