第3939話 雷の試練編 ――調査――
瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。
というわけで雷の試練にて再度地球側で試練の攻略に臨んでいた浬らと合流したカイトであったが、ひとまず試練に臨む前にアイナディスの手によって一度瞬らを含め今の実力を試される事になっていたのであるが、その最中。浬の思わぬ才能の発覚により、試験は終了。小休止を挟むべく、拠点に戻ってきていた。そうして浬の飛空術の腕前を改めて確認した一同であったが、その後は夕食の用意を進めながらも瞬とソラは――カイト達が料理をするので――状況の精査に努めていた。
「……開きます?」
「開くは開くな。ただ……今後もこういう扉が続くなら、鍵開けは難しそうだな」
「あー……確かに鍵穴、見当たらないっすもんね」
本来こういうドアノブもなにもない自動扉でも、エネフィアでは万が一の動力の喪失に備えて鍵を用意するのが一般的だ。なので極論鍵開けの技術さえ持っていれば、自動ドアを開く事は不可能ではない。
もちろん、そんな事が出来ると困るので基本的には動力が生きている間は鍵が使えないように魔術的なロックが掛けられているのだが、扉への魔力の流路を解析して瞬間的に動力を停止。無理矢理こじ開ける事が出来るのであった。
「まぁ、ここは聖域だ。そんな簡単に開けるようにはしてくれていないだろうな」
「そういう意味で考えると、風の試練みたいな扉の方が厄介だったのかもしれないっすね。あっちは明らかファンタジーチックってか……そんななんで、鍵開けとかそういうの考えなかったですし」
「そういえばそうだったな……いや、どっちにしろ鍵穴もなかったか」
鍵穴もなければドアノブもない、という扉が大半だった風の試練を思い出して、瞬が僅かに肩を震わせる。というわけで肩を震わせた彼であったが、気を取り直して扉の真横に視線を向ける。
「ああ、それはそれとしてだ。この扉だが、普通に横にコンソールがあったな。明らかにデジタルというか、近未来的な様子だが」
「あれっすか……確かになんか傾斜があって、明らかに手が乗せられそうな……」
瞬の視線の先を見て、ソラが好奇心を覗かせる。そうして興味もあった事があり、彼はそのコンソールの前に経ってみる。すると途端、手を模したホログラフが浮かび上がった。
「うぉ……立体映像……? ホログラフィってやつっすかね?」
「だろうな……カイト曰く説明されなくてもここに手を置くとわかるようにという設計思想だろう、という事だった。ここまで技術が栄えた文明ならどの文明でも大半はそうなってる、だそうだ」
「なんであいつそんな発言なんっすか」
「わからん」
多分そうなんだろうけど。そんなソラの問いかけに、瞬も半笑いで首を振る。
「だがどこか慣れている様子はあったな。一人感動が少し薄い感があった」
「あー……そういや、なんかそんな感ありますね。まぁ、この歳になって興奮してんのどうなんよ、と言われりゃそれはそれで恥ずいっすけど」
「あはははは……いや、全くだな」
どこか恥ずかしげな素振りを見せるソラに、瞬もまたどこか恥ずかしげに笑う。高校生の自分達がこんな近未来的な基地のような施設に興奮しているのはどうなのだろうか、と思わないでもなかったようだ。と、そんなわけで笑いあった二人だが、そこに否定が入る。
「そう言うな。冒険者ってのに興味は滅茶苦茶重要なんだぞ。バルフレアだってランクEXになっているのは興味で動いた結果、という所が大きい。こういう時に興奮出来るか否か、は凄い重要だ」
「カイト……いや、そう言うがな。流石に少し恥ずかしいぞ、大人げない、というか……」
「まぁ、それはわからないでもないが、何時だって、どこでだって未知を発見するのはそういう大人げない大人だ。子供みたいに冒険心に心を踊らせて、危険を承知であの丘の上に行ってみよう、って言うな」
「お前もそうなのか?」
「そうありたいとは思うんだがなぁ」
ソラの問いかけに、カイトは恥ずかしげに笑う。そうして、彼はどこか苦笑いを浮かべながら肩を竦めた。
「そうありたいと願いつつも、今は公爵で自由気ままな旅はできないんだから、人生ままならんもんだ」
「でも後悔してると聞かれると?」
「後悔はしてねぇな!」
わはははは。カイトは肩の上のユリィの問いかけに大笑いする。実際、全部を手に入れようとしてそこに居るのだ。その旅路に悔いが多かろうと、今に後悔があろうはずもなかった。そして、そんな彼にユリィもまた嬉しそうに笑う。
「だよねー」
「おうとも……ま、だからこそ出来る冒険は楽しんで行こうぜ」
「おうとも! わっと!」
「にぃー! 晩御飯の準備出来たよー! 後はお鍋が出来るのを待つだけー!」
「あいよ」
相変わらず冒険者として立っている時は本当に旅を楽しむ冒険者のようでしかない。ソラも瞬も肩にユリィを乗せ、背にソレイユをおんぶして、というカイトに思わず笑う。
というわけで本日の装備に戻ったカイトが、改めて雷の試練へ続く扉を見る。今回はどうやら二つに分けるのではなく、扉は一つだ。どこかで別行動はあり得るかもしれないが、基本は一緒に行動するらしいのだと察せられた。
「で、まぁ……それはそれとしてなんだが。この扉は技術的には明らかに地球を上回っているな。もちろんエネフィアも。ハッキングやらクラッキングやらは無理と考えた方が良いだろう」
「だろうな」
明らかに自分達が見てきた技術の中で一番高度に発展した技術が使われている。瞬は周囲の壁に浮かんでいるホログラフィなどは単なる演出だろうと思いながらも、全体的に自分達よりはるかに技術が進んでいる事は間違いないと思っていた。と、そんなわけで浮かび上がる手の形のホログラフィに、ユリィが近付いてみる。
「これ、私反応するのかな」
「お前の手にか?」
「ううん。私全体」
「するな、多分……これはおそらくホログラフ自体に反応があるタイプになってるだろう。だから実際には手の形やら大きさは特に判断基準には入っていないはずだ。単に置く目印ってだけだな」
「じゃあ座らない方が良いのか……りょーかい」
「なんでそんな事がわかるんだ?」
どこかそうなっていると思う、ではなくそうなっていて当然という様子のカイトに、瞬が訝しんで問いかける。
「うん? あー、いや、まぁ、色々と旅をしてるとこういう基地も見た事があるというだけだ。ここらの詳しい話は横に置いておいてくれ。話すと長い」
「そうか……とはいえ、そうなると色々と今までに経験した事のない罠やらがありそうだな」
「多分な。おそらく床やら壁やらにも仕掛けがされているはずだ。色々と今まで以上に注意しないと駄目だろう」
「それこそいきなり横から壁が開く、とかありそうか」
「あるかもしれん、かな」
瞬の推測に、カイトが笑いながら同意する。と、そんな事を話していると、声が聞こえてきた。
「カイト! ソレイユ! お鍋、良い塩梅と思います!」
「あ、おーう! 最後の仕上げするよ!」
「お願いします!」
響いたのはアイナディスの声だ。先程ソレイユが言っているが、単に鍋の仕上がりを待っていただけだ。というわけでここから先の冒険にも近い試練に思い馳せながら、今日は休むべく夕食の支度を再開するのだった。
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