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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3816話 様々な力編 ――勝利者達――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。そこを何日も掛けて試練を攻略していたソラ達だが、攻略の開始から中の時間でおよそ半月が経過。なんとか二つの班に分かれて攻略するという左右のルートを攻略し、ついに最終ルートとなる中央ルートの攻略へと乗り出していた。

 そんな中央ルートで当初は単なる戦闘だけかと訝しんでいた一同であるが、その最後の最後。次が最後の部屋になるという所でシルフィードが言っていた中ボスとして、カイトが現れることになる。

 というわけでウェポンパックなどを総動員してなんとかカイトまで接近することに成功したソラ達であったが、そこが終点。カイト本人を攻めることはできず、再撤退を迫られる。

 そうして全員の手札を出して戦略を構築するが、やはり若干の手詰まり感はあった。まぁ、そもそも昨日の時点で一度話しているのだ。全員が集まって知恵を絞ったからと出てくるわけがないのは当然であった。


「……んあぁあああ……」


 流石に話も出尽くして一旦中座して考え直そうとなり、ソラは全員から離れて頭を悩ませる。なにせカイト相手で、手札を全部出し尽くしてウェポンパックまで持ち込んだのだ。これ以上となると、手札が思い付かなかった。


「……あー……あ」

「ど、どうした? 急に……」

「いや、ちょっと気になったことが……カイト! お前もどうせ聞こえてるんだろ!?」


 とりあえずもう少し頭を捻ってみるか。そう思って一緒にいた瞬の問いかけに、ソラは唐突に虚空へと声を張り上げる。これに瞬が仰天するも、案の定声が返ってきた。


「は!?」

『……おいおい。一応遠慮して聞こえないようにしてやってたぞ』

「聞いてるじゃねぇかよ」

『オレを呼んだ場合は反応するようにしてやってたんだよ』


 明らかに苦笑混じりという様子ではあったが、まぁ、ここらは何かとしっかりしてやるカイトだ。聞いていなかった、というのは事実だろう。


『だが何だ?』

「いや、お前に勝ち目ないから一個聞いてみたいことがあって」

『ほん? いくらなんでもオレの攻略方法なんて教えてはやらんぞ……というか、オレが聞きたいし』

「まぁ、そうだろうな」


 今回、カイトはきちんと自身を攻略しない限り突破させるつもりはない。なので彼が考え付く対応策なぞその更に対応まで考えていることは間違いないだろう。というわけでそんな彼へと、ソラは問いかける。


「一個質問なんだけど、お前が今の戦い方になってお前に勝った奴ってどれぐらい居る?」

『え? あぁ、オレに勝った奴な……ふん……』


 何度も言われているが、カイトは最強であって無敵ではない。なので何度も敗北を刻んでいるし、練習試合であれば今でも負けは刻んでいる。彼の最強はあくまでもルール無用の殺し合いという限定した条件での話だ。技術を競う場なら最上位層の天才達には負けるのである。というわけで、カイトは暫く考えた後に姿を現した。


「その勝利とはどういう意味を指すんだ? また今の戦い方になって、とは?」

「勝利はそのまま。お前に訓練ベースでも今の色々な武器を使って、今の出力で戦えるようになってからの戦いでお前に勝てた人」

「そうだなぁ……まぁ、流石に殺し合いの出力頼みの戦い方は除外しておくか。まずティナ。魔術で遠距離攻撃であれだけの手数を出されちゃ勝ち目はない。だからオレが勝利するには如何にして接近するかが肝になった。次は姉貴。あれはガチ目のチートだ。遠距離近距離なんでもござれな挙げ句、速度は本気のオレ以上だ。この二人は今でも定常的にオレに勝てる。もちろんオレの方にある程度手加減はして、という前提はあるが」


 それでも勝率が高いのはやはりカイトもそれだけ技術を磨いてきたからだし、何よりこの二人から薫陶を得ていることも大きいだろう。というわけで少しだけ苦笑いを浮かべる彼の言葉に、瞬がため息を吐いた。


「結局あの二人相手にも手加減するのか」

「そりゃな。オレの最大の手札は高出力を背景にしたゴリ押しだ。あの二人の魔術だろうと結局は魔力ありきのものだ。それに思い切り力技で押し切れるんだから、その手札は封印せんとな」

「それをやっての話じゃないのか?」

「まさか。それをやったら単なるゴリ押し。オレの訓練にならないだろ。もちろん、二人が格上相手にやらせて欲しい、っていうなら話は別だし、それを希望されることはある。実際、あの二人より上となると明白に上なのはオレしかいないからな」


 驚いたような瞬の確認に、カイトは何を当たり前なという様子で笑う。これはある意味最強に近い者達であるが故の悩みという所であり、二人にとって同格の相手は三人――残る一人はイクスフォスの妹でティナにとっての叔母――しかいない。なので同格相手でさえ足りないのに、格上になるともはやカイトしか居なかったのである。


「まぁ、それは良いや。だからあの二人も新しい技の研究とかでオレを呼び出すことはあるし、その対価としてオレもそれを教えて貰っている。持ちつ持たれつだな。変な話だが、オレは技術としてはまだまだ甘い。あの二人に比べちゃ天と地ほどの差がある。心技体すべてで上回って初めて、あの二人に勝てたという所だな」

「そ、そうか」


 技術であの二人を上回るのは相当な難しさだろうに。瞬はカイトの無念そうな様子に逆に頬を引き攣らせる。というわけでひとしきり話が進んだ所で、ソラが口を挟んだ。


「いや、そりゃ良いんだよ。他には?」

「他? 他なぁ……まぁ、何かと勝負は挑まれるから、色々と敗北はしてるが。クオンとかその最たる例だろ。まぁ、それで勝ってもあいつ怒るから面倒だけど。結局技術で言えばオレが頂点ってわけじゃないからな」

「いや、そこは良いんだよ。だから武器の投射やらのルール無用でやって勝てた人」


 剣技でクオンが最優なのは誰もが知っていることだ。なので剣技に絞ってで彼女と戦って勝てないと言われてもソラにも参考にならなかった。というわけで少し勘違いが生じた問いかけに、カイトは改めて考え直す。


「うーん……まぁ、後はルイス……はお前ら知らんだろうから良いか。地球でルシフェルという天使が転移術を使いまくってオレの裏を取ったりはして勝つな」

「ルシフェルってあのルシフェル?」

「ああ。堕天後はルシファーとも言われる初代天使長だ。転移術の大天才にして、特殊な一族の出で特殊な転移術も使える。更にその特質性から出力上限も高い。この三人が定常的にオレに勝てるメンツかなぁ……」


 何かに限れば勝てる奴はごまんと居ても、すべてのルール無用で戦って勝てる奴はこの三人ぐらいだろう。カイトは考えながらもそう口にする。


「後はそうだなぁ……ああ、後は勝てそうというと、お前らも見た大魔王さまか。あれには流石に今やっても勝てないだろうなぁ……」

「なんでそんな楽しそうなんだよ」

「やってみたくはあるからな。不謹慎だが……ま、それはそれとして。ああ、後はオレに勝てそうというと、<<七つの大罪(セブン・シンズ)>>は勝てるだろう。そんな所かな」

「なるほど……ありがとう。で、もう一個」

「んぁ?」


 ソラの問いかけの意図はカイトも理解していた。なので助言はこの程度で良いかと思った彼だったが、もう一つという彼の発言に思わずたたらを踏む。そんな彼に、ソラがぱんっ、と手を合わせて笑う。


「ティナちゃんに話聞くこととかってできない?」

「はぁ……一度だけな。まぁ、本来なら外に出れば良いだけの話だし、それは認められていることではあるから」

「すまん」


 ぱちんっ。カイトはソラの求めに応じて影を生み出すと共に、少しだけ時間を調整。聖域の中と外の時間を同期させる。


『……なんじゃ、こりゃ』

「あ、ティナちゃん」

『ソラか……となると、これはカイトのか。何があった?』


 聖域に向かったソラがこうして話してくるのならば、とティナはおおよそを察したらしい。驚いていた様子だが、カイトならば出来るだろうと察したようだ。というわけでソラは今しがた手に入れた情報を元にして、ティナへと助言を求めることにするのだった。

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