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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3825話 様々な力編 ――解明――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。そこを何日も掛けて試練を攻略していたソラ達だが、攻略の開始から中の時間でおよそ半月が経過。なんとか二つの班に分かれて攻略するという左右のルートを攻略し、ついに最終ルートとなる中央ルートの攻略へと乗り出していた。

 というわけで最後の部屋に続く門番として現れたカイトを突破するべく攻略を開始するソラ達だが、カイトは忍術・仙術という奇異な術を使って応戦。多種多様な術を利用するカイトの攻略は苦戦を極めていた。というわけで強大な風の一撃をなんとか防ぐべくその解析にソラは奮闘することになる。


「<<風遁・風袋(かざぶくろ)>>……が何かのトリガーだとは思うんだけど……風袋ってなんだよ」

「風袋は風神様が持っている袋のことですね」

「へ?」

「風神雷神図屏風に描かれる風神の持つ袋が風袋と言います。対する雷神様は雷鼓ですね」

「お、おぉ……」


 煌士の解説に、ソラは思わず目を丸くする。


「ってことはやっぱりあの<<風遁・風袋(かざぶくろ)>>で風を集めて、放ってる……のか?」

「それは間違いないかと」

「うーん……」


 なんか妙な感じがする。ソラは煌士の同意にしかし、何か釈然としない物を感じていた。


「どうしました?」

「いや、なーんか変な気がするんだよ」

「変な気?」

「いや、ぶっちゃければ<<風遁・風袋(かざぶくろ)>>で風を集められるんだったら、それで連発すりゃよくね?」

「む」


 確かに言われてみれば。ソラの指摘に煌士もはっとなる。というわけで、ソラは幾つかの違和感を口にした。


「まぁ、最初の内はまだ良いんだけどさ。今みたいに複数体の分身が出てきてるのなら多分余裕で連発できるだろ。よしんば連発出来ないってなっても、一発打ち込んだ後に連発はできる……まぁ、そんなことされたら俺らぶっちゃけ攻略できるかって言われれば無理だけどさ」

「……」


 ソラはカイトの分身体を抑え込む瞬達を見ながら、何か手がかりはないかと考える。もちろん考えるまでもなく際限なしにカイトが打ち込んでくればそれは試練として成立するのかという話にもなるだろう。だからやってこないのだ、という可能性は捨てきれない。だが、とソラが結論付けた。


「一応<<風遁・風袋(かざぶくろ)>>は、あのでかい一撃を使うための布石で良いんだと思う。でも多分、<<風遁・風袋(かざぶくろ)>>を使うための条件が何かあるんだと思う。その条件が何か、だけど……」


 おそらくカイトは何かしらのヒントを出してくれているはずだ。ソラはカイトのこれまでを思い出し、必死で今までを思い出す。


「「……」」


 何かがあるはずだ。ソラは瞬達の戦闘を確認しながら、その何かを探し出すべく周囲を観察する。だがそれを許してくれるほど、カイトとて甘くない。


「おいおい……観察するのは良いが、オレの相手も忘れるなよ?」

「っ!」

「<<木遁・木剣山(もくけんざん)>>!」


 簡単に攻略はさせてくれないよな。すでに印を結んでいたカイトに、ソラは苦い顔を浮かべる。そうして次の瞬間、無数の巨大な木の杭が飛来する。


「っ! マズいだろ、それはいくらなんでも!」

「燃やします!」

「おう!」


 浬の発言に、ソラは自身も<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>を構えながら応ずる。そうして、浬が放った巨大な灼熱の光条が巨大な杭の進路上へと立ちふさがる。


「はぁ!」


 浬の光条が通り過ぎて残る木の杭をソラが黄金の斬撃で焼き払い、ひとまずの対処を完了させる。だが更にこれに、カイトは再度印を結ぶ。


「もう一発だ。<<木遁・木剣山(もくけんざん)>>!」

「「ちょっ!」」


 流石に間髪入れずの二連撃は聞いてない。ソラも浬も大慌てで待ったを掛ける。だが掛けた所で聞いてくれるわけがない。というわけで、ソラは再度<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>に力を込めながら告げる。


「煌士! 支援頼む!」

「りょ、了解です!」


 流石にこの二連続は煌士も慌てていたようだ。ソラの指示に大慌てで魔導書を展開する。そうして再度光条が展開され飛来する木の杭を焼くが、流石に魔力の充填が間に合っていなかったらしい。先程のように焼き切ることは出来ず、燃やして火を着ける形に留まっていた。とはいえ、それでも十分ではあった。


「<<ストーン・エッジ>>!」


 燃えた杭へと、下から無数の鋭い石礫が襲い掛かる。そうして燃えた木の杭を細かく破砕して、粉砕する。それでも破壊出来ない木の杭へは、ソラが斬撃を放って対処する。そうしておおよそを対処した所で、ソラは一つ胸を撫で下ろした。


「おらよ! ふぅ……っぅ……あっついなぁ……」


 破壊した木の杭の破片が周囲へと舞い散り、ソラは顔をしかめる。一発目のように完全に灰にできればそんなこともなかったのだが、二発目の木の杭は流石に完全粉砕は難しく、幾つもの木片に火が着いた状態で周囲に撒き散らかされていた。足場はいつもの巨大な切り株なので延焼は大丈夫かと思わなくもないが、問題ないのだろう。


「……」


 幾つもの攻撃が飛び交うのだ。当然だがその余波は熱を帯びていた。なのでソラは顔を顰めるが、そうしてあるタイミングで熱波が襲い掛かる。


「あっちぃな、おい……」


 ただでさえ肉体労働と頭脳労働を同時にやってるのに、この熱波は本当に嫌になる。ソラは盛大に顔を顰めながらも、それを飲み下す。だがそうして熱波を受けて、ソラははっとなった。


(待て。熱波? 熱を帯びた風?)


 思い出せ。ソラは何か違和感に気付きかけていることを理解して、一瞬だけ肉体と精神を分離。かつて希桜から教わった自然の道理を思い出す。


『よし。そういうことだな。何かが燃えればそこから熱波が生じ、風が生じる。即ち火生じ風生ず。何かを燃やせば風が生まれる、ってわけだな』


 それはまだ<<廻天>>を学び始め、道理を学んでいたことのことだ。そこでソラは木を燃やして風が生じるという理論を学んでいた。そしてそれを思い出し、カイトの言葉を思い出す。


『何故オレが木遁を多用するか、そこを考えろ』


 そういうことか。木遁をカイトが多用する理由。それはてっきり木遁が利用しやすいからだと思っていたし、実際そういうことなのだろう。木遁は燃やされてもすぐに復活するし、物理的な木という物でもある。物理的な障壁にもなれる。だがそれ以上に、こちらの攻撃を利用するのであったのなら。ソラはそれを気づいて、はっとなった。


「先輩! 一回引いてください! いや、先輩だけじゃなくてリィルさんも!」

「む!?」

「はい?」


 ソラの声掛けに、攻め込んでいた瞬とリィルが足を止める。そうして、ソラは戦略の再構築を指示するべく一旦仕切り直しとするのだった。

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