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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第43章 大陸間会議編 ――千年王国編――

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第732話 観艦式 ――航空母艦――

 カイトが空母型飛空艇から発進する少し前。シャーナ女王の演説が終わり、エンテシア皇国の観艦式が始まる少し前。ほぼ全ての国の使者達の注目は、エンテシア皇国の艦隊へと注がれていた。


「奇妙な船だ・・・左右のあれは巨大な魔導砲か?」

「あれが二門搭載されているとすれば・・・驚異的ではあるな。サイズを落としたのはそこらの兼ね合いか」

「クイーン・エメリアのあれか・・・?」


 各国の大使達が、口々に考察を述べ始める。空母型飛空艇、と言ったが、この見た目は実は地球の空母とは大きく異なる。地球の空母は海に浮かぶ船に戦闘機という滑走路が必要な物体を乗っけている事で着艦と離陸に距離が必要となり、船の上部には巨大な面積を有している。

 それに対して、この空母は左右にカタパルトを設けていた。ロボットアニメではよく使われる左右に長細いカタパルトがある戦艦を思い浮かべれば良い。これは発艦と着艦に距離が必要のない飛翔機を使うからこそ、出来た事だった。なお、念のために言えば上にも緊急時の着艦が出来るように、出入り口は設置されている。非常時にはそこから上に生身の兵士が出て白兵戦も可能だ。


「開いた? あれで艦砲射撃を行うのか?」


 全員が、左右で開いたハッチから何かが出て来るとは思っていない。それ故、艦砲射撃の衝撃に備えるべく、身構える。


「何かが・・・あれは、まさか・・・」


 真正面に位置する事になったヴァルタード帝国と同じ双子大陸の大使達が、姿を覗かせた魔導機を見て思わず目を見開く。そうして、それと同時に、カイトが発艦したのだった。




 空母型飛空艇を発艦したカイトは、そのまま半透明の外套をたなびかせて飛翔を始める。動きの差は、見るものが見れば理解が出来る。これを見せる事だけでも、意味があった。


「マスター。飛翔開始から1分が経過。そろそろ、旗を掲げるべきです」

「わかった。では、例のあれを」

「イエス」


 カイトの求めを受けて、アイギスは今回の為に製作された特殊な魔道具を両手に出現させる。それは魔導機の手のひら大の金属製の棒だ。それを受け取ると、カイトは空母型飛空艇の真ん前で、虚空に足を下ろした。


「さて・・・旗を掲げる」

『了解した。各機、発艦準備を整えろ』


 カイトの言葉を受けて、オペレーター達が大忙しで準備を急がせる。そうして、それを聞いたカイトは、金属の棒に取り付けられているスイッチを押し込む。

 すると棒が急激に伸びて、先端に大陸間会議で使われる連盟旗と皇国の旗が翻った。どちらも魔力で構築されている為、外套と同じく半透明だ。が、それが何より、幻想的でもあった。ちなみに、外套はこれを応用している。


「旗を掲げた」

『了解・・・各機、順次発艦せよ』


 カイトの再度の連絡を受けると、今度はラウル達が操る2大公と5公爵の半魔動機の集団が現れて、大きく弧を描きながら、カイトと同じように空母型飛空艇の前に二列にならぶ。列の幅は、魔導機が一機通れる程度だ。


「各機問題なし。次に移れ」

『了解・・・メルクリア皇女殿下及び、近衛兵団機出ます』


 カイトの指示を受けて、次は近衛兵団が操る第六世代の大型魔導鎧が現れて、最後にはメルの操る魔導機が現れる。それが再び弧を描く様に飛翔して、半魔動機の横、空母型飛空艇の側に二列に並ぶ。そうして、一番前にはメルが立った。これで、残るは皇帝レオンハルトと一機の獣人機だけだ。


『メルクリア。準備完了』

『了解・・・皇帝陛下、出られます』


 全員が用意を整えたのを受けて、空母型飛空艇の上部ハッチが開いて、外套で身を包んで膝を屈した状態の皇帝専用魔導機が現れる。ここは本来は緊急時の物であると同時に小型飛空艇の発着場でもあったのだが、同じ場所から出すのはダメだろう、となりかなり強引に突っ込んだのである。

 その結果、寝かせるか膝を屈しなければ出入りさせられない、とまた問題が出たわけであるが、それを対処する為に敢えて見せない様にした、と見せかけて外套で身を包んだというわけである。突貫工事故の仕方がない部分だった。


『獣人機。準備は良いか』

『整っている。何時でも良い』

『ならば、行動に入れ』

『了解』


 オペレーターの言葉を受けて、最後にもう一機、獣人機が側のカタパルトから飛び出してくる。そうして飛び出した獣人機は、純白に真紅の装飾が施された機体だ。そうして、大きく上空へと飛び上がり、変形しながら落下を始める。


『行くぞ』

『はっ』


 獣人機のパイロットと合図を取って、皇帝レオンハルトが外套をたなびかせて立ち上がり走り出した。


『落下速度良し。タイミング合わせ・・・3・・・2・・・1・・・今です』

『ああ!』


 皇帝レオンハルトが、空母型飛空艇の縁を蹴って、飛び出す。そしてそれと同時に、並走するように真紅の装飾が施された純白のユニコーンとなった獣人機が虚空を蹴って走り出す。

 そうして両者の距離が近づいたと同時に、皇帝レオンハルトは乗馬の要領で飛び乗って、馬が嘶く様に上体を上げさせた。


『しばし、駆けろ。他の者は余の合図を待て』

『『『御意』』』


 ユニコーンの獣人の男が、皇帝レオンハルトの言葉に応じて少しだけ高くへと飛び上がり、大空を駆け巡る。その間に、カイトももう一度、行動を起こした。道を作っている魔導機の数は、メルを除けば奇数だ。

今のままでは不格好だ。それに、何の意図も無く、両手に旗を掲げたわけではない。


「<<光陰の加護よ>>」


 カイトの口決を受けて、加護の力が展開される。そうして、魔導機の分身が現れる。それに、カイトは片方の旗を持たせて、左右に並ばせる。これで、皇国と連盟旗が皇帝レオンハルトの前で並ぶのだ。


「メルクリア殿下。道の準備が整いました」

『わかりました・・・お父様。準備は整いまして御座います』


 道の準備が整ったのを受けて、メルが皇帝レオンハルトへと連絡を送る。そしてそれを受けて、皇帝レオンハルトは疾走を終わらせる事にした。これを待つ為に、敢えて疾走させていたのだ。


『わかった・・・では、降りろ』

『御意』

『総員、剣を掲げろ』


 メルの言葉を受けて、カイトが旗を掲げて、他の半魔動機と大型魔導鎧達が儀仗用の剣を掲げる。そしてそれを受けて、二列になっているカイト達の道を通って、停止した。

 そうして、それとほぼ同時に右向け右の要領で、全員が皇帝レオンハルトと同じ向きを向いた。その様は王者を先頭に従う騎士達、というに相応しい様子だった。


『皇帝機停止。モニター・・・各機問題無し。演習は終了です』

『いや、少し待て』


 オペレーターが終了を告げると、皇帝レオンハルトがそれに制止を掛ける。何かわからないが、何かを思ったらしい。そうして、何を思ったのか、メルともう一人の獣人機のパイロットへと、声を掛ける。


『メルとブランシェットのパイロットよ。少々、余と共に駆け抜けよ。他の者はそれについてまいれ』

『『『は?』』』

「っ。王者の責務か。アイギス。補佐しろ」

『各機、それに従いなさい。ハイゼンベルグ公に各所への連絡はしてもらっているわ』


 意図を察したカイトと、同じく意図を察したシアが各員へと連絡を送る。マギーアとヴァルタード帝国はまだしも、こちらは千年王国より後だ。シャーナ女王に挨拶をされてしまっている。

 ここで挨拶の一つも返さねば、侮られるのだ。挨拶に向かわねばならなかった。とは言え、意図がわからないが勅令が出ている以上、全員否やは無かった。


『メルクリア殿下。バナドゥ中尉です。変形の後、殿下にはじっとして頂きます。バランスが崩れます。動きは全て、こちらにおまかせを』

『わかりました。全て、お預けします』

『感謝いたします』


 皇帝レオンハルトの言葉を聞いて、もう一人の獣人機がメルと即興でブリーフィングを行う。流石にここに来る程の軍人だ。迷いは一切存在していなかった。そうして、彼が漆黒のバイコーンへと姿を変えて、メルがそれに跨った。


『ついてまいれ』


 皇帝レオンハルトがユニコーンの獣人を走らせると、カイト達もそれに従ってマントをたなびかせて飛翔を始める。

 そうして、皇帝レオンハルトはレインガルドの上にまで来ると、そこで停止した。これ以上この魔導機で近寄れば、下手に刺激してしまう事になりかねない。ここが限界だろう。


『出るぞ』

「ちょ!?」

『お父様!?』

『演説用の術式を展開しろ。先に千年王国に姿を見せて演説をされては、こちらも姿を見せねばなるまい』


 カイトとメルの驚きに対して、コクピットハッチを開けて姿を現した皇帝レオンハルトが道理を説く。先に、シャーナ女王に挨拶をされたのだ。先に観艦式を終わらせた者達は流石にもう無理だが、後になってしまった皇国は、せめて挨拶の一つも返さねば王者の名折れだった。


「ちっ・・半魔動機を操る各員は半魔動機のシステムを滞空へと変更し、コクピットから外に出ろ。半魔動機は離れない限りは落下しない。こんなど真ん中だ。陛下一人お姿を晒すのは拙い」

『各員、カイム少尉の指示に従え。メルクリア殿下もお願い致します。こちらは演説の用意を進める』

『『『了解』』』


 どうやら軍のオペレーター達も同じ考えに至った様だ。カイトの指示に従わせる事にして、自分達は急遽演説を行える様に動いていた。


「アイギス。仮面を」

「はい?」

「下に馬鹿共が大挙して居るってのに、顔隠さねぇとやってらんねーよ・・・はぁ。ただでさえ暗殺とか怖いってのに・・・あんま信用しねーでもらえないですかねぇ・・・」


 正確に読んでいる皇帝レオンハルトの意図に、カイトがぼやく。各国大使の中には、カイトの事を見知った者も多かった。それに、ここの会議での『無冠の部隊(ノー・オーダーズ)』の立ち位置は永世オブザーバーだ。ここに来るならば、自由に参加出来るのだ。

 全員では無いが、隠居した奴らも来ている程だ。顔を出せば一発でカイトだと他国に知れ渡るだろう。出さなくても、バレる可能性はある。だが、隠さないよりはマシだ。


「・・・こちらを。上半分は隠せるはずです。私は各機のコントロールを奪取して、中で制御を行います」

「頼む・・・これを見越して、獣人機には変形させたか。しかも5公爵と2大公の奴らは全員その家の軍服。これが量産されつつある、と言っているようなもんだ・・・はぁ・・・そこでウチが仮面とか・・・あのクソ野郎共じゃねぇのに・・・」


 アイギスから仮面を受け取ったカイトはコクピットハッチを開いて外に出て、その身を晒す。そうして呟いたのは、皇帝レオンハルトの目論見と相も変わらずの愚痴だ。獣人機は半魔動機ではない。分類としては大型魔導鎧だ。あの機体のコクピットは人体と直結している為、出れないのだ。

 いや、出れるが、出るにせよ動きはかなり不格好になる。普通に出るだけの半魔動機や魔導機がある以上、そんな不格好を見せたくはなかった。


『うん? カイム。その仮面は?』

「些か、事情があってな。顔は晒せない」

『何処かで犯罪でもやったのか?』

「似たような所・・・あ、犯罪じゃないから、安心しろよ。あぁ、一応言っとくけど、仮面の4人衆との関係は無い」

『あったら困るっての。最悪中の最悪じゃんか』


 ヘッドセットを通したラウルの問いかけに、カイトが笑う。『無冠の部隊(ノー・オーダーズ)』として犯罪スレスレをやった事は結構ある。中には反逆罪となった者達を匿った事さえあるのだ。嘘では無かった。ちなみに、仮面の4人衆とはカイトの敵の事だ。所謂、ティステニアの最高幹部達の事だった。


『中尉も少尉も喋るな。陛下の御前だ』

『「おっと」』


 カヤドの注意に、カイトもラウルも黙る事にする。そして、そのタイミングをまるで見計らったかの様に、皇帝レオンハルトが口を開いた。


『シャーナ陛下。挨拶、痛み入る。余はエンテシア皇国皇帝レオンハルト・エンテシアだ。挨拶を受けたが故、挨拶を返させて貰いに来た。各国の長達も、此度は遠くエネシア大陸までよくぞ来られた』


 皇帝レオンハルトの演説が始まる。こちらはシャーナ女王の様に澄んだ綺麗な声ではないが、魔術を使っている事を合わせてもよく通る声だ。こちらも王者の声に相応しい尊厳が含まれていた。そうして、それを小耳に挟みながら、カイトは視線だけで周囲を見回す。


「・・・ティナ。教国の教皇は来ているか?」

『いや、こちらも確認しておるが、来ておらんな。代わりに、『白騎士団(ヴァイスリッター)』が来ておるようじゃ』

「・・・因縁、か」


 ティナから見せられた映像を見て、カイトが僅かに顔を歪ませる。『白騎士団(ヴァイスリッター)』を率いているのは、もう一つのヴァイスリッター家だ。


『今回来ておる飛空艇で見えるのは、『白騎士団(ヴァイスリッター)』・『黄金騎士団(ゴルドリッター)』・『青騎士団(ブラウリッター)』の三騎士団じゃな』

「ワッペンっつーか、紋章は?」

『来ておらんな。まあ、異族達の集まりじゃ、ここは。本気にはなっとらんじゃろう』

「やれやれ・・・」


 ティナの推測にカイトが呆れる。嘆かわしいが、これが現実だ。ルクセリオン教国はここ200年近く、トップは一度も出席していない。その例に漏れず今回も来なかった、というわけだろう。

 一応トップである教皇は民達の慰撫には現れているので姿を見せてはいるのだが、他国の使者が謁見出来た事はほとんど無かった。それ故、他国に姿や動向が伝わってくる事は殆ど無かった。


「・・・うん?」

『どうした?』

「いや・・・白い外套・・・『白騎士団(ヴァイスリッター)』の・・・あれは・・・ルクス?」


 カイトが思わず、唖然となる。若い頃のルクスにそっくりな少年が、教国の飛空艇の上からこちらを睨んでいたのだ。


「いや・・・アル・・・髪と目の色が違う・・・」

『こちらに魔導機からの映像を送れ。お主が向かねばこちらに映像が入ってこんじゃろうが』

「おっと・・・アイギス」

『イエス・・・どの方角ですか?』

「6時。『白騎士団(ヴァイスリッター)』の紋章の上だ」

『・・・これは・・・また・・・』

『そっくり、と言うか、双子?』


 カイトからの指摘を受けた二人も、アルとよく似た少年の姿を見て思わず目を見開く。違うのは、髪の色と目の色、そして浮かぶしかめっ面だけだ。髪の色はルクスの弟と同じ金色で、目の色は祖先と同じ青だった。しかも兜に隠れて髪は僅かにしか見えない。横顔だと見分けは出来ないだろう。そしてそこから、カイト達はその少年の正体に気付いた。


「『白騎士団(ヴァイスリッター)』の鎧・・・年齢、と言うか何よりも顔・・・あれが、『白騎士団(ヴァイスリッター)』の天才騎士、ルーファウス・ヴァイスリッターか」

『じゃろう。始祖ルーファウスの名を継いだ天才騎士。エンテシア皇国にまで届いておるな』

「どちらが、強いだろうな」

『さてのう・・・』


 カイトとティナは少しだけ、楽しげな顔をする。あの顔を見れば、すぐに分かる。あれは確実にマクダウェル家の事を快く思っていない顔だった。まあ、因縁があり過ぎる。仕方がない。そしてそれ故、確実に揉める。その匂いがプンプンしていた。


「アルと出会わない・・・ということは無いだろうな」

『じゃろうな。ああいう匂いをさせておる小僧は、確実に自ら因果を引き寄せる。そして己が因果を引き寄せる事を知っておる顔じゃ』

「アルに知らせてやってくれ。お兄さんか弟が来ている、とな」

『よかろう』


 カイトの言葉に、ティナが楽しげな声で応ずる。これで、エルロードやアルにはわかるはずだ。彼自身、自らがルーファウスと比較されている事を知っている。ここまででは無いと思っているにせよ、似ている、ということもだ。ならば、伝わるはずだった。


「さあ、楽しくなってまいりました」


 カイトは一人、仮面の下で笑みを深める。色々と揉め事が大量に集まっている。これがただで済むはずがない。となれば、楽しむだけだ。そうして、カイトは終始楽しげな笑顔のまま、皇帝レオンハルトの演説を待って、帰還する事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:第733話『謁見』

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