第3958話 雷の試練編 ――帰還――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。
そうして宇宙港に似た場所を進んでいた一同であったが、手に入れた地図に表示される巨大ドームを目指して進むも、その到着直前にまるでこれから試練の本番と言わんばかりに幾つかの隊に分けて飛ばされる事になるも、幾つかの部屋を調査してなんとか戻れるだろう道を発見。テレポーテーション装置を使って、最初の拠点を設置した場所へと戻っていた。
「……あれ? 確か最初の拠点に移動、だったよね? というか移動したの?」
「多分な……構造としてはテレポーテーション装置のある部屋は一緒になってるんだろう。ほら、とりあえずは出るぞ」
時間は少しギリギリという所で、他に何処かの隊が到着しても不思議はなかった。となるといつまでもこの場所で留まっていると邪魔になりかねないので、さっさと移動するkとにしたようだ。
というわけで一見すると最初の部屋と同じ部屋にたどり着いた様子だったが、案の定扉から外に出ると、そこには自分達が設営した簡易の拠点があった。
「……あれ? こんなところに扉あったっけ?」
「多分、試練の開始と共に扉が出来たか、壁が降りて扉が現れたんだろう。スイッチがある所を見ると、確実に後から付けられたな」
「そんなのあり?」
「ありだろう。所詮、と言うと言い方が悪いかもだが、所詮は試練だしな。それに、ここだけは宇宙港と完全に別に拵えられただろう空間だ。縛りもゆるく出来るんだろうさ」
顔を顰める浬に、カイトは肩を竦めつつも後追いで色々と改築されても不思議はない、と口にする。というわけで一応の念の為として拠点を見て回るが、やはりここは自分達が設営した拠点で間違いないらしい。
「うん。全部揃ってる。カイトー。回復薬やらの備蓄もご飯も全部揃ってるよー」
「よし……まぁ、流石に飯抜きで完全踏破はさせんよな」
一応魔力さえ補給出来れば一日二日は食事を抜いても戦闘も可能だが、長期戦になればなるほど戦闘力も知能も悪化していく。いくら試練でも下手を打たない限りはそんな完全に無補給状態の極限環境を設ける事は滅多になく、まずは一日掛けてここに戻る事が最初の目標になっていても不思議はなかった。
というわけで拠点になにか変化がない事を確認した彼であったが、そうして次の行動を考えようとしたその瞬間、スマホ型端末のアラートが鳴り響いた。
「ん……ああ、10分前のアラートか。そろそろ戻って通信機の前に待機しておかないとな」
「え? もう? ほとんど何もやった感ないんだけど」
「まぁ、大半ただ歩いて調べて、だったからな……とはいえ、初日はこんなもんといえばこんなもんだろう。それに、結構調査はしたしな」
意外と時間が経過したように感じた浬であったが、実際の所としては最初の宇宙港のエリアと今の軍用のエリアの調査を行っていた。前者も後者も共に半分も調査していないが、そもそも宇宙港のエリアで最後のゲートにたどり着いた時点ですでに半日は経過しつつあった。戦闘こそなかったが、調査をしながらだったからこそ逆に時間を要していたのである。
そこから更に休憩を挟んで先程のテレポーテーション装置を発見までがおよそ二時間と考えると、実際にはかなり時間が経過していたと考えて良かっただろう。というわけでカイトは次に調べる物を考えていた思考を切り上げて、立ち上がる。
「よし。それじゃ戻るか」
「「「はーい」」」
カイトの号令に少女ら三名が呑気な様子で応ずる。と、そうして四人が立ち上がって再びテレポーテーション装置のある部屋を目指そうとしたちょうどその瞬間。再びテレポーテーション装置の部屋が開いた。
「……」
「ん? ああ、ソラか。お前もなんとかギリギリたどり着けたみたいだな。警戒している所悪いが、ここは安全そうだぞ」
「ふぇ? あ、カイト。ギリギリ……うわっ! 結構ギリギリ!」
テレポーテーション装置のある部屋から現れたのはソラとセレスティアらだ。なお、セレスティアはいるがイミナはいない。こちらも別々に分けられていた。
なお、ソラはやはり初めて突入する部屋になるからか盾を構えて扉の脇から躍り出る形だったが、そうして見えたのがカイトなので素っ頓狂な声を上げていた。というわけでそんな彼がスマホ型端末の時計で時間を見て仰天する姿に笑いながら、カイトは一つ頷いた。
「ああ……オレ達もつい10分ほど前にたどり着いた……戻り着いた? ばかりだが。今から戻る所だな」
「10分差かぁ……もしかして俺達が一番最後だったりすんのか?」
「いや、一応オレが着いた後に着いたのはお前らぐらいだ。多分時間ギリギリぐらいまでは待機していて不思議はないだろうから、他は到着出来ていないパターンだろうな」
「アイナディスさんもか?」
「ああ」
驚いたようなソラの問いかけに、カイトは一つ頷いた。とはいえ、これは不思議ではないと彼は考えていたようだ。
「まぁ、アイナだ。時間が微妙な事を考えて、司令室で待機してそこで次の方針を定めて、テレポーテーション装置を使用と考えていたとて不思議はないな」
「ねぇね、安全策重視だしね」
「そういうこと……ま、真面目なあいつらしいな」
「あ、なるほど……」
確かにアイナディスさんの性格ならその選択肢を取っても不思議はないな。ソラは拠点に戻れるだけだろう、そしてすぐに司令室に戻れるだろう、という前提でテレポーテーション装置を使用したものの、実際には権限がないという事で別の場所に飛ばされていても不思議はなかったのだ。その判断が迂闊ではなかったか、と問われると少し微妙な所ではあっただろう。
「ま、幸い拠点へ戻るルートにトラップは仕掛けられていなかったみたいだから、要らぬ心配という所ではあったんだろうがな……こういう場合の安牌はオレが行って戻って、その情報をベースに判断、という所か」
「そうだよなぁ……っと、そうだ。それはそれとしても、時間ギリギリじゃね?」
「あ、っと……そりゃそうだ」
どこか急かすようなソラの指摘に、カイトも少し慌て気味に一つ頷いた。そもそも彼らも司令室に戻ろう、と判断した所だったのだ。すでに10分前のアラートは鳴っていたし、ここで駄弁っている間にすでに数分が経過している。すでに5分前になりつつあった。とはいえ、せっかくここで揃ったのなら、とカイトはソラに指示を出す。
「ソラ。最後の確認がしたい。手を貸せ」
「え? あ、おう。何するんだ?」
「こちらでパーティ編成を自由に出来るか、ってところ。おそらく個別の端末で行き先が指定されるんだろうが、とは思うが」
「あ、それか」
カイトの疑問に、ソラはなるほどと納得を露わにする。というわけで少し駆け足で再びテレポーテーション装置に戻った二人だが、先程どちらも試していたからかテレポーテーション装置の起動はすぐにうまくいった。が、そこですぐにエラーが表示される事になった。
「……こりゃ駄目か。どうやら別の場所へ連れて行く事は出来なそうだな」
「ってことは、指定されたパーティで合流するまでは攻略しないといけない、ってことか」
「そのための通信室なんだろうしな……よし。ソラ、今度は一度部屋から出てくれ。オレ達だけで行けるか試す。んで、飛べたらすぐにお前らも飛んでそっちの司令室で合流だ……時間に遅れるとアイナにどやされるぞ」
「そりゃマズいな」
カイトの言葉にソラが少しだけおどけた様子で笑う。というわけで、一同は最後にテレポーテーション装置の仕様を少しだけ確認する事にして、再びそれぞれの司令室に戻るのだった。




