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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3929話 雷雨の森編 ――雷雨の森――

 暗黒大陸へ向かう航路の最中に発見された幽霊船により構築された幽霊船団。この対応のため、冒険者ユニオンは皇国へと協力を要請。皇帝レオンハルトより指示を受けたカイトは各地から霊力や退魔の力を操る者を招集し幽霊船団の除霊に成功する。

 そうして幽霊船団の除霊から数日。彼は調査船団により発見された情報の精査を行うべくリーナイトへ戻るバルフレアから進捗を聞いていたのだが、それも終わりバルフレアはリーナイトへと帰還。

 カイトもその帰還と合わせて今回の一件の調査報告を皇国へと上げると、それと入れ替わるように皇国から瞬の契約者としての聖域があるという<<雷雨の森>>への渡航許可が下りていた。

 というわけで準備を終えた一同は飛空艇に乗って、雷の聖域があるという<<雷雨の森>>とやらにやって来ていた。そこは少しだけ紫色掛かった地面の、常に雷が降りしきる地であった。


「「……」」

「どうしたんだ、二人とも。そんな変な顔をして」


 おそらくわかっていて問いかけているな、この男は。ソラも瞬も外の光景を見る自分達へのカイトの問いかけに、口を真一文字に結びながらそう思う。というわけで、外の光景を見ながら瞬が問いかける。


「……カイト。これは何なんだ?」

「なにって……雨が降ってるだけだが」

「どう考えても雨の光景には思えんが」


 確かに先ほど出迎えに来たアイナディスから雨が近付いている事は聞いていたし、降り立った場所にも湿気が満ちており、雨が近い事が一同にも察せられた。というわけで彼女の助言に従ってひとまず避難小屋に退避したわけであるが、それから十数分。彼女の言葉通り雨が降ったわけだ。だが、そうして雨が降ったかと思えば、<<雷雨の森>>の異様な光景を目の当たりにする事になったのである。


「いや、確かにだ。雷は水を良く通す。そして雷は高熱を生じさせる事が出来る。そこまでは俺も認める……が、これはいくらなんでも……」

「あはは……まぁ、降りしきる雷と地中の<<雷鳴石>>が共鳴して、地面からも放電が発生。降った雨が蒸発しちまってるんだ。で、降った雨が水蒸気化して、こんな状態になるわけだな。<<雷霧(らいむ)>>というこの地特有の現象だ」

「……名前は可愛らしいな」


 愛らしい名前に反して、現象そのものはあまりに危険過ぎる。瞬は雷を含む霧には触れるべきではない、と判断する。と、そんな紫電が急に勢いを増して、ところどころにスパークが生じ始める。


「……次はなんだ」

「ああ、雷の蓄積がしきい値を超えたか。爆ぜるぞ」

「「っぅ!?」」


 水蒸気爆発。起きた現象としてはそんな所だろう。そうして巨大な閃光と轟音が、避難小屋を揺らす。というわけで閃光と衝撃が過ぎ去った後。ソラがカイトへと問いかける。


「……なぁ、カイト。これ、マジで行くの?」

「流石に今は行かんよ。この雨の中を突き進むのは自殺行為も良い所だ」

「だよなぁ! あっはははは! この地獄の中を進め、って言われるかと思ったわ……」


 半ば大仰に笑った後、ソラはがっくりと肩を落とす。今回、彼が連れて来られた要因の一つは彼の得意とする土属性が雷を防ぐ事が出来るからだ。いつこの悪天候の中を突き進む盾となれ、と言われるかと内心冷や汗を掻いていたのであった。


「あはは。まぁ、もう少し成長したらそう言うつもりだったな」

「今この時ほど、成長してなくて良かったと思った……」

「「あはは……」」


 肩を落とすソラに、カイトもソラも思わず苦笑いだ。と、そんな事を話す三人であったが、そんな所にアイナディスが声を掛けた。


「カイト。よろしいですか?」

「ああ……ああ、また悪いな。聖域までの道のりを確認して貰って」

「構いませんよ。今回の場所柄、私以外事情を知りながら確認というのは難しいでしょうし」

「悪いな」


 首を振るアイナディスに、カイトはもう一度感謝を口にする。


「ああ、悪い。話の腰を折った……それでどうした?」

「いえ……雨がどの程度続くか、という所は私にはわかりかねましたので。どれだけ時間があるかはわかりませんが、何週間も留まれるわけではないでしょう?」

「ああ、それか……どうだろうな」


 今更の話だが、エネフィアには――カイト達が密かに運用する物を除いて――人工衛星は存在しない。それどころか、人工衛星という単語そのものが未知と言えるだろう。中には衛星という単語さえ知らない者が居ても不思議さえなかった。

 なので人工衛星を用いて例えば皇国全土の天気を予報する、という事は出来ず、魔術師達が魔術を用いて周囲の環境を大規模に読み取る事で明日の天気を予報するのが一般的だ。だが、これは魔術を使っての予報だ。

 それ故にこういった極所での予測はほぼ不可能で、それこそカイトでもなければ察知不可能なのであった。というわけで、アイナディスの問いかけを受けたカイトが目を閉じる。精神世界に滞在する大精霊達に話を聞こう、というわけである。


『ディーネ。この雨だが、どの程度続きそうだ?』

『少し長引きそうですね。ただ一番降るのは明日の明け方より少し前。時間としては午前4時過ぎという所でしょうか。ただその半日後。明日の夕方には止むかと思いますよ』

『夕方か……ってことはその後の蒸発とかを考えても、明日一日は待機した方が良さそうか』

『それがベストかと。ただ朝一番には出た方が良いでしょう。3日後からはまた雨が降りますから』


 カイトの問いかけに、ウンディーネは明日の待機を提言する。


『まぁ、往復3時間ちょい。途中待機もあるだろうから往復一日ってとこだから……途中トラブっても大丈夫か』

『どちらにせよ聖域で数泊は最低するのですから、体力的には往復一日でも特に問題はないのでは?』

『それもそうか』


 すでに風の聖域でも言われているが、聖域の中では時間経過がない。なので往復一日、と言っても実際には間に数日が挟まるようなものだと言えるだろう。というわけでここ数日の状態を確認した彼が、アイナディスへと聞いたままを告げる。


「というわけらしい。なんで明日は駄目だろう」

「なるほど……水の大精霊様のお言葉を考えるに、明日の早朝には中心部で<<雷轟(らいごう)>>が生じる可能性もありそうですね」

「あー……なるほど。確かにそうなるな。あれはヤバいからなぁ……」


 何のことかは定かではないが、今の<<雷霧(らいむ)>>よりも更に危険な現象がこの地では起きるらしい。


「ええ。あれは私でも避ける」

「今のアイナなら避ける必要なんてないだろ。オレ同様自然現象としての雷はもう通用しないだろうに」

「あ……」

「……もしかして今まで自分が雷が無効化出来る事を忘れてた? いや、忘れちゃいないんだろうが、自然現象としての雷も無効化される事を忘れてたな?」

「……」


 どこか茶化すようなカイトの問いかけに、アイナディスは恥ずかしげにそっぽを向く。というわけで恥ずかしげな彼女に、カイトは楽しげに笑いながら一応の慰めの言葉を発する。


「まぁ、雷が単独で生ずる事なんて滅多にないから、忘れてもしゃーないだろ。とはいえ、その様子だと本当に一番最初の渡航と同じように色々と対策しながら聖域まで行ったか」

「……うぅ」


 カイトの指摘にアイナディスは恥ずかしげに俯くだけだ。まぁ、全く無意味な事をしていたと言える。恥ずかしくなっても無理はなかっただろうし、その結果予定以上に大幅に時間を要してしまっていたようであった。というわけでそんな彼女に、ソレイユが呆れるように口を開いた。


「ねぇね、時々大ポカするよねー。一応にぃのお願いもあったから見てたけど、なんであんな大荷物背負ってるんだろ、って思ってたけど」

「思ってたなら言ってください!」

「あはは……ま、どっちにしろソラ達が居る状態だと通常の攻略になる。その予行練習って考えりゃ良い」

「……はい」


 カイトの言葉にアイナディスが恥ずかしげに応ずる。というわけで一同はそのまま雨が止むまで、一旦待つ事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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