表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3899/3945

第3839話 様々な力編 ――最後の助言――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。そこを何日も掛けて試練を攻略していたソラ達だが、攻略の開始から中の時間でおよそ半月が経過。なんとか二つの班に分かれて攻略するという左右のルートを攻略し、ついに最終ルートとなる中央ルートの攻略へと乗り出していた。

 そうしてカイトという門番を超えて、ついに最後の部屋に到達。そこで待ち受けていたのは、風の大精霊シルフィード本人で、現れた彼女より最後の試練として与えられたのは彼女との戦いであった。

 というわけで二日目。試行錯誤を繰り返し、数十の作戦を立案しては失敗して、流石に体力も魔力もすっからかんとなったところで情報の集約とさらなる作戦の立案を行うべく撤退していた。


「……色々と試してはみたけれど」


 時に霧に包んで風まで纏い音を殺し。時に足止めした上で加護を全部乗せて攻撃を仕掛け。時にはカイトの手まで借りて気の力で攻撃を仕掛けとしてみたものの、最終的な結論としてはどれも通用していなかった。というわけで一時中座した作戦会議の場に残るソラが一人ごちる。


「結局有効な打開策は本当に一つもなしか……」

「多分奇策を云々は考えられてはいないんだろうね。なんというか、どんな奇策を打っても全部軽く対応されるというか……」


 苦い顔のソラに対して、トリンは少しだけ苦笑いだ。色々と戦略を構築して裏を掻いて見たりはしたが、ソラの言う通り上手くは運んではいなかった。そしてその理由もおおよそは理解出来ていた。


「まぁ、大精霊相手だと考えりゃ当然なのかもなぁ……明らかに風への理解が俺達より深いし、出来ることも俺達と比べ物になってない」

「そりゃぁそうだろう。大精霊とはその属性の権化。その属性の顕現でも良い。あいつらに勝る理解度を持つ存在はこの世に居ないだろう。オレとてその知はあいつらに由来するものだ。ま、何より学者じゃないしな」


 自分達なぞ目でもない領域の風の使い手であるシルフィードに相変わらず苦い顔のソラへ、カイトは笑いながら改めて相手が大精霊なのだと告げる。これにソラもまた不承不承という塩梅ではあったものの頷いた。


「……まぁ、そうなんだけどさ。それでも俺達が知り得ない領域でやられるとこう……なんというかどうすりゃ良いんやら、って反応しか出ないわけで」

「知り得ない、というのは間違いと言えば間違いだな。実際理論を言われれば納得というところも多かっただろう?」

「まぁ、それも否定はしないよ。だからって出来るかと言われりゃ話は別だけどさ」


 例えば一日目の最後に繰り出されたあの物理的な拘束を抜けるという技。あれは確かに原子核の中にも隙間が存在すると言われれば、それはそうとしかソラ達にも言い得ない。

 しかしこれを抜けることが出来ると言われた時、物理的な知識があればこそ出来るわけがないと思ったわけだ。だがこれにシルフィードは大精霊だからこそ出来ると言われたわけで、常識が通用しなかった。そしてこれにカイトもまた笑って頷いた。


「まぁ、それはな。出来るか出来ないかであれば普通は出来んよ。普通はだけどさ」

「な、なんか苦み含んでんな」

「ウチのバカ共……もといティナとか姉貴とかになりますが。原理を聞いてなるほどとか思い出すわけよ、あの天才的なおバカ様達は」

「え!? 出来るの!?」

「出来ちまうんだわな、それが。そして出来たなら対応策の一つも考えるのがあいつらなんだわな、これが」

「さ、流石……」


 片や天才魔王。片や英雄達のお師匠様。ソラは魔術において地球とエネフィア両方の中で五指に名を連ねるだろう最高位の魔術師達の技術を聞いて、盛大に顔を顰める。とはいえ、そうなると彼はまた別のことが気にもなった。


「でもそれならなんでお前がそんな苦い顔なんだ? 対策まで編んでくれたんだろ? 万々歳じゃん」

「まぁ、そこはな。ただこれが出来るかと言われりゃまず桁違いに難しい技術だ。そんなのどこの誰が潜入工作員に教え込むんだよ、ってレベルにはな……」

「……なにそれ」

「これがその魔術。<<壁抜け(ウォールハック)>>」

「……」


 なんか無茶苦茶複雑な術式が出てきた。ソラはカイトの浮かべる魔術を解析しようとして即座に諦める。それぐらいには複雑な術式だった。


「こんなん使うぐらいなら壁に穴を開けた方が速いし、何より楽だ。身体強化の魔術一つで事足りる。それかいっそ壁の一部を改変して壁を抜ける穴を作るでも良い」

「でも作った以上、何か意味があるんだよな?」

「ウォールハックだとよ」

「それはさっきも聞いたけど」

「ウォール、ハックだよ……壁を改ざんすんの」

「は?」


 困惑した様子のソラに、やれやれと呆れ返るようにカイトは首を振る。


「はぁ……まぁ、単に壁を抜けるぐらいなら概念を操れればどうにかはなる。ここまで難しくはならん」

「そ、そうなのか」

「ああ……まぁ、それでも壁を構築する原子やらを解析したり、それに適したサイズへ自身の構築を分解出来るようにして、更にその上で再構築出来るようにせにゃならんかったりと凄まじい難しさには変わりないからな。謂わば科学で語られる転送装置と一緒だ」

「物質を元素やらに分解して目的地で再構築するってあれ?」

「そ。それと同じことをやらにゃならん。これは転移術じゃないし転送でもないが、技術難易度としてはそれに類するだろうよ」

「そ、そりゃまた……」


 確かにもし技術的に再現するのなら、そういうことになるのか。ソラはカイトの解説に納得する。そしてだからこその難易度であるとも。とはいえ、そうなれば気になるのは今しがたカイトが浮かべた魔術は何が違うのか、というところだろう。


「でもそれならその魔術は何が特異なんだ?」

「こいつはさっきも言ったがウォール、ハックだ。つまり壁を改ざん出来る。つまり途中で抜けずに止まれるわけ」

「は? 建物の壁の中にある埋込式の魔術式に手を入れたりやりたい放題出来ちまうってこと?」

「そ……やろうとすれば一瞬で地獄の出来上がりだ」

「……」


 それはそんな物を唐突に開発されればカイトも苦い顔になろうものだし、頭の一つも抱えるだろう。しかもそもそもの話、原子核などの話はアル達がわからなかったように地球の知識がないとわからない。なのでこんな物を作れるのはマクダウェル家のティナ達しかいなかった。


「開発された以上は対策もしなけりゃならないわけだが。そもそも論として、この魔術を使おうとすると原子核の知識やら物質によって元素の構築が異なることやらを理解せにゃならん。姉貴でも今は少し無理か、と思ってるぐらいだからな。誰が使えるかという魔術に対応するオレの苦労は推して知るべしだ」

「あ、あははは……」


 考えるまでもなく難易度から使える術者が身内しかいないのに、加えて地球の知識まで必要というのだ。身内の中でも現状で使えるのは下手をするとカイトかティナぐらいなものだろう。

 その魔術に対策する必要性は本来はないのだろうが、使える者が居る以上は対策は必要と判断。改修をしなければならなかったのだろう。というわけで頭を抱えるカイトであったが、一つ首を振った。


「まぁ、そりゃどうでも良い。こういうわけで、言われれば人類の技術でも再現可能な領域でしかシルフィはしていない。それがどの領域の技術か、というところにはなるがな」

「なるほどな……いや、そりゃそうか」


 先程ソラ自身も納得しているが、シルフィードが使っている技術は全体的に理屈を説明されれば納得するしかないものばかりだった。ただ大精霊の力を利用してそこらの最上位の技術を省略しているだけで、あくまで人の領域に留まっているのであった。


「そ……あくまでも人の技術の領域だ。無理なわけはない」

「おう……あー、なんだ。ありがとよ」

「あいよ……で、その上で言えば」

「ん?」


 自身の礼に笑ったカイトが少しだけ真剣な表情をしたのを受けて、ソラが首を傾げる。


「一つだけ助言だ。これはお前の……お前と空也の試練だ」

「は? そりゃわかってるけど」

「あ」


 カイトの言葉にトリンが何かを理解したらしい。目を丸くして驚きを露わにする。それにソラが驚いて振り向いた。


「え?」

「もしかして……」

「わかったみたいだな。そういうことだ。そうなるまでどうやってもこの試練は続く」

「そ、そういうことだったんですね……今の話を聞いてもやっぱり少し解せなかったというかなんというかだったんですが」

「あははは……ま、そういうわけだから頑張れ」

「?」

「あはは……ソラ。僕らは一つ思い違いをしていたみたいだ。それを説明するよ」

「お、おう」


 どうやらカイトの助言はトリンにとって作戦の根本から変えねばならないものだったらしい。そうして、ソラはトリンからカイトの助言の意図を教えられることになるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ