第3940話 雷の試練編 ――巨大ロボット――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。
というわけで雷の試練にて再度地球側で試練の攻略に臨んでいた浬らと合流したカイトであったが、ひとまず試練に臨む前にアイナディスの手によって一度瞬らを含め今の実力を試される事になっていたのであるが、その最中。浬の思わぬ才能の発覚により、試験は終了。小休止を挟んで、改めて試練の攻略に乗り出す事になると、近未来的な外観を有する扉を通過したその先に進む事にする。
というわけでついに始まった雷の試練であるが、その最初に待ち受けていたのはどこかの近未来的な巨大ロボットとその格納庫という所であった。
「……」
こんこんっ。カイトは巨大ロボットを軽く叩いて感触を確かめる。感触としてはかなり硬質で、ハリボテのような印象はない。重量としても相当な様子で、技術的には地球を大きく上回る相当な科学技術が使われている事は間違いない様子であった。
「魔導炉の搭載はない……ようだな」
魔力を軽く通してみて、こちらの魔力を増幅する様子がないことから、カイトはこの巨大ロボットには動力源となるなにかは搭載されていない事を理解する。と、そんな彼に声が掛けられる。
「なんかわかるの?」
「うえ? ああ、そうか。お前飛空術普通に使うよな」
「うん」
カイトのどこか驚いた様子に笑いながら、浬が一つ頷いた。一応メンテナンス用と思われる足場が巨大ロボットの各所には架橋されている様子だったが、カイトは現在それを使わずに調査をしていた。繋がっていない場所を彼が調査して、飛空術を使わなくて良い場所を彼以外が調べていたのであった。
とはいえ、それは彼が飛空術を使いこなしているが故で、飛空術を得意とする浬がこちらに来ても不思議はなかったようだ。というわけで、彼女の問いかけにカイトは再び巨大ロボットを見ながら答える。
「まぁ、見ての通りだ。動く様子はない……それと、こいつは中に色々と欠けが見える」
「欠け?」
「ああ……流路の一部に欠けがある。これは動力炉があったところで動く事はないだろう」
「……どゆこと?」
こてん。カイトの説明が理解できず、浬は小首を傾げる。今の所わかったのは単にこの巨大ロボットが動かない、というだけであった。
「あはは……そうだな。簡単に言えば中の配線が繋がってない、ってわけ。コンセントが繋がっても配線が繋がってなかったら動きようがないだろ?」
「つまりテレビからケーブルが抜けて映像が映らない感じ?」
「なんだよ、その例え……まぁ、そんな感じか。そんなわけで繋がってない以上、こいつは動かん……さて」
「何がさて、なの?」
「動かないものをここに置いている理由はなにか、って話。これが単なるモニュメントなのか、それとも何か意図があるのか……それを考える必要がある」
「ふーん……」
「逃げようと考えてるな?」
「な、なんのこと?」
ぶんっ。浬はカイトの指摘に大慌てでそっぽを向く。正解だったようだ。
「あはは……はぁ、ま、そこらを考えるのがここの試練の流れの一端になるんだろう」
「お兄ちゃんに任せた」
「お前な……ま、お兄様にお任せしてろ」
「うん」
そんな小難しい事考えられるか。そんななげやりと言うか、浬には明らかに兄への甘えが見え隠れしていた。とはいえ、そんな彼女を甘やかしているカイトもカイトだろう。と、そんな兄妹の所へ再び声が掛けられる。
「カイト様」
「セレスか。どうした?」
「様付けなんだ」
「うるせぇよ」
「あはは……」
セレスティアは今のカイトが一般家庭の生まれであり、そして浬らがあくまでも一般家庭の一般人に過ぎなかったと聞いている。なのでどこか引いた様子で様付けされている兄から距離を取ろうとしている様子に、思わず僅かに苦笑気味に笑っていた。というわけでカイトはわずかにため息を吐いて、話を続けさせる。
「はぁ……で?」
「コンソールを確認しましたが、やはりご指摘の通りだったようです。こちらが映像データです」
「……やはりか」
セレスティアがチェックしていたのは、足場の一つに設けられていた何かのコンソールだ。地頭と経験値を考えて彼女にコンソールのチェックを指示していたのである。おそらくこれがなにかの鍵になるだろう、と思っていたのだが、案の定というわけであった。というわけで彼女の映し出した映像を、浬も横から覗き込む。
「なにこれ? 巨大ロボットの絵?」
「状態確認という所だろう」
「胴体以外全部真っ赤だけど、これで良いの?」
「良いわけないだろ」
映し出された映像の巨大ロボットは幾つかのエリアに分けて状態が示されており、浬の言う通り胴体が緑色である以外、両手足に顔が真っ赤になっていた。全身で異常を検出している、という事であった。というわけでため息混じりの彼に、セレスティアが報告を続ける。
「それでこちらが情報の詳細です」
「……動力炉喪失、非常用電源にて機能保全中。腕部接合ユニット破損、駆動不可。脚部次元歪曲ユニット損失、歩行不可……なんだよ、これ。どこで誰とバトってきたってんだよ」
「あははは……明らかに我々の技術力とも大きな隔たりがあるようです」
どうやら外観こそマトモな状態に見えるが、内部は完全に破損されているような状態だったらしい。外側だけ保っているような巨大ロボットに、カイトは盛大に呆れ返る。というわけでそんな彼へと結論を告げたセレスティアに、カイトもまた気を取り直して同意する。
「そうだな……どうやら、オレ達がこれをマトモな手段で復旧させるのは不可能と考えた方が良いだろう……どっちにしろやるならティナの領分だしな。持ち帰ったらあいつが喜びそうだが」
「あはは……」
確かに明らかに自分達の技術よりはるかに高度な技術が施された巨大ロボットだ。これを修理するのはまず不可能だろうし、それが出来るのは唯一ティナぐらいなものだろう。
だがその彼女は言うまでもなく試練に挑む事が出来ない。そしてもちろん、これを持ち出す事も出来ないだろう。とどのつまり、現在のエネフィア、地球の技術を結集させたとてこの巨大ロボットを修復する事は不可能と言わざるを得なかった。
「とはいえ、それなら二つ確定したな」
「はい……この起動はおそらくこの部屋から次へ進むためには無関係でしょう」
「ああ……で、もう一つはこいつの起動が最終目標というわけか」
「そうなの?」
兄の明言とそれに無言で同意するセレスティアに、浬が首を傾げて問いかける。
「ああ……見ての通り、ここには修理用の装置はあるが修理用の資材はない。だがこいつは修理が必要な状況……つまり、こいつの修理を行ってこいつをどうにかして起動させる、ってのが今回の雷の試練の目的の一つと言って良いだろう」
カイトはソレイユを見て、そちらが首を振った事で自分の推測が正しい事を確信する。彼女がこの格納庫の全域を常に見張ってくれており、万が一誰かが罠に引っかかってもすぐに救助してくれる事になっていた。そしてその彼女が首を振る、ということは即ち、この場にはそういった修理用の資材の類は見付かっていないという事であった。というわけで確定した目的に、カイトは少しだけ獰猛に笑う。
「なるほど……確かにこれじゃアイナディスの武力も通用しない。面白い事を考えたじゃねぇの」
『……』
どやぁ。カイトの称賛に、おそらくどこかで見ているだろう雷華の鼻高々という雰囲気が伝わってくる。と、そんな彼に声が三度掛けられる。
「カイト! こっちに来てくれ! おそらくこの先に扉がありそうだ!」
「おーう! わかった! すぐ行く!」
声の主は瞬だ。どうやら崩れた荷物の先に扉のようなものがあるらしい。というわけで、巨大ロボットの起動を最終目標として、カイトはそちらに向かう事にするのだった。
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