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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3856話 滅びし者編 ――急転直下――

 ソラが契約者となっている間に生じていた皇国軍での不祥事。帰って早々それを知ることになったカイトであったが、彼は皇帝レオンハルトより不祥事への情報提供を要請されることになる。

 というわけで情報を集めていた彼であったが、そんな時に入ってきたのは南方にて遠征の前準備として暗黒大陸近辺の海域の調査を進めていたバルフレアからの情報であった。

 そんな彼からの情報は折しも皇帝レオンハルトが取り掛かっていた海軍内部の海賊の協力者の件であり、カイトはそれを即座に報告。皇帝レオンハルトの要請を受けて冒険者ユニオンとの仲介役となり海賊達の拠点を攻め落とす。

 そうして攻め落とした後、捕らえられていた者たちを解放したわけであるが、その一人に幽霊船と遭遇した者が居たことにより、彼から話を聞くことになる。

 だがそんな幽霊船に遭遇した者は不運にも幽霊船に乗り込んでしまったことにより精神を病んでおり、ある程度の情報を手に入れられたものの話はそこで終わらせることになっていた。


「バルフレア。一応念の為だが、後は頼んでも良いな?」

『おう。流石にこの海賊島の北の海域だとわかったから、後はこっちで調べる。何よりこっちはお前の領域じゃないしな。ああ、多分そんな掛からないはずだから、準備だけはしておいてくれ。すぐに迎えに行く』

「あいよ」


 バルフレアも言っているが、カイトはあくまでもエンテシア皇国の貴族だ。なのでエンテシア皇国やその保護国に近しい国々では影響力を行使出来るが、ここはどちらかといえばマギーア、ウルシア大陸に近い。皇国やマクダウェル家の軍艦が本来はうろちょろするべきではない範囲だった。


「あ、にぃー」

「んだ?」

「マギーアの船、来たよ。まだもう少し水平線の先だけど……加速しだした。後一時間ぐらいかな」

「あらら……こりゃ、連中の一部に海賊と繋がってた奴が居るか」


 海賊島への攻撃からマギーア王国の船団の到着までおよそ半日。一応何度か言及されているように、ここはマギーア王国の領海に近い。なのでエンテシア皇国も一応の筋として大使館を通してこの海域に軍艦を派遣する旨、それをなぜ行わねばならないかなどは伝えている。だが意図的に情報は絞ってしか伝えていなかった。


「確か詳細は伝えてないんだっけ?」

「ああ。向こうもイエスしか言えなかったそうだがな……ここらは公海だ。本来は探索と攻撃を行う旨の通達なぞ不要だ。あくまで皇国側が厚意で近隣であるから、と連絡しただけだ。感謝出来こそすれ、止めることは出来ない」


 それで一直線にこちらに向かってきているのだ。おそらく通達があった時点で密かに船団を出して、冒険者ユニオンの調査船団を迂回する形で進路を取って進んでいたのだろう。


「お前の目で目視出来る距離だからまだ大丈夫だろうが……ユハラ、元海軍中佐は?」

「収容済みだそうですね。後はそいつに繋がってた海賊連中も粗方ぶち込んだそうです。あ、奴隷の人達は全員なんとか乗せました。多分これで全員だと思いますが……」

「そうか……まぁ、オレ達はオレ達に出来たことを出来たと考えよう」


 本来カイト達がやっていることは、マギーア王国の『財産』を違法に収奪していることに等しい。なのでバレてはならないことが大前提で、飛空艇が居ることを目撃されてはまずかった。というわけでカイトは少しだけ苦みを浮かべるも、一つ息を吐いて決断する。


「バルフレア。お客さんが来るらしい。オレ達はそろそろ御暇することにするよ」

『おう。マギーアとかの一般人については俺達の方でしっかり送り届ける。奴隷達の方は頼む』

「あいよ……まぁ、だから見つかっちゃなんないって話になるんだけど」

『ははは……ま、奴隷解放はお前の偉業の一つとして挙げられてるからなぁ』


 奴隷解放とそこからの数々の職業訓練などはカイトの功績の一つとして語られる。なので今回カイト達がやったことは彼からすれば立場的にもやらねばならなかったことで、外交問題ではあろうと仕方がないことではあった。とはいえ、それは彼一人で成し遂げられたかというとそうではなく、当然バルフレアも関わっていた。


「お前も似たようなもんだろ。ユニオンマスターとして最初の偉業と聞いてるぞ」

『冒険者ユニオンとしても、当時の元奴隷……逃亡奴隷への冒険者の身分付与は問題の一つになっちまってたからな。奴隷解放を推し進めたのは仕方がなかった』

「お互い、いらんことに手を出した感はなくはないが……」

『ま、俺達も気分が良いもんじゃなかったからな……昔々の職業奴隷やらなら良かったんだが』

「なんの話だよ」

『大昔にそういう国があったんだよ』

「ほーん……まぁ、地球にも確かに奴隷と言うがぶっちゃけ給金が支払われてたりってのがあったから似たようなもんか」


 バルフレアの言葉にカイトが思い出したのは、古代ギリシアなどの奴隷だ。奴隷と一言に言っても歴史的には色々な扱いをされており、現代の者たちが想像するような劣悪な立場に置かれていないこともあった。

 なのでカイト達もそういう場合はなるべく各国に負担が掛からないように軟着陸させられるように制度改革を努め、正しく奴隷という扱いの場合にのみ強権を行使したのであった。そしてマギーアはどちらかといえば後者であり、人財よりも資材などの物として見做す方向性だった。


「っと……そりゃ良い。とりあえずオレ達はもう行くぞ。後は頼んだ」

『あいよ。さっき言った通り、すぐ行くからな。準備は頼むぞ』

「あいよ……よし! 潜航準備! 胸糞悪い連中に見付かる前に、さっさとずらかるぞ!」

「「「はっ!」」」


 来る時は重苦しい雰囲気だったが、やはり色々とヤバい橋と言えるような案件を終わらせたのだ。カイト達マクダウェル家上層部の眉間のシワも解れており、どこか楽しげでさえあった。

 というわけでカイトの号令と共に飛空艇は海面へと沈んでいき、数分後には皇国海軍の軍艦も出港。マギーアの艦隊が到着した頃には痕跡一つなく消え去っていたのだった。




 さて海賊島の掃討作戦から一週間。カイトはバルフレアとの約束通り引き続き幽霊船の除霊に向けた準備を進めていたわけであるが、その最中に彼は皇帝レオンハルトからの連絡を受けていた。


『公よ。今回は諸々すまなかったな。結局公の手も煩わせてしまった』

「いえ、それより陛下にも要らぬ手間を煩わせることとなってしまいました。私の方こそ大変申し訳ありません」

『構わん。我が国はもとより奴隷解放の突端を築いた国だ。奴隷制度を見過ごせぬというのは政治的な立場として存在している……それはラグナ連邦や魔族領も同様で、エネシア大陸の総意と言える。例え公がおらずとも、海軍の連中が同じことをしたであろう』


 カイトの謝罪に対して、皇帝レオンハルトは彼の判断が一切誤りではないことをはっきりと明言する。まぁ、これについてはそもそも誰もが同じ判断で、カイト達を差し向けている以上それは皇国としてそう指示していると見做して間違いのないことだ。

 だがあくまでカイトは独断での行動であり、皇帝レオンハルトはそれを良しと認める形を取っていた。というわけで皇帝レオンハルトの応諾に、カイトは再度頭を下げる。


「ありがとうございます」

『うむ……ああ、それで元海軍中佐だが、先程飛空艇で皇都に到着した。これから軍事裁判に掛けるが、マクダウェル家からも資料などの提示を頼みたい。今回は海軍が主軸であったがゆえに、上空からの状況報告が乏しくてな』

「かしこまりました……そう言えば拿捕した船ですが、あちらは? 一昨日、大型輸送船と合流したと伺いましたが」

『おぉ、そうだ。あれもすまんな……中央研究所の連中が大喜びしていた』


 カイトの問いかけに、皇帝レオンハルトが苦笑いを浮かべながら改めて労をねぎらう。というわけで苦笑いの彼に、カイトもまた笑った。


「それは良かった」

『うむ……で、そちらはどうだ?』

「幽霊船ですか……それがまだ」

『ふむ……珍しいな。あのバルフレアが主導して、海域まで割れているのに一週間ほども連絡がないか』


 何度か言われているが、バルフレアの功績の一つには船による暗黒大陸への渡航もある。今回幽霊船が出没すると言われている海域はそこから少し離れているが、だからこそバルフレアも調査速度を上げるべく自らが主導することにしていた。

 そして彼なのでカイトも皇帝レオンハルトも早ければ三日ぐらいで割り出したぞ、と来ることを想定していたのだが、まさか一週間も音沙汰もないとは思ってもいなかったのである。


「ええ……思った以上に幽霊船がやり手なのかとも思うのですが……」

『幽霊船にやり手があるのか?』

「ええ……ああ、陛下もご存知ありませんか?」

『流石に軍事に明るいと思っている俺も、幽霊船は詳しくないな』


 というよりそんなことに詳しい貴族はマクダウェル公だけだろう。皇帝レオンハルトは楽しげに笑いながら、先を促す。


「ははは……そうですね。ええ……幽霊船には元になる船と船員が必要であることは陛下もご存知ですね?」

『流石にそれぐらいはな……ああ、なるほど。それでやり手云々の話が出るのか』

「はい……元になった船が強ければ強いほど。船員達の練度が高ければ高いほど、幽霊船も強くなる。下手をすれば生前より厄介であることも珍しくない。幽霊船の除霊が出来る者が限られる要因の一つですね」

『なるほどな……確かにそうなってくると流石のユニオンマスターでも公に頼むしかなくなる、か』


 ただでさえ除霊という普通の者には出来ない才能が必要なのに、そこに加えて様々な特殊な物資を集める横の繋がり。更には個人としての戦闘力まで求められるのだ。

 すでに皇国貴族になっていただろうカイトが請け負っても仕方がないことだっただろうし、皇国からしてみれば他国へ恩を売ることに他ならない。最大限の支援を行ったことは想像に難くなかった。


「そういうことです……まぁ、そういうわけですので今回もそうなりそうですね」

『そうか……だがそれにしても調査報告さえない事は少し気になるな』

「ええ。おおよその海域は割れていますし、船団も複数。しかも交戦する必要もないので、そこまで時間が掛かるとは思えないのですが……」

『まさか夜にしか出ない、とかか?』

「まさか。幽霊が夜しか出ない、はホラー作品の読みすぎですよ」

『ははは。それはそうだな』


 幽霊は確かに夜の方が見つけやすいことは事実だが、別に夜でなければ現れないわけではない。というわけで二人して笑うのであるが、そんなところにカイトの方の通信室の扉がノックされる。


『閣下。よろしいですか?』

「……陛下の御前だぞ」

『構わん。俺との会話中に横入りなぞ、相当な事態だろう。俺も聞こう』

「かしこまりました。入れ」


 皇帝レオンハルトの応諾を受けて、カイトは控えていたメイドの一人に指示して通信室の扉を開けさせる。そうして一人の執事が中に入ってきて、ひざまずいた。


「ありがとうございます……閣下、バルフレア殿が来られました。ただ……」

「ただ、なんだ?」


 非常に苦い顔を浮かべる執事に、カイトが先を促す。だがそんな彼の問いかけに、別の声が答えた。


「失礼します……陛下。お見苦しいお姿をお見せし、大変申し訳ありません。ご歓談中のところ、何卒ご容赦を賜りたく」

「お前……」

『バルフレア殿。その姿はどうした』


 執事の言葉の後に続けて入ってきたのは、上半身を包帯で覆ったバルフレアだ。その姿にカイトも皇帝レオンハルトも思わず仰天し、目を見開いて驚きを露わにする。

 彼の実力は誰もが知っている。その彼が手傷を、それも浅くない手傷を負わされたなぞ異常事態だった。とはいえ、そこまで重い傷でもなかったようだ。彼はどこか苦笑いだった。


「は……幽霊船の調査で手傷を負わされまして」

『バルフレア殿が?』

「ええ……実は幽霊船の話が少し私にもどう判断するべきかわからぬことになってしまったのです」

『ではその傷はそれ故か』

「は……流石に私も霊体からの実体化による奇襲では防ぎきれませんでした。まだまだ鍛錬が甘かった」

『「……」』


 それはいくらバルフレアでも無理だ。カイトも皇帝レオンハルトも状況を理解して、彼が怪我を負うのはあまりに仕方がないと理解する。


『とはいえ、それだけでバルフレア殿が判断不能と言うことはあるまい』

「はい……それで場合によってはぜひとも陛下にもお力添えを頂きたく、このように不躾ではありましたがご歓談中のところに、と」

『我々にもか……わかった。バルフレア殿……冒険者ユニオンと我ら皇国は常に持ちつ持たれつ。話を聞こう』


 バルフレアの要請に、皇帝レオンハルトは一つ頷いて詳細を聞くと頷いた。そうして、バルフレアの口から数日前の出来事が話されることになるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
この幽霊船って300年前の8大ギルドの人達? 暗黒大陸目指してたけど消息不明になったってアイナディスか誰かが言ってた人達名前忘れちゃったけど
バルフレアが大怪我を負うとか大抵の人が負ける相手か…… クオンとかのレベルじゃないと無理か?
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