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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3848話 様々な力編 ――数日後――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。そこを何日も掛けて試練を攻略していたソラ達だが、攻略の開始から中の時間でおよそ半月が経過する。

 そうして何度も挑戦を繰り返して、ついにたどり着いたシルフィードとの最終決戦。3日間に及ぶ試行錯誤の果てになんとか風の試練を突破したソラは聖域を離れてマクダウェル領マクスウェルへと帰還。とりあえずは長旅と長い戦いの疲れを癒やせ、とカイトより指示されて二日間休養。魔力、体力、気力全てを万全に近い状態まで整えて、改めて公爵邸へと足を運んでいた。


「謁見の日取りにつきましてはまた別途調整が出来ればと考えております」

『うむ……だが話には聞いていたが、本当に聖域では時間が経たんのだな』

「はい。もとより試練はこのような場合でなければ、非常事態であることも珍しくない。そのような中で何日も試練をしていてはどれだけの人命が失われるか、わかったものではありません。故に、このように時を止めて試練が行われるのです」

『言われれば納得しかないが……やはり素直に本当かと思うしかないな』


 カイトの説明に対して、皇帝レオンハルトは半ば苦笑いにも近い様子で笑う。魔術や魔法があるエネフィアであっても、時を止めるということは不可能と言えることの一つだ。対象を超加速して擬似的に時を止めることは出来ても、現実的に世界の時を止めることは不可能だ。

 ある意味元の時間軸に戻っているとも、元の世界の時間を止めているとも考えられる聖域での一幕について、本当なのかと思いたくなるのは無理もなかった。というわけでそんなある意味常識的な皇帝レオンハルトに、カイトも笑って同意する。


「あはは……私も最初知った時は驚いたものです。まぁ、それも全ての試練を終えた後だったのですが」

『相変わらずと言えば相変わらずであるが、公も公でぶっ飛んでいるな』

「幼少の頃の恥ずかしい話です……っと、陛下。私が不在の間に急遽東へ向かわれていたとのことでしたが、なにかございましたか?」

『ああ、うむ……少し海軍でトラブルが起きてな』

「トラブル……また穏やかではありませんね」

『まぁな……それで俺が直々に調整に出ていた。まぁ、皇国軍のこと故に気にするな。公の手を煩わせるようなことにはならん』


 カイトの問いかけに対して、皇帝レオンハルトは少しだけ苦い顔を浮かべていた。とはいえ、そんな彼が少しだけカイトに問いかける。


『が、まぁ……公よ。海賊に心当たりはあるか?』

「海賊……ですか? いえ、昨今はと言いますか、我が領地に関しては海賊共も滅多に近寄りませんので……」

『陸海空、どれであれ全ての賊徒はマクダウェル領には近寄らん……か』


 何度か言われているが、盗賊などの相手に対して最も苛烈な政策を敷いていると言われるマクダウェル家だ。故に近隣の盗賊達がマクダウェル領に逃げ込むというのは自殺行為でしかなく、マクダウェル領へ追いやられるぐらいなら、今いる領地で必死に抵抗した方が良いと言われるほどである。

 だがそれは陸地の盗賊以外もそうで、船を使う海賊も飛空艇を使う空賊も全て同様だった。というわけで皇国貴族なら誰もが知っている常識を思い出して、皇帝レオンハルトが僅かに眉間のシワを緩める。


『そうであったな。まぁ、恥を晒すようだが、海軍で海賊共への内通者が発覚してな。しかもこともあろうにそれがどこぞの週刊誌にすっぱ抜かれる形での発覚だ。まぁ、軍の連中も調査はしていたそうだがな』

「それは……よくありませんね。しかもその様子では……」

『ああ。まんまと逃げられた。どこぞの記者に掴まれた挙げ句逃げられるとは、なんとも情けない』


 本当に嘆かわしい。そんな様子で皇帝レオンハルトが首を振る。軍からしてみればそもそもが紙面にすっぱ抜かれる形での露呈だ。調査を重ねていた矢先、というところで横槍を居れられた形なのだから、彼らにとっても不運ではあったかもしれなかっただろう。まぁ、それでも結果が全て。週刊誌にすっぱ抜かれたことで皇帝レオンハルトも知ることになり、頭を抱えていたのであった。


『まぁ、そういうわけでな。どこの海賊共か今調べさせていると共に、是が非でも刈り取らねばならん。皇国を舐めてノウノウと生活が出来ると思ってもらっては困るからな……マクダウェル公。公の方にも情報収集を頼んで良いか? この尻拭いは海軍にさせるつもりだが……まぁ、情報があって悪いことはないからな』

「御意に」


 軍から内通者が出たことは仕方がない。何時の世も、どこの世界でも起きることだ。だがそれを放置しては治安が悪化するし、民衆から軍の支持を失う。

 ただでさえ力を持つ存在として、軍は嫌われやすいのだ。なので皇帝レオンハルトも今回の一件を重く見て、自らが陣頭指揮を取り海軍に発破をかけると共に、民衆に対して軍の裏切り者に対して厳しい態度で臨んでいると印象付ける必要があったのだろう。


『ああ、すまん。それはそれで良いだろう。それでそういうことなので、謁見についてはまたとさせて欲しい……はぁ。このような慶事に泥を塗るようなことを。ソラくんにも重ね重ね申し訳ないと伝えてやってくれ』

「ありがとうございます。ソラも喜ぶかと」

『うむ……ああ、では賊徒共の情報も頼む』

「はっ」


 どうやら今回の一件、皇帝レオンハルトは少し腹を立てているようだ。入ってきた報告がソラが契約者となれたという朗報だったので機嫌を良くしてはいたが、というところであった。というわけで通信が終わったところで、カイトは一つため息を吐いた。


「アウラ。情報部の連中に、今回の一件の情報を集めるように指示してやってくれ。暫く陛下の機嫌が悪そうだ」

「ん」

「やれやれ……まぁ、仕方がないか……っと、ソラ。悪かったな、隠れて貰ってて」

「お、おぉ……」


 苦笑いを浮かべたカイトの声に、顔を出せと言われていたが急遽やっぱり裏に隠れていろと言われたソラが顔を出す。彼が居たら皇帝レオンハルトがその落差で海軍へのあたりが強くなる可能性がある、と踏んで今は休養を指示していて、ひとまずのご報告という体を取ったのであった。


「まぁ、謁見は暫く延期だな。陛下の機嫌が治るまで……もしくは陛下の機嫌を治すためか」

「そ、そうか」

「すまん。多分お前と先輩にも一役買って貰うことになるとは思うが」

「俺が?」

「陛下は武術の訓練がご趣味だ。契約者と戦える、となると機嫌の一つも治る。ま、ここらはオレの方で皇城の連中とやり取りする。お前はそういうものだと思っておいてくれ」

「お、おぉ……」


 やはり貴族社会は貴族社会というところなのだろう。皇帝陛下のご機嫌取りに奔走するらしいカイト達に、ソラは生返事をするしかなかった。


「で、それはそれとして……体調は?」

「おう。もう大丈夫だ」

「よし……じゃあ、今日の本題に入るか。わざわざ来てもらったのは言うまでもなく契約者の力を試そうとするなら専用の場所が必要というわけだから」

「そしてそこはここしかない、か」


 カイトの言葉に続けて、ソラがマクダウェル公爵邸に来た理由を口にする。というわけで、皇帝レオンハルトとの通信を終えたカイトと共に、ソラは地下の修練場へと向かうのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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