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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3938話 雷の試練編 ――天才――

 瞬の強化のため、雷の聖域へと訪れていたカイト。そんな彼らがたどり着いた雷の聖域だが、これはカイトも見た事がないという、近未来の施設のような構造であった。そうして攻略を行う前の小休止を挟んでいたカイト達であったが、そこに響いたのは妹の浬の声であった。

 というわけで雷の試練にて再度地球側で試練の攻略に臨んでいた浬らと合流したカイトであったが、ひとまず試練に臨む前にアイナディスの手によって一度瞬らを含め今の実力を試される事になっていたのであるが、その最中。浬の思わぬ才能の発覚により、試験は終了。小休止を挟むべく、拠点に戻ってきていた。


「うぉー……マジか」


 どごんっ。そんな音と共に急加速する浬に、ソラが思わず口を開けっ放しにした間抜けな顔を浮かべる。浬は今、アイナディスの指示に従って飛翔を見せていた。それを遠目に見ていたのである。


「初速もチャージ次第で俺を超えそうだな……空中なら間違いなく俺達以上か」

「しかもあれ、直線っぽいっすけど直線じゃないっぽいっすよね。あの速度で急制動可能とか、浬ちゃんの飛空術どうなってんだ……?」

「確か……飛空術はロケット型、滑空型、反重力型、概念型の四系統……あるんだったな?」

「ああ」


 瞬の問いかけに、カイトが一つ頷いた。そうして、彼は改めて飛空術の系統について語る。


「ロケット型はソラの使う、魔力の放出をベースにしたジェット機などと同じ形式で飛ぶ型。魔力量の多い奴が良く使う奴だな。滑空型は先輩の使う、最初に大きく跳び上がった後に緩やかな降下をさせていくものだ。これはロケット型との併用で、小燃費で飛行機のように飛翔する事が可能な型だ」

「反重力型は覚えがあまりないが……そういえば冒険部だと誰が使うんだ?」

「そうだな……例えばだが灯里さんは反重力型をメインに使いつつ、概念型の練習をしている。反重力型は重力を解析して飛翔しているから、優れた分析力が必要になる。ただしその分自由な動きが可能だし、急制動も思うがままだ。総じて魔術師向けではあるかな」


 相変わらず速いな。カイトは二人同様に浬の飛翔を見守りながら、どこか苦笑気味に解説する。そしてでは浬はなにかというと、この三つではなかった。


「浬が使うのは概念型。飛翔という概念を付与する事で飛翔するものだ」

「確か最も難しい魔術の一つ……なんじゃなかったか?」

「そうなんだよなぁ……だがここが天才様の厄介な所というか、不思議な所というか……あいつは前三つへの適性が、まぁなかったんだよ」

「一番難しい奴にだけ適性があったのか」


 そんな事があり得るのか。瞬は驚きながらも、今の光景を直に見ているのであり得ると思わざるを得ない状況に僅かに困惑気味だ。とはいえ、その困惑は語るカイト当人も一緒だった。


「そうなんだよなぁ……てなわけで、概念型を教えたら、ああなったわけだ」

「「……」」


 どうしても今の浬の実力故に最高速で飛翔するには相当の広さが必要にはなるが、同時に十分な移動距離さえ稼げてしまえばアイナディスの全速力にも匹敵し得ている。三人はアイナディスが追従する、という滅多に見ない事態に半ば困惑気味であった。


「概念型の一番有利な点は、ああした自由自在な飛翔が可能な所だ。速度も完全に自由自在。イメージで動いているから、それこそもっと極めれば速度はあんなもんじゃない。それこそ月まで往復するのに半日、ということも出来るだろう。呼吸とかの問題は横にして、だがな」

「「つ、月まで半日……」」


 しかも往復である。その時速が如何ほどかはソラにも瞬にもわからなかったが、少なくとも音速なぞ遥かに超過している事は間違いなかった。


「はぁ……ソレイユ、あれ狙撃出来そうか?」

「最高速は無理かなー……あれはちょっと速すぎるかも。でも制御も出来てるから、後は距離次第で十分に使い物になるんじゃないかな?」

「お前で無理か……」


 まぁ、わかっちゃいたと言えばわかっちゃいたけどさ。カイトは自身の妹への狙撃がソレイユでも無理という現実に半ば頭を抱えていた。そんな彼に、ソラが苦笑いで問いかける。


「なんでそんな苦そうなんだよ、お前は。喜んで良いんじゃないか? あんな才能だったら。間違いなく天才なんだろ?」

「まぁ、そうなんだけどさ……やっぱ要らん才能を目覚めさせた感はあってなぁ。飛空術ってのは本来日の目を見ないはずの才能だろ?」

「まぁ……な」


 ソラ達がそうであるが、そもそも異世界転移に巻き込まれなぞしなければ戦闘への才能なぞ目覚めていない。魔術が一般的には失われている地球が異質だという点を鑑みれば、魔術の才能自体は本来目覚めていて不思議のないものであるが、飛空術は魔術の中でも最上位。もし魔術を前提に教育が構築されていたとしても、学校で習う事はまずないものだった。


「それを目覚めさせたってのはやっぱ要らん事に巻き込まれる可能性が高くなったって事でもある。才能ってのは持ってなけりゃ不運だが、同時に過剰に持っていても不運だ」

「……お前が言うと実感がありすぎるな」

「オレは持ってない方だから苦労したからな」

「……」


 そっすか。カイトの反応にソラは鼻白む。とはいえ、彼が上を見ているが故、もしくは上と付き合うが故に自身の無才さを嘆く、というのはある意味いつもの事なので、もう指摘するつもりもなかった。


「まぁ、そこそこで良いんだよ、才能なんてものはな。あれは過剰も良い所だ。絶対になにか悪い事を引き寄せる。良いか悪いかは人それぞれになるだろうが」

「なんかわかんのか?」

「ああいう過剰な才能ってのは前世で飛空術にとんでもなく薫陶のあったが故だろう。飛ぶのが好き、ってのもそういう引き継ぎがある可能性は高い」

「飛ぶのが好きなのか」

「ま、これはオレもだけどな」


 わはははは。瞬の問いかけに、カイトは楽しげに応ずる。というわけで実は浬は暇になれば空中を飛んでいるそうで、それにより更に飛空術の効率化と順応が行われ、という好循環が起きていたりしたのである。

 しかも地球では隠形の魔術を施した彼女を確認する術がない。なので好き勝手に飛べる。それが更に飛空術の使用を容易にして、とまさに彼女を育成するのに最適な環境が勝手に整っていたのであった。


「……まぁ、それはそれとしてだ。あの速度で迫られれば流石に誰でも困惑する。地面スレスレに飛翔すれば距離さえ十分に稼げれば、単なる突進がもはや必殺技だ。それこそ障壁をしっかり構築出来れば、お前でも防御は無理だろう」

「……あの速度だからなぁ」


 すでに超音速は超えて、紫電の速度のアイナディスに並走しているのだ。確実に自分の速度は超えている、というのが遠目に飛空術の試験を行う浬の様子を見るソラの感想だ。これが単なる飛空術というのだから驚くしかなかった。


「そういうことだ……そしてあんな領域に到達出来るんだ。才能としては凄まじい、というのが結論だろう」

「ですね……これは流石に私をも上回る」

「おーう、アイナ。終わりか?」

「ええ……結論から言えば、これは最終的な速度は私を上回りますね。自由度を含めれば私を遥かに上回るでしょう」

「アイナディスさんを?」


 アイナディスの結論に、ソラが驚いたように問いかける。これに彼女ははっきりと頷いた。


「ええ……あれは誰か別の人が一緒だと更に加速が出来る。エドナでも連れてくれば、下手をすれば次元跳躍さえやりかねませんよ、彼女」

「怖いこと言ってくれるなよ」

「次元跳躍ってなに?」


 アイナディスの停止と共に停止して空中に浮かんでいた浬が、カイトの盛大に引きつった顔を見て問いかける。聞いたことがなかったらしい。


「次元跳躍は次元跳躍。転移術の一種、みたいなもんだ。流石に飛空術とは理論が異なるから、単なる冗談だと思え」

「ふーん……」


 どうやら特に興味はなかったらしい。別の技術という所もあって、それ以上浬が深く突っ込む事はなかった。


「ま、そういうわけで……そいつに関しては飛ばしておいた方が良い」

「なんかムカつく」

「飛んでりゃ良いんだから楽だろ」

「そうだけど」


 ぞんざいな扱いをされているのは少し腹が立つ。そんな様子で浬が口を尖らせる。というわけでそんな彼女を混じえて、一同は一度試練についてを考える事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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