第718話 リジェ
リジェが飛空艇に降り立ってから、十数分後。彼はすでに連絡を入れていた事もあって、すぐに応接室に通されていた。
「はー・・・やっぱ豪華・・・なんだよな、多分・・・」
リジェは尻のむず痒さに耐えながら、周囲を観察していた。彼はここ当分ウルカに行っていた上に、元々があまりお上品な類ではない。ここら、姉のリィルもがさつと言える性格なので、姉弟で似ていた、と言える。そうして更に待つ事、数分。彼も馴染みのメイドが姿を見せた。
「あ、フィーネさん。お久しぶりです」
「・・・ああ、リジェ。すっかり見違えましたね」
「どうも・・・で、今日はクズハ様はお忙しい様子ですか?」
リジェはフィーネの言葉に感謝を示しつつ、更にクズハの予定を問いかける。アポイントは取ったとは言え、クズハはこの広大なマクダウェル領を取り仕切っているのだ。忙しい事は目に見えていたし、予定が急に変わる事なぞ日常茶飯事で不思議な事ではなかった。
「ええ・・・とは言え、今回はアウラ様が応対にあたられます」
「アウラ様? そう言えばこっちでもニュースになってたんですけど・・・本当だったんですか?」
「ええ」
どうやらウルカの方までニュースになっていたらしいが、民衆達の間では半信半疑だったらしい。正確には大陸間会議でバーンタインが確認するだろうから、その情報待ちという所だ。
一応国としての祝電は打っているので、民衆がお祭り騒ぎになるぐらいだろう。彼ら<<暁>>がウルカから如何に信頼されているかわかる一幕だった。
「おー。私は本物・・・偽者はここ当分出てない」
「うえ!?」
リジェが驚きを露わにする。いきなり目の前に予兆もなくアウラが現れれば、びっくりもするだろう。
「アウラ・フロイライン」
「あ、えっと、あの・・・リジェ・バーンシュタットです」
美人を前にしたとは別の意味で心臓がバクバクと鼓動していたリジェだが、なんとか気を取り直して挨拶を行う。
「あ、これ大親父・・・バーンタイン・バーンシュタットからの親書です」
「ん・・・フィーネ。お願い」
「はい・・・では、こちらを」
フィーネに親書を開けてもらったアウラは、手紙を読み始める。意外と読書速度はかなり早かった為、すぐに読み終えた。
「ん。何時も通り・・・わかった。フィーネ。何時も通りの手はずをお願い」
「かしこまりました。即座に手配に入らせて頂きます」
「ありがとうございます」
問題なく進んだな、とリジェは内心で安堵を浮かべる。やはり使者としては何もなく終わってくれるのが一番良かった。
「じゃあ、もう帰っていいよ」
「あ、すいません・・・一つ、良いですか?」
「ん?」
リジェからの申し出に、アウラが首を傾げる。これで、使者としての彼の役割は終わりのはずだ。現に、彼よりも前に来たピュリからは他には何も持ち出されていない。
「・・・好きにすれば?」
「良いんですか?」
「ん。別に気にしない・・・でも、バランのお墓にだけは行って。それだけ」
「それは勿論です」
アウラからの言葉に、リジェが頷く。彼とてバランタインを尊敬している。墓参りは義務と考えていたので、怠るつもりはなかった。流石にちょっとした考えから今すぐは行かないが、明日の夜明けには出かけるつもりだった。
「じゃあ、有難うございました。次はバーンの大親父と来ます」
「ん」
その会話を最後に、リジェがその場を後にする。そうして、アウラもまた、仕事に戻る事にするのだった。
アウラとリジェの会談から、5分後。リジェは冒険部の前に居た。その背中には槍が背負われていた。彼もまた、槍使いだった。
「ここが冒険部、ねぇ・・・電気点いたら普通に普通の建物だよなー」
周囲の冒険者達に混じって、槍を持ったリジェが冒険部の前に立っていた。幸い最近は冒険部も人員としてもお客さんとしても増えてきたし、彼が立っていた所で何か珍しい事はなく、立ち止まっている事に邪魔とは思われても不思議には思われなかった。
「さって・・・失礼しまーす」
リジェは扉を開いて、挨拶と共に中に入る。どうやら彼は姉とは違い、かなりフランクな性格らしい。そうして向かった先は、受付のミリアの所だ。
「はい、ご依頼ですか? 冒険者の様ですから、それとも入団希望ですか?」
「いや、挨拶に来たんだけど・・・瞬って冒険者、居る?」
「瞬さんですか? お知り合いですか?」
リジェからの問いかけに、ミリアが少し警戒を抱く。冒険者が相手を名指しで来た時は碌な事にならない事があり、それを警戒していたのだ。とは言え、リジェにはそこまで敵意がなかった事であまり言うほど危険視はしていなかった。
「まあ、そんなとこ。身内が世話になってるって。で、挨拶」
「赤髪・・・バランタイン様の血族の方ですか?」
「うん。一応、家名はバーンシュタット」
リジェは偽る事もなかったので、ミリアの質問に頷く。とは言え、視線は周囲を見回し、瞬を探していた。と、そんな風に話し合う二人の所に、偶然瞬が通りかかった。
キトラが来てシャワーでざっと汗を流しただけだったので、改めて風呂に入り直すか、と翔と共に風呂桶片手だった。
「あ、瞬さん! お客さんです! バーンシュタット家の方らしいです!」
「うん?」
「ああ、あんたが、瞬か」
どうやらミリアのセリフで、リジェは短髪の男が瞬だと気付いたようだ。ちなみに、リジェも短髪で背丈は瞬と同じぐらい。同じ流派の槍使いなので、体格も似ていた。
強いて差を言えば、若干リジェの方が上半身の筋肉があり、瞬の方が下半身の筋肉が付いている、と言う程度だ。リジェの顔立ちは父親に似て少し優雅だった。とは言え、瞬が常に真面目そうな表情を浮かべているのに対して、リジェは常に陽気そうな表情を浮かべていた。
「いや、ちょっと挨拶しときたいな、って思ってさ」
「挨拶? 俺はお前に会った事が無いんだが・・・リィルの従兄弟とかか?」
「まあ、そんな所・・・あ、後、挨拶つっても・・・こっちの意味さ」
首を傾げた瞬に対して、リジェは背負っていた槍を抜き放つ。それに、瞬も事情を理解した。
「腕試し、か」
「このギルドじゃあいっちゃんの槍使いなんだろ?」
「一応はな・・・翔。桶を頼む」
「え? やるんですか?」
牙を見せたリジェに対して、瞬は翔に風呂桶を預ける。幸いな事に着替えている余裕がなかったので、キトラとの会話の時も防具を身に付けたままだった。武器は自前で用意出来る。今からでも戦えた。
「当たり前だ。戦士が挑まれた勝負から逃げるのは恥だ」
「はぁ・・・」
悪い癖が出た、と翔がため息を吐く。瞬はどうにも戦好きの気が有り、挑まれると逃げない事が多いのだ。一応、立場はわかっているので逃げる事も有るが、それでも、こう言う場では逃げない事が多かった。そんな態度は、リジェにとっては好印象だったらしい。彼は笑顔で武器を持っていない様子の瞬に告げた。
「武器、持って来るまで待ってるぞ」
「いや、必要無い・・・な?」
「へぇー・・・龍姫アイシャと同じく創れるのか・・・」
槍を魔力から創り出した瞬を見て、リジェの顔に驚きが浮かぶ。その顔に、瞬はリィルを思い出したが、今はまだ名乗られてもいない。わかる由も無かった。と言う訳で、告げたのは別の事だ。
「行くぞ。こっちに修練場が有る・・・外と中、どっちが良い?」
「外で。開放的な方がやり易い」
「わかった」
瞬の案内で、リジェは外の修練場まで歩いて行く。幸いな事に外の修練場は空いており、二人が戦えるだけのスペースは有った。そうして、ある程度の距離まで離れた所で、瞬が構えながら告げる。
「一応、言っておいてやる。ここには死なない様にする結界が展開されている。公爵家のとある技術者の謹製だ。貫かれても死なないから、安心しろ」
「へー、そりゃ、金かかってんなー・・・まあ、殺さなくて済むから良いか」
どうやらリジェもこういった結界が存在していることは知っていた様だ。なので同じように構えながら、瞬を挑発するように告げる。それに、瞬も笑みを浮かべた。浮かんだのは、リジェと同じく戦士としての笑みだ。
構えは同じ。体格も同程度。そういった意味でのアドバンテージもディスアドバンテージも無い。武器や手札の差に言及するのは、戦士としての恥だ。であれば、勝負を決めるのは、お互いの技量だけだ。そうして、そんな二人の間で開始の合図を頼まれた翔がコインを手に取った。
「じゃあ、コインが落ちたら戦闘開始ですけど・・・そっちのも大丈夫か?」
「ああ。タイミングは任せる」
「じゃあ、よっと」
リジェの返答を受けて、翔がコインを弾いて<<縮地>>で観戦エリアにまで退避する。そこには他にも冒険部の少年少女達が揃っていた。
瞬はギルド内でも有数の実力者だ。それに喧嘩を売った者が居たのだから、誰もが興味津々だったのだ。そうして、次の瞬間にコインが落ちて音を立てて、二人が同時に地面を蹴った。
「同じ流派! 同じ体格! やるのは初めてだ!」
「そりゃ、経験値不足だな!」
槍が交差して、リジェが笑う。彼はウルカの<<暁>>に居たのだ。自分と同じ流派も同じ体躯の者とも、何度も戦ってきていた。そしてその差は、何度めかの激突で現れた。
「ほら、経験不足だ!」
リジェは同じ流派と何度も戦ってきた経験から、瞬よりも一足先に反応して瞬の槍を絡め取る。そうして、そのまま槍を吹き飛ばした。
「おらよ!」
リジェは瞬の槍を吹き飛ばして、一歩だけ後ろに下がると、そのまま槍を引いて右手だけで背負うような構えをして、そのまま勢い良くぶん回す。これで、普通ならば勝利だっただろう。が、瞬は槍を失った所で負けにはならない。
「っ! そうだった!」
「敵の手札を忘れるなよ」
いきなり顕現した槍に忘れてた、とばかりに笑顔を浮かべたリジェだが、それに瞬は笑顔で忠告を送ってリジェのなぎ払いを左手に創り出した槍で防ぐ。そして、今度は瞬が攻めに移る番だった。
「!? 二槍流!? とことんアイシャと同じ戦術を取るな、あんた!」
左手の槍で己の槍を防がれたリジェは更に瞬が右手に槍を創り出した事に今度は思わず、という形で驚きを浮かべる。これは流石に予想していなかった様だ。
とは言え、やはり実戦経験値の差は大きかった。右手の槍の顕現を見るや、リジェは迷う事無く<<背縮地>>で距離を取った。
「逃さん」
<<背縮地>>の使用で急速に距離を取って体勢を立て直そうとしたリジェに対して、瞬は<<縮地>>で追撃を仕掛ける。
<<背縮地>>の難点はどうしてもバックステップなので若干体勢が後ろ向きに傾く事だ。即座に攻撃には移れない。仕掛けるなら、今だろう。が、そうして次に姿を表したリジェは、瞬に背を向けていた。空中で向きを変えたのだ。
「!?」
「おらよ!」
瞬の顔に驚きが浮かぶ。背を向けていたリジェは迷うこと無く地面に槍を突き刺すと、<<縮地>>の勢いをそのままに槍を中心として蹴りを繰り出したのだ。顔面狙いの一撃だった。背を向けていたのは、このためだった。
「ぐっ!」
瞬は咄嗟に首を横に傾けて、リジェの蹴りをなんとか回避する。が、僅かに掠っていて、彼の右頬に赤い筋が出来た。怪我を全て無効化出来る訳では無い。この程度の傷は付くのは、仕方がない。
そうして、瞬が回転するリジェに対して、左の槍を突き出して追撃を仕掛ける。音速を超えたこの勢いでは体術だけでは止まれない。戻ってきた所を迎撃しよう、と思ったのだ。
「っ! アブねっ!」
リジェは身体の前面から魔力を放出して、強引に動きを停止させて地面に着地する。そうして槍を引き抜こうとした所に、瞬が右の槍を突き出した。こちらもまた、顔面狙いの一撃だった。
「っ!」
振るわれた槍にリジェもまた、首を傾ける事でなんとか回避する。が、こちらもまた、瞬と同じ様に右の頬に同じような赤い筋が出来ていた。とは言え、こちらはリジェの時とは違い追撃に移れる姿勢だ。なので瞬は容赦なく、追撃に移った。
「ちぃ!」
だんっ、という音と共に、リジェがバックステップと魔力の放出を併せた大跳躍で更なる瞬の追撃から逃れる。
「おらよ!」
大跳躍したまま、瞬に向けてリジェが槍を投げる。追撃を防ぐつもりだった。流石にこれには瞬も直進出来ず、思わずバックステップで大きく後ろに逃げて回避するしかなかった。
「ちぃ!」
「ふぅ・・・はっ!」
大跳躍から魔力の放出で強引に着地したリジェはそのまま<<縮地>>を使って瞬に肉薄する最中に、地面に突き刺さった槍を回収する。そしてそのまま、炎を纏った。
「<<炎武>>か!」
「知ってんのか!」
迎撃の為に防御の姿勢を取っていた瞬に、驚きが浮かぶ。ミリアからはバーンシュタット家の者だ、とは聞いていたが、まさか彼が<<炎武>>を使えるとは思っていなかったのだ。
とは言え、姉から瞬の事を聞かされていたリジェには、そこまでの驚きがなかった。姉が見せていただろうと思ったからだ。
「おらよ!」
「ぐぅ!」
一瞬で瞬へと肉薄したリジェは、<<炎武>>で強化された筋力を使って、瞬を防御ごと吹き飛ばした。突きの一撃では回避される可能性が有ったので、なぎ払いの一撃だ。
どうやら彼はなぎ払いを多用するらしく、この戦いでも何度かなぎ払いを行っていた。これはウルカに戻ったバーンシュタット家が良くやる戦い方で、大軍を相手にする時の戦い方だ。
彼はそれを取り入れていたのだ。一対一がそれなりにあるマクダウェル家のバーンシュタットと魔物相手が多いウルカのバーンシュタットの差だった。
「今度はこっちから行くぜ!」
一度瞬を吹き飛ばしたリジェはそのまま再度<<縮地>>を使って追撃に入る。それに、瞬は不利を悟る。今までは殆ど互角だったが、そうで有るが故に<<炎武>>が響いてきた。わずかしか差が無ければ、そこからの強化が一気に趨勢を決めるのだ。
「ちぃ! 仕方がない!」
瞬には<<炎武>>は使えない。だが、彼独自に編み出した<<雷炎武>>があった。なので、瞬はその使用を決める。これに、今度はリジェが驚きを浮かべる番だった。
「っ! なんだよ、それ!?」
「<<雷炎武>>・・・正確には<<雷炎武・二式>>だ」
雷の速度で加速した瞬は、一旦距離を取ってリジェの質問に答える。これにはリジェも警戒感を滲ませる。自分の一族しか使えない筈の切り札なのだ。それを何の縁もゆかりもない一介の冒険者が使えば、驚くのも無理はなかった。
「・・・」
「・・・」
リジェが黙った事により、会話が途絶える。リジェの顔からは笑顔が消え、真剣な眼で瞬を観察していた。相手の手札がわからない以上、迂闊には動けなかったのだ。
そして瞬もリジェの実力を測りかねて、まだ動けなかった。そうして、同時に笑みを浮かべる。思ったのは、同じことだ。それを、お互いに笑みから理解する。
「同じ事考えてるな」
「だと思うぞ」
二人は同時に地面を蹴って、再度激突していた。浮かんだ笑顔は、考えるだけ無駄、そして考えるのは性に合わない、という脳筋的な発想だった。お互いに似た者同士だからか、シンパシーを感じたようだ。
そうして起きた激突だが、これは当然、<<炎武>>を使うリジェが勝った。筋力の上昇率ならば、<<炎武>>が上回る。瞬が力比べで勝てる道理はなかった。
「っ! 追撃は無理か!」
「速度はこっちが上だ」
一瞬で間合いを離した瞬が、リジェに対して笑顔を向ける。力で<<炎武>>が勝るのなら、速度で<<雷炎武>>は勝っていた。リジェの追撃は無理だった。
が、それで終わるリジェではなかった。実戦経験値が高かったお陰で、先の一度の接触した事で瞬の<<雷炎武>>の弱点を見抜いていた。
「とは言え、弱点見っけ!」
「何!?」
今度はこちらの番、と突撃を仕掛けた瞬がリジェの取った行動に驚く。リジェは再び槍をぶん回すと、それで瞬は吹き飛ばされたのだ。
「やっぱりな。その状態、何故かは知らないけど、軽くなってる。吹き飛ばせると思ったんだよ。理由はわかんないけど」
「何?」
瞬自身にそんな感覚は無かったが、実は<<雷炎武>>状態では僅かに体重が軽くなるらしい。そして事実、後に彼の指摘で体重を計測してみると、半分程度にまで落ちていた。
これは身体の一部が実体を失って雷化していた事により、体重が軽減してしまっていたのである。実はこれは<<炎武>>にも同じ事が言えて、リジェはそこから推測したのである。一撃を打ち合った時に確信を得たのだ。
「さて・・・じゃ、行くぜ!」
「来い!」
再度、両者が距離を詰めるべく地面を蹴る。今までは一進一退。まだ勝利の女神はどちらにも微笑んでいない。が、別の女神が怒っていた事に、二人は気付いていなかった。
そうして、激突しようとした二人の中央に、槍が飛来して轟音と火柱を上げた。それは、瞬もリジェも見知った赤い槍だった。
「<<炎嬢>>? リィル! どうして邪魔をした!」
「すいません、瞬・・・ですが・・・リジェ! 貴方はこんな所で何をしているんですか!」
「げっ・・・」
聞こえてきた姉の激怒に、リジェが顔を顰める。実は彼は実家に挨拶に行く前に、こちらに来ていたのである。待てど暮らせど来ないリジェに業を煮やしたリィルが冒険部の手を借りて探そうかと来た所、弟の魔力を感じた、と言う訳である。
リジェとしてはもっと早く勝負が着く筈だったのだが、予想以上に瞬が強かった所為で今まで長引いてしまったのであった。そうして、そんな激怒する姉を見て顔を青ざめさせたリジェに一瞬でリィルが肉薄する。
「いたたたたっ! マジ痛い! ちょ! 喉決まってる! このゴリラおん・・・あ、すんません! 本当に砕ける!」
「このまま砕いて差し上げましょうか?」
「ごめんなさーい!」
「・・・知り合いなのか?」
小脇に抱えた状態での変則的なヘッドロックに加えて、更にリジェの頭を砕かんばかりの力でアイアン・クローで握るリィルに瞬が問いかける。明らかに知り合いっぽかった。
「あ、申し遅れました。これが私の弟でリジェといいます・・・ついでに、我が家の恥です」
「ぜぇぜぇ・・・だ、だずがった・・・死ぬかと・・・思った・・・」
「ああ、ウルカに行っていた、とか言ってた・・・」
どうやら、ここで瞬もリジェがリィルが時折語ってくれていた実弟だと気付いた様だ。漸く<<炎武>>が使えた事等に得心を得た様だ。そうして、暫く後に復帰したリジェと共に、改めて話し合いが持たれる事になるのだった。
お読み頂きありがとうございました。
次回予告:第719話『姉弟』




