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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3949話 雷の試練編 ――保管庫――

 瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。

 というわけで雷の試練にて再度地球側で試練の攻略に臨んでいた浬らと合流したカイトであったが、小休止を挟んで、改めて試練の攻略に乗り出す事になると、近未来的な外観を有する扉を通過したその先に進む事にする。

 そうして宇宙港のような施設の中で、一番大きなドームに向けて何事もなく進んでいた一同であったが、その最後。大きなドームの前に立ちふさがるゲートを通過するという瞬間、唐突に鳴り響いたアラートと共に一同は別々に転移させられ、カイトは留置場と記載された部屋へと飛ばされていた。というわけで留置場を脱出したカイト達だが、その次のエリアは普通の通路ではあった。


「……」

「……意外と……なんもない?」

「なんもない、というよりも非警戒エリアの通路というところだろう。まぁ、最重要エリアからは程遠い場所だろうからな」

「なんでそんなのわかるわけ?」

「んー……そうだな。こういう場合は施設の構造から考えた結論かな」


 浬の問いかけに、カイトはおそらくエントランスなどに相当するエリアで手に入れた全体の地図を表示する。そうして表示された全体図だが、現在彼らが居るエリアと表示されているエリアは大きく離れていた。


「オレ達が居たのはおそらく個人保有の宇宙船や個人保有の人型ユニットの格納庫だろう。そこから入港して、エントランスで正式な手続きを取るというのが通常の流れになるんだろうな」

「あ、そっか。エントランスから伸びてる二つの通路は旅客機とかが停まるゲートだとすると……そこから乗り込んだ人。それ以外に個人で乗り込んだ人を分けてるってわけか」

「謂わば旅客機なんかの入場ゲートから入る奴はその前にあったゲートで事前チェックがされる。おそらく本来は個人用の格納庫からもゲートがあるんだろうが……そんな事をしてしまうとどういう試練か、この端末を手に入れる前にバラバラになってしまうし、合流が困難になってしまう。まぁ、今回は試練用に一部いじった感じ、という所だろうな」



 それは雷華も望まなかったんだろう。カイトは雷華の意図をそう読み解いて、浬へと語る。


「本来は本来はって……ここ何処かわかるの?」

「いや。単にそんな推測だが……だがおそらくどこかの宇宙港をベースに構築しているのは間違いないだろう。あと、宇宙港と言えど空港と大差はないはずだしな……変に上下左右全体に設備がなってると迷う原因になるし、ついでにいうとそれをやろうとすると重力が問題になるし」

「あ……そういえばここ宇宙なら浮かない……」

「そ。重力を発生させている都合、どうしてもこういう上下がある方が都合が良い。なら必然として、こうやって空港に似た構造になる、って話なんだろう」


 ぴょんぴょんぴょん、と飛び跳ねる浬だが、その身体は無重力空間のようにどこまでも飛んでいく事はない。普通に重力があるのだと理解するのに十分であった。


「でも宇宙ってエネルギーの確保が難しいって聞くじゃん。無重力の方が良いんじゃないの?」

「宇宙港で一泊、ってなった時に無重力の方が良いか? テレビで何回か聞いた事ぐらいはあるだろ。無重力で顔がパンパンに、とか」

「……確かに」


 宇宙飛行士が人工衛星で数泊した際、色々と地上と違うが故に大変だという話は浬も聞いた事がある。これだけ高度な文明であるのなら重力も普通に発生させられただろうし、何よりこの様子だと一般人も普通に宇宙港に来れる状況である事は察するにあまりある。ならば安全面などを鑑みて重力を発生させた方が良い、というのは浬にもわかったようだ。


「そ……無駄かどうか、ってのは安全をどう捉えるか、という所で変わる。オレ達がわからないだけで、もしかしたらこの宇宙港のモデルだって一日何十万人の利用があるのかもしれないぞ? そうなったらそれぐらいの消費は十分に帳尻が合うのかもな」

「ふーん……」


 そこらの帳尻云々は浬にはわからないが、確かに安全を軽視して大事故に発展、というのは聞く話だ。なのでそういうものなのだろう、と思うだけにしたようだ。そして彼女の納得を見て、カイトは脱線した話を元に戻す。


「で、その安全面を鑑みてここには警戒用のセンサーやらは置いていないんだろう」

「ふーん……で、ここからどうするの?」

「さて……どうするかね」


 浬の問いかけに、カイトは地図を表示させつつ直にも通路を確認する。出た先の通路だが、一応は奥まった所にあったようだ。通路の端まで幾つかの部屋があり、更に通路の端にも扉があった。というわけで僅かな警戒を滲ませながら、彼はソレイユへと視線を向ける。


「音は?」

「してない」

「よし……となると、おそらくまだしばらくは無人……か」


 完全に無音にも出来る技術はあるだろうが、完全に室内の物音が響かないようにはされない。カイトは自身の経験の幾つかに当て嵌めて、まだソレイユ達の鋭敏な聴覚でも聞こえる領域の防音設備だと判断していた。

 というわけで、カイトはソレイユを後ろに控えさせると魔銃を取り出して、一番近かった部屋の扉の真横に、壁を背に押し当てるような形になるよう移動する。


「ユリィ、扉は頼む。ソレイユは万が一奥に居た場合の狙撃。浬は身の安全を第一に」

「「はーい」」

「うん」


 カイトの指示に、三人が応ずる。そうしてカイトが扉の横に立ち呼吸を整えたと同時に、ユリィが扉の開閉を行うコンソールのすぐ近くに移動。ホログラフを表示させる。


「3……2……1!」


 ぷしゅっ。なにか空気が抜けるような音と共に、扉が開いて中の部屋が露わになる。が、すぐにカイトは双銃を下に下ろした。まぁ、元々中に何も居ないだろう事はわかっていたのだ。そこまで警戒する必要はなかった。


「ん、問題なし」

「んー」

「……なにここ?」

「倉庫だな……より正確に言えば押収物保管庫、という所かもな」

「あー……なんとなくは理解出来た」


 部屋の中にあったのは幾つもの棚だ。ただ棚もコインロッカーのように幾つかの小分けにされた戸棚がある形で、鍵も掛けられるのか大半のライトがロック中であることを示すかのように赤く輝いていた。



「これも調べるの?」

「どうしたものかねぇ……幾つか開くみたいだが」


 浬の問いかけに対して、カイトは緑色に輝くランプのロッカーを開く。そして開いた扉の中を、カイトの肩に着地したユリィが覗き込む。


「……からっぽ!」

「お前なら入って寝れるかもな……てかなんで微妙に舌っ足らずな発音だよ」

「なんとなく……それはそれとして寝るのはやだよ、絶対ライトとかないし」

「だーろうな……一応全部開いてはおくか」


 ちょいちょい。カイトはロッカーに近寄っていた浬に離れるように手で指示する。そうして彼女が離れると同時に、一斉に緑色に輝いていたロッカーが開いた。


「え、なに!?」

「魔糸を応用して全部いっっぺんに開いたんだよ……で、ソレイユ」

「ぜんぶからっぽ!」

「なんでお前も真似るんだ……」


 楽しげにユリィの口調を真似たソレイユに、カイトががっくりと肩を落とす。まぁ、何故と言えば楽しいから、というだけで良いし、どうせ飽きたら勝手に止める事も承知の上だ。なので彼は毎度のことと、すぐに気を取り直した。


「まぁ、良いか。とりあえずそんなわけで全部空だ。赤色は空じゃないところ、という事だろうな」

「ふーん……これも開くの?」

「おっと待った!」


 適当に近くにあった赤いランプのロッカーに手を伸ばす浬に、カイトが即座に制止を掛ける。


「多分赤いロッカーを開いたら即座に警報が鳴る。触らぬ神に祟りなし、君子危うきに近寄らず、だ」

「うお……あぶなっ」


 カイトの言葉に浬が大慌てで手を引っ込める。とはいえ、どこか後ろ髪を引かれる様子だったのは気の所為ではなかった。


「でも重要なのありそうだけど」

「多分あるだろう……ピン機能でここにピンを立てておこう。おそらくどこかで鍵を入手して、ここに戻ってくる事になるはずだ」

「なんか……ゲームやってるみたい」


 地図にピンを立てて、とやっているカイトに浬がなにか微妙な表情だ。が、これにカイトは少しだけ楽しげに、雷華の意図を読んでいた。


「まー、ゲームをモチーフにしているのは当然だろう。そもそも考えてもみろ。ゲームってのはデジタルだ。デジタル、即ち電気を応用したものだ。なら、雷の試練でそういう風なイメージで選ばれるってのは何ら不思議がないだろう?」

「おぉお……」


 確かに言われてみればそれはそうだ。浬はカイトの指摘になるほど、と言わんばかりの様子で目を見開く。


「でもなるほど……確かにゲームみたいなのなら、私達が逆に役に立てるのか」

「そういう側面もあるだろう……特にアイナ、あんまりそういう娯楽に興味ないからなぁ……」

「ねぇね、遊ばないもんねー」

「そ。まぁ、だからオレ達も風紀委員長殿なんで茶化すんだが」


 ソレイユの指摘にカイトも苦笑いで同意する。なお、これで浬も大体アイナディスの性格は理解出来たようだ。というわけでそんな彼女に、カイトは気を取り直して告げた。


「とりあえずこのロックされたロッカーは今は触らないでおこう。どこかでさっきの留置場よろしく鍵が手に入るはずだから、それを手に入れたらまた戻って来る形だな」

「りょうかーい」


 ゲームに似た形ならまだやりやすいし、考えやすくもあるかも。浬はアクションゲームをやっていれば鍵を手に入れて戻ってきてまた次へ進む、というのはよくあることだ、と自らを納得させたようだ。

 かなり気楽な様子で返事をしていた。そして改めて試練ではなくゲームとして見てみて、彼女は一気に自らの認識がアップデート出来たようだ。


「うーん……でもそう考えると、これってFPSのダンジョン探索メインのアクションゲームっぽい?」

「まぁ、そうだな。ちょうど宇宙っぽいモデルだから、某バウンティ・ハンターとかのがイメージとしては最適かもな」

「一気にイメージ出来た……扉でハメとか出来るかな?」

「いや、流石に無理だろう。雷華がゲームが好きなのは否定しないが、そんなことまでしてたらちょっとお説教かな」


 ゲームをモデルとして構築する事はまだ良しとしたし、カイトとしても楽しめている。だがそれでも、ゲームそのままのシステムで構築しているのなら流石に真面目にやれ、というしかなかったようだ。そしてそんな事はしないだろう、とカイトは笑っていた。


「ま、とりあえずだ……この様子だとここが押収物保管庫。横は……」

「なんか魔石が一杯。でも多分これはここに入れられた人のデータとかかな。写真浮かんでるし」

「おおよそ資料室とかそういうところか……なら、後回しで良いか」


 ユリィの返答に、カイトは横の部屋の地図データを翻訳。資料室と記載しておく。というわけで二部屋分を地図への反映を終えると、一同は外に出る。


「さて……そうなりますと」

「次は、かな」

「どういう風をイメージして作ってるか、お楽しみだな」

「そろそろ敵が出そうな予感」

「出るだろ、そろそろ」


 これがゲームとして考えるのなら、そろそろ雑魚敵の一体二体出てもおかしくない頃合い。浬はそんなメタ的な発想を働かせ、カイトもまた同様の考えを働かせていたようだ。というわけで押収物保管庫同様に壁際に全員が移動して、カイトの合図と共に通路の先へと突入するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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