第3946話 雷の試練編 ――別離――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。
というわけで雷の試練にて再度地球側で試練の攻略に臨んでいた浬らと合流したカイトであったが、ひとまず試練に臨む前にアイナディスの手によって一度瞬らを含め今の実力を試される事になっていたのであるが、その最中。浬の思わぬ才能の発覚により、試験は終了。
小休止を挟んで、改めて試練の攻略に乗り出す事になると、近未来的な外観を有する扉を通過したその先に進む事にする。そうして格納庫と思しきエリア。エントランスホールと思しきエリアを通過した一同の感覚としては、ここはどこかの宇宙港というような様相であった。
そうして一番大きなドームに向けて何事もなく進んでいた一同であったが、その最後。大きなドームの前に立ちふさがるゲートを通過するという瞬間、唐突に鳴り響いたアラートと共に一同はどこかへと飛ばされる事になっていた。
「ま、こんなこったろーと思ってましたよ。さて、誰が一緒だ?」
「はいはいはーい」
「んー」
「お前らはわかってたよ」
こうなる事がわかって引っ付いてたし。自身のボヤキにいつも通り手を挙げるソレイユとユリィに、カイトは元々重さが消失していなかった事から特に気にした様子はなかった。
「それに、下手にお前らまでバラけさせると戦力の不均衡がヤバくなる。オレ達は無関係な野次馬なんだから、横に退けておいた方が良かったんだろうな」
「だろうねー……で、ここはどこ?」
「どこだろ?」
ユリィの問いかけに、カイトは周囲を確認する。あのゲートをくぐり抜けて、上部に装着された何かの装置が輝いた瞬間、光に飲まれて全員の姿が消えたのだ。なので場所としては当然、先程のゲート前という事はなかった。というわけで、カイトはスマホ型端末を取り出して、現在位置を確認する。
「……第一番留置所か。スタッフオンリーエリア、地図に記載されていなかった場所だな」
「やっぱりこうなったね」
「だな」
こんな地図まで用意してくれているのだ。当然のように全員をバラけさせるだろうとカイト達は考えていたし、案の定でしかなかった。
「でだ……状況としましては」
「……なにこれ?」
「ウチの妹様か」
ぱちくりぱちくり。何が起きているかわからない様子の浬に、カイトは面白そうに肩を震わせる。とはいえ、いつまでも笑っていられるわけでもない。というわけで、混乱している彼女へと状況を教えてやった。
「あれ、というかおそらくどこにせよ無登録でゲートを通過しようとすると飛ばされる仕組みになっていたんだろうな」
「わかってたの!?」
「わかってた、っていうか順当に考えりゃそうなる。だからこいつらも仕組みがわかってなくても普通にオレに引っ付いてたわけだからな」
「一緒に飛ばしてくれたかは運だったけどねー」
カイトの言葉に同意するように、ソレイユが告げる。実際彼女らもこうなるだろうという推測は立てており、では何時のタイミングだろうか、となった時、どこかのゲートだろうとは思っていた。
そしてそういうわけなので最後のゲートになった所で、おそらく飛ばされると読んでカイトに引っ付いていたのであった。
「……ってことは手を繋いでたりしても意味なかったってこと?」
「なかったな。オレ達が一緒なのは単にオレ達が厳密に言えば試練に無関係な存在で、なおかつ戦闘力やら総合的な能力値が凄い高いから、って所が大きいだろう。多分こいつらが引っ付いてなくても一緒だっただろう」
「あ、だからあの時一応、って付けてたんだ」
「そゆことー」
一応、ということはつまりやらなくても大丈夫だろうが、という認識が前提にあったということだ。そして三人とも自分達が原則的には試練に無関係である事を認識していた以上、当たり前でしかなかったのだろう。
「……でもそれだったらなんで私までこっち?」
「んー……そうだなぁ。ここらは雷華に聞かないとなーんとも言えんが。確かそっちで雷の契約を主体的に結ぶのはお前じゃなかったよな?」
「うん」
浬らもとい地球組だが、契約はかつてソラ達がシンフォニア王国で開祖マクダウェルことリヒト・マクダウェルが交わしたと言われる集団としてのやり方になっている。
が、そういっても集団である以上代表は必要なわけで、そのものが代表として大精霊と契約を交わす事になる。というわけでその代表が契約を取り交わすのだが、浬は違うのであった。そしてこれを誰が指示しているかというと、言うまでもなかった。
「というか、お兄ちゃんでしょ。私にどの契約も結ばない方が良いって言ったの」
「そうだな……一人ぐらい属性に特化していない方が良い事もまた事実。バランス型……とでも言うか」
「カイトと同じ?」
「そーいうことだな。下手にどれかの属性に特化してしまうと万が一相性が悪い相手と戦わないと駄目になった時に勝ち目が薄くなる。一人ぐらいはどの状況にも対応出来るようにしておくのが吉……それで考えると、全属性、全攻撃に対応可能な浬が一番適している」
浬の戦い方は以前風の聖域でも触れられていたが、各属性の力を宿したカードと魔弾と斬撃のカードを組み合わせる、という非常に特殊な攻撃方法だ。そうであるが故に全属性を使えるし、どの距離でも戦える。なので敢えてどれかの属性に特化させず、それらを補佐出来るようにしていたのであった。
「そういうわけで、お前も原則的には挑戦者というより協力者に近くなる。どちらかといえばオレ達側、と言っても良いんだ。だからオレ達に引っ付けたんだろう。後は戦力のバランスを考えた際、アイナは単に訓練に来た形だから単独で良いとして、海瑠は魔眼でソレイユと被るし、警戒能力という意味で海瑠とソレイユはバラけさせたい。煌士やらサポートが出来る奴はユリィと被るからこれもバラけさせたい。遠距離攻撃が出来る奴もソレイユとの被り……な? そうなってくるとオレの所に誰を投げるか、ってなるとお前が一番になる」
「なるほど……」
そう言われれば納得するしかない。先に言われているが、浬自身は全距離、全属性に対応可能なのだ。逆にその他の面々は何かしらに特化しているわけで、ソレイユやユリィという上位互換がいる。
そして彼女らを組み入れると、試練が楽になってしまう。となるとカイトを含めた三人はバラけさせる上で別にしたいわけで、ならば直接的には契約者にならない浬が一番の適役になったというわけであった。
「まー、でもそれなら楽出来るかー」
「そんな簡単にいくと思うな?」
「えー」
「そうだよー。私達楽したいー。女の子には楽させるべきだと思うんですー」
「お前らな」
もう一つ理由があったとすれば、おそらく浬だからこそこうしてカイトを苦労させられるという事もあったかもしれない。これが他の面々――海瑠も含む――ならユリィも教員という側面が強く出てしまいかねなかったが、昔同様に面白おかしく冒険を楽しんでいくだろう、という事があった。というわけで、試練が本格的にスタートするのだった。
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