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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3809話 様々な力編 ――再出発――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。挑む前から何処かの世界で起きた異変による通行止めというトラブルに見舞われながらもなんとかたどり着いた聖域の攻略。左右のルートを攻略し、ついに中央の最終ルートの攻略に取り掛かっていた。


「どうだ?」

「……特に変な所は見当たらない……っすね」

「ふむ……」


 ここからは二つの班が合流し、一つで攻略だ。というわけで最終ルートの扉を開く前に中を覗くソラの言葉に、瞬は彼が差し込んでいた魔道具を受け取って自身でも確認する。


「単なる通り道、という所か」

「おそらく」


 敵影はないし、少し先に扉も見える。となると、ここは単なる最終ルートの第一の部屋にたどり着くための通路で間違いないのだろう。瞬も見えた様子からそう判断すると、魔道具を回収すると立ち上がってカイトへと視線を向ける。


「カイト……そのまま進む。最初は通路だ」

「了解。じゃ、全員先に進むぞー」

「お前はホント軽いな……」

「監督役なので」


 がっくりと肩を落とすソラに、カイトは楽しげに笑う。というわけで改めて通路に入るわけだが、そこでふとソラが気付いた。


「あれ? ユリィちゃんは?」

「あいつはクズハと一緒にお留守番だ。最終ルートだし、ちょっと色々とあるからな」

「ほん」

「まぁ、気にしなくて良い。それにそもそも論、オレとユリィは本来挑戦者でもなければその協力者でもない。あいつが居たからとさほど変わらん」

「それは確かに」


 本来、挑戦者の平均を参考として試練は構築される。なので本来はカイトやユリィが挑戦者の一員として加わっているとそれも加味して難易度の調整が行われるわけだが、今回はシルフィードが無理やりねじ込んだことにより彼らは別口と判断されている。そしてそれはユリィ達もしっかり認識しており、手助けにならない程度にしか助力はしていなかった。


「ま、そういうわけでだ。あいつはお留守番だ……さ、そういうわけだからさっさと進むぞ」

「おう」


 どちらにせよ戦力として期待できない相手が居るかいないかなぞいっそどうでも良いし、そもそもソラにしてみれば最初からいなかったのだ。なので気にするな、というカイトの言葉に素直に従って先に進むべく、中央の扉を押し開く。


「……良し」

「なにもない、か」

「っす……隊列は最初に指示した通り。俺と先輩を先頭に……っと、そうだ。カイト。完全に忘れてた。お前今回どうしてるんだ?」

「どうしてる、というと?」


 何を指しているかわからない問いかけだ。ソラの問いかけにカイトは小首を傾げる。これにソラはあっとなる。


「あ、悪い……えっと、お前ここでの戦い方。いつもなら前線俺とお前とかお前と先輩とか色々とやってるんだろうけど、今回お前の方って前線も後衛も層が厚いかっただろ?」

「ああ、それは確かにな」


 ソラの指摘にカイトは自分が今回率いていた班を改めて思い出す。


「浬と海瑠が完全後衛。桜と煌士がサポート。先輩とアルの二人が前衛……それぞれ特化はしてるけど、均等にバランスは取れているからな……若干アタッカー寄りではあるけど」

「うん……で、武器が先輩は槍。アルは俺と同じ。桜ちゃんは薙刀と魔糸。煌士は魔術……魔導書? 海瑠が魔銃で、浬ちゃんがカード……? なんだっけ」

「それで合ってる」

「煌士まではまだわかるんだけどさ。浬ちゃんのカードって何さ。最初に聞いた時も思ったけどさ」


 最初の時はカイトの班に組み込まれたのでさほど気にはしなかったが、改めて一緒に行動するとなるとしっかり知っておく必要はあるか。そう思ったソラが改めて浬の武器について問いかける。


「ふむ……そうだな。浬、カードホルダーからカード出せるか?」

「出せるけど」

「何枚か貸して」

「良いけど……どれ?」

「どれでも良いよ。オレ、そいつ使えるし」

「出来るの?」

「オレが作るのに協力したからな」

「ふーん……はい」


 カイトの要望を受けて、浬は太ももに巻き付けていたカードホルダーから四枚のカードを取り出してカイトへと差し出した。それは一見すると金属製のカードにしか見えないが、何かよくわからない複雑な紋様が刻まれていた。それにソラは思わず顔を顰めた。


「うわっ……何それ。無茶苦茶複雑な紋様描かれてね?」

「ティナの作品だからな。まぁ、あいつが巫山戯て作ったモンだが、性能はその分高い」

「ティナちゃんのかぁ……」

「そんなすごいんですか?」

「すごいもなにも……って、こっちの常識話しても意味ないよな。ティナちゃん、こっちだと天才魔術師で歴史に名前残してるから。この間オークションでティナちゃんの魔道具だって言われたのが大ミスリル数百枚だったのはもう笑ったな」

「はぁ……」


 その大ミスリルという価値はいまいち理解は出来ないが、おそらく凄まじい価格になっていたのだろうと浬は考える。というわけで生返事な彼女を横目に、カイトは受け取ったカードに魔力を通しながら同意する。


「まぁ、そうだな。あいつは実際エネフィアの技術水準を数世代押し上げたと言われる天才だ。実際、為政者やるより技術者やらせた方がエネフィア全体を見た時は良い。今みたいにな」

「ふーん……」

「ま、そんなもんだと思っとけ。とりあえず……ソラ。準備が整った。浬、ついでに剣も出せるか?」

「あ、そっちも要る?」

「おう」

「はい」


 手で少し離れる様に周囲に告げるカイトの追加の要請に、浬は更にカードを一枚彼へと手渡す。そうして全員が見ている前で、四枚のカードが光り輝いて火、水、土の魔弾が一斉に斉射される。


「……へ?」

「これは組み合わせで色々な攻撃が出来る魔道具だ。だから組み合わせ次第で……」


 魔弾の斉射を終わらせて、一度手元に戻ったカードを回収。更に追加で浬に貰った一枚を元々手元にあった一枚と入れ替えて、今度は火の斬撃を生み出してみせる。


「……マジで? 便利すぎね?」

「ティナの魔道具だからな」

「いや、そんなんあるんだったら俺も使いてぇよ……」

「そんなすごいんですか?」


 カイトから返却されたカードをカードホルダーに戻しながら、浬が少しだけ驚いた様に問いかける。これにソラは一つ頷いた。


「おう……だってそれ、両手使わなくてもいけるんだろ?」

「あー、いえ。流石にそれは……」

「出来るぞ」

「え?」


 唐突に口を挟んだ兄の言葉に、浬がぎょっとなって彼の方を見る。それにカイトがそもそもの開発経緯を教えた。


「そもそもそいつは両手を使わずに攻撃出来る奇策の一つとして開発されたもんだ。だから本来の想定だと両手で別の戦闘をしながら、そいつを使って斬撃やら魔弾やらを生み出して敵を牽制する、ということを想定していた」

「そうなの!?」

「ああ……だから本来は空也とかのサブウェポンとしての運用がそいつの本来的な運用だな」

「え?」


 唐突に水を向けられて、空也が思わず目を見開く。だがこれにカイトは笑いながら首を振る。


「いや、流石に考えなくて良い。採用が見送られた理由もきちんとあるんだ」

「は、はぁ……ふぅ」


 それは助かった。空也はカイトの言葉に思わず少しだけ安堵のため息を漏らす。そんな弟を横目に、ソラがカイトへと問いかける。


「というか、そのカードって採用が見送られたものなのか?」

「ああ……だってほら。オレだったら魔導書あるし。あいつらが自動で魔術使ってくれるのに、わざわざそんなカードを使う必要ってあるか?」

「いや、お前は俺はそうだけど。無いヤツには無茶苦茶有効だろ? 俺欲しいもん」

「お前、一人で近接戦闘やりながら遠距離攻撃まで多重に処理出来る?」

「……あ」


 カイトの指摘に、ソラがはっとなる。そんな彼の様子にカイトが笑った。


「そういうわけだ。確かに適当にばら撒く程度なら出来るだろうけどさ。そいつを使いこなしながら近接戦闘をこなす、ってのは近接戦闘をやるヤツにとってかなりの負担だ。まぁ、トラップとしての使い方とか色々とやりようはあるし、お前も見た通り便利な魔道具ではあるんだが……」

「無理だ。確かに」

「そんなの私使ってたわけ!?」

「本来の想定になるサブウェポン運用がムズいだけだ。こいつをメインウェポンにする使い方は無茶苦茶有用だぞ。全属性、全距離対応とかいうめちゃくちゃすごい万能魔道具だからな。だから今お前専用のサブウェポンとして……あ、これは駄目か」

「なに? どういうこと?」

「未来の話だ。今は気にするな」


 基本的に地球でのことはおおよそカイトも把握している。そして今見てわかる通り、浬らの武器は基本カイトが用意した――すべてティナ作――ものだ。なのでここから数ヶ月先の浬らに色々とあって、また色々な魔道具を開発しているということなのだろう。


「まぁ、そんなわけで。浬に関してはある意味オレの廉価版みたいに考えろ。大抵のことは出来る」

「なんかそれ嫌」

「喜べよ。こっちだと褒め言葉なんだぞ」

「えー」


 たとえ伝説の勇者であろうと兄である。兄の劣化版というような捉えられ方をされるのは浬としては心外だったようだ。まぁ、それはそれとして。浬の手札がわかったことで、ソラの頭の中では色々と戦略が構築出来たようだ。そんな兄妹に笑いながらも、気を引き締める。


「あはは……よっしゃ。って、そうじゃなくて。お前は結局どうするんだ?」

「オレ? オレはお前の指示に従うよ。お前が近接やってくれと言われりゃ近接やるし、遠距離から仕掛けてくれ、って言えば遠距離から仕掛ける。誰かのサポート、と言えば誰かのサポートもしよう」

「流石すぎるわ、お前……」


 常日頃はリーダーとしての役割があるから前線に立って先陣を切るが、本来の彼の持ち味は手札の圧倒的な多さだ。なので殲滅からタイマンまで何でも出来るのであった。というわけで、基本彼は何でもするというジョーカーとしてソラは頭に叩き込んで、最終ルートの攻略を開始するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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