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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3804話 様々な力編 ――構築――

 少しだけ、時は色々な意味で遡る。それはソラ達がまだ過去のシンフォニア王国に飛ばされていた時のことだ。その中でも鬼桜国にて修行をしていた頃のことであった。

 彼らはカイトにより紹介された希桜の元で修行をしていたわけだが、まぁ彼女である。意外と教師としての適正もある彼女により座学にも等しい修行を受けるわけだが、同時に荒々しい女傑としての彼女により戦場に連れ出されることもあった。


「あんだ? お前ら……デカいの見たことねぇって顔してやがんな」

「「……」」


 ガチガチガチ。あまりの破壊力に、思わずソラも瞬も恐怖を感じていた。これが、カイトさえ一目置く女傑。ただでさえ強い東国において最強と名高い鬼の王。その実力を目の当たりにして、二人は思わず恐怖していた。


「ま、こんなもんここにいりゃ一年に何回も見る。そんなビビるもんじゃねぇだろ」

「「……」」


 ビビってるのはそんな小物にじゃない。あんたにだ。ソラも瞬も片手間で起きた減少を見て、この世界のトップ層の実力に恐れ慄いていた。まぁ、カイトやレックスが率いる騎士団の中でも四騎士達でなければ戦えないと言われる領域だ。それだけの破壊を生じれて当然だった。


「ま、山一つだろうとなんだろうと<<廻天>>使えば楽に倒せちまうから、この程度って感じだがな。デカいだけの輩だ。特に苦労なんぞせんよ」

「と、特に苦労って……山一つを書き換えたっすよね!? 今の、明らかに!?」

「そうだが? 別にデカいだけの<<廻天>>だろ。だからなんだよ」


 ごごごごご。希桜の放った雷で胴体に特大の大穴を開けられた巨大な二尾の化け物が轟音を上げながら倒れていく。二尾の化け物は山を踏みしだいて、川をその足先だけで堰き止めてあまりある大きさだった。無論それだけの巨体で、希桜がわざわざ出征するような相手だ。

 瞬の投擲なぞ爪楊枝が刺さった程度にもならなかった。もちろん、ソラの攻撃なぞ軽く紙で指先を切った程度だ。少し痛いかな、程度の痛痒は与えられてもダメージと認められることもなかった。


「いや、デカいだけの<<廻天>>って……」

「単にヤツが山を投げて、それを利用したってだけだろ。敵の攻撃をそっくりそのまま流用するのが<<廻天>>だ。山一つを利用すりゃ、それはこんだけの火力にもならぁな。ま、俺は山使わないでも風さえ流れりゃなんでも出来ちまうがな」


 どうやら希桜は敵の攻撃を利用しないでも、今と同じことを自然界に流れるすべてを利用して出来てしまうらしい。楽しげに笑う彼女は論より証拠、となにもない状態から先程と同程度の雷を編み上げる。


「ま、こんなもんだ……お?」

「「っ!?」」


 ぐらりと倒れ伏そうとしていた二尾の化け物だが、そうして倒れる直前にてが上に持ち上がり、希桜目掛けて振り下ろされる。だがそれに希桜は右手に蓄積していた巨大な雷を解き放った。


「腐っても二尾。土手っ腹貫かれた程度じゃ死なねぇか」

「「……」」


 振り下ろされた右腕ごと、顔面が消滅。今度こそ二尾の化け物が倒れ伏す。そうして、ソラと瞬は<<廻天>>の実力を目の当たりにして、その習得のため再度修行に励むことになるのだった。




 さて時は流れて今。ソラ達は風の試練の中、巨大な三つ目の風竜を相手にしていたわけだが、風竜の意外な手数の多さと周囲の環境の悪さから攻めあぐねることになっていた。というわけでリィルの要請を受けて一度降下して風の勢いの弱い所でソラは彼女と合流していた。


「……え? いや、まぁ……いや、どうでしょ……」


 リィルの問いかけを受けて、ソラは彼女の問いかけの是非を考える。そうして彼が見るのは周囲だ。やれと言われたことが出来るか否か、であれば原理的には出来るだろう。

 だが原理的に出来ると自身の実力が追いつくかは別の問題だ。そんなカイトがやるような大技を自分に出来るかと問われれば少し反応に困る所があった。そうして少し考えた後、彼は結論を下した。


「多分原理的には出来ると思います。原理的にはヤツを構築しているのは風。そこに違いはないんで」

「ならいけますか?」

「いえ、あくまでも原理的には、です。多分ヤツそのものが纏っている防御みたいなので絶対に防がれますね……これが希桜様とかカイトなら、やれちまうんでしょうけど……」


 三つ目の風竜を改めて確認し、ソラは一つ首を振る。そうして彼はリィルの要望とやらを口にした。


「風竜を<<廻天>>で改変しちまう……ってのは多分現実的に俺達の実力じゃ無理です。出来たら一発で倒せたんでしょうけど、何より出来るような相手をわざわざ中ボスとして配置するとも思えないっすね」

「なるほど……存外そういう発想の転換を要求するボスではとも思ったのですが」

「あー……それはありえますけど、多分今回ばかりは俺達の実力不足ですね」


 おそらくこれが中ボス以外ならそういう発想の転換を求めてくる相手が居ても不思議はなかっただろう。だがここは中ボス戦だ。そんな楽して攻略が出来るような相手とは思えなかった。だが同時に、ソラはもう一つ攻略方法を見いだせてもいたようだ。


「でも……そっすね。お陰で一つ考えついたことがあります」

「そうですか? それなら良いのですが……」

「うっす……ただこっちは出来ても、多分やばいことになりかねない。ぶっちゃけ、あんまやりたくはないっすね」

「やらずに勝てるのですか?」

「いや、しょーじき無理と思います」


 やれるかどうかで言われればやれるだろうが。ソラはかつての希桜を思い出し、あの火力に匹敵するなら最後の防壁を破った上で宝玉を叩き割れるだろうと考えていた。

 あの時を思い出してみれば、この三つ目の風竜は二尾の化け物かせいぜい三尾の化け物――あのあと三尾の化け物も遭遇した――と同程度。一人では間違いなく勝ち目はないが、多人数で連携を取れるのなら勝ち得る相手ではあった。というわけで若干やけっぱちのような、苦笑いのような笑みを浮かべた彼が気を引き締める。


「トリン。一つ決め手を思いついた。それに合わせて作戦を再構築出来るか?」

『ん、やってみる。なに?』

「おし……」


 手札を考え意見を述べて、それらを使用して全体的な流れを構築するためにトリンが居るのだ。というわけで、ソラは今までほとんどしてこなかった一つの手札とそれに必要な準備を彼へと共有する。


『……それ、大丈夫? いや、君じゃなくて僕らが』

「だからそれを考えてくれって言ってんだろ。多分火力としては足りると思うんだけどさ」

『いや、まぁ……多分火力としては足りると思うよ。カイトさんからも聞いたことはあるから……でも撃つなら撃つで色々と考えないと、僕らまで消し飛ぶ。少し時間を貰えるかい?』

「もち……それならその間、俺は空也の支援に入る。岩石やら柱やらでそろそろ詰みになりそうだ」

『お願い。こっちから狙撃で支援はしているけど、彼はまだ君ほど風を上手く操れていない。その分雷で柱に吸着して走って速度を出せるから、その分は彼の方が上だけど』

「おう」


 ぱちんっ、という音が響いて金属の柱から空也が消える。そうして彼が乗っていた金属の柱が三つ目の風竜の口に飲まれて粉微塵になって消し飛ぶわけだが、次へ移動した空也が着地する瞬間。彼の乗った金属の柱へ向けて無数の岩石が飛来していた。それに、ソラは盾に力を通して無数の盾を空也の周辺へと浮かび上がらせる。


「はぁ!」

『すみません!』

「おう! こっからは俺も戻る! 一旦お前は補給しろ!」

『ありがとうございます!』


 ソラの指示に、空也が一つ礼を述べる。そうして彼が三つ目の風竜から離れ、三つ目の風竜が次のターゲットを探す素振りを見せた瞬間、ソラが斬撃を三つ目の風竜の頭へと飛ばす。


「おら! こっちだ!」


 今までの戦いの中で、ソラは三つ目の風竜が上に留まっているのはあくまで誰か標的となる相手が上に留まっているからだと理解していた。というわけで常にソラと空也が空中に留まって砲撃やら金属の柱やらで追い詰められない様にしていたのであった。そうして、ソラは再び上昇して三つ目の風竜に追いかけられながら、トリンが戦術を構築してくれるまで耐え忍ぶことにするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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