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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3799話 様々な力編 ――攻略――

 過去世の力が使えないため、その代替としてソラが契約者となるべく訪れる事になっていた風の聖域。挑む前から何処かの世界で起きた異変による通行止めというトラブルに見舞われながらもなんとかたどり着いた聖域の攻略を開始する。

 そうして幾つかの障害を乗り越えながらもなんとか一つ目のルートの制覇を完了させたソラ達は最後の最後で特大の爆弾を知らされることになりながらも小休止を挟んで、次のルートの探索に乗り出していた。

 だがそうして純白の部屋の攻略に取り掛かるわけだが、ここでソラ達は何ら手掛かりのない純白の部屋に足止めを食うことになっていた。というわけで、ソラはトリンに伝承やらの確認を頼みつつ自身は純白の部屋の各所に散って探索を行っていたわけだが、流石に本当になにもない、ただあまり広くもない白いだけの部屋に若干の手詰まり感が拭えず彼は一人、来た道を戻って――といっても由利には柱エリアの再調査を頼んだりもしていたが――いた。一つ思うことがあったからだ。


「……お、来たか」

「やっぱ居たか」

「その様子だと流石に無理か、あれは」

「逆だよ。その様子だと無理だろうなー、って思ってたってことなんだろ? お前がわざわざ戻って待ってくれてたってことは」


 一人拠点に戻ったソラだが、そんな彼を待っていたのはカイトだ。あまりに情報が少ないこと。幾つかの伝承に似た物がある、というトリンの言葉。更に地球側の伝承やらまで知らないとどうにもならないという点から、バカ正直にこのまま調査を続けてもいたずらに時間を浪費するだけで成果は上がらないのでは、と見切りを付けたのだ。というわけでそんな彼の言葉に、カイトは笑った。


「いや、戻ったわけじゃない。使い魔を置いておいたんだ。言ったろ? 試練は大体聞いたって。躓きそうな箇所は大体把握しておいた。まぁ、それに……あそこばかりはちょっとトリンとは相性が良すぎた感があったから、という所もあったんだが」

「相性が良すぎた?」

「知識が豊富過ぎ、って話だ」


 どこか苦笑する様にカイトが笑う。そんな彼は虚空をなぞる様にして、本を一冊顕現させる。だがそれをソラに渡すわけでもなく、自身で開く。


「なんだ、それ」

「あんま高度な使い魔を残せたわけじゃなくてな。知識のバックアップファイルみたいなもんだ……さて、それで話の続きだが、まぁ、おそらくトリンも言ったんだろうがああいったただ一つの何もない部屋ってのはエネフィア、地球共に幾つかの伝承が残されている。知りすぎているから、当たりが付けられなくなっちまう……それで今トリンが悩んでいるのは、それはただ白い、白い白い部屋であった、という一文から始まるアニエス大陸に残る有名な伝承か、黒い神話と言われるこれもまたアニエス大陸に残る神話か……はたまた双子大陸は奥地にある白と黒の神々に纏わる伝承か……いや、それともあの島に眠る伝承だろうか。ま、そんな塩梅で山程神話や伝承が浮かんでいることだろう」

「……」


 やっべー、どれも聞いたことがないぞ。しかもまだまだあるらしい。ソラはある意味トリンの知識量に思わず頬を引き攣らせる。まぁ、それを言い当てられるカイトもカイトなのだろうが。というわけで、そんなカイトは少し笑いながら、話を戻した。


「という感じで知りすぎれば知りすぎるほどあの試練はうまくいかんようになっている。うまいものではなるな」

「え? ってことは意図的にそうなる様になってるってわけか」

「そういうこと。まぁ、だからドツボにはまると何日も掛かるし、下手をすると一度外で調べ直そうとするかも、って考えたんだよ。流石にそうなるとオレが連れてこなきゃなんないだろうし、そうなると今度はエルフ達の国をまた経由する必要がある。面倒この上ない」

「で、それならヒントを残せる様にしておこう、と」

「そういうこと」


 やはりトリンがそうであるように、カイトも数手先まで見通せるのだろう。ソラはカイトの話からそれを察する。というわけで、カイトはソラへとヒントを与える。


「確かにあの部屋には何もない。だがおかしな点がある。それが分かれば、次に行ける……ああ、そうだ。もしそれでも出てこなかったら、オレがさっき挙げた伝承や神話の話を伝えてやれ。多分完全にドツボにはまってる。それで大丈夫だろう」

「はぁ? どういう意味だ?」

「それで大丈夫だ……じゃ、あとは頑張れ」


 どうやら言うべきことは言ったのだろう。カイトの姿が蒼い小鳥へと変貌して、どこかへと飛び去っていった。というわけでソラはそれで大丈夫というカイトの言葉を信じて、再び一時間ほどを掛けてなにもない純白の部屋へと戻るのだった。





 さて戻った純白の部屋だが、流石にあの部屋を何時間も調査し続けるのは無理だったようだ。戻った時にはトリンを除いた全員が柱のエリアへと避難していた。


「ああ、兄さん。戻ったんですね」

「ああ……全員こっちに出てたのか?」

「トリンさんを除いて、ですが……流石に気が狂いそうでしたので……」


 頭が痛い。そんな様子でこめかみをほぐしながら、空也が首を振る。実際あの部屋の印象としては牢獄や拷問を行うためのもの、と言われてもソラには不思議に思えなかった。

 それほどまでにただただ白く、ただただ何もなかった。そんな部屋に何時間も滞在すれば気が狂いそうになるのは当然で、一時間調べては休んでを繰り返していた。というわけでソラはそんな部屋に戻って、トリンに声を掛ける。


「トリン!」

「……あ、ソラ。戻ったんだね」

「ああ……やっぱり思った通り、カイトが情報を残してくれてた」

「そっか……」


 ソラの言葉にトリンはどこか険しい顔だ。だがそんな彼は一点を見詰めており、何かが気になる様子だった。


「何かわかったのか?」

「うーん……わかったというかわかんないことがわかったというか……うーん……ああ、ごめん。とりあえずカイトさんのヒントを教えて」

「そ、そうか……ああ、とりあえず……」


 とりあえずはカイトが話したままを話すことにするか。ソラはカイトに言われた通り、この部屋には確かになにもない。だが同時におかしな点はある、ということを口にする。だがこれにトリンは顔を顰めたままだ。


「そっか……じゃあ、なにもないことは確定か」

「? ならなんでそんな顔なんだ?」

「なにもない白い部屋ってさっきも言ったけど候補が幾つもあるんだ。特に牢屋やらそういう類の部屋の逸話に多い。本当に神話や伝承に一文だけ記されているのだけ、とかもある」

「うわっ……マジか……ああ、それでカイトのヒントにはまだ続きがあった。もしこれで駄目そうなら、もう一つって」

「もう一つ? あ、待った!」


 まだヒントがある。そう言われてトリンは一瞬だけ訝しむも、それで何かに気付いたらしい。はたと何かに気付いた様に目を見開いて、今までのしかめっ面が一変して少し獰猛な笑みが浮かび上がる。というわけで数秒、二人が沈黙するわけだが少ししてトリンが口を開いた。


「……もしかして、カイトさん幾つか神話を例に出して教えてくれてた?」

「ああ。アニエス大陸やら双子大陸やら……なんか有名な一文とかなんとかっていう白い部屋とか黒神話? とか?」

「やっぱり」


 思った通りだった。トリンは我が意を得たり、という様子でソラの言葉に何度も頷く。そうして彼が発したのは、謝罪だった。


「ごめん。これは完全に僕のミスだ。あまりに特徴的な白い部屋だから、これこそがヒントなんだと思い込んでた」

「どういうことなんだ?」

「この部屋が白い部屋だ、というのは間違いだ。この部屋は白い部屋なんかじゃない」

「はぁ?」


 どこからどう見ても真っ白いなにもない部屋じゃないか。ソラはトリンの発言にしかめっ面で首を傾げる。だがこれになるほどとの声が上がった。


『なるほど! そうか! ここはまさか……』

「はい。ここはシャムロック様の神話にある白き光の逸話になぞらえているのだと思います」

『そうか……流石に他の神話には詳しくはないのでそうなのかと思っていたが……なるほど……』

「な、なんだよ。どういうことだよ」


 何かはよくわからないが、トリンと<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>はこの部屋がどういうものか理解が出来ていたらしい。二人して納得したような様子を見せている一方でソラはなんのことやらと困惑するだけだ。というわけで、トリンがソラへと問いかける。


「多分カイトさん、エネシア大陸の神話は何も言わなかったんじゃない?」

「ああ……双子大陸とかアニエス大陸とかしかない……え? エネシアにもあるの?」

「うん。ただ白い部屋という物はなかったから、僕も完全に思い違いをしていた……でもカイトさんがもう一つ、と言った所でもしかしてと思ったんだ。なにもないが違和感がある、って」

「何なんだ、その違和感って?」

「これだよ、これ」


 ソラの問いかけに、トリンは自身の足元を足先でこつこつと小突く。


「地面?」

「違う違う。影だよ。影、ないでしょ? 君が最初に驚いた通りさ」

「ああ……でもそれが?」

「その二つの大陸……いや、三つ? まぁ、良いか。とりあえずそれらの神話にはそんな影も生じない部屋、みたいな記載はなかったんだ。というよりそんな事細かな描写はない、っていうか……もちろん、僕が知らないだけの可能性はないではないけどね。でもこんな特徴がないのはおかしい。ならこれは別の要素に起因する何かなんじゃないか、って思ったんだよ」

「あ、なるほど……」


 今までなにもない純白の部屋ばかりに目が行ってしまっていたが、影がないことは確かに特徴と言えば特徴だろう。というわけでそこから、白い部屋という要素がヒントではないのではないかと思ったのだ。


「それで思い返して、シャムロック様の神話には影さえ飲み込む白い光、という逸話があったことを思い出してね」

『うむ……お前は知らんだろうがな』

「そうですよ、知りませんよ」

『ならば帰ってもう一度神話を読み直すのだな』

「へーい……」


 <<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>のどこか楽しげな言葉にソラは少し不貞腐れながらも応ずる。とはいえ、これで答えはわかったようなものだ。なのでトリンが告げた。


「さて、そうなると今度も今度で君の出番だ。多分僕らには神様の力は見抜けない」

「おう!」


 トリンの言葉に、ソラは<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>の力をわずかに解き放つ。それだけで二つの力が拮抗し、唐突に何も無い純白の部屋が色付いていく。


「あ」

「よし……じゃ、これでもう一回再調査かな」

「おう」


 どうやら色々と出来ることを試さないとダメそうだな。ソラは自身が力を解き放つだけで色付いた部屋にそう思う。そうして、ソラ達はそれから暫く色々と調べて、白に覆われた亀裂を発見。そこから次のエリアへと進むのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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