第3940話 雷の試練編 ――開始――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。
というわけで雷の試練にて再度地球側で試練の攻略に臨んでいた浬らと合流したカイトであったが、ひとまず試練に臨む前にアイナディスの手によって一度瞬らを含め今の実力を試される事になっていたのであるが、その最中。浬の思わぬ才能の発覚により、試験は終了。小休止を挟んで、改めて試練の攻略に乗り出す事になると、近未来的な外観を有する扉を通過したその先に進む事にする。
「「「……」」」
ここから先が試練。一同はホログラフの浮かび上がるコンソールの前で一時停止する。この時点で、すでに他の試練と異なる事を理解させられていた。というわけで、コンソールの前に立つカイトが口を開く。
「ソラ。面子的にしゃーないが、覚悟は良いな?」
「お前にやって欲しいよ。いや、わかんだけどさ。お前とかアイナディスさんとかソレイユちゃんが後方って」
「オレ達が戦線に加わっていたとて、最前列はお前だ。順当に考えればな」
ソラの言外の承諾に、カイトは笑いながらソラこそが適役である事に変わりがない事を明言する。そしてそれはソラ自身も理解していたようだ。
「わーってるよ。ただ流石に感覚が掴めない、ってのには一言言いたいってだけ」
「わかってる」
普通の扉であれば、開く速度は一番前に立つ者、今回であればソラに色々と合わせる事が可能だ。今回は自動扉にも近いが故にソラや扉の影に控えて実際に開く動作をする者が開く速度を調整する事が出来ない。しかも開く速度もわからない上に、どう開くかもわからない。覗き見る、という事が出来ないのだ。
コンマの刹那が命取りになるのが扉の開閉だ。そして身構え続けるというのは当然負担だ。覗き見れない以上は予想が不可能で、しかも自動扉の開閉速度がわからない以上はそのコンマの刹那の猶予が何時始まり、どれぐらいなのかがわからない。厄介だった。というわけで厄介と負担は承知で、彼は開閉が始まる瞬間より少し前から常時で気合を入れる。
「……」
「……」
こくっ。こくっ。ソラの頷きに合わせて、コンソールの前に立つカイトもまた頷く。そうして、カイトが音もなくコンソールの上に浮かび上がった手形のホログラフへと触れる。
「……」
やっぱホログラフが解錠と開放のスイッチになっているか。ソラは目の端でカイトの手が触れる直前から、扉が開き出したのを知覚する。そうしてぷしゅっ、というなにか空気が抜けるような音と共に、扉が少しゆっくり目に横に開いていく。
「っ」
ぐっ。扉が開いて先が見えると同時に、ソラは総身に更に力を込める。心構えとしては戦闘モード、という所だろう。ここから先は一秒の猶予もないし、しかも先が危険だからと止める事も出来ない。
彼が後ろへの危険を一身に受け止めるしかない。というわけで戦闘用の力で盾を構えながら、彼は扉の先をしっかりと確認する。そうして数秒。扉の先を確認するソラだが、大きく息を吐いた。
「……問題なし」
「よし……って、こりゃまた」
ソラの反応で敵影はない事を理解したカイトであるが、扉の先へと入って思わず肩を震わせる。そうして、彼に続いてカイトとは逆側の扉の脇に控えていた瞬が部屋へと入る。
「これは……また広いな」
「ああ……それに……まぁ、見たままと言いますか」
「……またか? またなのか?」
「あはは……まぁ、そう言いたくなるのも無理はない、か?」
ソラのボヤキにも似た言葉に、カイトが笑う。そんな彼の前にあったのは、全く持ってファンタジーには似合わない巨大なロボットのような人型であった。というわけで苦笑いを浮かべる彼に、更に後ろからイミナが続いて入る。
「どうされました? って、これは……」
「また……すごいものですね。魔導機……?」
「わからん。調べてみたい所ではあるが……」
やはりその大きさに警戒を滲ませるイミナに対して、セレスティアの方は感心したような、興味を抱いているような様子だった。というわけで立ち止まる面々だが、立ち止まれば後ろが入れない。なので更に前に進んでいき、全員が部屋の中へと入った。
「なにこれ」
「ロボット?」
「海瑠、あんたの目にはどうなの?」
「うーん……前に風の試練で見た巨大ロボに似てる……ような感じはあるけど……」
浬の問いかけに、海瑠は魔眼を解放して答える。が、その様子はなにか微妙な様子であった。そんな彼に、カイトが問いかける。
「なにかわかるか?」
「……ううん。でもなんだろ……あの風の試練の巨大ロボみたいに動力がないわけじゃない、っていうか……なんだろ?」
「ふむ……まぁ、同じ事はしてこないか。それに……敵が出てくる気配もスペースもない……しな」
海瑠の不思議そうな反応に、カイトは警戒しつつも周囲を見回す。部屋の内観としては巨大なロボットを格納する格納庫というイメージで、確かに広くはあるが、同時におそらくメンテナンス用の機材やらが山のように置かれていて敵が出てくる様子はない。何が目的で、何をするべきなのかがさっぱりわかりそうになかった。
「……魔導炉っぽい反応はないんだな?」
「多分……魔力を流してみて反応を探ってみないと、だけど……」
「まぁ……そうなるか。だがそれは最後にしたい所ではあるがなぁ……」
海瑠の返答に、カイトは少しだけ苦い顔だ。やはり風の試練同様、起動させるのは最後の手段にしたい所ではあった。
「……まぁ、とりあえず。先輩、どうする?」
「とりあえずはここを始点として、部屋を確認するべきだろう。このままでは何をするべきなのかもわからんからな」
「そうだな……流石にこれはちょっと想定外というか、オレも見たことのない様相の部屋だ。アイナは?」
「私の時もこのような試練はありませんでしたね」
カイト同様、アイナディスも少しだけ苦笑いを浮かべていた。流石にこんな格納庫のような部屋だ。確かに雷華の言う通り、戦闘力でどうにかなるものではなかった。というわけで、一同は先に進むためにもまずは部屋の調査からスタートさせる事にするのだった。
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