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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第41章 帰還への一歩編

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第699話 戦闘準備

 今週末から本編で先行版の断章・11を投稿します。来週末からは本投稿で『Fragment』の方に断章・11を投稿します。少しの間本編が読みにくいかもしれませんが、ご了承ください。

 一つ目の検査ポイントの検査を終えて、更に数時間。昼を超えて――勿論、昼は持ち込んで中で食べた――更に幾つかの検査ポイントの検査を終えた所で、今日の検査は完全に終了する事になった。


『お疲れ様でした。これで、個別の検査ポイントは終了です』

「これで、終わりか・・・とりあえず今日の所は、という所だけどもね・・・」

「あ、あははは・・・疲れた・・・」


 最後のセーフポイントにたどり着いて腰を下ろして、後は警戒状態の解除だけとなって一同が安堵の表情を浮かべる。


『警戒状態を解除しますので、少々お待ち下さい』

「ふぅ・・・とりあえず、今日の総括を今のうちに、と行きたい所だけど・・・それは帰ってからにしようか」


 オペレーターからの言葉を受けて、藤堂がそう一人ごちる。総括をしようにも、ここだけで検査を行っていたわけではないのだ。他の所での報告や情報もまとめた上で、の方が良いだろう。

 とは言え、別に今までの事をまとめる分に問題があるわけではない。なので瑞樹は魅衣と共に、総括を行っていた。


「敵の形はキャタピラ、4脚、二脚、浮遊型・・・大きさは大凡人程度・・・硬さはキャタピラから一番硬くて、浮遊型が一番やわらかい」

「キャタピラ型は総じてマルス帝国のゴーレムと大差ない形状でしたわね。両腕に放出系の武器が備わり、と・・・」

「そうなの?」

「まあ、所詮はキャタピラですものね」


 瑞樹が小声で笑いながら魅衣の質問に答える。所詮、人が創り出す物だ。デザインに大差は出ていない様子だった。魅衣は遺跡には立ち入っていない為、その時の事を知らないのである。そんな話をしてしばらく経過すると、再びヘッドセットから声が響いてきた。


『解除完了。ゴーレム達は別の所へと向かいました。進めます。準備を整え次第、最終セーフポイントへと進んでください。道中でブッキングが発生しない様に、突入のタイミングはこちらで指示を下します。簡易のセーフポイントと道の把握だけは忘れないでくださいね』

「ええ、わかっています」


 オペレーターからの指示に、藤堂が改めて地図を確認する。最終セーフポイントとは、今回の遺跡の大ボスを務める事になっている部屋の主にたどり着くまでの最後の休憩地点だ。

 ここで全部のパーティが集まって、最後の討伐に挑む事になっていたのである。そうして、一同は一路、最終セーフポイントを目指して再度出発するのだった。




 再出発から、1時間程。そこで、最終セーフポイントと呼ばれる部屋へとたどり着く。そこは所謂データを纏めたり通信を行ったりする為の特殊な部屋らしく、警備用のゴーレム達もここには入ってこれないそうだ。本来は隠されているのだが、遺跡の崩落で偶然見付かった部屋らしい。

 なお、幸いな事に今日は何処かとここに来るタイミングがブッキングする事はなく普通に突入出来た。他にもすでに何組かが到着しており、傷の手当てや休憩に入っていた。と、そんな中で、学生達のパーティの中の一人を見て、魅衣が顔を顰める。


「いてっ! しみるっ・・・」

「うわっ・・・酷い火傷・・・」


 どうやら水蒸気をもろに浴びたのだろう。皮膚が焼けただれていた。そんな状況はどうやら少なくないらしく、後から来たパーティも似たような状況に陥っていた。どうやら彼だけが不注意だった、というわけではないらしい。幸い顔に直撃はしていなかったが、間一髪、というのは少なくなかった。


「うっわー・・・カナンと先輩、暦ちゃん居なかったらウチとこもああなってたんだ・・・」


 カナンが先んじて全員に注意を促し、暦と藤堂が誰が危ないか、どう危ないかを指摘する。その組み合わせは見事に機能していた。なので他の学生パーティに比べて、ワンテンポ早い段階で対処出来たのである。と、そういうわけでそれを見てカナンが他の獣人の少年少女らと会談を得ていた。

 今は獣人の少年少女らも冒険部に加わっている。流石に連日連夜の遺跡への突入だとスタミナが保たなくなる為、予備兵力として冒険部から20人を連れてきていた。それらの中にも今の中にも、勿論獣人は含まれていたのである。


「うーん・・・配管内部の、ねぇ・・・」

「ほら、しゅごー、とかぽぴゅー、とか・・・聞こえない? で、その後少しすると、ガコン、って鳴るの」

「聞こえる・・・ね・・・」


 カナンの言葉に、獣人の冒険者達が全員耳を研ぎ澄ませる。獣人の身体能力は人間の数倍だ。それは運動神経に限った話ではなく、聴覚や動体視力等も含まれていた。

 聴覚に特化した獣人が本気になって耳を澄ませば、数キロ先の小銭の落ちる音さえ聞き分けられるらしい。流石にそこまで特化した種族は居なかったが、それでも遺跡に響き渡る配管の音程度ならば、聞き分けられた。そして案の定、少し集中するとガコン、というかすかな音が彼らの耳朶を打つ。


「・・・あ」

「これかな・・・」

「一度合わせてみる?」

「うん」


 獣人の少年少女達が一度手で排気口が開くタイミングを示し合わせてみる。そうして、ガコン、という音が聞こえると同時に、全員がとん、と床を叩いた。


「これか」

「全員一致してるなら、正解だね」

「なるほど・・・大体3秒ぐらい音が大きくなってって、ガコン、か」


 全員耳に集中しながら、音の聞き分けを行う。これの如何で、仲間の怪我の割合が変わってくるのだ。全員真剣だった。

 と、そんな風に各々今日のとりまとめを行いながら次の戦いに向けた休憩や相談を行っていくと、部屋の大きめのモニターが点灯した。モニターに写ったのは武蔵と、また別の武蔵の弟子だ。そうして、この階層の総指揮を務める武蔵の弟子が彼に問いかける。


「先生。そちらは問題はありませんか?」

『うむ。こちらは大した問題は起きとらんな。そっちはどうじゃ?』

「はい。後一組到着すれば、突入準備が整います」

『こちらは最終セーフポイントに到着した所じゃ・・・中層階はどうじゃ?』


 武蔵は改めて、中層階に突入した弟子に問いかける。中層階には印可や皆伝を向かわせていたのだが、それ故、不安は無かった。問いかけたのは念の為だ。


『はい。こちらも問題無く。幸い公爵家の方々の実力は確かでしたので、すでにこちらは突入可能です。まぁ、あっしも暇つぶしさせて貰った、って程度ですんで、勿論大丈夫です』

『ふむ・・・オペレーター。現在時は?』

『うむ。現在時は17時じゃな。17時30分に突入じゃから、そちらの最深部は1時間程度の調査が可能じゃろう』


 オペレーターと問われて答えたのは司令室に居るティナだ。オペレーターの総指揮はティナの為、ここではティナが答えたのである。

 ちなみに、朝10時から突入したわけであるので、だいたい8時間は調査と戦い詰めだったわけだ。流石にこれ以上は調査も戦闘も体力的に厳しい為、調査を幾度かに分けるしかなかった。と、そんなティナの声を聞いて、カナンが首をかしげる。


「やっぱり似てるんだよなー・・・」

「私しーらない、と・・・」

「私も知りませんわね」


 カナンのつぶやきに、瑞樹と魅衣が小声でそっぽを向く。やはり一番近いからだろう。他の獣人達は殆どティナと関わりが無いので違和感を感じていない様子だったが、親しいカナンだけは、響いてくる『ソフィーティア少佐』の声にカナンだけは違和感を感じていた。そして二人に出来る事はない。全部ティナにぶん投げる事にした様子だった。

 とは言え、もうこうなってはどうしようもない。気付かれるのは時間の問題だろう。対処したければ声を変えるしかなかったわけだが、それでは音声認識の魔道具等で不備が出るのでできなかった。そんな三人を他所に、ティナと武蔵達はミーティングを進めていた。


『ふむ・・・ではやはり、蒸気の噴出は多かった、というわけじゃな』

『ふむ・・・まあ、とりあえずこれ以上話してもこちらには無駄じゃろう。解析はそちらに任せるとして、こちらは最後のラスボスに取り掛かるとするかのう』

『レイドでデカブツ攻略じゃな。丁度敵はでかい機械のゴーレムじゃからのう。良い経験になるじゃろ』


 ティナが何処か楽しげに武蔵の言葉に応ずる。レイドとは所謂ネットゲームの用語だ。多数のパーティが参加してボス攻略をする事を『レイド』と称する事があるのであった。

 そして認識はこれで正しい。やることはまさにそれだからだ。と、そんなティナの言葉を受けて、武蔵が思い出したかの様に告げる。


『おお、そうじゃった。次の敵は100メートル級じゃから、轢かれて怪我せんようにな』

『轢かれたらミンチ肉ですよ、普通に・・・じゃあ、冒険部全員、注意しろ。轢かれたら一巻の終わりだから、常に軌道だけは注意しとけよ。注意点なんかは、先生の弟子の方々に従っておけ』


 武蔵に続けて、カイトが割り込んで一応の注意を言い含めておく。これから戦うのは今まで冒険部では一度も戦った事の無い巨大な敵との戦いだ。それを学ぶ必要があった。そうして、それを最後に、通信が切断される。が、最後の二人の言葉に、一同が頬を引き攣らせた。


「・・・100メートル級?」

「轢かれたら一巻の終わり?」


 ぎぎぎぎぎ、と冒険部一同の顔が今回の総指揮を行う武蔵の弟子に集まる。ブリーフィングで最後にかなりのデカブツと戦う、とは聞いていたが、まさかそこまでのデカブツとは思ってもみなかったようだ。


「規模は100メートル級だが、そこまでではないさ。城や砦を攻め落とすつもりでやれば、どうということはない。それらが動いているような感じ、と考えれば気は楽さ」

「攻城戦!?」


 武蔵の弟子からの言葉に、意味が理解出来た学園外からの冒険者も頬を引き攣らせる。攻城戦をこの時代にやる事は滅多にない。冷戦中ではあるが、国家同士の戦争が100年近く起きていないからだ。カナンも経験していない。本当にレアな経験だった。


「ああ。攻城戦だ・・・とは言え、敵は大きく、遠距離がメインだ。懐に入ってしまえば、こちらの物。移動速度もそう速いわけではないから、十分に戦えるだろうさ・・・えーっと・・・ああ、来たか」


 総指揮を務める男がそう言うと、モニターが再び点灯する。そうして映し出されたのは、おそらくこれから戦う事になるのだろう敵の映像だった。

 それはキャラピラのついた重武装のゴーレムだ。身体の各所には魔導砲が幾つも取り付けられており、動く要塞、というのがまさに最適な言い方だった。


「これと戦うんですか・・・?」

「ああ・・・何、先生の弟子は月一でやってる。安心して大丈夫。きちんと、補佐する」

「うーん・・・」


 月に一回戦うのなら、そこまでの強さでは無いのかも。冒険部の人員も総じてそう考える。一緒に行動して見てわかったのだが、ここに割り振られている面子は技量としては冒険部の上位層とさほど大差無い力量だった。なので出来るのだろう、と判断したのである。


「まず右側の大砲台を破壊して、次は左側。それから真ん中に取り掛かる。攻撃力に特化していないヤツは側面からの魔導砲の攻撃を相殺。それでなんとかなる。魔導砲もそこまでの火力では無いしな。注意すべきは、キャタピラに巻き込まれない様にするだけだ。あれだけの重さはそれだけで危険だからな」


 総指揮を務める男はかなり軽い様子で初参加の面子に告げる。その様子には気負いは無く、どうやらこの様子では本当にそこまで気負う必要の無い相手なのだろう。もしこれが本当に油断ならない相手であれば、絶対に気軽に言う事は無いはずだからだ。

 そうして、更に幾つかの注意事項を告げて、本格的な休憩に入る事にする。簡単には言ったが、油断しても勝てる相手ではないのだ。休憩は重要だった。


「じゃあ、向かうぞ」


 全員が集合して規定の時間になった事を受けて、改めて総指揮の男が告げる。そうして、一同は再び通路に出て、一路第二層の最深部に続くエリアを目指す事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

 次回予告:『巨大ゴーレム戦』

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