表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3903/3918

第3843話 様々な力編 ――最後の戦い――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。そこを何日も掛けて試練を攻略していたソラ達だが、攻略の開始から中の時間でおよそ半月が経過。なんとか二つの班に分かれて攻略するという左右のルートを攻略し、ついに最終ルートとなる中央ルートの攻略へと乗り出していた。

 というわけでシルフィードとの最後の戦いにまで到達し一日目、二日目と幾つもの作戦を練っては試行錯誤を繰り返したわけだが、やはりどれも上手くはいかなかった。そうしてカイトの助言を受けて少しだけ作戦を変更して三度試練に挑むわけだが、そこでついにシルフィードが本気で試練を課すことになっていた。


「……」


 考えろ。何か攻略の糸口はあるはずだ。ソラは正しく風の権化とでも言わんばかりのシルフィードの動きに翻弄されながらも、思考の一部を切り離して思考を巡らせる。


「ふっ!」


 だんっ、という音と共に放たれる風を纏う拳に、ソラは意識を集中して気の鎧を纏う。この攻撃が防具を無視した攻撃かはわからない。だがわからないからこそ、全ての防御を行うしかなかった。


「っ」


 自らに激突した途端爆ぜた風に吹き飛ばされ、ソラは顔を顰める。単なる打撃でさえ、三種類。弓に風弾に多種多様。それらを器用に織り交ぜての戦闘が、シルフィードの本領発揮というところだったのだろう。というわけで吹き飛んだ彼への追撃を妨げるように、リィルがシルフィードの後ろへと肉薄する。


「はぁ!」

「甘い甘い!」

「ぐっ!」


 たんっ。リィルの刺突を前へと跳躍して回避して、しかもその際に初速として足元で風を爆発させたらしい。真下で爆ぜた風に煽られ、彼女自身もまた大きく打ち上げられる。その一方で前へと跳躍したシルフィードは、風を加速として利用して一気にソラの真上へと移動する。


「やほっ」

「っぅ!」


 そんなのありかよ。吹き飛ばされる自分と並走するように飛翔するシルフィードに、ソラは思わず言葉を失った。そんな彼女の手には弓矢が握られており、すでに弓は引き絞られ発射まで秒読みというところであった。万事休す。そういう状態に思われたその瞬間、天道姉弟の声が響いた。


「姉上!」

「出来ています! カイトくん!」

「あいよ! 空也、行って来い!」


 桜の要請を受けて、カイトは彼女が特殊な性質を付与させた魔糸で作った即席の発射台の固定を切って壊す。そうしてまるでバネのように勢いよく魔糸が収縮して、空也が射出された。


「おっとぉ! 面白いことするね!」

「はぁ!」


 猛烈な勢いで自身へと肉薄してきた空也に、シルフィードはわずかに苦笑いだ。そうして僅かな逡巡が生じるものの、流石にシルフィードは自分が矢を射るより空也の肉薄が先と判断。ソラへの追撃を諦めるしかなかったようだ。というわけで自身に襲いかかる空也へと空中で蹴りを放つ。


「はぁ!」

「っ!」

「悪い!」


 空也とシルフィードが激突したと同時に、ソラはなんとか空中で姿勢を整えられたらしい。地面に<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>と偽装で使う片手剣を突き立てて急減速する。


「ソラ! 肩を借りるぞ!」

「っと! ぐぉ!」

「おぉおおおお!」


 ソラの肩を足場に、瞬が雄叫びを挙げて一気に加速。空中でなんとか堪えていた空也とシルフィードの戦いに割って入る。


「はぁ!」

「二対一!? 良いよ!」

「ぐっ!」


 やはり速い。シルフィードの拳が自分の頬を打ったのを受けて、瞬は一瞬だけ顔を顰める。だがなんとか堪えると、そのまま交戦を継続する。そしてそこに、アルが声を上げた。


「二人とも、なんとか避けてよ!」

「「っ!」」


 目の端に写った巨大な白光に、瞬と空也が僅かに目を見開く。しかしそれに対して何か説明することもなく、氷竜の口から巨大な白光が迸る。


「ふふ」

「「っ!」」


 何かを企んだ。瞬も空也もシルフィードが自分達を突き飛ばした瞬間に、いたずらっぽい笑みを浮かべたことを知覚する。そうして白光の中にシルフィードが消える直前、ぐにゃりと白光が渦巻くように曲がった。


「は?」

「ありがとう……使わせて貰うよ」

「っ!」


 ぐるぐると巻き取るように自身の白光を手の上に収束させていくシルフィードに、アルは直感的に何かとてつもなくマズいことが起きそうだと理解する。そして直後だ。白い光が千々に千切れて、周囲を満たしていく。


「っ! マズい!」


 たった一瞬で吹き荒ぶブリザードに、アルは即座に氷竜を解除。地面に着地して氷を纏う。だがあくまでこれが出来るのは彼だけだ。他の面々は途端に視界を全て奪われる。


「くっ!」


 どうするべきか。ソラは顔を顰めながら次の一手を考える。周囲が完全に閉ざされて、しかもこれは氷だ。瞬く間に体温を奪われ思考と体力が鈍っていく。即座に対応しなければならなかった。とはいえ、そこまで難しい話でもなかったようだ。


「カード!」


 轟々と吹き荒ぶ風の中に、浬の声が響き渡る。そうして彼女の声と共に灼熱の光条が天高く登っていく。だが、それは途中でまるで降り注ぐように無数の欠片に分裂して、周囲を満たしていたブリザードを溶かして消し飛ばす。


「ふぅ……っ、どこだ?」


 これが目眩ましに過ぎないことは誰でも理解出来る。なので即座に顔を上げたソラだが、すでに空中にシルフィードの姿はなかった。いや、それどころかどこにもその姿はなく、完全に見失ってしまっていた。というわけで全員で周囲を探すが、どこにも彼女の姿は見当たらない。


「トリン。何か痕跡は見えるか?」

『駄目だ。僕にも何も見つからない……僕らの方には来ないとは思うけど……』


 ソラを前線に出すためにカイトが後方支援の守りに就いている。そして流石に彼がここで攻撃を見過ごそうものならソラがやはり戻らざるを得ず、結果的に一日目二日目と同じことを繰り返すことになるだけだ。それはカイトもシルフィードも望んでいないはず。二人はそう考えていた。というわけでシルフィードの位置を探るソラが、唐突に浮かび上がる。


「ごっ!」

「ソラ!?」

「「「っ!?」」」


 そっちか。ソラのくぐもった声に全員がそちらを振り向く。だがやはりそちらにシルフィードの姿はなく、打たれたソラ自身が困惑を露わにしていた。


「なんだ!?」

「がっ!」

「先輩!?」


 地面に着地した直後。ソラは打たれた痛みだけしかない状況に目を見開いて困惑を露わにする。だが、その直後だ。今度は瞬が浮かび上がる。


「まさか……透明化!?」

『ふふ……さ、僕の手札はこれで全部だ。ここからは応用してやっていくよ?』

「ぐぅっ!」


 どこからともなく風に乗ったシルフィードの声が響いて、今度は防壁として展開した氷を鎧へ変換していたアルが吹き飛ばされる。


「マジかよ! 少しぐらい考える時間くれよ!」

『だめですー』

「ごっ!」

「ちぃ!」


 これは多分撤退はさせてもらえそうにないな。ソラは自分の苦言に対して楽しげに却下するシルフィードにそう理解する。そうして、今度は空也が打たれる。


「そうだ! 浬ちゃん!」

「は、はい! なんですか!?」

「今から念話で言うこと、出来るか!? トリンと相談して探ってくれ!」

「わ、わかりました!」


 何かをソラは考えついたらしい。だがそれには浬の協力が必要不可欠だったようだ。というわけで、まずは透明化への対策を行うべく行動を開始するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ